2020年11月

2020年11月28日

今から始めるジャズピアノ(第6回)

〜テンション入りのヴォイシング〜

今回も引き続きテンションのお話。じゃあ実際どうやってテンションを使うのか?
今回はテンション入りのヴォイシングをご紹介しましょう。

ヴォイシングとは和音の配置のことを言います。
ジャズ理論にはもうすでにテンションを含めた整然とした和声の配置があるんですね。これはもう有無を言わさず覚えなければいけない必須項目なんです。

下の譜例をご覧ください。
テンション入りツーファイブ

これがテンション入りのツーファイブワンのヴォイシングです。ちなみにジャズで言う終止形はこのツーファイブワンのコード進行になります。キーに対して2番目のコード、5番目のコード、1番目のコードという意味で、コード進行の一番シンプルな骨組みを表したものとも言えるでしょう。スタンダードナンバーにも非常によく出てくる形ですので、言葉の意味だけでも知っておくべきでしょう。

まずは譜例の丸1と丸2を実際に弾いてサウンドを確かめていただきたいです。丸1がメージャーキーのツーファイブワン進行、丸2がマイナーキーのツーファイブワン進行になっております。

どうでしょう?テンションが入ってサウンドが豊かじゃありません?

弾き方は上段が右手、下段が左手のつもりで書いてますが、上段の4和音は左手でも弾けるようにしてください。その際和音全体を1オクターブ下げて左手に担当させれば程よい音域で弾けると思います。

上段下段両手で書いたのは、左手にルートのサウンドを置いてあげないと全体のサウンドの確認が出来ないためです。丸1の最初のコードを例に取ると、左手のレの音が無く右手のファ、ラ、ド、ミだけを弾くと、実際のサウンドはFmaj7に聞こえてしまいます。一人でコードサウンドを確認するときは必ずルートを含めてヴォイシングを弾きましょう。逆に言えばベーシストが居る時はこのルートは抜きます。

このメジャとーマイナーキーのツーファイブワンのボイシングは理屈抜きで覚えましょう。私が、「ジャズを弾いてみたい」という方に”何をしたら良いですか?”と聞かれたら、まずこれを覚えることを勧めるでしょう。この項目は必須です。

この終止形は12キーで覚える必要があります。マイナーも含めれば24種類。実際はこの譜例のまま移調していくと音域の問題が出てくるので、一部転回しなければいけません。24種類覚えるなんて嫌んなっちゃうでしょ?(笑)

なので今回はこの譜例だけのキーで、サウンドの確認だけで結構です。

そうそう、大事なことを忘れてました。この譜例でどこに何のテンションが使われているか。これも画像でまとめてみました。

テンション入りツーファイブ番号入り

数字が入るとモーレツに見づらいな。。

こんな具合に9とか13とかb9とかが含まれております。なぜこの配置になるのかとか、他のキーや転回形などは詳しく書いてあるサイト※はあるでしょうから、そちらを参考にしてください。

各キーのツーファイブワンが弾けるようになってくると、曲にも応用できるようになってきます。ジャズスタンダードの譜面集(コードとメロディが載っているやつ)を開いてみて、コードネームをみてツーファイブワンが探し出せたらそれに当てはめて弾いてみると良いでしょう。

◯m7 → □7 → ☆6(maj7でもいいよ)

みたいな進行。「ツーファイブワン」の定義として◯□☆はそれぞれ4度間隔でなければなりません。先ほどの譜例で言うと、Dm7のレから上にレ、ミ、ファ、ソと数えて4度。G7からソ、ラ、シ、ドと数えて4度。

「ツーファイブ」と呼ばれる ◯m7 → □7 だけでも良いですよ。むしろこちらの方がたくさんみつけられると思います。

今回のヴォイシングのことがわかったらまず弾けそうな曲を探してツーファイブ、ツーファイブワンを弾いてみてください。最初は左手ルート、右手コードだけで良いと思います。「もう余裕で弾けるよ」「頼むからもう曲を弾かせてくれ」という方は左手コード、右手メロディで先走っていただいても構わないと思います。

しかし、これでは曲は弾けないんですねぇ。おそらく専門家の方がこれを読んでも”これでは曲は弾けません”と言うでしょう。なぜならばキーの中で使えるテンションと使えないテンションがあるから、このままツーファイブのヴォイシングを当てはめても違和感が出てしまう箇所があるんですよ。

というわけなので私の教え方としては曲を弾くのはまだ先なんです(笑)。スタンダード集を使ってツーファイブを弾かせることを勧めながら(笑)。

今回はこの整然と配置されたテンション入りのヴォイシングを味わっていただくだけで十分であります。

※「ジャズ ABヴォイシング」で検索したら出てきましたが、AフォームBフォームと呼んでいるみたいですね。人様のサイトをリンクするわけにはいきませんので、各々検索して調べてください。



humanresorce at 09:00|PermalinkComments(0) 今から始めるジャズピアノ 

2020年11月20日

今から始めるジャズピアノ(第5回)

〜テンションノートに耳を慣らす〜

今回は前回に引き続き”テンションノート”について。
前回の後半は弾き方の話に少しそれてしまったので、話をまたテンションノートに戻しましょう。

そして理論書もそうですが、文章だけで音楽理論を理解しようとすると頭でっかちになってしまいますので、ここで少し耳を使って”聴く”という作業をやってみましょう。

”テンションノート”で検索してみました?
もう随分と古く長く使われてきたコードネームの理論は元々は商業音楽用に作られたと言われています。「どの音が綺麗に響いて、どの音が汚く響かないので使っちゃダメ」とかって誰が決めたんだよ、とか完全に主観じゃん、とか言わずにここは確実に全て覚えた方が良いです。理論ですから、全てを認めたら自由になってしまいますから。自由とデタラメは紙一重です。

で、覚えると言いましたが、ここで大事なのは耳を使って覚えるということです。今回は実際鍵盤で音を鳴らしてテンションサウンドを聞いてみましょう。

写真をご覧ください。
テンション譜例
三つの和音を楽譜にしてみました。丸1はCmaj7(9)、丸2はCm7(9)、丸3はC7(b9,#11,13)です。
まず丸1と丸2を確認してみてください。多分、耳馴染み良い綺麗なサウンドに聞こえるかと思います。では丸3はどうでしょう?

もちろん丸3も立派なテンションです。音を言葉に表すのは難しいのですが、なんとも言えない「これぞジャズ」みたいな音に聞こえませんか?

ただ、この私の主観的な感想に流されないでください。ここが今回のポイントで、自分で判断するということです。

芸術作品に対する感想なんて人それぞれ。複数の見方、角度があって、感想も複数あるから芸術は楽しいんです。急に芸術に対して語り始めましたが(笑)、テンションに関しても使っても良いとされているテンションは理論としてまとまってますが、人によってその印象は個人差があるはずなんです。

先ほどの譜例1,2,3はどう聞こえましたか?
”どれも初めて弾いた音。かっこいい!”
”元々ジャズはちょっと弾いていたんで、全部知っていますし、よく使うテンションです”
こんな感想を私は推測してみましたが、みなさんそれぞれ感じたままを心に留めておいてもらえればOKです。

使えるテンションノートの表のようなものはここでは割愛していますが、できれば全部弾いて耳で確認しておいてほしいです。”覚える”というのは後からついてきます。まずサウンドを味わって、”これは好きだな”、”これは?合ってんのか?本当に”とかの感想を感じながら弾けば、自分の好みとともにサウンドキャラクターが自然と耳から記憶されていきます。

また初めて弾かれる方は、これが許可されているテンションノートだと認識しながら弾いてください。聞いたことなのない不思議なサウンドも受け入れる耳を作りながら弾いてみましょう。

ただ、今回はCをルートに全て説明しているので、問題は縦※で見た時の聞こえ方ではよくわからないという点。実際はコード進行の横の流れの中でテンションノートも機能しているので、縦だけでは理解しづらいので、曲を弾きながらテンションを感じた方がより理解しやすいと思います。

この項目を理解するにはメロディの音符が長いものが多く、ゆっくり感じられるスローバラードがお勧めです。ある程度ピアノ経験がある人なら曲を弾きながら研究しても良いでしょう。My foolish heartなんか良いんじゃないでしょうか?

今回大事なポイントはテンションノートに”耳を慣らす”ということ。バリバリ弾いてテクニック的なことを鍛えることばかりが練習ではなく、じっくりサウンドに耳を澄ますことも練習だということをお忘れなく。

※縦と横という表現はスコア(総譜)のイメージからくる言葉で、縦を和声、横を時間経過(メロディや和声の流れ)のことを指しています


humanresorce at 09:42|PermalinkComments(4) 今から始めるジャズピアノ 

2020年11月13日

今から始めるジャズピアノ(第4回)

今から始めるジャズピアノ(第4回)
〜テンションノートを入れてみよう〜

第4回目になりますが、こうやって進めてみると初心者向けでかつ上級者にも役立つ情報をと考えると難しいものですね(~_~;)
前回のコードの仕組みは全てルートを”C”に固定して説明してますので、今回他のルートを例にとって説明とか音程の数え方とかやるべきかなーと迷いましたが、辞めました(笑)。

基準は”検索すれば分かる”情報はスキップすることにします。そうじゃないとすごく重たい講座になってしまいますから。この講座は理論の隙間、もしくは違った角度からヒントを与えるという視点で書いていきますので。

さて前置きはこのくらいにして、今回はテンションです。
テンションは直訳すると「緊張」ですが、これは自分としてはしっくりきていません。日本語のイメージに合う言葉がありませんが、「淡い音」「大人びた音」という表現になりますか。定義としては1オクターブ以内にあるルートから3度重ねた音(1,3,5,7)をコードトーン、それ以上の音(9,11,13)をテンションと呼んで分類しています。

サウンドカラーというくらいですから色で例えると分かりやすいのですが、コードトーンが原色でテンションが足されると中間色になるイメージでしょうか。ルートに近づくほど原色が強くなり、逆に離れてテンションを豊富に使うと中間色や淡いサウンドを表現できるという感じです。

今回はこのテンションを含めた音を体感してみましょう。
まずは左手で
ド、ミ、ソ、シを押さえて同時に鳴らしてみてください。これがCmaj7のコードトーンです。次に右手でレの音を足して5音同時に鳴らしてみてください。レの音は9thと呼ばれるテンションで、今ならしたサウンドがCmaj7(9)というコードになります。

どうでしょう?和音が豊かになった感じがしません?

さらに右手にファ#を足して6音で弾いてみましょう。さらに今度はラも足して7音で。これでCmaj7の9,#11,13thのテンションサウンドは体感できたと思います。

じゃあ他の種類のコード、例えばCm7やCm7(b5)、Cdimも全て同じ音を足せば良いかというとそうではありません。コードの種類によって使えるテンションは変わってきます。これは”テンションノート”で検索すれば出てくると思いますので、詳しくはそちらをご覧ください。

実際は右手のソロの伴奏の時に左手など、片手で弾けるように不要な音を省略して4音でまとめたりします。

コードの種類を覚えるのも大変なのに、それに付随するテンションまで覚えるなんて至難の技(笑)と思いません?

ここからがこのブログの見せ場です。違った角度から見てみましょう。

先ほどのCmaj7(9)、弾いている音はド、ミ、ソ、シ、レ。見方によっては”C”+”Em7”
に見えません?もう一つ言うと、先ほど弾いた7音、”Cmaj7”+”D(三和音)”にも見えません?
コードを理解する時に、この「○○+△△」の考え方が理解を楽にしてくれますし、私は実際この弾き方を多用してます。

テンションが無くてもシンプルに同じ考え方ができます。
この考え方でいくとCmaj7は”C”+”Em”ですよね?

Cmaj7の転回形を弾こうとすると、
1)ド、ミ、ソ、シ
2)ミ、ソ、シ、ド
3)ソ、シ、ド、ミ
4)シ、ド、ミ、ソ
の4種類ができますが、実際あまり2と4は使わないんですよね。1と3も左手ルートを弾く場合、もしくはベースが居る場合は右手の”ド”が重たく感じます。

ボーカルや何かフロント楽器の伴奏をデュオでやるときは左手ルート、右手コードという弾き方をよくやります。その際、「Cmaj7だから、左手ルートのCと右手はドミソシで」とは弾かないんですよ。なぜならば、左手のルートが右手で重複してしまうから。

そこで先ほどの考え方が活躍します。左手ルートのCを弾いたらは右手はEmの3和音を弾けば良い。なんなら右手Emの転回形を上へ上がって行こうもんなら、それはそれは綺麗なサウンドになるわけです。

ここまで書けばこのヒントを元に色々なコードの弾き方に応用できると思います。あとは検索を駆使しながら試してみてください。たくさん「○○+△△」は隠れてますよ。


humanresorce at 10:37|PermalinkComments(0) 今から始めるジャズピアノ 

2020年11月06日

今から始めるジャズピアノ(第3回)

〜コードネームの仕組み〜

では今回はコードネームの仕組みについて。
コードネームはその小節、その箇所でどのようなハーモニーが積み重ねられているかを理解する、とても簡易的な仕組みです。コードネームの長所は、ざっくりとサウンドカラーを認識できること、ベース、コード、メロディ全てのパートに活用できる”融通性”です。逆に短所はクラシック音楽のように、「この和声の積み重ね方じゃないと表現できない」というような、詳細を限定して伝えるのには向きません。

前回にお伝えした通り、例えば自分の弾きたい曲に出てくるコードからまず丸暗記していくやり方でも構いません。ただ、先々ジャズを演奏するにあたって、だんだん複雑になっていくと対応できなくなってきますので、仕組みくらいは理解しておいた方が良いかと思います。もうわかっている方も、初心者に説明する時の参考にしてもらえると役に立つかと思われます。

写真をご覧ください。
コード図

この例ではCMaj7(シーメジャーセブンス)というコードを、四箇所に分類した図です。この四箇所に和声を組み立てる情報が書かれています。

丸A・・・左側のアルファベット、これはルート(根音)を表しています。C=ド、D=レ、E=ミ、F=ファ、G=ソ、A=ラ、B=シとなっていて、半音上げる場合は#(シャープ)、下げる場合はb(フラット)をアルファベットの右上に付けます。根音は主にベースを弾くときに必要な情報です。

丸B・・・アルファベットの右下に丸で囲った部分に3rd(ルートから数えて三番目の音)の情報を表します。例では空白の状態でCMaj7ですので、”ミ”の音を弾くという指示であることが分かります。もしここに小文字のm(もしくは”−”)が記入されると、3番目の音は半音下げることになります。Cm(Maj7)と書かれていたら、小文字の”m”が入っているので、3番目の音は”ミb”を弾くことになります。

丸C・・・右下の情報は7th、もしくは6thの情報が書かれています。ここは”6”、”7”、”Maj7”の三つの選択肢しかありません。例の通りもしルートがCであれば、そこから数えて6(番目)=ラ、7=シb、Maj7=シの三つです。

丸D・・・右上の情報は5th、もしくは9番目以上の音(テンションノート)の情報が書かれています。例えば”b5”と書かれていれば5番目の音をフラットさせる、”#5”と書かれていれば5番目の音をシャープさせる。何も書かれていない場合はそのままです。例の通りルートがCであれば、b5=ソb、#5=ソ#、何も表記なし=ソとなります。

9番目以上の情報は主に9、11、13番目の音の情報があります。それぞれシャープがついたりフラットがついたりすることがあります。例の通りルートがCであれば、9=レ、11=ファ、13=ラとなります。この右上のスペースは大抵カッコで括られて表記され、複数の場合は縦並びで表記されます。
大抵のコードはこの通り、ルートさえ鍵盤の場所がわかればそこから数えてどの音を加えて弾けば良いか分かるようになっています。

その他、上の方法で数えてわからないコードは以下の通りになります。
Cdim(ディミニッシュ)、Caug(オーギュメント)、Csus4(サスフォー)、Cadd9(アドナインス)
Cdim・・・これはルートから数えて鍵盤2個(黒い鍵盤も含む)を飛ばして次の音を加えていけば完成です。Cから数えてC#、Dと飛ばしてEb、次はE、Fと飛ばしてF#、次はG、G#と飛ばしてAという4つの音で構成されます。Cdim=C、D#、F#、A
※dim7じゃないの?という説明に関してはややこしくなるので、統一してdimで説明します。

Caug・・・これはルートから数えて鍵盤3個を飛ばして次の音を加えていけば完成です。Cから数えてC#、D、D#と飛ばしてE、次はF、F#、Gと飛ばしてG#という3つの音で構成されます。Caug=C、E、G#

Csus4・・・これは3番目の音を4番目に替えてあげるだけです。Csus4でしたらミの音をファに替えるだけです。Csus4=C、F、G

Cadd9・・・これも9番目の音を加えるだけ。Cadd9でしたら元々の三和音にレの音を加えて、ド、レ、ミ、ソ、と四つ弾きます。
※9番目のレですが、実際は1オクターブ下げて2番目の音として弾きます。

以上ですが、文章で伝えようとするとだいぶ複雑に見えてしまいますね(笑)
実際鍵盤を手にしてみた方がもっと簡単です。
 
最後に写真にまとめたのはよくある質問で、同じ意味の記号をまとめたものです。以下の写真を参考にしてください。印刷物や人によって選ぶ記号が違ったりするので、これが混乱させられている要因の一つかと考えられます。

同意音楽記号修

本来音程を数えるには”長3度”とか”短3度”とか”完全5度”とかいう音楽用語を使います。要望があればここで説明しても良いのですが、これに関してはいくらでも「音程の数え方」で検索すれば出てくると思いますので、そちらを参考にしてください。

今回は音楽の経験が無い方にも鍵盤で数えてわかっていただけるように説明していますので、多少複雑になってしまいましたが、コードのことがわからなくても、音程の数え方がわからなくても鍵盤で数えれば分かるという説明になっております。(将来的には音程の数え方もわかった方が良いとは思いますが・・・)

問題は上記の例は良いのですが、ルートが変わった場合ですよね(・・;)
1オクターブに鍵盤は12個ありますから。上記の方法はメジャースケールが分かってないと数えられないんです。。

なのでスケールのことはまた別の機会にやりますが、何より基本スケール(ドレミファソラシド)は弾けないと、ということになりますよね。

今回はkey of Cのケースだけで良いと思います。とにかくどんな仕組みでコードが積み重なっているか、表記をどう読み解くかだけ分かっていただければOKです。

humanresorce at 16:48|PermalinkComments(4) 今から始めるジャズピアノ 
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