紛らわしい言葉が原因で、ミスが起こることがあります。

ビジネスの世界では、日常生活ではあまり使わない言葉も多く飛び交うため、私も新入社員のころは苦労しました。

例えば、印鑑の押し方を表す言葉。

「捺印」「押印」「割印」「契印」「捨印」などいろいろあります。

先輩に教わりながら、印鑑の押し方いついて写真付きのマニュアルを整備したのを覚えています。

「たかが言葉」と軽んじてはいけません。

言葉の使い方一つで、重大な事故を引き起こすこともあります。

『超入門ヒューマンエラー対策』(中田亨著、日科技連)という本に、教訓になる事例が紹介されていました。

電車の踏切事故です。

ある踏切が何分間も閉まりっぱなしになっており、電光掲示板に「こしょう」(故障)と表示されていました。

これを見た歩行者は、「踏切が故障しているのだな」と受け止め、踏切内に立ち入ってしまいました。

すると電車が来てはねられ、死亡してしまいました。

実は、踏切は故障してはおらず、列車のダイヤが乱れていただけでした。

この踏切は、一定時間以上閉まったままだと、故障でなくても自動的に「こしょう」と表示される仕組みになっていたとのことです。

事故は、今から約10年前に発生。当時の報道(2007年2月27日付朝日新聞)によると、東京と愛知で相次いで発生し、愛知の事故では、鉄道会社の社員5人が業務上過失致死容疑で書類送検されたそうです。

これを契機に踏切での「こしょう」表示は全国的に廃止されました。

同著では、この踏切事故を「不適切なネーミング」の事例の一つとして挙げています。

そのうえで、ネーミングや取扱説明書・マニュアル等の作成にあたっては、作り手だけでなく「使用する人や読む人の意見を十分に反映させる」ことが大切だとしています。

私の職場でも書類等に名前を付けることがよくあります。

自分たちが分かれば良いという意識は捨て、常に「第三者」の立場にたってネーミングすることを心がけたいですね。


<参考図書>

「超入門ヒューマンエラー対策」

著者:中田亨(NEC-産総研人工知能連携研究室の副室長)
※ヒューマンエラー研究の専門家。誤解を招きにくい道具やマニュアル設計の設計や、小さいミスも漏らさず修正できる検査体制の構築に取り組む。

出版社:日科技連出版社