the ghost of orion my dying bride
MY DYING BRIDE / The Ghost Of Orion (2020)

1. Your Broken Shore
2. To Outlive The Gods
3. Tired Of Tears
4. The Solace
5. The Long Black Land
6. The Ghost Of Orion
7. The Old Earth
8. Your Woven Shore

MY DYING BRIDEの5年振り、通算13枚目のアルバム。
Nuclear Blastからのリリース。

UK出身のドゥーム/ゴシックメタルバンドです。
前作リリース後、15年振りにバンドへの復帰を果たしたオリジナルメンバーのCalvin Robertshaw(Gt)が再脱退。バンドは新たにNeil Blanchett(Gt)なる人物を加えています。また空席だったDsには元PARADISE LOSTのJeff Singer(Ds)が加入しています。
長年在籍していたPeacevilleを離れて大手Nuclear Blastへの移籍を決めたことでPARADISE LOSTともレーベルメイトになったこのMDBですが、どちらも既に30年以上の活動歴を誇る大ベテランなのに未だコンスタントにニューアルバムをリリースし、そのクオリティの高さも維持しているという驚異的な存在だと思います。
で、本作の話。
MDBは作風的なブレがあまりないことでもお馴染みの通り、本作もその例に漏れず過去作を踏襲したドゥーム/ゴシックメタルをやっています。
ただこの言い方が正しいかは微妙なんですけど、本作はいつもよりだいぶコマーシャルです。
もの悲しく丁寧に紡がれるギターメロディや間奏などで響くツインギターハーモニー、美しいヴァイオリンなど、弦楽器隊によるメロウなプレイが多く聴かれるため、ドゥーミーな暗黒性よりも耽美な儚さのほうが強く感じられる作風です。ヴァイオリンの登場頻度やフィーチャー度が前2作より多めであり、個人的には『For Lies I Sire』をもっとメジャーに近づけたかのような雰囲気を感じました。
Aaron Stainthorpe(Vo)の虚ろなクリーンVoにしてもポップとまでは言わないまでも幾分歌メロが掴みやすいというかテンポの良さを感じます。
レーベルの移籍が関係しているのかどうかは分かりませんけど、間違いなく聴きやすくなっています。

悲哀のリードをゆっくりと響かせる中にヴァイオリンを絡めて美しさを付加しているイントロの後、儚く消え失せそうな演奏に空虚に浮かぶクリーンVoが混じるヴァースからヘヴィネスをグンと上げたデス/ドゥームなコーラスで禍々しいグロウルを轟かせる#1。ねっとりと沈んでいく叙情ツインギターとヴァイオリンのコンビネーションが素晴らしいアルバムを代表する佳曲。
続く#2はのっけからツインギターとヴァイオリンがタメを効かせて絡み合って始まるゴシックメタルナンバー。カドのない丸みを帯びたドゥームリフをズゥゥゥゥウンと打ち鳴らす重苦しい展開の中にヴァイオリンや熱を帯びたクリーンVoが主張するサウンドが沁みる。
郷愁を誘うヴァイオリンの音色に悲痛さを滲ませるクリーンVoが加わって、重たくスローな演奏が音の厚みを補完する#3。
#4は牧歌的に朗々と響くギターと民族臭のする女性ファルセットが絡むメタル色ゼロの曲。
#5はよりテンポを落とした演奏に現実逃避しているかのようにのっぺりしたクリーンVoが絡むドゥームパートと尖った刻みや禍々しいグロウルを配したデス/ドゥームパートを繋ぎ融合させていく曲。光の見えない息苦しさがいつものMDBらしい。
#6はアコギとウィスパーVoによるインタールード的な曲。
10分半超えの#7はアコギで始まり、フューネラルドゥーム2歩手前くらいにタメたダウナーな演奏に鬱々としたクリーンVoとしゃがれたグロウルのツインVoを乗せたドゥーム/ゴシックメタルナンバー。
#8は聖歌隊系の神聖な女性コーラスによるアウトロ。

頭3曲は素晴らしいんですけど、後半がいつにもなく失速しますね。
でもこのバンドをまだ聴いたことがないという人には本作とてもオススメです。

評価:★★★★