September 17, 2012

ポール・キュブラー キンテット2009


HipHopやDrum&Bassから遡るようにしてJazzを聴きはじめた者にとって、Miles Davisというとどうしても「Bitches Brew」や「On The Corner」の、いわゆる革新的な音楽性とイコン化されたMiles Davis像に目が向くのは当然のことだと思う。しかしそこから過去の音源を聴いてゆくと、「あら?マイルスさんてばわりとまともなのね(今の耳で聴けばね)、ふつうっぽいストレートなJazzもいっぱい演ってたのね」と変に感心することがあるのは僕だけだろうか。
たとえば「Kind of Blue」なんて時代をひとつ押し進めたモードジャズの教典みたいな扱いだけど(実際そうだし大好きな作品です)、今聴くと至極真っ当な、普通にカッコいい五重奏=クインテット中心の演奏で、そういう期待をもって臨むともしかしたら肩透かしをくらうかもしれない。でもその本質の部分には、フレキシブルな音楽性を支える強固で揺らぐことのない自信と確信と自尊心があるわけで、そういうものは時代や場所がどれだけ変わろうと変わらないものであり、流れ去った年月から僕たちは知らずして「安心」というものを享受していたりする。思うに「安心」とは時間が創りだすクリエイティビティのひとつである、と考えるのは僕の妄想のひとつに過ぎないのだけど。

ポールキュブラー キンテット2009ポール・キュブラー
キンテット2009
ピノ・ブラン30% ピノ・ノワール 20%
シルヴァネール 20% リースリング 15%
ゲヴェルツトラミネール 15%
フランス・アルザス
輸入元:アズマコーポレーション



ポール・キュブラーさんの「キンテット」と名付けられたワインは、その名の通りクインテット=五種類の葡萄をまぜこぜしたおいしいワインだ。そのおいしさには誰もが感じ取ることのできる分かりやすさがあって、いわゆる自然派アルザス生産者のワインを好む方が飲めば、もしかしたら肩透かしをくらうかもしれない。
でもみんながアルバート・アイラーである必要はないし、誰もがオーネット・コールマンの文法を理解する必要もない。セシル・テイラーの音の洪水から比喩の原石を取り出すにはそれなりの経験が必要だ。そういう意味でこのワインはモード期のマイルスさんぽいかなと思ったりする。「Kind of Blue」に収められた“All Blues”を聴いていると、裏打ちされた伝統を感じながら、その普遍的でもある美しい演奏に浸ることができる。とても心地よいグルーヴだなと思う。それを安心と呼ぶかどうかはまだ決めかねるけどね。


Miles Davis / All Blues

amazogneレイクォン



Posted by hotelamazon at 20:27│Comments(0)TrackBack(0) 酒類総責任者 レイクォン | ワイン フランス

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