資格者代理人の登記申請に係る補正について現場復帰について

2016年06月27日

募集株式の発行(取締役会非設置・第三者割当)に係る条件付決議の記載について

Q 取締役会非設置の株式会社です。この度、第三者割当増資を行いました。
  株主総会の1号議案で募集事項の決定を行い、2号議案で割当の決議を行いましたが、法務局から「2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件として割り当てる。」との記載がないので、補正してください。」という電話がありました。
 その記載がないと補正対象になるのでしょうか?

A 補正対象になります。

信頼性の高い文献(会社法施行後における商業登記実務の諸問題・法務省民事局商事課商業法人登記第一係長・矢部博志)にも次のような記載があります。

>募集株式の発行については、
>①会社は募集株式の募集事項を決定し、
>②募集株式の引受けの申込みをしようとする者は会社に対し申込みを行い、
>③会社は申込者及び同人に割り当てる株式を決定し、
>④割当てを受けた申込者は引受人として出資の履行をするという時系列に沿って行われる。
>募集株式の発行による変更の登記を申請する際には、上記の手続が適式に行われたことを
>担保するために、①及び③については当該決定を決議した機関の議事録を(商登法第46条
>第2項。ただし、③は譲渡制限株式の募集の場合に限る。)、②については申込みを証する
>書面を(商登法第56条第1号)、④については払込みを証する書面を(商登法第56条第2号)
>それぞれ添付しなければならない。
>このうち、①及び③の決定に関し、少数の株主に対する割当てによって募集株式を発行する
>場合において、申込者と引受人が手続開始時において確定しているようなときは、①の募集
>事項を決定する際に、既に判明している申込人による申込みがあったことを条件として当該
>申込人に対して株式を割り当てるとの条件付きの決議をすることで、③の決議を別途行うこと
>を省くことが可能と解される。登記官には当該条件が明示された議事録と②の申込みを証する
>書面によって条件が成就し、割当ての効果が発生していることが客観的に明らかであること
>による。

記事は、民事月報に掲載されているものですが、同じ記事が月刊登記情報にも掲載されているようですね。

東京法務局の審査用資料にも同様の記載があり、東京法務局も同様の見解にたっていることが確認できます。

法務省HP(1-15 記載例A(PDF)【H25.3.1更新】)にも、次のように記載されていますが、

>(注)発行する募集株式を割り当てるべき第三者が既に存在する場合には,当該第三者
>からの申込みがされることを条件として,募集事項を決議した同一の株主総会で,割当てに
>係る事項を決議することができます。

これは、前述の見解を踏まえ、現在の法務省(民事局商事課)も、当該第三者からの申込みがされることを条件とした場合に限り,募集事項を決定したのと同一の株主総会で,割当てに係る事項を決議することができるという見解に立っていることを、対外的に示しているものだと考えています。

設例の場合、2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件とする。」と記載されていないと、法務局の調査担当者は、添付書面から条件付で決議がされたこと確認することができません。

よって、2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件として割り当てる。」との記載がないと、補正対象になります。

「同様の事案で、補正にならなかった」というケースも多々あると思いますが、法務局は短期間で頻繁に人事異動がなされ、職員の専門性が低くなっており、また、東京法務局以外の法務局・地方法務局は商業法人登記の集中化に伴い、商業法人登記に詳しい職員がどんどん少なくなっています。
よって、補正にならなかったのは、単に調査担当者・校合担当者が勉強不足で補正対象とすべき事案であることに気付かなかったということだと思います。

会社法施行時から商業法人登記に従事している職員は、普通に補正にしている事案です(調査担当者によっては、補正にしなくてもよいのではと思う人もあるかもしれませんが、審査用資料にも記載されている事案であり、当然、補正にすべきものです。)。

【追記】
矢部さんの記事を引用するまでもなく、商業登記ハンドブックにも同様の記載がありますね。
第3版だと、287ページに「この場合には、割当先等の決定を、その者から株式の申込みがされることを条件として行うこととなる。」に記載されています。


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