日本男性はどこの外国の男性と近縁か?

日本人男性は、中国人や韓国人と人種的(遺伝学的)に近縁で同系統であると誰しも思うであろうが、本当にそうであろうか.

日本人男性の4割(41%)が中国人や韓国人とは全く別系統の他人である」とか、
日本人男性に最も近縁な外国人は高地に住むチベット人やベンガル湾に浮かぶ島々に住むアンダマン諸島人である
と言われたら、果たして信じることができるであろうか.

日本人男性の4割は、縄文時代(前145世紀から前10世紀)以前から日本列島に住んでいた先住民である縄文人男性の子孫であり、
日本人男性の5割は、弥生時代(前10世紀から後3世紀)に中国・東南アジア・朝鮮半島から移住してきた渡来人である弥生人男性の子孫である.

縄文人の祖先
実は、縄文人の祖先は、約6万年前にアフリカからアラビアに出国し、沿岸経由で東南アジアへ、さらに東方へ、沖縄へと進み、また東南アジアから北方に向かいチベットへ、さらにシベリア経由で北海道へ進んで、約3万年前に日本列島に移住して来たと言われている.

現在の縄文人系の男性遺伝子は、日本、チベット、アンダマン諸島に多く見られるが、インド、中国(漢族)では全く見られないし、朝鮮半島でもほとんど見られない.

弥生人の祖先
他方、弥生人の祖先は、約3万年前にアフリカからアラビア経由で東南アジアから中国へ、さらに朝鮮半島へと進み、長江下流域および朝鮮半島を通って、前10世紀から日本列島に移住して来たとされている.

現在の弥生人系の男性遺伝子は、主要な渡来ルートから明らかなように、中国(漢族)・ベトナムでは最も多く7割以上(72%)と、次いで朝鮮半島で7割近く(68%)も見られ、、マレーシアでも6割以上(62%)と、日本では5割(49%)、チベットで4割(39%)、タイで3割以上(35%)と多く見られる.


男性の遺伝子タイプ分類

男性の性染色体である「Y染色体」は男性(父)から男性(息子)へと遺伝する。
Y染色体は、人類の進化過程において、Y染色体の特定の領域(MSY, male specific region of Y chromosome)に突然変異が生じ、
その結果、Y染色体の多様性となって現出している.

男性の遺伝学的近縁集団は、「Y染色体の遺伝子情報」(Y-DNA)に生じた突然変異の類似型(ハプロタイプ)を持つ集団(ハプログループ)で示される.
つまり、Y染色体ハプログループは同じハプロタイプに属する男性の近縁集団である.Y染色体に突然変異が生じたり、発見されると新しいハプログループが出現することになる.


Y染色体ハプログループ

Y染色体ハプログループは、大きく、ハプロタイプA、B、DE、C、Fの5系統に分類される.
5系統はA~Tの20タイプの大グループに分類され、各グループはA0~T1の約44タイプの中グループ(サブクレード)に分類される.
さらにA0a~T1a3まで約1000タイプの小グループ(サブクレード)に細かく分類される.

AからFまでは古代遺伝子ハプロタイプであり、GからTまではFから分岐した新興遺伝子ハプロタイプである.

Y染色体ハプログループの系統樹
Y染色体ハプログループ進化系統樹
(出所)Y-DNAハプロタイプ2013年12月版

男性の祖先ハプログループ(Y祖先)は今から約20万年前にアフリカ大陸の北東部のエチオピア地帯(19万5千年前の頭蓋骨の化石がオモ川流域で発見)で誕生した.
約14万年前にハプログループAが分岐し、約11万年前にはハプログループBが分岐してサハラ砂漠以南へと拡散した.
残ったハプログループCDEFは約6万年前にハプログループDEとCFに分岐して、アフリカを出てアラビア半島から中東に向かい、その後、分岐を繰り返しながら全世界に拡散していった.

Y染色体ハプログループの世界分布図
世界Yハプログループ分布図


世界主要国のY染色体ハプログループの分布表
世界Yハプログループ分布表
(出所)日本人のガラパゴス的民族性の起源

日本人のY染色体ハプロタイプの分布表
日本人Yハプロタイプ分布表



日本人男性Y遺伝子の特徴

まず、日本人男性のハプロタイプの分布を見てみよう.

縄文人遺伝子   D2  40.3 %
南アジア系遺伝子 O2  30.2 %
漢族系遺伝子   O3  18.9 %
縄文人遺伝子   C1  4.0 %
その他         6.6 %
 メラニシア系遺伝子 C3  2.9 %
 南アジア系遺伝子  O1  1.5 %
 ウラル語系遺伝子  NO* 0.9 %
 チベット系遺伝子  D1* 0.6 %
 ヤク―ト人系遺伝子 N1c 0.4 %


1)縄文人遺伝子D2 日本人男性の4割
D2縄文人遺伝子であり、日本人に多く(41%)見られ、世界に殆ど類を見ない日本固有の男性遺伝子である.

Dハプログループは、4つの兄弟サブグループ(D1、D2、D3、D*)に分化している.

D2は、約2万年前に日本列島でDから分岐した日本固有の男性遺伝子である.
D2は、現代アイヌ民族に85%、次いで琉球民族に45.5%と最も多く、日本人全体で40.3%と実に多く見られる.

D1・D3は、Dから分化したチベット固有の男性遺伝子である.
D1は、現代チベット族に37%と最も多く、羌族(チャン族)に23%と多く、日本人には僅か0.6%見られる.
D3 は、チベット族に6%見られる.

D* は、D1・D2・D3に属さないアンダマン諸島固有の男性遺伝子である.
D* は、アンダマン諸島のオンゲ族やジャラワ族では100%と全員に見られ、アンダマン諸島人全体でも73%見られる.

縄文時代の日本人は縄文人であり、その直系子孫が現在のアイヌ人と琉球人(沖縄本島人)である.
縄文人固有の遺伝子であるD2は、アイヌ人の約9割(85~88%)、琉球人の約5割(46~62%)に見られる.

日本人全体で日本人男性の4割(39~40%)が縄文人遺伝子D2を受け継いでいる

日本人男性は、チベットやアンダマン諸島の男性と共に直近の共通祖先ハログループDに属する兄弟グループである.

2)南アジア系遺伝子O2  日本人男性の約3割
O2は南アジア系遺伝子(南アジア語族遺伝子)であり、インドネシア人に最も多く(52%)、次いでベトナム人に多く(33%)、日本人や韓国人にも3割(30%)も見られる.

O2ハプログループは、7千年前頃に3つのサブグループ(O2*、O2a、O2b)に分化し、さらに、O2bハプログループは2つのサブグループ(O2b*、O2b1)に再分化した.

ハログループO2では韓国人男性と日本男性は同一グループに属し、それぞれ30%を占めているが、サブグループ(サブクレード)では異なるハプログループに属している.

O2b* は、韓民族に最も多く(30%)、次いで満州族に多く(14%)、日本人にも1割弱(8%).見られる.
O2b1 は、日本人固有の遺伝子(弥生人遺伝子)であり、日本人に最も多く(20.5%)、日本人の移民先(東南アジア、南米、北米)に僅か見られる.
O2a1オーストロアジア語遺伝子であり、チワン族(中国南部・ベトナム)に最も多く(68%)、次いでタイ人に多く(47%)見られる.
そのサブグループO2a1a では、日本人の1.6%(特に、徳島で3%、静岡で2%)見られる.

日本人男性の2割強(22%)は、弥生時代に南アジアから渡来した弥生人の子孫である

3)漢族系遺伝子O3  日本人男性の約2割
O3漢族系遺伝子(北アジア語族遺伝子)であり、中国人(漢族)に最も多く(55%)、次いで韓国人・ベトナム人に多く(43~40%)、日本人にも約2割(19%)見られる.

日本人男性の約2割は、弥生時代に中国から渡来した弥生人の子孫である

4)縄文人遺伝子C1 日本人男性の1割未満
C1縄文人遺伝子であり、現代アイヌ民族に僅か(4%)見られる.
C1 は、約1万年前に日本列島でCから分岐した日本固有の男性遺伝子である.

東アジア主要民族のY染色体ハプログループの分布表
東アジア主要民族のYハプログループ分布表
 (出所)Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)  ウィキペディア

東アジア民族のY染色体ハプロサブクレードの地域別分布表
東アジアYサブクレード分布
 (出所)日本人 ウィキペディア



まとめ

日本固有の男性遺伝子(Y-DNA)は古代遺伝子D2とC1からなる.
日本固有の古代遺伝子を保持する現代日本人男性4割強(44%)である.
③日本人男性が保有しているC3やD1*古代遺伝子である.
古代遺伝子(D2、C1、C3、D1*)を有する日本人男性全体でほぼ5割(47.8%)にも達する.

現生人類の発祥の地であるアフリカはさておき、日本列島やアンダマン諸島は人類のガラパゴス島であり、そこに住む現生人類はシーラカンスであると言われるのもむべなるかなである