2017年02月28日

最近の研究活動

最近はめっきりとフェイスブックのお世話になっていて、そちらで近況報告をしており、なかなかブログの投稿が減ってしまいました。自分の中で、なかなかこの2つをうまく使い分けられていません。なんか良い方法はあるのでしょうか。

さて、今回は、最近の出発活動を少しばかりご紹介したいと思っています。

なんといっても、とても嬉しいのは私自身の著書の執筆ではなくて、高坂正堯先生の伝説の名著を復刊することのお手伝いができたことです。長らく絶版となっていて、入手が困難であった三巻本の『外交感覚』(中央公論社)が、千倉書房から『外交感覚 ー時代の終わりと長い始まり』として合本されて復刊されました。そのうえで、中西寛先生とともに私が、恐れ多くも「解説」を巻末に書かせて頂いております。是非ともこの本の魅力を知って欲しいと思って、それなりに力を入れて書いたのですが、すでにこちらのブログでも紹介したとおり、多くのフォロアーを持つ池内恵さんにご紹介を頂き、本書の価値が広く知られることになったことは嬉しいことです。分厚く、高価な一冊でありながら、発売後たちまち二刷ということで、日本の読書界の質の高さに励まされました。

続いて、2月に刊行した共著で、竹中治堅編『2つの政権交代 ー政策は変わったのか』(勁草書房)で、「防衛大綱改定」という章を担当しています。この本では、実は多くの政策領域で、2012年以降の安倍政権が、それ以前の民主党政権の改革を継承しているという一見、新しい主張を展開しています。日本政治研究において、新しい視野を提供する貴重な貢献になればと願っています。何よりも、日本政治研究での、中堅・若手の最も優秀な方々と共同研究をご一緒できましたことは、私にとって最良の知的刺激となりました。

そして、もう一冊が、つい先日刊行されました、船橋洋一編『ガラパゴスクール』(東洋経済新報社)です。一見、奇妙なタイトルに思えるかも知れませんが、「失われた20年」の後に、実は日本には世界での多くの最先端の試みが見られるという、なかなか新鮮が主張をしています。これまた、それぞれの領域で活躍されている若手の才能溢れる方々と共同研究をご一緒して、とてもよい刺激となりました。日本にも、本当に頭の良い人がいるのだなあ、とつくづく感心します。

それと、こちらは英語の書籍ですが、北岡伸一先生とご一緒に、共著で1つの章を書かせて頂いたのが、CSISのプロジェクトの、A Global History in the Twentieth Century: Legacies and Lessons from Six National Perspectivesです。アメリカ、ドイツ、中国、トルコなどの第一線の歴史家の方々との共同研究もまた、とても愉快で、有意義で、学ぶことの多い機会となりました。

いずれも私の本来の専門からはちょっと離れる仕事ですが、何よりも、多くを学ぶことができてとてもよい刺激となりました。

おまけに、これは研究活動ではありませんが、私が尊敬する五百旗頭真先生とご一緒に出演したBSフジの「プライムニュース」での対談の内容が、テキストで掲載されています。こちらをご覧頂ければ、その内容を見ることができます。私が大学院の頃からお世話になっている、五百旗頭真先生と1時間半も対話ができることは、とても幸せな時間であり、楽しい時間でした。

なんだか、楽しい仕事ばかりで、私が学ぶことが多い仕事ばかりですが、こういった仕事を通じて視野を広げて、知的な刺激を頂けることは、学者としてのもっとも幸せなことかも知れません。


hosoyayuichi at 02:12|Permalink

2017年02月18日

安全保障シンポジウムへの参加

3月7日に、下記のような安全保障シンポジウムに登壇致します。石破茂元防衛大臣に加えて、現職である杉山晋輔外務事務次官と黒江哲郎防衛事務次官が登壇するという、なかなか豪華なパネリストの末席に加えて頂きました。身の縮む思いです。

大変流動的な国際情勢の中での日本の安全保障政策の方向性にご関心がある方は、是非ウェブサイトからご参加の申し込みをして頂ければ幸いです。

http://anpo.netj.or.jp/content/symposium/2017_3/index.html

hosoyayuichi at 14:20|Permalink

2017年02月05日

【入ゼミ選考試験の結果について】

昨日は、政治学科での入ゼミ選考試験がありました。慶應義塾大学では、ゼミの比重が学生生活で比較的大きくなっているために、多くの方が多くの時間と労力を割いて、課題をこなして、提出して頂いております。

本年度も、多くの方に私のゼミを希望して頂き、大変骨の折れる課題を提出して頂きました。また昨日は、面接試験を行い、多くの方と面接をしまして、貴重なお話しをお聞かせ頂きました。

皆さんに出して頂いた課題での自己紹介文や志望動機では、率直かつ誠実にこれまでの歩みを綴って頂き、嬉しかったこと、苦しかったことなど、一人ひとり魅力的な文章で、その人生をふりかえって頂きました。非常におかしなことかもしれませんが、魅力的な文章に引き込まれ、感情移入をして、何度も読みながら目が潤んできました。私が想像しないような苦しく辛い経験をされた方、ご家族に不幸があった方、予期しない苦痛に直面した方、そしてそれらを乗り越えておおきな喜びや成功を手にした方など、一人ひとり異なる物語がございます。

全ての物語には価値があり、それらを優劣をつけることなどはできません。にもかかわらず、入ゼミ選考をして、半分以上の方にご希望に添えられぬ結果をお伝えするのは、何度も申し上げるとおり私にとっては最もつらい作業です。

価値のない物語や、入ゼミに値しない学生は一人もいません。皆さん価値のある物語を抱え、ゼミに参加して頂いてもきっときちんとまじめに勉強をして頂けると思います。単純に技術的な理由から、そして私の教育者としての能力の限界から、人数を半分以下にしなければならないつらさをご理解下さいませ。

今回の課題をこなして頂き、多くの方は何かを見つけて頂き、何かを感じて頂いたと思います。それらを得て、今後の学生生活がよりいっそう充実した、有意義なものとなりますよう願っております。あいにく今回は合格者リストに名前の含まれていなかった方々には、他の機会にまたお会いできますことを願っております。また、4月から私の研究会にご参加頂く方々は、これからの二年間で新しい物語を創って頂き、さらに楽しい思い出をご一緒につくっていけることを、楽しみにしております。

今回は、私の研究会にご応募頂き誠に有り難うございました。

hosoyayuichi at 13:36|Permalink

永遠の価値を持つ時評とは

高坂正堯先生の幻の名著が合本して復刊した『外交感覚 ー時代の終わりと長い始まり』(千倉書房)が、つい数日前に刊行しました。これは、少し前にも投稿でご紹介したように、新冷戦から冷戦後に至る激動の時代を、戦後最高の知識人ともいえる高坂正堯先生が新聞時評で綴った文章が三巻本になって中央公論社から刊行されてながらく絶版となっていたものを、千倉書房から復刊したものです。

この名著を、ツイッターとフェイスブックで多くのフォロアーを持つ中東研究者で友人の池内恵さんが、次のように魅力的な言葉でご紹介頂きました。

「飛行機にかついで持って行って寝ないで熟読した。中西寛先生の前書きはこれ以上簡潔にはなり得ない文章の書き方を示してくれる。そして細谷雄一先生の解説は「評伝の名作」なのでは。高坂正堯『外交感覚 ― 時代の終わりと長い始まり』」

さらには、フェイスブックでは、見事な洞察力で私が本書に寄せた解説の意味を解読、「解説」して下さり、それによって本書は一気にアマゾンで400番台の販売順位へと跳ね上がりました!嬉しい限りです。そして、あんまり嬉しかったので、池内さんのコメントに、次のように返信をさせて頂いています。

「天才的な時評家の池内さんに、本書の価値、そして私の拙い解説にお褒めの言葉を頂き、身の縮む思いです。また、「重層的なテキスト」という魅力的な言葉で、私の意図を見事にくんで頂き、嬉しく思います。さすがですね。何しろ、中西先生が早々と短く簡潔な解説をご提出しておられ、さらには復刊にして4500円という高価な価格がすでについてしまっていたことによって、それなりに長めの解説を書かなければ、という状況に追い込まれました。多くの方に復刊の書物を買って頂くためには、どうにか「付加価値」をつけなければ財布のひもが固いはず、と「黒子」の神谷さんにお伝えして、恐れ多くまたずうずうしくも、本来よりも長めの解説を書かせて頂けるようにお願いしました。問題は、私のおんぼろな頭脳でどうやって付加価値のある解説を書けるか。なにしろ、テキストは最良。あとは、冷戦終結という「時代の終わり」と、ポスト冷戦という「時代の終わり」の相似性を結びつけて、現代の複雑な国際情勢を理解するヒントを本書に求めるという仕掛けでした。それによって、時代を超えた、そして単なる冷戦終結論ではない、高坂先生の卓越した時評の価値を、伝えたいと思っていました。さすが、時代を超える時評の価値を常に意識して実践しておられる池内さんならではの、高坂先生の時評との「共鳴」ですよね。」

池内さん自ら、これまで色々な媒体で時評を寄せてきて、その時評は時代を超えて価値を持つ、中東政治の本質を洞察した文章です。だからこそ、高坂先生の時評の意義を見事に見抜いておられるのだろうと思います。

『書物の運命』という名著で、池内さん自ら、書物が読者によってその生命を保っていく意味を説いておられます。その意味では、池内さんのツイッタやーフェイスブックでの投稿が、高坂先生の『外交感覚』という名著に、さらなる生命を植え付けたようにも感じます。

どうぞ、今という激動の時代を理解するヒントを得るためにも、池内さんが「寝ないで読んだ」という本書を手にとって頂ければ幸いです。

hosoyayuichi at 03:08|Permalink

2017年01月22日

【入ゼミ課題を提出した皆さんへのメッセージ】

毎年この時期は、私にとってはかなり憂鬱な時期です。期末試験の採点が大変だから、という理由ではありません。入ゼミ選考があるからです。

もちろん、毎年驚くほどの潜在能力と可能性を秘めた優秀な学生の皆さんが、私のゼミに参加することを希望して下さることはとても嬉しいことです。問題は、毎年多くの方が入ゼミに応募して下さっているのにもかかわらず、半数近くに人数をしぼらなければならないことです。わずか10分ほどの面接時間では、20年を生きてきた個性溢れる学生の皆さんの本質を見ぬ事は困難です。ましては私のような、節穴の目では、なかなかその潜在能力を見抜けません。ごめんなさい。

毎年多くの優秀な学生の皆さんが、入ゼミ課題をがんばって提出して頂き、その熱意を語って頂きながら、ご希望に応えることができないことをとても申し訳なく感じてしまいます。その結果、私の生み出した奥の手が、通常の人であればとても読み通すのが困難な、難解な書物を課題図書にすることです。今年はこれまでで最も分厚く、最も高価で、最も難解とも思われる、ハリー・ヒンズリー『権力と平和の模索 ー国際関係史の理論と現実』(勁草書房)を課題図書として、5000字の書評を、課題の一つとして用意しました(他にも、二つ、5000字の課題があります)。定価6000円(+税)! 570ページ! ルソー、カント、ベンサム登場!

ということで、多くの方が途中で戦意を喪失して、挫折をしてあきらめるのではないか。その結果、大幅に応募者が減るのではないか。そのようになれば、1人当たりの面接時間がもう少し増やせますし、また多くの有望な学生の皆さんを面接で落とす必要がなくなるはずです。実際に、課題図書が難解で途中で挫折した人がいる、という情報も現役のゼミ生からいくつか聞いていました。ちょうど、1月20日が入ゼミ課題提出の期日。さてどうなるか。

そもそも、私のゼミはかなり勉強が大変なはずで、2年間で50冊ぐらいの政治学、国際政治史、ヨーロッパ史などの本を読み込んでおり、ゼミ生には毎週テキストを読んだコメントの文書を事前に提出するよう義務づけています。本来的にかなりまじめなゼミなはずなのですが、ゼミのホームページを見ると、ディズニーシーで春学期の打ち上げに行っているところや、ゼミ合宿で海水浴や花火大会に行ったところや、ハロウィーンパーティーで仮装しているところばかりで、なんだか遊びが多いような、楽しんでばかりいるような印象を与えてしまっているようです(広報戦略の失敗!)。その結果、最近は勉強熱心な人が私のゼミを避ける傾向があるみたいです、というよからぬ噂を耳にして、そのような誤解を解消するためにも今年の課題図書をかなり難しいものにしなければ、と決心しました。そしてその結果として、ヒンズレーの分厚い専門的な書物を課題図書にしたのです。

ところが、ふたを開けてみると、昨年よりも4名増で、倍率も二倍程度。今年もまた、大変な課題図書をこなして、熱心に入ゼミ課題に取り組み、ゼミに入りたいと情熱に溢れた学生の皆さんが課題を提出して頂きました。それにもかかわらず、その半分近く希望に添わない結果を伝えなければならなくなるのは、とてもつらいことです。

そもそもこうなったのにも、いくつか原因があると推察しています。よく、友人の大学教員の方々から、「細谷さんのフェイスブックを見ていると、写っているゼミ生の女性が綺麗な人ばかりですよね」と言われます。だとすれば、そのせいでよこしまな男子学生が、よからぬ期待を抱いてきっと多くゼミに応募しているのではないでしょうか。これは教員の私のせいではありません。また、ゼミ生の皆さんが、色々なイベントで楽しそうに交流している姿が、これまたSNSでよく画像が載っており、これまた私のせいではありません。

私はただ、まじめに、ゼミの授業をしているだけのつもりですので、その部分をよく見ている学生のかたは、しっかりと勉強したいということで私のゼミに応募してくれています。もちろん、ゼミ生の皆さんが勉強に加えて「遊び」を楽しむのは良いことですし、高坂正堯先生も、ゼミのテキストで読んでいる『古典外交の成熟と崩壊』の本の中で、会議をスムーズに進めるためにも「遊び」の重要性を指摘してます。

ともあれ、今年も比較的大勢の2年生の方々に、入ゼミ課題を提出して頂きました。例年以上に準備に時間がかかったはずですし、また難解な課題図書で途中で心がおれそうになったはずです。これだけの時間をかけて、これだけ多くの文章を書かなければならなかったわけですから、もしも希望に沿わない結果になったら、腹が立ったり失望しても当然だと思います。

毎年、申し上げていることですが、きちんと慶應義塾大学に授業料を払って、高い能力を持って大学進学を認められ(法学部の場合はとてつもなく高い偏差値で、また内部進学も相当成績がよくないと法学部にはこれないですよね)、さらには授業も真面目にでていて、そしてかなり面倒な課題をこなして提出して頂いた方は、全員私のゼミに入る資格がありますし、能力もあると思っています。それでも、いっていていどに人数を限らなければならないという事情をご理解下さいませ。

その際に、必ずしも成績が良い人を順番に選考しているわけでもなければ、国際政治や外交史の知識が豊富な人を上から順番に選んでいるわけではありません。折角ゼミに入って頂いても、相性が合わないと後悔をすることになったり、期待と全然違うと失望したりすれば、それはお互いに不幸です。もっとご自身に相応しいゼミがあるのであれば、そちらにご参加頂く方がきっと今後の2年間が充実するはずです。あるいは、毎年かなり優秀な方々にご参加頂いており、授業について行けないと不安を感じたり、あるいはテキストの内容が難解で理解できなかったりしたら、それこそ後で後悔する結果になってしまうかもしれません。ゼミに参加して頂いて、後で後悔することなく2年間ゼミを楽しんで頂けて、お互いにとって幸せな結果となることを目指して、選考をさせて頂いています。その点をどうぞご理解下さいませ。

もう一つ、毎年この時期に憂鬱になる理由は、学生の皆さんの入ゼミ課題の文章を読んでいて、怠惰で無知であった自らの大学時代と、応募して下さる学生の皆さんの能力の高さとを比較して、なんだかとても嫉妬を感じるからです。もしも大学時代に、あれぐらい私も高い能力を備えていたら、自分の人生ももっと充実していたのではないか、と感じることもあります。本当に最近の学生の皆さんは、専門分野でも、語学力でも、それまでの人生経験でも、色鮮やかで充実した人ばかりで、読んでいてなんだか自らの凡庸さを比較して、いやになってきます。

ともあれ、今年も多くの魅力的な学生の皆さんにご応募頂き、嬉しく思うと同時に、大変な課題をこなして頂き感謝しています。2月4日の入ゼミ面接のご案内は、ゼミのツイッターやホームページなどで適宜お知らせしますので、ご確認下さいませ。当日お目にかかれますこと、楽しみにしてます。



hosoyayuichi at 03:06|Permalink