登山の際に携行する道具に「ビーコン」という安全装置があります。

雪崩で埋没してしまったときに、無線信号を発信して見つけてもらうための装置です。

このビーコン。雪崩の被害を減らすための大事な装置なのですが、困ったことも起きているそうです。

『事故がなくらない理由 安全対策の落とし穴』(芳賀繁著、PHP研究所)という本で、筆者の芳賀さんが山岳雑誌の記者から聞いた話として、以下のような問題を紹介しています。

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ビーコンが普及するとともに、従来は危険でだれも近づかなかったような場所に登山家が入り、雪崩にあうケースが増えてきたというのだ。救助隊員たちは、遭難事故が減らないばかりか、救助活動が困難で二重遭難の危険が高い場所にも行けなければならないケースが増えて困っているという。

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つまり、ビーコンによって安全性が高くなったはずが、それに甘えて危険をおかす人が増えたということです。

これでは元も子もありませんね。

また、この本では、似たようなケースとして、自動車の急ブレーキ制御装置「ABS」をあげています。

1980年代にドイツで行われ実験によると、ABS車と非ABS車では事故の件数や規模に大きな差が見られなかったそうです。

ABS車だと運転が乱暴になる傾向があり、そのせいで事故の減少に役立っていなかったようです。

同著によると、このように新しい安全技術を導入しても事故が減らないのは、安全になればなるほど人間の行動がリスキーになるからだといいます。

大事なのは、人の意識です。

そこで、同著は「人の安全に対するインセンティブを高める」ことを提案しています。

例えば、職場において「無事故だった場合の報奨金」を手厚くする、などです。

また、前向きな人生設計を持っている人は、安全な行動をとる傾向があるといいます。

先々楽しいことがあると、無茶をしなくなるのです。

「希望が持てるような明るい職場」づくりも、ミス防止には大事だということですね。


<参考図書>

「事故がなくらない理由 安全対策の落とし穴」

著者:芳賀繁(立教大学教授)
※国鉄鉄道労働科学研究所、JR鉄道総合技術研究所などを経て、現在は立教大学の現代心理学部教授。鉄道など交通機関の安全対策やリスク認知のスペシャリスト。

出版社:PHP研究所