2015年10月21日

夢のような言葉『リタイア』

土曜日は13時で閉店して上京し、高校同期の仲間と喋りまくった。翌朝Oご夫妻とモーニングサービス。12時20分のスカイマークで千歳着は14時。機内で隣り合わせた赤ちゃん連れの新妻を手助けし、一ヶ月の赤ちゃんをだっこしてあげる。だって大量のウンチするんだもの。16時に砂川着。帰宅してすぐに老母をみまう。なんと今日は目を開けていた。この2週間ほどは、どんなに呼びかけても目を開けようとしなかったのに。驚く。7時くらいにはベッドに入ってしまった。ほぼ10時間の睡眠で起床、テレビ体操。いつもの事だが、月曜は忙しい。荷明けを終えて銀行に行き、選書の入金、4件を確認する。昼はチキンカレーを流し込み爆睡。四つの荷造り、発送を終えたらもう16時。慌てて市立病院へ、治験審査委員会。ドクターヘリが上空を舞い、救急車が走り回る中を店に帰り着いて、本日の選書。2件でギブアップ。歌会の投票もせにゃならぬのにヘトヘト。愛知県から「お話を聞かせてもらいたく…」という電話で、来週も忙しくなりそうだ。

hssk2 at 10:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年10月03日

冬の薔薇

冬の薔薇 先ず最初に訂正とお詫びをしなくてはなりません。先々週のこのコーナーで書きました「死への準備」日記の作者は須賀さんではなく千葉敦子さんです。忙しさに追われて、とんでもない間違いをして、気づきませんでした。お詫びいたします。時間に追われてやる仕事にはミスがつき物です。本当に気をつけなくてはいけません。仕事に追われて忙しくなる事が判っているのだから、対策は簡単です。自分の能力を見極め、無理をしないで一つずつ、着実に取り組むこと。具体的には、早寝早起きのペースを守り、気分転換も図りながら前に進んでいくということでしょう。学校時代の仲間内で俳句と短歌を楽しんでいます。偶数月は短歌、奇数月は俳句でして、お題を決めて、発表し合います。揃ったら、皆で投票しあい、作者あてっこなどもして楽しんでいるのです。とんでもない事になって、忙しくってしょうがないから、休会させてよと申し入れたら、叱られました。忙しい時ほど、30分でもいいから頭を切り替えてスッキリさせたほうがいいのだそうです。そう云われればそのとおり、誰もが決してヒマだから歌を作っているわけではないですよね。ランドセル俳人の小林凜君と日野原先生が共著で本を出しました。とてもイイです。

冬の薔薇立ち向かうこと恐れずに  ブックマン社 著者 小林凛 日野原重明 価格 1,404円(本体1,300円+税)


hssk2 at 17:43|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年09月27日

跳びはねる思考

跳びはねる 苦しくてたまらなくなると、空を見上げます。目に飛び込んでくるのは、抜けるような青空と白い雲です。見ている僕はひとりぼっちなのに、世界中の人とつながっている気分になります。自然はどんな時も、人々に平等です。そのことが僕の心を慰めてくれるのです。お日様は頭上を照らし続け、風は四六時中、僕の隣を通り抜けます。木々の緑は美しく、空気は澄んでいます。こんな自然の中でなら、ありのままでいられるのです。つらい気持ちはどうしようもありませんが、ひとりではないと思える瞬間が、僕を支えてくれます。…これは、会話のできない重度の自閉症者である東田直樹君がパソコンで綴った文章です。彼は云います…僕は、二十二歳の自閉症者です。人と会話することができません。僕の口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。普段しているこだわり行動や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、誰にも想像できないでしょう。只でさえ「生きづらい」世の中は、ますます弱者に厳しい社会になっていくようです。人はダレでも何らかの障害を抱えて生きています。どんな環境の中にあっても美しく咲こうとし、種をのこそうとする植物のように生きたいと云うのです。

『跳びはねる思考』 イ−スト・プレス 著者 東田直樹 価格 1,404円(本体1,300円+税)


hssk2 at 14:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年09月15日

明日の子供たち

明日の子供たち テレビで紹介された反響がものすごく、まだまだバタバタしています。ホームページやフェイスブック上では「新規の申し込みを中止しています」という表示にしてあります。それでもネット上に拡散してしまったようで、注文のFAXやメールが舞い込んでくるのです。現代の口コミの威力をまざまざと思い知らされています。
 送られてくるアンケートには、それぞれの方の思いのたけが綴られています。病と闘っている人、それを支えている人、家族を亡くしてぽっかりと穴が開いたような気持ちになっておられる方、就職を前にたとえようも無い不安に怯えている若者…事情は色々です。そんな方々の心の支えに(ほんの少しでも)なれればイイなと願いながら本を選び続けています。
 有川浩の新刊『明日の子供たち』は児童養護施設が舞台の物語。施設ですから、そこにはそれぞれに事情(問題)があって親とは一緒に暮らせない子供たちが一つ屋根の下で暮らしているのです。その『あしたの家』にやって来たのが、ソフトウェア会社の営業から転職してきた三田村です。TVのドキュメンタリー番組に触発されて転職を決意した、やる気だけは人一倍の主人公。子供も大人も互いに「何か」を抱えながら生きていくのですね。

『明日の子供たち』 幻冬舎 著者 有川浩 価格 1,728円(本体1,600円+税)


hssk2 at 14:49|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年09月11日

アレはスゴかった!!

photo 6月に収録した番組が先日、放映になりました。テレビ朝日の『アレはスゴかった!!』のなかで『田舎にあるのに全国から注文が来る本屋さんがスゴかった!!』という具合に取り上げられたのです。日曜の深夜、11時45分からなんてダレも観てないよ…と思ったのが大間違い。朝起きて、パソコンを立ち上げたらメールが数十通。スマホで調べて送信できるので、電話の比ではないのですね。そして店に行ったら、今度はFAXのデータが溜まっていました。本を選んで送って欲しいと言うものです。もちろん、お客様の人となりを想像して選書するわけですから、家族構成とか、仕事の内容、これまでの人生を振り返って楽しかった事や、悲しかった事を質問させてもらいます。そんなやり取りを、メールやFAXで繰り返すのですが、何しろ件数が増え続けるのです。お一人お一人にあった、きっと喜んでもらえるであろう本を考え無くてはなりません。急がなくていいからと言ってくださるお客様ばかりなので感激してしまいます。それにしても、こういう事に取り組むと、今を生きる日本人の姿が見えてくるようです。どんなに辛いことや厳しい体験をしても、心の拠り所を本に求めて下さっている事に気づかされるのです。

hssk2 at 09:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年08月21日

半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義

腰ぬけ愛国談義アニメ『風立ちぬ』を観ました。糸川先生がそっくりで笑ってしまいます。砂川地域大学、最初の講師でしたね〜、スゴイ方を呼んだものです。
 大正十一年にワシントンで海軍軍縮会議が開かれ、世界の建艦競争がストップします。軍艦ばかり造って武力を競い合っていると財政が持たないのが理由です。主力艦の保有量を制限され、日本対米英六割とされました。そのために鉄と工員さんが大量に余ってしまった。それを何とかしようという事で、隅田川に立派な鉄橋がばんばん架けられたと言うのですから驚きです。もしも軍艦をこさえていれば、多くの兵隊さんと一緒に海の藻屑となっていたでしょう。鉄橋は今でも立派に役に立っているのですから、歴史に学ぶべきです。
 これは半藤一利さんと宮崎駿さんの対談集『腰ぬけ愛国談義』に出てくるお話です。アメリカの力が弱まり、中国の軍事力がさらに増強される。アメリカの空母によって中国を抑止し、日本などの安全を保障する力が低下する。中国のミサイル攻撃を防ぎ得ない日本に基地を置く意味が無くなるという時代にさしかかっていると言う認識で、お二人は一致します。そうなら日本のような小国は世界の脇役として生きていくほうがいいのだと言うのです。

『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』 文藝春秋 著者 半藤一利 宮崎駿 価格 616円(本体570円+税)


hssk2 at 13:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年08月12日

日本の聖域

政治 国民の義務だと習ったから、選挙権を行使しなかった事は一度も無い。けれども、良かれと思って投票した候補が当選した事が一度も無いと嘆いていた人を知っています。確かに小選挙区制になってから、政党執行部の力は強まりました。政党にとって必要なのは「議席数」であって、「独自の政治的見識を備えた、選挙区の選挙民の支持がある政治家」ではないのです。国会運営でも、すぐに党議拘束をかけて異論を封じ込める事にそれが見て取れます。先祖代々「政治家」という家業を世襲する議員たち、それを選んだ選挙民が悪いのだと言われればそれまでですが、このままでイイとは誰も思っていないでしょう。前回の選挙結果では、自民党は選挙区で四三%、比例区で二八%の支持を得ただけです。その内閣が、立法、司法の意見に耳を傾ける事なく、いやむしろ最初から無視するつもりで閣議決定したのですから驚きです。その内容は「日本の軍事の全権は内閣総理大臣にある」というに等しいものです。どこかの国の指導者を「独裁者」等と非難できないどころか、世界からは同じように見られても仕方の無いことかもしれません。しかもこの「独裁」には選挙による正当性までもが付与されているのですからね。

『日本の聖域この国を蝕むタブ−』 新潮社 著者 「選択」編集部 価格 1,512円(本体1,400円+税)


hssk2 at 15:38|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年07月29日

認知症とわたしたち

認知症とわたしたち いつか自分も認知症になるかもしれない。飲み会などのくだけた会話で、こうした話題が出るようになりました。認知症の家族がいるという人は珍しくなく、身近な問題として自然に受け止められるようになりました。少し前までは認知症が「呆け」「痴呆症」と呼ばれていた事を思うと、社会が大きく変化していると思わざるを得ません。認知症も様々な病気のうちのひとつです。病気になっても、それに向き合い、生き生きと豊かな人生を生きていける方策はあるはずです。
 徘徊させないのではなく、徘徊しても安心な街をつくろう、という取り組みが行われているのは福岡県大牟田市。住民らが参加して行われる町ぐるみの徘徊模擬訓練は、お年寄り役の約40人が市内各所から「徘徊」し始めるという想定でスタートします。徘徊する人を発見して声をかければ訓練は終了。このために住民たちは、お年寄りへの声のかけ方などを講座で学んでいるというのです。砂川商店会連合会も砂川市立病院の協力の元、お買い物に来られたお年寄りへの対応などを学ぶ講座をスタートしました。少しの努力をこつこつと積み重ねることによって、なんとか安心して年齢を重ねていける町づくりをめざそうとしているのです。

認知症とわたしたち 朝日新聞出版 価格 1,404円(本体1,300円+税)


hssk2 at 15:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年07月19日

白蓮れんれん

白蓮れんれん ヒットを続けるNHKの連続テレビ小説ですが、今回の『花子とアン』は実に上手く出来上がっているようです。ストーリーが村岡花子と柳原白蓮の二本立てで構成され、互いに影響しあうように練り上げられているのです。もちろん村岡花子の生涯もドラマに満ちてはいるのですが、白蓮「事件」は当時の日本社会がひっくり返りそうになるほどの大事件でありました。筑豊の炭鉱王に嫁いだ大正天皇のいとこが、孫文の盟友・宮崎滔天の長男である社会運動家の帝大生・宮崎龍介と駆け落ちしてしまったのです。
 「女三界に家なし」と言いますが、朝ドラで仲間由紀恵が演ずる白蓮は華族とはいえ実母を知りません。九歳の時に北小路家に養子に出され、その家の息子と婚礼を挙げたものの離縁されて、実家の兄夫婦の世話になっていたという境遇です。伊藤伝右衛門と再婚してからも「夫だと思えば腹も立つし、涙も出る。親切な方の養女になったと思えばそうつらいこともない…」と言われ続けて辛抱し、籠の鳥として、恋の歌を作り続けていたのです。NHKがどこまで描けるかは判りませんが、宮崎家から提供された二人の手紙を元にこの作品で林真理子が、姦通罪があった時代の恋愛の真実に迫ろうとしています。


hssk2 at 10:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年07月11日

日本語が世界を平和にする

日本語が世界を平和にする カナダで25年間日本語を教えてきた友人が新刊を出しました。彼は主にケベックの大学生に英語やフランス語で日本語を教えてきました。試行錯誤の末に、日本で習ってきた文法では役に立たない、英文法の焼き直しだから間違っていると気がついたのです。まず英語は「I」アイと発語してから文章が続く事に注目しています。そうまず主語なんですね、日本語で言えば「オレが、オレが」という感じでしょうか。厳しい競争社会で言葉も自己主張が強くなっていったのだと考えられます。イギリスで英語に主語が登場するのはシェイクスピア、ピューリタン革命の頃と言われていますので、欧州の激動の歴史の中で英語が変化し、あの米語にまで至るという事なのでしょうか。実際に日本語を教えて、日本に送り込んだ学生は、ほとんどが優しい眼をして帰ってくるというのです。日本で生活し、日本語を話しているうちに、静かな声で話すようになるのです。言葉によって攻撃的な性格が姿を消してしまうらしいのです。しかも外人にとって日本語は、発音も文法も実に簡単で覚えやすい言葉なのです。日本語を話せる外人が増えれば世界は平和になるのだと主張します。であれば社内公用語を英語にするなんて…ネ。

hssk2 at 15:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年07月04日

だから日本はズレている

だから日本はズレている関東大震災が一九二三年でした。その後の日本の歴史が今にダブリます。二五年治安維持法、二九年世界恐慌、三一年満州事変、三二年五・一五事件、三三年国際連盟脱退、三六年二・二六事件、三七年日中戦争、そして四五年太平洋戦争敗戦と続きます。これの反省から二度と戦争に至らないように、行政府の独断専行を防ぐための仕組が憲法です。国民(いや世界)の財産とも云える日本国憲法の最も肝心な部分を政府が閣議決定で解釈変更してしまいました。
現代の世界では「強いリーダー」は(気分的には)求められていたとしても不必要です。とりわけ首相がころころ代わっても、それでも何となく上手くいってるような(成熟した)日本では「批判を恐れずに行動に移」すような強いリーダーなんか要らないと言い切っています。29歳の社会学者の視点は新鮮です。文科省の「心のノート」や自民党の憲法改正草案の文章を、まるでJポップの歌詞のようで意味が判らない。「ポエム」じゃ国は変えられないと一刀両断です。誰が安倍さんにそんな権限を与えたのか?立法府や司法はこれにブレーキを掛けられないのか?何も出来ないでいるおじさんたちに、「だからズレている!」と若者からのダメだしです。

『だから日本はズレている』 新潮新書 著者 古市憲寿 価格 799円(本体740円+税)


hssk2 at 15:43|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年06月28日

喰らう読書術

喰らう読書術 JR江差線で貨物列車が脱線事故を起こした影響で、雑誌・書籍の入荷が二日間も止まってしまいました。新刊雑誌は、書店にとっては主食のようなものですから、その入荷が止められると元気がなくなります。ま、今回はテレビ朝日の取材対応に忙しくしていましたから、ちょうど良かったと言えなくもないのですが…取材を受けるのは、仕事を(他者の眼で)見直す良いチャンスです。何日間か入荷が止まったぐらいで、色あせてしまうような品揃えなのか?という問いかけがなされていると考えてみる訳です。広い売り場に新刊を山積みするような大型店のマネは出来ません。であれば狭い売り場に並べる本は、全部面白い本だけにしたいというのが僕の「見果てぬ夢」なのです。『人間が発明した物の中でもっともよい頭(精神)の栄養、(他人の経験が詰まった)いわば頭の缶詰みたいなものが本です』と荒俣さんは書いています。ネットやテレビが判ったような気持ちになるのに対して、本は読めば読むほど知らないでいた世界がどんどん増えていきます。違った人生に触れ、思いやる事すらしなかった他人の心を判ってあげられそうな(やさしい)気持ちになれるのです。何よりも人生に退屈しなくなるでしょう。

喰らう読書術 一番おもしろい本の読み方 ワニブックス 荒俣宏 価格 990円(本体917円+税)


hssk2 at 15:11|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年06月25日

置かれた場所で咲きなさい

置かれた場所で咲きなさい 毎朝きまって5時半に目が覚めます。カーテンを開けて、冷たい水をまずは一杯。冷凍庫から出した豆をひいてコーヒーメーカーにセットし、玄関から朝刊を持って来ます。気になる本の宣伝や記事があればケータイで写メしておきます。お客様に訊かれた時の為にです。新聞を粗方チェックした後は(少しの時間でも)読書ですね。静かな時間は実に貴重なのです。6時20分くらいになれば妻も起きて来て、一緒にテレビ体操です。これも毎朝の習慣にすると、その日の体調が見事にわかります。布団を畳み、息を整えてから、仏壇にもお供えして、ここでやっとモーニングコーヒーと朝ごはん。テレビの情報番組は(つまらないけど)小さな音で流しておきます。後でパソコンによるチェックはできるので、流す程度でイイのです。むしろNHKBS朝ドラの『カーネーション』の再放送や、『花子とアン』のほうが真剣に見入ってしまいます。まあ以上が僕の出勤前の日課です。8時前には店に入って、荷物を開けたり、注文品を整理したりと仕事に追われる時間が待っているのです。ああもっとゆっくり本を読みたいものだと思う毎日なのですが、不平を言わずに『置かれた場所で咲きなさい』と言われてしまいます。

『置かれた場所で咲きなさい』 幻冬舎 著者 渡辺和子 価格 1,028円(本体952円+税)


hssk2 at 16:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年06月14日

そして、星の輝く夜がくる

そして、星の輝く夜がくる 阪神・淡路大震災の時に神戸で被災し、妻子を失った小学校教師が主人公の小野寺徹平です。東日本大震災によって甚大な被害を受けた東北三県から「教師が足りない」という要請を受けた神戸市教委が2011年5月に34人の教諭を派遣する所からこの物語は始まります。「まいど!」と教室に乗り込んでいった彼は、子供達に作文を書かせます。ただし「もうやってられんわ!って腹立つことを必ず書いてくれ」と言いました。そして黒板に「がんばるな!」と大書して、子供たちを驚かせた後は、作文をもとに『わがんね新聞』を作ります。創刊号に小野寺の檄文が踊ります。…第一小学校の諸君。町は全然復興しないし、家にも帰れない。こんな生活はイヤだ。いや、おかしいぞ!みんなもっと怒れ、泣け、そして大人たちに、しっかりせんかい!と言おう。『わがんね新聞』は、この世の中と大人たちに、ダメだしをする新聞です。…経済小説で知られた真山仁ですが、1995年1月17日には神戸で被災しています。あの時の復興のスピードと今回とのあまりの違いに驚き、書き上げました。被災地が抱えている問題とそれによって起きるであろう様々な感情をタブーを設けず踏み込んだという短編集です。

『そして、星の輝く夜がくる』 講談社 著者 真山仁 価格 1,620円(本体1,500円+税)


hssk2 at 11:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年06月07日

沈む日本を愛せますか?

沈む日本 「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに」と言ったのは井上ひさしさんですが、自分の考えを人に伝えるのは本当に難しい事です。話の中で「要するに」という言葉が何度も出てくるようですと、ご本人も要領を得なくなっている証拠です。国会での安倍総理の答弁が判り難いのも仕方がありません。何かこう劇的に企業業績が改善し、所得が倍増して、人口が増えるなんて中学生でも信じてはいません。これからの日本は、世界でも例の無い状況に足を踏み入れていくのです。手本となる国などありません。首相が将来のビジョンを示せないのは当然のことであるのです。海外から帰ってきた人たちが異口同音に「やっぱり日本はイイわ」と言うのが良くわかります。様々な欠陥や制度疲労は否めないものの、それでも今の日本のシステムは世界でもトップレベルの水準にあるのです。後はこれをぶち壊しにしないようにどう上手くやっていくかが問題なのですね。その為になら身銭を切るという人が多ければイイ国になりますし、政府なんか信用できないから年金も税金も払いたくないという人が増えてしまえば住み難い国になってしまうことでしょう。

『沈む日本を愛せますか?』 文春文庫 著者 内田樹 高橋源一郎  価格 767円(本体710円+税)


hssk2 at 17:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月30日

居酒屋ぼったくり

居酒屋ぼったくり たとえば吉田類さんがテレビで紹介するような居酒屋と云えばいいのでしょうか。東京の下町にひっそりとある居酒屋「ぼったくり」の物語。それぞれのお客に合わせた旨い酒と肴。美味しい飯と人情があるお店。これまでのグルメ紀行ものや、料理レシピ本とも違うジャンルが出来つつあります。コミックですと『深夜食堂』とかですし、このぼったくりもそうですが「お客一人ひとりを大切に扱ってくれる店」として描かれています。両作ともがフィクションであるのも、こんな店があったらイイな〜というノスタルジックな雰囲気に包まれているのも、現実にはかなり少なくなってしまったという事情からなのでしょう。チェーン店のマニュアルどおりのやたら早口な接客に辟易するのは、働く人がちっとも楽しそうでないという事が、こちらにも伝わってくるからです。外食というホンの少しの贅沢な時間を心豊かに過ごせないのであれば意味がありません。コンビニやチェーン店やディスカウントに食い荒らされた町では、会社の利益しか頭に無い店長や、疲れ果てたバイトから物を買わざるを得ません。人生という限られた時間を、心安らかに過ごせる店がいくらかでも残る町で暮らしていきたいと思うのです。

『居酒屋ぼったくり』 アルファポリス 著者 秋川滝美 価格 1,296円(本体1,200円+税)


hssk2 at 11:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月23日

アメリカ様

アメリカ様ネット上で米国メディアの論調を見ると、安部首相はかの国の総書記と同じくらい(もしくはそれ以上)にアブナイ指導者と思われているようです。彼の云う「積極的平和主義」をNYタイムズが社説でwhat he calls proactive pacifism と訳しているとの事。直訳すれば「彼のいわゆる先取り的平和主義」ですが、文脈から日本政府が「いずれ平和を乱す事になるかも?」と判断したら他国への武力攻撃を含む干渉を行うというニュアンスが読み取れます。そんな日本の(無意味に)積極的な行動によって、アメリカが日中間の紛争に巻き込まれるのはゴメンだし、東シナ海のちっぽけな岩礁をめぐって若いアメリカ兵の血を流すなんて(選挙もあるのに)とんでもないというのが民主党政権の雰囲気らしいのです。わが政府・与党のワシントンへのいじらしい程の忠誠心など全く伝わりません。これは日本国民がアメリカに隷従しているのではなく、権力者が自らの権力を守るために国民を売ってでも強者(米国)に媚びるという構図であるということを自らさらけ出してしまっているようなものです。アメリカを褒め殺し、日本人を皮肉るジャーナリスト宮武外骨なら今なんと云うでしょうか。

アメリカ様 ちくま学芸文庫 著者 宮武外骨 価格 1,080円(本体1,000円+税)


hssk2 at 09:51|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月16日

中国化する日本

中国化する日本単行本で出た時には、正直題名にビビッてしまい読まずにおりました。文庫化されて一読し悔やみました。おそらくは今世紀中に何度も取り上げられるテキストのうちの一冊になるでしょう。中国というのは実は毛沢東の共産中国の時代が特殊であって、習近平の中国=「新自由主義の独裁国家」がその本来の姿であるというのです。してその起源は宋朝に溯り(皇帝以外の)身分制や世襲制が撤廃された結果、移動の自由・営業の自由・職業選択の自由が確立されていたといいます。科挙を通じて官吏になる道も開かれた、世界で最初の新自由主義であったという訳です。男女は別としても機会の平等は確立され、無能な貴族連中による既得権益の独占が排除される一方で、ふるい落とされた人間には何の保障もありません。ですから華僑という形でリスクを分散してきたのであって、党幹部が子弟や資金を海外に移すのは一族の危機管理以外の何物でもありません。西欧や日本などは随分と遅れて中国化しつつあるのだというのです。元寇は「元祖TPP」vs.鎌倉御家人の反グローバリズムの闘いであったとか、日本の歴史がまるで違って見えてくるという驚愕の内容満載で、難しいことをやさしく説く35歳に脱帽です。

中国化する日本 増補版 文春文庫 日中「文明の衝突」一千年史 著者 與那覇潤 価格 756円(本体700円+税)


hssk2 at 15:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月10日

晴天の霹靂

晴天の霹靂 突然に心を揺すぶられて、抑えきれなくなりそうな時があります。韓国の旅客船事故のニュースは、実に痛ましいものでした。様々な情報の中で、イカ釣り漁船が集まって、海面を照らし続けたという事を聞いたときには、情景が想い浮かんでなにかこうぐっと来るものがありました。砂川ふくろうカードのポイント発行機は誕生日にお客様が利用されると「ハッピバースデイ〜♪」と音楽が流れます。お誕生日おめでとうございます、と言ってあげるとすごく喜ばれます。あるお客様は「そんな事を言われたのは何年ぶりだろう」と、こちらがびっくりするぐらい感激していました。涙(感動)というヤツは急に立ち現れます。劇団ひとりが描くのは、学歴もなければ、金もなく、もちろんもてない三十五歳の晴夫。普通に勉強して、普通にスポーツも出来て、そういう連中はどうせ普通のサラリーマンになって、普通に結婚して、普通の家に住むような、普通の空しい人生をおくるんだと馬鹿にしていた主人公を映画では大泉洋が演じます。この歳になってやっと「普通」を手に入れることの難しさに気づかされたのです。場末のマジックバーで鬱々とした日々を送り、「なんで生きてんだ俺?」とつぶやく彼に転機が訪れます。

青天の霹靂 幻冬舎文庫 劇団ひとり 価格 535円(本体495円+税)


hssk2 at 16:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月09日

人質の朗読会

人質の朗読会 この小説の設定には全く驚きました。旅行会社のツアーに参加した八人は、地球の裏側にある国の山岳地帯で反政府ゲリラの襲撃を受けて捕らえられてしまいます。ゲリラと政府の交渉はあくまで水面下で進められ、長く膠着状態が続き、人々が事件のことを忘れかけた頃に事態は急展開します。軍と警察の特殊部隊がアジトに強行突入し、激しい銃撃戦の末に、犯人グループは全員射殺、人質も全員爆死してしまいます。実は物語りはここから始まるのです。人質が閉じ込められていた山小屋には、特殊部隊がひそかに盗聴器を仕掛けてあり、録音されていたのです。聞こえてきたのは、人質たちが朗読する物語。「自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと損なわれない過去」を朗読する人質たちの声でした。盗聴した政府軍兵士が語ります。…彼らの朗読は、閉ざされた廃屋での、その場限りの単なる時間潰しなどではない。彼らの想像を超えた遠いどこかにいる、言葉さえ通じない誰かのもとに声を運ぶ、祈りにも似た行為であった。その祈りを確かに受け取った証として、私は私の物語を語ろうと思う。…人を代替の利くコストとしか見ない世相の中で、誰にも物語があるのだと作者は語りかけます。

人質の朗読会 中央公論新社 著者 小川洋子 価格 596円(本体552円+税)


hssk2 at 17:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)