種子梵字は仏尊そのものを表す

真言

真言宗の「真言」は、仏尊(仏様)の「真如のお言葉」を賛える短いお経(呪文)という仏教用語である.真言は、梵語(サンスクリット)「マントラ」の漢訳である.

真如」も仏教用語で、仏様の教えである「真理、真実、智慧」を表す.

真言は短い呪文であるが、簡潔なものから比較的長いものまでいろいろとある.

代表的な真言を3つ選ぶとするれば、
光明真言」、「般若心経真言」、「胎蔵界大日真言」を挙げることができよう.

光明真言 23字
光明真言

般若心経真言 17字
心経真言

胎蔵界大日如来真言 6字
アビラウンケン

真言は、「原文のサンスクリット」または「漢字に音写された漢文」を呪文として原音で音読して唱えられる.
原音以外の言葉に翻訳して音読すると仏様の教えが正確に伝わらないからである.

金剛界・胎蔵界五仏の真言

真言宗のご本尊「大日如来」と金剛界・胎蔵界五仏の真言は、原音を「カタカナ」で音写すると次のようになる.

胎蔵界五仏
大日如来 「オン・・ビ・ラ・ウン・ケン」
宝幢如来 「ナウマク・サンマンダボダナン・ラン・ラク・ソワカ」
開敷華王如来 「ナウマク・サンマンダボダナン・バン・バク・ソワカ」
無量寿如来(阿弥陀如来) 「ナウマク・サンマンダボダナン・サン・サク・ソワカ」
天鼓雷音如来 「ナウマク・サンマンダボダナン・カン・カク・ソワカ」

金剛界五仏
大日如来 「オン・バサラ・ダトバン
阿閦如来 「オン・アキシュビヤ・ウン
宝生如来 「オン・アラタンナウサンバンバ・タラク
阿弥陀如来 「オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン」
不空成就如来 「オン・アボキャシッデイ・アク


種子

種子(しゅじ、種字)は仏尊そのもの(仏尊自体とその智慧・教え)を表す一字の梵字である.

一番短い真言は、仏尊の徳(智慧と慈悲)を表すたった一字の梵字からなる真言であり、種子真言(しゅじしんごん)と呼ばれている.

種子は、仏尊を最も良く表す梵字であり、
①仏尊の真言、
②梵字が有する宗教的含意、
③仏尊の梵名
などから一つの梵字が仏尊のシンボルとして選ばれる.

仏尊の真言の中から一字選ばれた種子

大日如来(胎蔵界)の「」、大日如来(金剛界)の「バン」、不空成就如来の「アク」、宝生如来の「タラク」などがある.
種子例アバンアクタラーク

梵字の宗教的含意から選ばれた種子

大日如来(胎蔵界)の「」「アーク」「アーンク」、大日如来(金剛界)の「バーンク」、阿弥陀如来の「キリーク」などがある.
種子大日如来

梵字「ア」は梵字配列の一番目の字であり、「最初、第一、根源、一切」の特別な意味があり、大日如来(胎蔵界)は諸仏すべての根源(一切仏)であることから、梵字「ア」は、大日如来(胎蔵界)の種字であるとともに、同時に、一切仏として諸仏すべての種字として代用される「通種字」でもある.

大日如来の固有な種子
大日如来(胎蔵界)には、通種子とは異なる固有な種字(梵字「ア」に点字が付加された種子)が2文字作成されている.
一つは、一切仏であることを表す特別な種字「アーンク」であり、
今一つは、胎蔵界の諸仏の中で用いられる種字「アーク」である.
何れの種子も仏尊を表す通種子「ア」に点字が複数個付加された梵字である.

五点具足阿字
梵字「アーンク」は、次のようにして作成される.
まず、「」字(書き始めの発心点「`」を含む)に、
修業点(右肩の半弧「C」長音記号)を付加して「アー」、
さらに、涅槃点(右端の「:」ク音記号)を付加して「アーク」とし、
最後に、菩提点(真上の「・」ン音記号)と荘厳点(菩提点の下の半弧)を付加すれば「アーンク」が出来上がる.
五点具足阿字
種子「アーンク」は、「」(漢字音:)に「発心、修業、菩提、涅槃」と悟りの段階を象徴する五点で装飾された阿字であり、「五点具足阿字」と呼ばれる.
種子「バーンク」の場合は、「」(漢字音:)が五点で装飾された婆字であり、「五点具足婆字」という.

阿弥陀如来の解脱を叶える種子

梵字「キリーク」は、「」「」「」「」の4文字の部分から構成されている.
種子キリーク
「キリーク」 = 左「カ」+ 左下「ラ」+ 中「イ」+ 右「ク」 

梵語「カライ」は煩悩の三悪「貪瞋癡(とんじんち)」(貪り怒り愚痴)を意味し、涅槃点(ク音)でもって「解脱」して彼岸に到達することを表している.