よくある質問
2019年10月15日
登記相談について
Q 私は、ある建物を所有していますが、この度、Bさんに売却することにしました。
法務局のホームページを見たところ、所有権移転の登記申請書の見本が掲示されていたので、ダウンロードしました。
売買契約書を作成するのは初めてなので、ダウンロードした見本を法務局に持って行って、登記相談を受けながら、相談コーナーで売買契約書を作成したいと思っていますが、予約して行ったらいいですか?
A 「登記相談」は、事前予約制で受け付けていますが、売買契約書の作成方法の相談は、「売買契約書の作成支援」に当たると考えられ、「登記相談」に該当しないので、相談を受けることができません。
法務局は、受付をした登記申請書を審査し、登録し、公証する機関です。
審査機関である法務局が、審査対象となる申請書の添付書類である売買契約書の作成支援を行うことはできません。
法務局の職員や登記相談員が、個別具体的な内容についての相談を受け、契約書に記載すべき内容を具体的に教示する行為については, 司法書士法第3条第1項第5号に該当する可能性もあります。
売買契約書の作成方法について、相談を受けている公的機関はないと考えられますので、資格者代理人に依頼しないのであれば、市販図書を購入するか、インターネットで検索するなどして、自力で調べる必要があります。
2016年06月27日
募集株式の発行(取締役会非設置・第三者割当)に係る条件付決議の記載について
株主総会の1号議案で募集事項の決定を行い、2号議案で割当の決議を行いましたが、法務局から「2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件として割り当てる。」との記載がないので、補正してください。」という電話がありました。
その記載がないと補正対象になるのでしょうか?
A 補正対象になります。
信頼性の高い文献(会社法施行後における商業登記実務の諸問題・法務省民事局商事課商業法人登記第一係長・矢部博志)にも次のような記載があります。
>募集株式の発行については、
>①会社は募集株式の募集事項を決定し、
>②募集株式の引受けの申込みをしようとする者は会社に対し申込みを行い、
>③会社は申込者及び同人に割り当てる株式を決定し、
>④割当てを受けた申込者は引受人として出資の履行をするという時系列に沿って行われる。
>募集株式の発行による変更の登記を申請する際には、上記の手続が適式に行われたことを
>担保するために、①及び③については当該決定を決議した機関の議事録を(商登法第46条
>第2項。ただし、③は譲渡制限株式の募集の場合に限る。)、②については申込みを証する
>書面を(商登法第56条第1号)、④については払込みを証する書面を(商登法第56条第2号)
>それぞれ添付しなければならない。
>このうち、①及び③の決定に関し、少数の株主に対する割当てによって募集株式を発行する
>場合において、申込者と引受人が手続開始時において確定しているようなときは、①の募集
>事項を決定する際に、既に判明している申込人による申込みがあったことを条件として当該
>申込人に対して株式を割り当てるとの条件付きの決議をすることで、③の決議を別途行うこと
>を省くことが可能と解される。登記官には当該条件が明示された議事録と②の申込みを証する
>書面によって条件が成就し、割当ての効果が発生していることが客観的に明らかであること
>による。
記事は、民事月報に掲載されているものですが、同じ記事が月刊登記情報にも掲載されているようですね。
東京法務局の審査用資料にも同様の記載があり、東京法務局も同様の見解にたっていることが確認できます。
法務省HP(1-15 記載例A(PDF)【H25.3.1更新】)にも、次のように記載されていますが、
>(注)発行する募集株式を割り当てるべき第三者が既に存在する場合には,当該第三者
>からの申込みがされることを条件として,募集事項を決議した同一の株主総会で,割当てに
>係る事項を決議することができます。
これは、前述の見解を踏まえ、現在の法務省(民事局商事課)も、当該第三者からの申込みがされることを条件とした場合に限り,募集事項を決定したのと同一の株主総会で,割当てに係る事項を決議することができるという見解に立っていることを、対外的に示しているものだと考えています。
設例の場合、2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件とする。」と記載されていないと、法務局の調査担当者は、添付書面から条件付で決議がされたこと確認することができません。
よって、2号議案に「上記第三者から申込みがされることを条件として割り当てる。」との記載がないと、補正対象になります。
「同様の事案で、補正にならなかった」というケースも多々あると思いますが、法務局は短期間で頻繁に人事異動がなされ、職員の専門性が低くなっており、また、東京法務局以外の法務局・地方法務局は商業法人登記の集中化に伴い、商業法人登記に詳しい職員がどんどん少なくなっています。
よって、補正にならなかったのは、単に調査担当者・校合担当者が勉強不足で補正対象とすべき事案であることに気付かなかったということだと思います。
会社法施行時から商業法人登記に従事している職員は、普通に補正にしている事案です(調査担当者によっては、補正にしなくてもよいのではと思う人もあるかもしれませんが、審査用資料にも記載されている事案であり、当然、補正にすべきものです。)。
【追記】
矢部さんの記事を引用するまでもなく、商業登記ハンドブックにも同様の記載がありますね。
第3版だと、287ページに「この場合には、割当先等の決定を、その者から株式の申込みがされることを条件として行うこととなる。」に記載されています。
2016年06月02日
本人確認証明書について
2年前に同様の登記を申請した際は、そのような指摘はされなかったのですが、制度が変わったのですか。
A 平成27年2月27日から制度が変わっています。
Googleで、「登記 本人確認」で検索すると、法務省のホームページの該当ページがヒットしますので、確認してみてください。
【参考】
・ 株式会社、特例有限会社のほか、一般社団法人・公益社団法人・一般財団法人・公益財団法人、投資法人又は特定目的会社について適用があります。持分会社(合名・合資・合同会社)、その他の法人については、適用がありません。
・ 本人確認証明書として「健康保険被保険者証」は使用できません(住所の記載がないため)。
・ 原本証明は、就任する役員本人がする必要があります。
・ 再任の場合は添付不要ですが、資格が変更になる場合(取締役が監査役になる場合など)は添付が必要です。
・ 印鑑証明書を添付することとなる場合(例えば、取締役会非設置会社の取締役就任など)、別途、本人確認証明書の添付は不要です。
2016年06月01日
監査役の監査の範囲の登記について
どのような会社が「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記申請義務があるのですか。
A 会社法施行(平成18年5月1日)前から存在している、株式譲渡制限のある、資本金1億円以下の会社は、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているとみなされているので、平成27年5月1日以降、初めて監査役の変更登記を申請する際、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記申請をする義務があります。この時にこの登記をしておかないと、この時点から登記懈怠が発生します。
【参考】
・添付書類として、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面(法務局HP参照)」が必要となります。なお、この書面を添付して登記申請できるのは、平成18年5月1日の時点で株式会社(非公開会社・株式譲渡制限あり)として存在していた会社に限られ、それ以外の会社(具体的には、平成18年5月2日以降に設立した会社、当時、有限会社だった会社、当時、公開会社(株式譲渡制限なし)だったが、今は非公開会社になった会社)については、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の記載のある定款又は「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の定款変更の決議をした株主総会議事録を添付する必要があります。
・登録免許税は、役員変更と同じ課税区分となります。
・取締役の変更の登記申請の際、併せてこの登記を申請することもできます。
・申請しなければならないのは、1回だけで、平成27年5月1日以降、監査役の変更の登記申請の都度、毎回登記申請する必要はありません。
・公開会社は、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記を申請することができません。
・定款に取締役の責任免除(会社法426条)の規定のある会社は、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記を申請することができません。
・特例有限会社は、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているとみなされていますが、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」の登記を申請することができません。
2015年11月05日
法人の役員変更の登記原因が「重任」にならない場合について
Q 理事につき、「平成25年10月31日重任」と登記されている社会福祉法人です。
今まで、10月31日から10月30日までの2年間を任期として役員の改選を行ってきました。
この度、平成27年10月31日に理事を選任するための評議員会を開催し、同日付で理事の互選により理事長を選定しました。なお、理事及び理事長は、すべて従来と同じメンバーの再任で、即日就任承諾しています。
法務局に理事の変更の登記申請を行い、登記すべき事項に「平成27年10月31日重任」と記載したところ、「平成27年10月30日退任、平成27年10月31日就任」と補正するよう指示されました。
重任で登記したかったのですが、重任で登記することはできないのですか。
A できません。「重任」は、退任時と就任時に時間的な切れ目のない場合に限りすることができます。
本件の場合、前任理事の任期は、平成27年10月30日の24時に満了するところ、後任理事を選任する評議員会が、10月31日の日中に開催されている(午前零時開催ではない)ことから、時間的な切れ目が発生することとなり、「重任」には該当しないこととなります。
「重任」にしたいのであれば、理事の選任を行う評議員会は、理事としての任期が満了する10月30日の24時までに開催(予選)する必要があったのですが、評議員会を開催した日を今から変えることはできないので、設問の場合、「重任」の登記をすることは不可能ということになります。
なお、設問の場合、「今まで、10月31日から10月30日までの2年間を任期として役員の改選を行っています。」とありますが、今回就任した理事は、日中に就任(初日不算入)していることから、任期は、平成27年10月31日から平成29年10月31日の24時までとなり、次回から、理事を予選して重任した場合は、11月1日から10月31日までの2年間を任期として改選していくこととなります。