2016年06月01日

連珠版 人間vsコンピュータ-9(最終)

【最終局】
4黒 Yixin − 示白 エピファノフ
手数不明、引き分け

ep8-5 最終局、エピファノフがここまでの7局で出ていない浦月を提示し、Yixinが通常の白4と6題を提示したので、題数打ちでもよく出ていた形に進んだ。最近はやや下火傾向の浦月であるが、四珠交替打ちでも他の白4が出にくそうであり、題数打ちの知識に通じていれば比較的無難な提示珠型になりそうだと感じている。すぐに負けるリスクを減らすのであれば白8は9の三ヒキだが、エピファノフは強気の作戦選択であった。最後は打ちたい形を打った、というところか。黒17は下辺に手をつけて一旦緩めておくのもあるが、Yixinも最も直線的な手を選んだ。

ep8-4 私なら黒21で27にトビ三を打ち、続いて黒29にでも転がして左下を狙っただろうか。本譜黒21は気分の良い手ではあるが、結果的に白2・18・24の壁と白28・30・32の壁に挟撃されてしまった感がある。これは防ぎの手筋で、このさらに外側から攻められても、さすがに黒珠が連結するまでに時間がかかるので充分遮断できる。






ep8-2 実際、黒37と叩かれても白38と打ち込んで完封。ただここから崩れずにしっかり盤を埋めていけるのが、第4局でも見せたYixinの特長だ。勝ち辛くなった最初の段階で行なった黒33・35の四ノビも、必ずしも損ではない。エピファノフは早く右上の星のあたりに打ちたいのだが、うまく局面をリードされており無理はできない。最終的に残り2分まで頑張っているので、勝ち越しが決まっているし引き分けでいいや、という心境ではないことは容易に推察できるのだが。






ep8-1 最終盤になってYixinが黒79は85・87など不可解な手損をしているのだが、大事には至らず、そのまま引き分けとなった。思えば1999年の中村−メリテー6番勝負も中村名人から見て○●●△△△という星取で、最後が引き分けで終わるというのは、両者の力量差がわからないまま今後に楽しみが残る感じで面白い。

 最終結果はエピファノフの4勝2敗2分であり、見事な勝ち越しであった。Yixinも素晴らしい戦いを見せてくれた。このくらいの競った力関係でいる間が、見ている側もいちばん面白い。将棋の電王戦は、そこを見事に突いた企画で急速にファンを増やしてる。皮肉にも今日の対局で名人位を失冠してしまったが、依然として最多のタイトルを保持している羽生善治三冠が叡王戦に出場することもあり、今期も話題に事欠かないであろう。佐藤天彦新名人は実は前期の叡王戦は1回戦敗退であったので、今期はどこまで勝ち進むかも楽しみだ。

 ぜひ日本の連珠界でもこうした企画を行なって注目を集めたいし、それはこのたび就任した広報委員長としての責任にも関わってくると感じている。もちろん私自身、現役棋士として、未知の強い相手と打ってみたいといいう好奇心は強いし、だからさっそくYixinをインストールさせてもらった。しかし、実際に日本の連珠界で人間vsコンピュータを行なうならば、私が対局者の立場で登場するのは避けたい。現状として最後の砦といえるほど強くない私が、誰かに聞かれたわけでもなくこんなことを書くのは変なのだが、適材適所という意味で他の立場から盛り上
げたいと考えている。そんな妄想(現段階では)も楽しませてくれる、今回の8番勝負であった。
(完)
  
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2016年05月30日

連珠版 人間vsコンピュータ-8

【第7局】
示4黒 Yixin − 白 エピファノフ
●39にて黒五連

ep7-1 Yixinは第4、5局に続いて寒星を提示した。結果的に、寒星に限って言えば2勝0敗1分と、Yixinの得点源になった。白4での7題打ちであったが、白2との関連性が薄いため、黒有利の五珠がたくさん出てしまいそうである。私も連珠世界誌1月号にこの白4は紹介していない。ところが、エピファノフは白番を選択してしまった。本譜黒5は一見して遠すぎる印象ではあるが、白6と絡んでいったのではすでに劣勢を意識していたのだろう。白4が遊んでいる。

ep7-2 黒7と大きく構えて不満はなく、白8はやむをえない。黒9に白10とトビ三で取ったものの、黒11と止められてみると、白の剣先はソッポを向いており明らかに黒の形のほうがしっかりしている。白10は中止めをしても、同じように黒11とズバッと三をヒイて黒の逃げ足が速そうだ。



ep7-3 そして黒15がオシャレな決め手であった。すでにある程度戦力が整っているので、X点の三々禁をあえて呼珠で解消しようという発想は人間にはしにくいところだが、これが下辺の攻めの足掛かり作る絶好点になっている。もっともコンピュータなので、ドヤ顔するわけでもなく、論理的にここが良いという結論で打ったのではあろう。





ep7-4 黒21のトビ三が継続珠で、黒23もまたオシャレなノリ手となり、大差の局面になってしまった。Yixinが1時間53分を残す圧勝で2勝目。エピファノフは勝ち越しを決め、少々気が緩んだか、見せ場の無い不出来な一局であった。エピファノフも30分以上を残しており、時間つなぎが必要だったわけでもないのに、白30と露骨な「思い出王手」をしている。日本人の美意識からすれば疑問符のつくところであるが、逆に人間らしいといえば人間らしい、やりきれない気持ちが伝わってくる棋譜ではある。
  
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2016年05月29日

連珠版 人間vsコンピュータ-7

【第6局】
示黒 エピファノフ − 4白 Yixin
●39にて黒五連

ep6-4 本局はエピファノフが新月を提示した。新月はこれまでどの開局規定においても陰に隠れた存在であった。前局で敗れて余裕がなくなったため、Yixinにデータベースが少なそうな珠型を狙った、ということが考えられる。そして第6局にしてついに題数打ちでも見たことのない白4が現れたのだが、RIFの記録が正しいならば、本局で白4と題数(5題)を提示したのはYixinのほうであった。結果的にエピファノフが提示したA〜Eいずれも黒必勝だったようで、他に3の左の釘折れに打つのも有力そうだが、このような四珠交替打ち独特の局面にまで対応しているだけでも驚きである。
 
ep6-3
 たしかに黒5を残して白6と打ち、黒の追い詰めが無い上に白の連が3本集中している。一目、黒としても相当気持ち悪い形である。しかしこういう局面にはしっかりコツがあり、それに沿って考えれば恐れることはない。少し掘り下げてみよう。
1.常に自分の勝ちがあると信じる
 いきなりの精神論だが、私の長年の経験からしてこれが最も大切だ。
2.なるべく相手の模様に近づかない
 初段を目指す人の必修手筋といえるが、昔は桂馬の珠型の黒必勝定石を本で覚えることによって、この感覚を習得していたように思う。ただ、本で読んで習得するよりも、負けて体得するほうが効果的である。古典定石に触れていないであろうインターネット育ちの強豪が、ベテランよりもこういう点で鋭いのは、自由打ちの対局サイトで白番になったときに容赦なく黒必勝定石を打たれる経験が大きいのかもしれない。
3.ヨミの深さよりも広さを重視する
 もちろん全変化を最後までヨミ切るに越したことは無いのだが、「10手先くらい先の局面でどちらが先手になってるか」を、数多くのパターンについて洗っていくのがコツと考えている。そうするとヨミ抜けが少ない。エピファノフも、黒5や黒7の考慮中に本譜の終局図までをヨミ切っていたとは考えにくい。
4.連の価値は、「三を打てる箇所」で決まる
 先ほど白6までの局面について「白の連が3本集中している」と一まとめにしてしまったが、実際には2と6、4と6のような本当につながっている「連」と、2と4のような「一間トビ」、さらには「二間トビ」がある。通常、次に三が打てる箇所は
「連」・・・4ヶ所
「一間トビ」・・・3ヶ所
「二間トビ」・・・2ヶ所
である。ところが、本譜の2と4の一間トビは、黒5があるために次に三が打てる場所が2ヶ所しかない。このように次に三が打てる箇所の少ないものは、比較的容易に無力化させられる。

ep6-2 黒7とトビ三を打ち、黒9と組む。これにより、白の2と6の連を直接叩き、さらに2と4の一間トビが無力化した。白は残った4と6の連を活かして白10と三をヒイたが、後が続かないので大丈夫。白12と受けさせて、あとは仕上げを残すのみだ。






ep6-1 「三々は四三の卵」を地で行く黒17のミセ手が決め手になった(黒20のトビ三でもよかったのだが)。
 これでエピファノフの4勝1敗1分となり、本シリーズの勝ち越しが決まった。連珠界では初めて本格的に行なわれた人間vsコンピュータの企画で、いきなり人間が負け越したのでは、興ざめであろう。非常に価値の高い勝利だったと思う。
  
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2016年05月27日

連珠版 人間vsコンピュータ-6

【第5局】
黒 エピファノフ − 示4白 Yixin
○34にて黒投了

ep5-1 引き分けだった第4局に続いて珠型提示はYixinだったのだが、コンピュータにも「決着をつけてやる」みたいな考え方があるのか?連続で寒星を提示した。エピファノフが今度は白4と題数をYixinに任せたところ、白4も前局と同じとなる。ここで本シリーズで初めてエピファノフが黒番を選択し、黒5で前局と別れを告げての開局となった。黒7は三をヒキこむ手が多く、本譜は大舞台ではあまり見かけなかった手だが、エピファノフの本には3図紹介されている。しかしいずれも白8はAと打っており、ここからの対応が見ものであった。




ep5-2 黒9は反対のBもありそうだが、白Cとミセ手を打つのが絶妙のようで、本譜が正着と思われる。黒11に、白12は絶対。白12が反対だと、黒12と三々を解消してから14へ打つ常套手段があるためだ。以下手順に黒17まで下辺で好形を作り、エピファノフは気分上々だったのではないか。







ep5-3 白は18・20と連続で黒陣へ乗り込んでいった。ならばと黒は上辺に目を移し、黒21で白22を強要した後に黒23と叩いて好形を築く。ここで白24が相手を惑わせる、試合巧者のような三ヒキだった。エピファノフは広い下辺を重視して黒25と止めたが、堂々と白26と打たれて黒27と取らざるを得ない。白30まで収まってみると、第1〜3局とは違い、右辺にある白番Yixinの剣先3本しっかり連携している。黒にはすぐに攻めがないため、右辺に挨拶せねばならない状況になった。



ep5-4 黒31が当然のように見えて最終的な敗着となった。白32では他にも勝ち方があったようだが、最もカッコイイ四追いフクミで決めて見せた。コンピュータの成長を感じさせる一手で、黒33でいきなり多数の分岐があるので、従来は苦手だったはずのヨミ筋である。白34はおそらくあっという間に打たれたはずで、エピファノフも全てを悟って投了となった。

 ついに訪れたコンピュータ勝利の瞬間である。しかしここまでのYixinの打ちぶりを見ていれば、何ら不思議はない結果といえる。黒17までの局面でYixin同士を終局まで戦わせ、次は白18までの局面でYixin同士を終局まで戦わせ…と試してみたら、白勝ちか引き分けにしかならなかった。ということは、序盤の形勢判断においても、Yixinが少なくとも悪くはない選択をしていたといってよい。

 ノックアウトできる寸前のところでダウンを奪われた格好のエピファノフ。次局以降はどんな戦いを見せるのだろうか。
  
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2016年05月26日

連珠版 人間vsコンピュータ-5

【第4局】
示黒Yixin −4白エピファノフ
手数不明、引き分け

 引き分けではあるが、ついに人間側の連勝が止まった。

ep4-4 ここまで、白4と題数の提示はすべてコンピュータ側が行なっていたが、本局はエピファノフが行なっている。寒星なら、黒白選択権を得るよりも、愛用策であるこの白4を打ったほうが得策と判断したのだろう。ただし、昨年発行された同氏の本ではこの白4で重要変化がことごとく抜け落ちており、それを知っている者から見ると、その後の研究ないし情報収集でどこまで軌道修正できているか心配ではある。とりあえず、この白10までなら大丈夫そうだ。ちなみに黒5をこのように狭いほうに(意図的に)打ったのは私が最初ではないかと思うのだが、それを咎める意味でも、白10はかつて打たれていたAやBよりも面白いだろう。
ep4-3
 白14まではお互いの連を止めあう平凡な進行となった後、黒15と攻めっ気を見せたのに対し、白16・18と挟撃したのが好感触。例によって黒ばかり剣先・連を蓄えているものの、白がうまく連絡路を絶っている。黒21は実戦的な転戦の仕方ではあるが、黒珠の数が最も少ないところへ打ち込んでいるだけに、人間ならちょっと気落ちしそうなものだ。ところが、本局はここからYixinが実力の一端を見せることになる。コンピュータに気落ちは関係ない。





ep4-1 お互いに早い攻めが無いため、黒としても一応手番を持って大呼珠が打てる展開ではある。黒25と相手の心臓部に打ち込む一手を除いては、基本的に外へ回るように打っている。「外へ回る」というのは連珠の基本手筋でもあり、言い換えれば人間が無意識に使用する評価基準である。これをコンピュータの言語に置き換えるとどう表現されるのかはわからないが、結果として人間と同じような評価基準において着手を選んでいるのかな?、と感じさせる展開である。決して黒有利では無いものの、うまく反撃を食らわないように、白に外側を占められないように打っている。白もおとなしく追随するしかない。黒35も大呼手であるが、この期に及んでも白に目ぼしい反撃筋がない。




ep4-2 黒主導で盤面を埋めていく作業がさらに続き、ようやく黒71でゴメンナサイという手を打ったのだが、さすがに白が攻めるところは残っていなかった。ただし、Yixinに引き分け提案/承諾の機能はどうも無いようで、盤が埋まるまで打ったのではないかと思われるのだが、不明であるため本稿ではここまでとしておく。途中、人間なら先に黒49を打って白に逆止めを強要してから黒47と打ったほうが「気分がいい」としたものだが、コンピュータのYixinは現実的に、冷静に、手堅い手順を選んだ。

  
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2016年05月25日

連珠版 人間vsコンピュータ-4

【第3局】
4黒 Yixin − 示白 エピファノフ
○38にて黒投了


ep-3 第3局はエピファノフの作戦にまんまと嵌った形で、あっという間の終局となってしまった。白16と飛び出す一手が、エピファノフ自身も2013年の世界選手権決勝リーグで披露している妙珠。その後の研究にも抜かりはなかったようで、1時間57分を残しての快勝となった。

 実は本稿、名人戦東日本地区1次予選の会場で執筆しているのだが、2次予選進出をかけた最終局の佐藤清富七段−神谷俊介五段戦が寒星5題から盤端違いでこの進行になっている。

 最新形に詳しくない佐藤七段が気前良く嵌ってしまうのは仕方ないとして、バッチリ予習済のはずの神谷五段も苦戦中。本譜の下辺にあたる場所が狭いため、白16もノータイムでは打てず一手ずつ時間をかけていた。ついには即投了級の決め手を逃し、勝ちきれず攻守逆転寸前のところまでいってしまった。結果的には、時間を残していた佐藤七段がいつもの悪いパターンに環をかけたような酷いミスを連発して白勝ちになったものの、白16が打てれば誰でも勝てるというほど簡単ではないことはわかるだけに、この8番勝負においてエピファノフが勢いづいていることは間違いないようだ。

 ところで将棋界では、
第2期叡王戦に羽生善治名人がエントリーしたようだ
。叡王戦に優勝すれば、電王トーナメントで優勝したコンピュータと電王戦を戦うことになる。

 3月にアルファ碁の一件があり、羽生名人ご自身が5/15(日)にNHKで人工知能の特集番組でナビゲータを務め、5/22(日)には第1期電王戦二番勝負で山崎隆之叡王が2連敗を喫した。最高のタイミングでの発表といえるだろう。さっそく各種メディアが「羽生名人と人工知能が対局か」と色めきたっている。具体的には、羽生名人とponanzaが対局する姿を想像している人が多かろう。正直に言えば、私にもその映像が浮かんでいる。

 しかし、叡王戦では羽生名人といえどまず「九段予選」に出場せねばならず(羽生名人が予選と名のつく棋戦に出場するなんて、いつ以来なのだろう?)、持ち時間1時間一発勝負のトーナメント戦で5連勝し、決勝三番勝負を勝たねばならない。あるプロ棋士から「名人を持っていると、(七番勝負と日程が重複する)物理的に電王戦に出るのは無理」と直接伺ったことがあるが、いま行なわれている佐藤天彦八段との名人戦七番勝負がどうなるかも、大きく影響しそうだ。

 一方、昨今のコンピュータ将棋界をリードし、このたびの第1期電王戦でも見事連勝したponanzaとて、来年の電王トーナメントで優勝できる保障などない。特に最近は技巧という強力なライバルが現れ、なおかつオープンソース化されるそうなので、それを利用した強豪ソフトがひしめく可能性も低くない。

 こちらもまた人間vsコンピュータの勢力図がどのように塗りかわっていくのか、興味が尽きない。

  
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2016年05月24日

連珠版 人間vsコンピュータ-2

※5/22に投稿済だったのですが、その後誤って削除してしまったようです。
 TwitterやFacebookではリンクエラーとなり、申し訳ございません。
 幸いバックアップがあったので、再掲いたします。

【第1局】
4黒 Yixin
示白 エピファノフ
○70にて黒投了

ep1-1 注目の第1局は、エピファノフが四珠交替打ちならではの彗星を打ち、それをYixinが無難な流星共通系に戻すという開局であった。ヨーロッパ諸国では四珠交替打ちも盛んに試みられているものの、Yixinに搭載されている定石データベースの大半は2題打ちと題数打ちによるものであろうから、四珠交替打ちならではの戦型は避けたということか。そのあたりの序盤戦型に何か申し合わせがあるのか(それなら元々題数打ちでやればよいのだが)、今回のYixinにはそういう作戦選択機能まで搭載されているのかは、わからない。



ep1-2 黒15まで、第51期名人戦五番勝負の第2局と同型になった。黒としては9が大きなの分岐点であるが、記念すべき第1局に相応しい、なんとも格調高い作戦選択である。
 エピファノフのほうもこの形なら準備があったのだろう、白16と強く三をヒイた。名人戦では最終的に黒Aと三をヒイて白Bのトビ三に黒16と入っておく手が決め手になったので、それは許すまじという手だ。黒はBと外から止めれば穏やかな進行であるが、強く黒17と下辺を補強して緊張が走っただろう。黒が電車道に寄り切ってしまうのだろうか?





ep1-3 将棋の電王戦で、「水平線効果」とか「思い出王手」といった言葉をよく目にする。自身に良い手がないので仕方なく王手を続け、都合の悪いことを先送りにする現象のことであるが、黒19〜25と追い手を続けたのは流石にそれにはまだ当たらないだろう。白は素直についていくだけなので、攻めとして充分に筋が通っている。問題はその後でどこに呼珠を打つかだ。




ep1-5 黒27とまず左辺に手をつけたが、ここだけで勝つ手には見えない。続いて黒2931と右辺に手をつけたが、これもここだけで勝つ手には見えない。さらに白2830と下辺の連絡路を分断されてしまった。もう一度黒3335と左辺の狭いところで大きく打ったのにはドキッとさせられるが、続いて黒39と手を戻したところを見ると即詰みはないことを認めている。白42が四追いフクミに黒43と四追いフクミを返したものの、ついに白44と攻めの手を許した。ここで技がかからないと、後は白銀の世界に見えるが…




ep1-6 黒4547と動いてみたものの、白50まで防いで問題ない。黒51と防ぎ一方の手を見て、エピファノフは溜飲を下げたことだろう。この局面、黒には実に9本の剣先があるが、それぞれの連絡関係が弱く攻防共に威力が薄い。駒得ではあるが、効率が悪く、玉も薄く、手番も相手、という状況だ。







ep1-4 ついに白は52と切り札を切った。黒の9剣は関連性が薄い上に、左上には1本も効いていない。黒53・55は五十歩百歩だったと思われる。黒59・61と今度こそ思い出王手に違いない四ノビが出て、記念すべき第1局はエピファノフが見事な白星で飾った。一方、Yixinにも決定的な悪珠があったわけではなく、第2局以降も侮りがたしとの印象を強く残した。

  
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2016年05月23日

連珠版 人間vsコンピュータ-3

【第2局】
示4黒 Yixin - 白 エピファノフ
○70にて黒投了


ep2-1 続く第2局は、エピファノフが珠型、白4&題数を共にYixinに打たせる形で開局した。題数打ちでも花形になっている花月6題で、今度は第52期名人戦五番勝負の最終局と白24まで同順。








ep2-2 黒25はこの形で当初打たれていた手。これはこれで、四追いフクミだし、強烈な狙いを秘めた手ではある。が、白34までとなっては、あまり怖いところがなくなってしまった。Yixinにどこまでがデータベースとして搭載されていたのか、その中でこの順を選んだのはどのような基準だったのかは、よくわからない。ただ、結果的にハズレを引いてしまった感は否めない。黒39と流れが変わったところで、またしても剣先だけ数えると黒6-白0となっている。Yixinが将棋のように評価値を出してくれているわけではなく、メカニズムはよくわからないのだが、もしかすると駒得(=剣先や連の数)を重視しすぎる傾向があるのかもしれない。



ep2-3 白は本当は41に打ちたいので、白40と止めたのは妥協のように見えるが、続く白4244で急に形がしっかりしてきた。負ける心配がほぼない局面では、のびのびと良い手が打てるものである。あとは白勝ちか満局かという形勢であるが、本局を見る限り、劣勢になると暴走を始めるコンピュータの癖は、将棋や囲碁と同様のようである。黒が打てば打つほど白の形が整うという展開が続き、最後は不可解な黒55とヒキ詰めを見落とした黒57が重なっての決着となった。もっとも、トップ棋士でも黒番の劣勢で崩れないのは至難の技ではある。



ep2-4 第2局にして、「序盤作戦でハズレを引く可能性がある」、「劣勢の中終盤は今一つ頼りない」というYixinの弱点が顕在化しつつある状況。後者についてはそういう状況に持ち込むことは簡単ではないが、前者についてはある程度誘導できる可能性がある。つまり、たくさん打たれていたが最近解決したような戦型に誘導できれば、たとえ改善案が出ているとしても、統計的に打たれた数の多い過去の悪珠のほうを選んでくれる可能性が高くなる。と、解説するのは簡単であるが、実際にエピファノフはうまくそれを突き続けられるだろうか。

  
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2016年05月21日

連珠版 人間vsコンピュータ-1

http://www.renju.net/media/games.php?gameid=65272

 囲碁界では3月にイ・セドル九段とアルファ碁の対局が行なわれ、人間に追いつくのはまだまだ先と言われていた世界でのコンピュータの勝利が、世界的な話題となった。
 将棋界でも今日・明日と電王戦第2局が行なわれており、今日のニコニコ生放送の視聴者は85万人に上ったそうで、これは山梨県の人口に相当する。

 到底これらに比肩するような話題を呼んでいないのが残念ではあるが、連珠でも今月から来月にかけて、コンピュータvs人間の対決が行なわれている。

 開局規定は、次回の世界選手権から採用が決まっている四珠交替打ち(五珠題数上限:8)。持ち時間は正確には知らないのだが、おそらくは世界選手権やチーム世界選手権と同じ、2時間か2時間15分+1手30秒のフィッシャーモードであろう。ハンデもなく、本格的な8番勝負だ。

 人間側は、ロシアの
エピファノフ。2013年世界選手権7位の実績を持つ。最近では200ページ超にわたる題数打ちの研究本を発行した熱心家である一方、心理的な駆け引きも好きなタイプである。英語も堪能で、連珠国際連盟副会長でもある。研究熱心であることを除けば(苦笑)、日本の連珠棋士でいえば私が最も近いタイプかもしれない。

 コンピュータ側は、
YiXinというプログラム。この企画まで名前も聞いたことがなかったが、Gomocupというコンピュータの大会で5連覇中らしい。フリーでダウンロードできるようなので試しに打ってみたところ、私の疎星黒番で7局バラバラの五珠を打ち、コンピュータと同程度の速度になるよう早打ちをしていたら、1時間足らずで2勝4敗1分と負け越してしまった。

 早打ちの7局だけなので詳しいことはわからないが、終盤の速度・精度では何年も前から人間がかなわなくなっているのに加え(ただしまだ完璧ではないようだ)、中盤も相当な精度になっている。序盤は人間の対局のデータベースを基にしているようで、いわゆる「ハズレを引く(人間が過去に打った悪い手をそのまま採用してしまう)」というケースがまだあるように感じた。

 さて、エピファノフ対Yixinの状況はというと、ここまでエピファノフの3連勝となっている。Yixinも世界選手権決勝リーグに充分匹敵するレベルの棋譜を残しているが、エピファノフがうまく自分の土俵にひきずりこんでいて、彼ってこんなに強かったっけ?というくらい充実した打ちぶりを披露している。

 こう言っては失礼だが、エピファノフが圧勝してくれるのであれば、まだ安泰かな…というのが正直な実感である。もっとも、アルファ碁のように大企業が研究に乗り出せば…ということなのだろうが。詳しいことは次回以降に記すとして、「ゲームが解決する」ことと「コンピュータが相対的に人間よりも強くなる」ことは全く別であって、個人的には後者であれば何ら問題はないと考えている。そうとはいえ、それがいつになるかという関心は、やっぱり私も持っている。

 1局ごとの振り返りやその他の雑感は、次回以降に。
  
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2016年05月08日

25珠型の思い出-9 丘月編

 5/4まで行われていたチーム世界選手権は、エストニア1の連覇で幕を閉じた。
 表MVPは8戦全勝と確変状態だったホベマーギ、準MVPは最終局で世界チャンピオンのQi Guanを破る波乱を起こしたオル、そして裏MVPは中国とロシア1にピンポイント攻撃を命中させたエストニア2のソーソロフであろう(私はこの3人には負けたことがなく盤を挟んでも怖さを感じないのだが、これほどの活躍を見せられると、相性はあるものだと実感する)。
 2位に終わった中国は、元世界チャンピオンの曹冬が直前に病気で来られなくなるというアクシデントがあったらしい。
 空いた1枠を先鋒2勝2敗1分、補欠1勝1敗と埋めきれなかっただけでなく、大将・副将・次鋒の3人がフル出場を余儀なくされたダメージもあったようで、7戦全勝だった大将と次鋒が最終局で息切れして敗れたのが決定打になってしまった。

 さて本稿は丘月の順番であるが、ちょうど過去のチーム世界選手権から2局を見つけたので、それらを振り返ってみたい。

2006年4月30日 第6回チーム世界選手権 予選リーグ第1局
択黒 日本 岡部  寛
示白 フィンランド サーレンパー
×93にて引き分け ※持ち時間2時間15分+1手30秒フィッシャーモード

 学業は大学3年生になったばかりで暇の絶頂、連珠は開局規定の議論がピークで多忙の絶頂、よって連珠に費やしていた時間は確実に日本一、ヘタしたら世界一という時期である。
 8月にはユース世界選手権(北京)とアジア選手権(ソウル)にも連投で出場した。
 私が退職する頃にはシニア世界選手権が確立されているかもしれないが、そうなったとしても年3回海外遠征というのは最初で最後だろう(笑)。

d9-1 当時はもちろん五珠2題打ちなのだが、私は17よりも曲線的な攻防になりやすい本譜黒5を好んで打っていた。
 そういう意味で白8は10と叩いてくれる方が歓迎で、しかも黒13で14と叩いた時の白の有力策が連続で見つかっていた時期だったので、本譜黒13とかわしてみた(その後一時的にこの黒13がよく打たれることになる)。
 局面も全くの未経験だし、サーレンパーは噂には強いと聞いていたものの初対面初対局ではあったが、未知の戦いでは地力で上回れるだろうとの目論見もあった。
 とりあえず黒21白22の交換で負けるリスクは一気に減り、私好みの展開になってホッとした記憶がある。
 しかしここまでの折衝でお互いかなり時間を使っており、何気なく打った黒25は今の私なら浮かし止めにしているところで、白26との交換になって逆に相手をホッさせたことだろう。
 中盤の入口で細かい損をしてあっさり引き分け必至の展開にしてしまうのは、当時の悪い癖だ。
 こういう膠着状態では、どこかに連打できる可能性を探って打つのがコツと今は考えているが、本譜のように綺麗に盤面を1周してしまうのも当時の悪い癖で、これなら防ぐほうも簡単。
 サーレンパーとしては、序盤はすでに世界選手権AT2回出場の実績があった私との間合いを測りながら打っていたと思うが、中盤以降はかなり自信ありげに打って来た記憶がある。
 黒77〜91と追い手を連発して局面を収めたのは、白66〜76と相手が攻める気になってしまったことに対する怒りであった。
 

2012年5月2日 第9回チーム世界選手権 予選リーグ第5局
択黒 日本 岡部  寛
示白 エストニア レンツ
●59にて白投了 ※持ち時間2時間15分+1手30秒フィッシャーモード

 日本が優勝した2012年のチーム世界選手権が本稿に登場するのは初なので、少し振り返っておきたい。
 この前の2010年は東京開催で、日本1は過去の実績だけ(日本2は直前の全日本選手権で選考したのに対し、日本1はその前にメンバーを全員確定させていたという意味で)で選んだ「ドリームチーム」を結成して臨んだが、最終局で逆転を喫して3位に終わった。
 ドリームチームのメンバーであり、日本連珠社理事であり、その構成にも賛成派であった私自身があえてハッキリ書くと、若手棋士にとっては理事会の権威を決定的に失墜させる出来事であった。
 ドリームチームのメンバーで2012年も出場したのは中村名人と私の2名であるが、選手としてリベンジに燃えていただけでなく、私としては理事としての責任も払拭したい想いがあった。
 しかし大会出場者を改めて見てみると、よくこんな中で優勝したなと…。

2位 中国1 当時世界チャンピオンのCao Dong以下、強いに決まっているチーム。
3位 中国2 次鋒のQi Guanは現在世界チャンピオン。大将のYang YanXiは現在世界ランク2位。
4位 中国3 大将のLan ZiRenは後の世界選手権銅メダリスト。
5位 ロシア 大将スシュコフ、副将セルデュコフ、次鋒ニコノフ、先鋒エピファノフ、補欠チンギン、補欠マカロフ=どう見ても優勝候補。
6位 エストニア 大将タイムラ、副将ソーソロフ(←選手に専念できる環境)、次鋒レンツ、先鋒ホベマーギ(←まだ世界選手権ATには出たことがなかったが)=充分に上位候補。

d9-2 さて、レンツの丘月3題提示は、多かれ少なかれ引き分けを意識したものだったと思われる。
 私は勝つ気満々で、黒23で36に打ち込む手が有力視されていたことも知らず、白30を緩手と見て黒31。
 ところが、白32・34の組み合わせが完全なエアポケット。
 実は白34は先に45を打っておくべきで、黒も35は45と焦点止めにすべきところを長考後にわざわざ白勝ちを復活させてしまい、さらに白はそれを逃して36と防ぎに行ったという酷い攻防になっている。
 レンツは願ってもない白32を打ちながら詰ますことができなかったストレスがたたり、無理矢理勝ちに行った白48が実質一手パスとなり、私に勝ちが転がり込んできた。

 結果的に上位4チームのリーグに入った日本と、下位4チームのリーグに入ったエストニアの対戦なので、出場8チーム時の規定により最終成績には反映されなかった対局ではあった。
 しかし予選の4〜6位は大接戦だったので、本局が逆の結果であればエストニアが上位4チームに入っていたかもしれず、そうなれば日本の大逆転優勝もなかったかもしれない。
 他の様々な場面からも、目の前の一局に全力を尽くすべきことを痛烈に教えられる大会であった。
  
Posted by hrs_okabe at 03:03Comments(0)TrackBack(0)