one foot in the grave tankard
TANKARD / One Foot In The Grave (2017)

1. Pay To Pray
2. Arena Of The True Lies
3. Don't Bullshit Us!
4. One Foot In The Grave
5. Syrian Nightmare
6. Northern Crown (Lament Of The Undead King)
7. Lock 'Em Up
8. The Evil That Men Display
9. Secret Order 1516
10. Sole Grinder

TANKARDの3年振り、通算17枚目のアルバム。
Nuclear Blastからのリリース。

ドイツ出身のスラッシュメタルバンドです。
大阪で行われたTRUE THRASH FEST 18にて久々の来日を果たしました。私事ですが、これでアメリカとドイツ双方のBIG 4のライヴを観ることが出来ました。いえーい。
さてさてこのTANKARDとかいう酔っ払い集団。前に紹介した時も言ったのですが、ホームラン級の傑作を出すことはないものの、絶対に外さずに良いアルバムを出してくるスラッシュメタル界の安打製造機的なバンドであります。
サウンドは三羽烏と呼ばれるジャーマンスラッシュの代表格3つに比べると幾分も緩くてファニー。ほら、KREATORもSODOMもDESTRUCTIONも殺気立っててこえーじゃん?でもTANKARDには怖さなんて全然なくて親しみやすい。欧州的な湿り気や暗さを見せることはあってもクロスオーヴァースラッシュやパンクに通ずる陽性のメロディやパワー/正統派メタル的なギターハーモニーなどをたっぷり加えてどんな時も明るさは決して失わないポジティヴなスラッシュです。スラッシュ界のWANIMAです。WANIMAとかwww
んで、今作の話。
作風的にはあまり変わってないですね。
前作や前々作あたりが気に入ってるのであれば買いです。
ただ今回はいつもより疾走感が控え目になっていて、ストレートにスラッシュしている曲が少なめ。欧州系の湿っぽいパワー/正統派メタルやメロデス、オカルト系メタルなど、スラッシュ以外の要素が強まっている感があります。が、TANKARD特有の楽しい雰囲気は変わってないですし、「陰」と「陽」のメリハリが効いてこれはこれで良いものだ。
Gerre(Vo)のファニーな歌い回しと不器用なメロディの追い方がこのバンド最大の個性であることは疑いようもないけれど、バンドに加入して20年になろうとしているAndy Gutjahr(Gt)による爽快な刻みとエピックなメロディを共存させたリフワークが地味に素晴らしい。スラッシュに色んな要素を持ち込むと散漫になってイマイチになってしまうところを上手くスラッシュの形で整えているのはAndyのリフセンスの良さ故だと思います。

湿っぽい悲哀のイントロからザクザクとストイックな刻みでゆとりのある疾走をする#1。コーラスはファニーなメロディ要素を強めて小躍りするような展開でとっても楽しい。
#2はバスドラ連打のアップテンポに叙情性のある細やかな刻みを加えて突き進む曲。速くはないんだけどパンクとヘヴィメタルがしっかりと手を組んだ良曲。
#3はツーバス疾走とシリアスなリフによるヴァースからクロスオーヴァー風の明るいブリッジ 〜 スピードメタル風のコーラスへと展開するスラッシュナンバー。
霧掛かった墓地を想起させる陰気なイントロ 〜 メロい刻みで突貫し、ブリッジで妖しくステップを踏んだ後にコーラスは分かりやすくタイトルをコールして躍動感たっぷりに盛り上がる#4。
#5はヘヴィメタルらしくギャロップするリフが酒灼けしたダミ声と絡むミドルテンポの曲。雄々しいメロディ使いに北欧っぽさを感じたり。
ドゥームっぽく重々しいイントロで始まり、角張ったリフとバスドラのユニゾンパートや軽やかな疾走を経てB級メロデス感のある叙情トレモロを配したコーラスで締める#6。
#7はパンク感強めでアップテンポに跳ねていくスラッシュナンバー。
#8はパンク気質なアティチュードで煽っていくリフとVoで楽しく疾走するスラッシュナンバー。
#9は荘厳なシンフォとクワイアで幕を開け、厳かな雰囲気はほんのり残しつつ軽快に疾走してどんどん加速していくスラッシュナンバー。
ラストの#10は燻んだメロディを含みながらもザクザクとクランチーに疾走するスラッシュナンバー。

スラッシュとしての勢いはどうしても落ちてしまっているんだけど、メロディックでパンキッシュなTANKARDにしか作り得ない老獪なサウンドであることは確かです。
もっと日本でウケてもいいはずなんだよな。

評価:★★★☆