January 02, 2013

2013年ですよみなさん

あけましておめでとうございます。

2012年がおわり2013年がはじまりました。時間というものが常に一方向に流れつづけている以上、僕たちはそれに流されるしかなく、2012年と2013年の境目なんて概念でしかないのだとわかっちゃいるけど、そんな境目や過去を見つめては魅力あるものに改変していくことも、いってみれば僕たちには可能なわけで、僕の場合、たとえばそれは音楽であったりお酒であったり本であったりするわけで、なにがいいたいのかというと、あいかわらず飲んで食べて聴いて読んでの生活をしています/していきましょう。ということです。

ソルルケト甲州2012澤の花 干支ラベル

ジャン・フォイヤール ボジョレーヌーボー2012シュトレン三種盛り

ばらばらになっている時間をなんらかの法則で束ねたものが、きっと音楽であり、ワインをはじめとしたお酒であり、文学を中心とした本だと僕は思っています。生活する上でそれらが直接必要なものではなくとも、生活する上でそれらがもたらすあれこれは、過去や境目をその都度ほどいたり結びなおしたりしてくれるはずで、時間の流れに抵抗するわけじゃないけれど、こういう時間の扱いというか飛び越え方を知ると知らないでは、やっぱり生活の楽しさも違ってくるのではないかなあと、ぼんやりのんびり考えています。
未来が前方方向にあるのは当然で、でも僕は足元を見たり後ろを振り向いたり横道に入ったりするのが好きなので、やみくもに突っ走るよりも三歩進んで二歩下がるくらいの気持ちで2013年を過ごしていけたらと、なんだかよくわからない結論を持って生活していこうと思います。

そんなわけで2013年もよろしくどうぞ。


Psychedeism / Distantly

amazogneレイクォン

  
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December 23, 2012

シュトレンの日々

シュトレンは12月。ということは12月はシュトレンである。とうそぶいてみたところで12月もあと一週間。ということはシュトレンもあと一週間かというと、もちろんそんなことはなく、年越しシュトレンなる言葉が街に溢れては、回収される場所もなくただ溢れつづけている。それを回収するのが僕の役目だと誰かが言っていたから、まあそれでいいやとひとり回収をし続けている12月。
シュトレンとは、すなわち人生である!という崇高なる真理を、ドレスデン出身の劇作家シュトレニッヒ・シュトレニシュタインは、19世紀末の寒風吹き荒ぶ旅先のサンクトペテルブルクで、その視力とひきかえに看破したわけであるが、それからおよそ100年とちょっと、その大いなる遺産と金言に日本的な語尾変化を付け加えることができれば、と僕はひそかに胸を焦がしている。

麦雑穀工房のシュトレンベルクのシュトレン

稲村さんのシュトレン空色鍵盤さんのシュトレン

そんなわけで12月だクリスマスだシュトレン様だ。わーい。今年のシュトレンは小川町の麦雑穀工房マイクロブルワリーにはじまり、新宿のビアカフェ・ベルク、近所のパン屋さんの主・稲村さんのシュトレン、そして空色鍵盤さんのシュトレンで年を越す予定である。
あらすじは出来上がったので、あとはどう楽しむか。それだけ。朝シュトレンはきっと健康に良いだろうし、3時のおやつのシュトレンの安定感は抜群だし、深夜シュトレンはもはや至福ですらある。珈琲、紅茶、麦酒にウイスキー。ラム酒やカルヴァドスだっていい。可能性はシュトレン上部に降り積もった真っ白いパウダーシュガーのように僕の前に広がっている。それが染みこんだあとの景色とはいったいどんなものなのだろう。そう、人生とはすなわちシュトレンである。のだよ。

Mark Murphy / Stolen Moments

amazogneレイクォン

  
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September 17, 2012

ポール・キュブラー キンテット2009


HipHopやDrum&Bassから遡るようにしてJazzを聴きはじめた者にとって、Miles Davisというとどうしても「Bitches Brew」や「On The Corner」の、いわゆる革新的な音楽性とイコン化されたMiles Davis像に目が向くのは当然のことだと思う。しかしそこから過去の音源を聴いてゆくと、「あら?マイルスさんてばわりとまともなのね(今の耳で聴けばね)、ふつうっぽいストレートなJazzもいっぱい演ってたのね」と変に感心することがあるのは僕だけだろうか。
たとえば「Kind of Blue」なんて時代をひとつ押し進めたモードジャズの教典みたいな扱いだけど(実際そうだし大好きな作品です)、今聴くと至極真っ当な、普通にカッコいい五重奏=クインテット中心の演奏で、そういう期待をもって臨むともしかしたら肩透かしをくらうかもしれない。でもその本質の部分には、フレキシブルな音楽性を支える強固で揺らぐことのない自信と確信と自尊心があるわけで、そういうものは時代や場所がどれだけ変わろうと変わらないものであり、流れ去った年月から僕たちは知らずして「安心」というものを享受していたりする。思うに「安心」とは時間が創りだすクリエイティビティのひとつである、と考えるのは僕の妄想のひとつに過ぎないのだけど。

ポールキュブラー キンテット2009ポール・キュブラー
キンテット2009
ピノ・ブラン30% ピノ・ノワール 20%
シルヴァネール 20% リースリング 15%
ゲヴェルツトラミネール 15%
フランス・アルザス
輸入元:アズマコーポレーション



ポール・キュブラーさんの「キンテット」と名付けられたワインは、その名の通りクインテット=五種類の葡萄をまぜこぜしたおいしいワインだ。そのおいしさには誰もが感じ取ることのできる分かりやすさがあって、いわゆる自然派アルザス生産者のワインを好む方が飲めば、もしかしたら肩透かしをくらうかもしれない。
でもみんながアルバート・アイラーである必要はないし、誰もがオーネット・コールマンの文法を理解する必要もない。セシル・テイラーの音の洪水から比喩の原石を取り出すにはそれなりの経験が必要だ。そういう意味でこのワインはモード期のマイルスさんぽいかなと思ったりする。「Kind of Blue」に収められた“All Blues”を聴いていると、裏打ちされた伝統を感じながら、その普遍的でもある美しい演奏に浸ることができる。とても心地よいグルーヴだなと思う。それを安心と呼ぶかどうかはまだ決めかねるけどね。


Miles Davis / All Blues

amazogneレイクォン

  
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September 09, 2012

ジャン・マルク・ボワイヨ ロケ・ブラン2007


印象というのはなかなか厄介なやつで、それをあれやこれやと確定したがるのが僕たちなわけだけど、世の中には完全に静止しているものなどないわけで、だから耐えず流動するのが印象であるはずなのに、これはこういう印象だ!と一度決めたらなかなかそこから逃れられないのは、それが僕たちの弱さだからだろうか。いや。いつだって逃れることができるのに、いつまでもそこに留まろうとする弱さというべきか。まあ、それを弱さと呼ぶかある種の強さと呼ぶかは意見の分かれるところだけど。

録音された音楽を聴いていて少なからず違う印象を受けるのは、今まで聴こえなかった音が聴こえたり、聴こえていた音が聴こえなくなったり、見えなかったものが見えてきたり、見えていたものが見えなくなったりするからで、そこには戸惑いと興奮があり、その中から僕たちはなにかを掴み、あるいはなにかを離し、その印象は更新される。だけどそれにはそれなりの体力が必要で、そのことが僕たちを困惑させる。それはやはり、留まることの心地よさというものを知っているからなのだろう。

ジャンマルクボワイヨ ロケブラン2007ドメーヌ・レ・ロケ
(ジャン・マルク・ボワイヨ)
ブラン2007
ルーサンヌ95%
ヴィオニエ5%
フランス・ラングドック
輸入元:東京実業貿易



形状がある程度保たれている状態の音楽でこれなのだから、ワインの印象なんて変わらないほうがおかしいのだと思う。僕がこのワインに持っていた印象というか記憶は、白い花の香りがして、冷涼感があって、粉っぽさがアクセントになっていて、つまりはかなり好みの味わいで、ついでに言うと季節は春で、旅先のお気に入りのワインBARで、カウンターはゆるやかに弧を描いていて、マスターは相変わらずジェントルで、そしてとなりに綺麗な人がいた、とまあそんな感じのものである(笑)
だからこのままの状態で良い印象をパッケージングしといてもよかったのだけど、好奇心からついつい手を出して飲んでみたわけなのだ。そして、古い映画に出演していた女優さんの現在の姿を目にしたときのような、なんともいえないもののあわれを感じてしまったのだなあ。でもね、失われたものの代わりに得たものもあるんじゃないか、ともやっぱり思うわけなのだ。貫禄とか佇まいとか視線の持っていき方とか、そんな感じのなんたらかんたらをね。


mama milk! / Anice

amazogneレイクォン

  
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August 16, 2012

アニェス・パケ クレマン・ド・ブルゴーニュ


小春日和や洗濯日和に混じってクレマン日和があることはずいぶん前に書いた。そして、クレマン日和はカンガルー日和のように突然やってくるものであることもずいぶん前に書いた(たぶん)。そんなわけでクレマン日和は唐突にやってきた。夏の日の昼下がりに。ドアをノックもせずに。シュポン!と軽快な音とともに。
もちろんクレマン日和なのだからクレマン以外の泡ものは認められない。たとえそれが高名なシャンパーニュ伯爵夫人であっても、やんちゃでかわゆいペティヤン娘であっても、クレマン日和に彼女たちは一切合切お呼びでない。麦酒なんてもってのほかだ。そういうルールの下でクレマン日和は存在する。厳格過ぎるだろという意見もあるが、なんだかんだで世界というものはそういうものが複雑に絡み合って成り立っているのだから文句は言えない。ザワールドイズアンダーザコンスピレーションズユーノウ。

パケ クレマンドブルゴーニュアニェス・パケ
クレマン・ド・ブルゴーニュ
(2007+2008)
ピノノワール55% シャルドネ35%
ガメイ5% アリゴテ5%
フランス・ブルゴーニュ
輸入元:ヌーヴェルセレクション



さて今回はパケさんのクレマンである。ブルゴーニュの名の下に集まった葡萄は四種類。なんとガメイ&アリゴテまで入っている。端正な図形を思わせる演奏を得意とするピアノトリオが、そこにサンプリングや電子音というアクセントが介入することで新たなグルーヴを得ることがある。このクレマンにおいてガメイとアリゴテは、たとえばそんな役割を担っているように思える。
きめ細かい泡というよりは勢いのある泡で、円熟というよりは刺激で、円みというよりは鋭角のシャープネスで、そのお互いの特徴を高め合っているというか。そういう印象だ。時の経過とともに洒脱な雰囲気を纏いはじめるのもまたええじゃないか。これはクレマン日和に恥じることのないステキなクレマンと言えるんじゃないかな。うーんおいしかった!


United Future Organization / I Love My Baby,My Baby Loves Jazz (Remix)

amazogneレイクォン
  
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August 12, 2012

モレナ リフレクション2011


お暑うございます。さいたまはそれがこの土地の宿命であるかのように連日35℃オーバー、情緒も人情もない無慈悲でアンナチュラルな暑さにうんざりな日々。そんなときに現実逃避も兼ねて飲みたくなるのは、ヴィーニョヴェルデやランブルスコといったシンプル且つ目的意識のはっきりしているワインだということ、それをラストサマーに学んだことは記憶に新しい。だから今年もそうしましょう!とワイン屋さんへ駆け込むとそこには「夏期限定」のドイツワインが。見るからに爽やかそうな風体と「限定」の二文字。夏ですね。青空がそうさせる。It's myself!(kj)

モレナ リフレクション2011リヴァーナーモレナ
リフレクション2011
リヴァーナー
(ミュラートゥルガウ)
ドイツ・ナーエ
輸入元:ヘレンベルガーホーフ




リヴァーナーakaミュラートゥルガウというとドイツよりも道産ワインの地品種葡萄みたいなイメージの今日このごろ。妙に親しみがわいてくる。若干イージーなワインが多い気もするけれど、イージーにしているのは葡萄ではなくてきとうな生産者のはずだ。それにイージーにしちゃいけないところをきちんとすれば、夏の日に最適なさわやかワインになるのだなと、いくつかの優れた道産ワインを飲んだときと同じ種類の感覚を僕はこのワインに感じる。
この葡萄で造られたワインでおいしいな!おいしいな!と思う条件は仄かな甘みを残すことだと断言したいくらい絶妙な甘味と酸味の共演は、飲む人がイージーじゃなければきっとどこかに引っ掛かるはず。それがこの暑さの中でもね。いや。この暑さの中だからこそ、ですね。


Jazzanova / Tres Bien

amazogneレイクォン

  
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July 29, 2012

最近のこと


暑さと辛さが弱点である僕にとって夏といふものは、いわばその観念性を楽しむものでありまして、エアコンの冷風が吹き抜ける部屋でイマージュとしての夏だったりオマージュとしての夏だったりへの妄想を膨らますのがいつもの過ごし方なわけですが、この七月は珍しく野外活動を実行したひと月となりまして。

まずは中目黒のhyggeでまりさんとななさんの作品展。陽炎揺れる暑さを避けて頃よい夕間暮れの時間にお伺いしたわけだけど、今回のテーマが「水のそこ、ボトルのなか」ということで、クールなイラストとひんやりした陶器で涼しさ倍増いとおかし。うん。これはステキな作品展でした。そしてオーナーさん自家製のおいしいおいしい珈琲豆もたっぷりげっと。ただいま絶賛浮気中なのでブレリアビーンズのマスターにはバレないようにしないと。


水のそこ、ボトルのなか2水のそこ、ボトルのなか3

水のそこ、ボトルのなか4水のそこ、ボトルのなか1


翌週は「富ヶ谷ロックフェスティバル」へ。これは富ヶ谷にある日本ワインBAR「さんさん」の一周年記念イベントで、真っ昼間からワインをぐびぐびっと。とくに申し合わせたわけでもないのゆるりとみなさん集まったりして、ロックフェスなのにこれまたなぜかゆるゆるな音楽とで富ヶ谷の路地裏が巴里のように。こちらもとても楽しかった。マルサン葡萄酒の若尾さんにもお会いできたし「甲州・百2011」がもうホントに最高の出来だったし、こっちも早いとこげっとしないと。


富ヶ谷ロックフェスティバル1富ヶ谷ロックフェスティバル2

富ヶ谷ロックフェスティバル3富ヶ谷ロックフェスティバル4


そのほかにも浦和にできたイタリアンバールで「いかにしてエレガンテにヴィノをベーレするかについて」フィジカルな考察を重ねたり、師匠のお店の六周年会合ではヘパリーゼの謀反を起因とするディープでミニマルでアンダーグラウンドな二日酔いグルーヴにやられたりと、あいかわらずお酒のことばっかりであれなんだけど、なんだかんだであっという間のひと月でした。暑さが本気を出す八月はどうなるかわかりませんけど、とにかくお会いできた方々に感謝です。そしてお誘いくださったのにお伺いできなかった方々にゴメンなさい。

それとお話には関係ないけどこの夏はBill LaswellのキューバDUBものにどっぷりハマっております。熱いパーカッションとチャントの残響がだぶだぶに捻じ曲げられた音響空間に、脳内は海流のなかの島々へトリッピンアウト!エルクバーノアネホブランコ!カストリカストロフエゴドミンゴ!てな感じでまた次回。


Bill Laswell / La Mujer de Antonio ( Original〜Soundcheck Dub )

amazogneレイクォン

  
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July 23, 2012

ルミエール 甲州シュールリー2011


ルミエールの甲州は「三歩進んで二歩下がる」というのが僕の印象である。毎年飲んでいるけれど、その味わいは年を追うごとに力の抜けた自然なおいしさになっていくなあと感じる。ここで言う自然とは、ビオディナミやビオロジックという栽培/醸造の思想としての自然ではなく、ひとつの飲み物=ワインとしての自然さのこと。とはいえルミエールのワインはしっかり自然派ワインなわけだけど。

ルミエール 甲州シュールリー2011ルミエール
甲州シュールリー2011
甲州100%
山梨県笛吹市一宮
1365円





ところで、三歩進んで二歩下がるということは、結果的に一歩進むというわけで、でもそれはふつうのステップで一歩進むこととは当然ながら違うわけで、つまりは次へ進むのに五歩を要しているわけで、そのステップは華麗でもなければ優雅なわけでもないけれど、それは裏方的屋台骨思考というか、たとえばポアンカレ予想が決してポアンカレだけの予想ではないんだぜってことと同じ種類のものを、僕はその一歩のような五歩に感じたりする。
三歩進んで二歩下がるときに踏み固められた大地は、きっと自然なワインのおいしさへとつながっていく選択や判断や遊びの部分の思考をあれやこれや拡げているのだなと、これはポアンカレでなくても予想できるわけで、やみくもに邁進するだけが最先端のおいしさではないのだという当たり前のことを、ルミエールのワインを飲みながら、そしておいしさにふわふわしながらも、その踏み固められた大地の強さを僕は確認する。


Primal Scream / Rebel Dub

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July 04, 2012

ハンキー・ドリー タングル2011


33と3/1という数字はなかなかよいもので、どこか奥ゆかしい香りがするのは、きっとレコードの回転数がそうだからで、たとえば表記を変えてみると33.33333〜と果てることのない果てに向かって数字を重ね続ける姿に、今度はどこか哲学めいた味がする。それにさ、文殊の知恵だってマジックナンバーだってキーとなるのは3なわけで、というのはただのこじつけで、そんなわけで以下はもっとこじつけになりますあしからず。

ハンキードリー タングル2011ハンキー・ドリー
タングル2011
リースリング ピノグリ
ゲヴュルツトラミネール
ニュージーランド・マールボロー
輸入元:サザンクロス





リースリング、ピノグリ、ゲヴュルツトラミネールを33と3/1%づつブレンドしたワインであります。ときは2011年。ところはニュージーランド。その香り味わい華やかなることアルザスのごとし。でもやっぱりどこか違う。アルザスの同じブレンドだともっとこう迂遠したり腕曲したり右折するのに左折を三回したりの印象だけど、ニュージーランドはストレートな直訳っぽいというか、含みや膨らみを削いだミニマルでビビッドなリアリズムというか。
たとえばこう。サリンジャーの『The Catcher In The Rye』を野崎孝さんは「ライ麦畑で捕まえて」と訳し、村上春樹さんはカタカナで「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 とした。野崎訳は原題から連想する浪漫や雰囲気を引き出して、村上訳は原題が持っているクールネスをより際立たせる。いってみればそんな違い。どっちが良い悪いじゃなく、どっちがあなたの思考に合うかという話。どっちも合うなら言うことなし。


Arto Lindsay / Complicity

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June 24, 2012

山梨ワイン ソルルケト甲州2011


どこそこの畑のなんたらという銘醸ワインを飲みたい!みたいな欲望が減退したなあと実感するようになったのは30歳を過ぎたあたりからだったろうか。そうかといってただの安ワインで良いわけでもなく、いわゆる造り手さんとの距離が近いワインが最高だぜ!というのともやっぱり違くて、けっきょくは自分の嗜好/思考に寄り添うというか、寄り添っていることすら気がつかない寄り添い方をしてくれるワインが一番なんだよな、と言ってみたところで強固なシンパシーも壮大なシンフォニーも得られるわけじゃないことは分かっているつもりだ。でもこれからもきっと、こんな飲み方ばかりなんだろうなということだけは、そりゃまあ自分のことだけに、林檎を見るより明らかだ。

様々なワインの様々な印象をアーカイブできている人を僕は尊敬するし、せっせとワイン畑へお手伝いに向かう飲み手さんには本当に頭が上がらない。知識。経験。そしてつながり。グラスの中から畑と人へ。すばらしいと思う。それぞれがそれぞれの方法で、ワインが裡に持っているワンダーランドの思想地図を丁寧に描きおこしている。別々の方法で描かれたそれらを重ね合わせたなら、どれだけステキなものが見えてくるのだろう。そして、そこに僕の妄想まがいの思想地図を重ね合わせる許可を得ることはできるのだろうか。

山梨ワイン ソルルケト甲州2011山梨ワイン
ソルルケト甲州2011
甲州100%
山梨県甲州市勝沼
1290円





ソルルケトを飲むといつも、僕の内側からいろんな感情がぼこぼこと湧き上がってくる。ワインのことはもちろんだけど、海のこととか、太陽のこととか、電子音の響き方のこととか、オシャレな装丁の本を手渡すときのこととか、銀糸で刺繍されたシャツのアルファベットのフォントがキュートなこととか、教えてもらったトマトソースのレシピの5番目と6番目の手順をこっそり入れ替えることとか、寒さで震えていた左手をマグカップに添えたときに伝わる温かさとざらりとした肌ざわりのこととか、世界が78回転から45回転を経て33と3/1回転になり今は回転すらしていないこととか、でもやっぱりデータだけじゃしっくりこなくてロマンチックな何かをどこかへ向けて投射したりすることとか。

ソルルケトはいつもおいしくて、寄り添っていることすら気がつかない寄り添い方をしてくれて、だから僕はこんな飲み方ばかりしている。33と3/1回転で音楽を流しながら、33回目の夏至の夜に。


宮内優里 + 星野源 / 読書

amazogneレイクォン
  
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