BLACK CROWN INITIATE / Violent Portraits Of Doomed Escape (2020)
1. Invitation
2. Son Of War
3. Trauma Bonds
4. Years In Frigid Light
5. Bellow
6. Death Comes In Reverse
7. Sun Of War
8. Holy Silence
9. He Is The Path
BLACK CROWN INITIATEの4年振り、通算3枚目のアルバム。
Century Media Recordsからのリリース。
US出身のプログレッシヴデスメタルバンドです。
前作リリース後、Jesse Beahler(Ds)がTHY ART IS MURDERに引き抜かれる形で脱退。新たに元GORODのSamuel Santiago(Ds)が加入するも本作制作前に脱退。結局、正式なDsは不在のままTHE KENNEDY VEILのGabe Seeber(Ds)をヘルプに迎えて本作を制作しています。
このブログでは1stからずっと紹介し続けているバンドです。
メタルコア/デスコアやDjent、テクニカルデスなどのモダンでコア寄りなエクストリームメタル要素をプログレメタルとクロスオーヴァーさせたサウンドは1stの段階から既に完成度が高く、続く2ndではプログレメタル要素の増加に伴って曲展開に面白みが増して更なるステップアップを感じさせました。
で、本作の話。
eOne MusicからCentury Mediaへ移籍してからの第一弾となるわけですが、これがメチャクチャ良いです。
そこそこ期待はしていたけども、まさかここまで成長しているとは思ってなくて嬉しい驚きでした。
作風としては前作のプログレデス路線をさらに推し進めています。
グロウルとクリーンVoの使い分けや「静」と「動」を行き来する楽曲など、大きく変わった点はありません。
が、楽曲の聴かせ方は圧倒的に上手くなっているように感じます。
前作までは"完成度は高いのに地味"っていう、どうしてもマニア好みなサウンドだったんですが、本作ではその地味さをしっかりと払拭出来ていて、言い方は適切ではないかもしれないけどプログレデスとして"コマーシャル"なサウンドになっていると思います。
暗いリフを使った暗黒グルーヴやストイックにヘヴィネスを叩きつけるメタルコア/デスコア系のブレイク、じっとりしたデスメタルパートといった地味に感じる要因となっていた展開の割合を減らして、カラフルに変化していくリフワークを組み込んだプログレメタルパートや透明感のあるクリーンVoパート、アコギやクリーンギターによる静寂パートいったメロディの掴みやすいパートを増やしたことで、暗いデスメタルとの対比がより明確になり、それがドラマ性のアップに繋がっています。
影響源としてはやはりOPETHがデカい。
USらしいモダンなカッチリ感はそのままに、楽曲運びや構成はOPETHが作り上げたフォーマットを参考にしている感が凄くあります。勿論、OPETHだけでなくGOJIRAやNE OBLIVISCARIS、MASTODONなどの要素も垣間見えるけども、OPETHの影響をよりダイレクトに反映させた結果が本作の出来に繋がったのではないかと。
北欧的情緒を含んだアコギに大人びたクリーンVoを絡めた静かな導入の後、禍々しいグロウルが響くダークなデスメタルへと変化し、スムーズに変則リズムを刻んでいく#1。GOJIRA経由のデスコアって雰囲気のどっしりブレイクダウンで骨太さをアピールしつつ清涼感の高いクリーンパートで壮麗な雰囲気になる美醜の対比が抜群に効いています。後半のアコギパートは完全にOPETHリスペクトで微笑ましい。
プログレ感の強い刻みを暗黒オブリと絡めたスロー/ミドルテンポに瘴気混じりのしゃがれグロウルを加えた#2。デスメタルパートは丸みを帯びたヘヴィネスが渦巻いてる雰囲気で、爆走の中を朗々と歌い上げるBORKNAGAR系のクリーンパートのほうがエクストリームメタル的なキレを感じるところが面白い。
淡いギターがKeyと混ざり合って甘美に響くイントロ 〜 鋭いメタルリフとバスドラのコンビネーションが活きたミドルテンポのモダンデスメタルへと展開し、クリーンパートは淡い音使いでサウンドのスケールをグッと広げる#3。
あんにゅいなギターが響くブレイクダウンでスタートする#4は湿っぽくてスローなデスメタルパートや悲痛に響くクリーンパートを挟みながら、統率の取れたバスドラ連打でメカニカルに進めていくプログレデスナンバー。ラストはサイケなKeyを交えてゴリゴリとグルーヴしておりBETWEEN THE BURIED AND MEっぽさを感じたり。
#5は吐息多めのグロウルやホーミーのような低音Voが響く2分ほどのインタールード。
寂しげなギターをシャンシャン鳴らしベースがヌルヌル蠢くスローな演奏にお経じみたVoを乗せた導入から、寂しげなメロディはそのままに徐々に演奏もVoも強度を増していく#6。鬱屈しながらもオシャレな感覚を持った演奏やクリーンパートがLEPROUSっぽい。
ゆったりと幻想的に浮かぶアルペジオに軽やかなリズム隊が加わったソフトな演奏に艶やかなクリーンVoが乗るOPETHリスペクトな導入からグロウルの登場と共にいきなりバスドラとグルーヴリフを刻み倒すデスコアパートへ移行し、グロウル混じりのヘヴィなクリーンパートや怒涛の爆走など起伏に富んだ展開をみせていく#7。
鬱蒼としたギターを儀式的なドラミングと合わせたイントロ 〜 いきなりの爆走クリーンパートで神々しさをアピールし、TOOL感のある遊び心溢れたプログレパートやGOJIRA系の極太グルーヴパートを繋いでいき、最後はじっくりと歌うクリーンパートでしっかり締める#8。
ラストの#9は#1冒頭の展開を古びたピアノやストリングス、低音クリーンVoでなぞるアウトロ。
もっと話題になっても良いアルバムですね。
メジャーなプログレデスバンドと肩を並べられるレベルになったと思います。
評価:★★★★★