青年期の思考の特徴
1.情報処理能力の発達
私達は様々な情報を受け取ると、何らかの判断をして応答したり行動する。こうした過程を情報処理という。情報処理能力には、流動性知能と結晶性知能がある。

①流動性知能:新しいことを学習したり、環境に適応したりするために生まれつき備わっている力で、推理、短期記憶、知覚速度などがこれにあたる。青年期から成人期でピークに達する。
②結晶性知能:成長する過程で身につけていく、知識や経験の豊かさと結びついた能力。生涯にわたって発達する。
➔青年期は流動性知能が発揮される時期で、また結晶性知能が深化しはじめる時期。
➔加齢によって衰えやすいのは流動性知能、衰えにくいのは結晶性知能である。
2.抽象的思考の獲得
青年期は抽象的に物事を考えることができるようになる。11、12歳頃に芽生え、15、16歳頃に安定する。形式的操作は、①仮説演緯的思考、②組み合わせ思考、③命題的思考、の3つが可能になる思考のことをいう。
➔もっとも、すべての青年が形式的操作の段階に達するわけではない。

3.思考過程の意識化
青年期の思考の大切な特徴は自分の思考過程を意識できることにある。自分自身の判断や思考の動きを自覚して、それを制御することをメタ認知という。➔ ①自己の認知についての知識をもち、②自分の認知過程の状態を把握し、③目的に応じて自分の認知行動を制御できること、をいう。

4.視点取得
視点取得(perspective taking)とは他者の見方や立場で物事を考えたり感じたりすること、簡単に言えば「人の考えや気持ちがわかること」を意味している。
✱渡辺は視点取得の能力を、「自分を主張し、他者の立場や気持ちを推測し、自己と他者の立場の違いを調整し、問題解決を図る能力」という対人関係における交渉能力や問題解決能力を含めて拡大的に定義しており、それを「思いやり」と言い換えている。
➔青年は自己内省力が高まると同時に、人に見られる自分を強く意識する傾向がある。
エルカインドは、青年期前期の子どもは心の中に「想像上の観衆imaginary audience」を形成し、自分はいつもその観衆に見られているという自意識過剰な状態に陥りやすいと指摘。
➔青年期前期は青年自身の関心内容と他人の思考が向かう対象とが未分化なため、思考の自己中心性が現れる。
【視点取得の発達】
セルマンは、幼児期から青年期までの視点取得能力の発達は5つのレベルがあると述べている。
①レベル0では、自分の気持ちや感情が他者と区別されず自己中心性が見られる。
②レベル1では、自他の視点を区別して理解することが可能になり、人が主観を持つ存在であることがわかるが、自分の視点で一方向的にとらえることしかできない。
③レベル2では、二者関係における他者(あなた)の視点で自分の視点を理解するという二方向の互恵的な理解が可能になる。
④レベル3では、二者関係を超えた彼あるいは彼女のような第三者の視点で自分や自分たちの視点あるいは自分たちの関係性を理解することが可能になる。
⑤レベル4では法律や道徳といった社会的慣習などの一般化された他者の視点の文脈で自分自身の視点を理解するようになる。
☛視点取得の発達は知能の発達や社会的経験による学習の影響を受けていると考えられ、個人差も認められる。
【視点取得と社会性】
☛視点取得と社会性視点取得の能力は人が社会生活を送る上で極めて重要で、社会性や社会的スキルの一側面。例えば、視点取得は共感性と深く関わっており、人の気持ちを思いやることを可能にする基盤である。
5.現代青年の人生観
人生観とは「人生の目的とは何か」「自分の人生をどう生きるのか」といった問いに対する答えであり、人生や生き真についての見解をいう。

☛熊野道子は日本の大学生を対象にした質問紙調査の結果から、①「集団や社会に積極的に参加するような生き方をしたい」といった協同的人生観、②「努力することによって人生を実りあるものにしたい」といった努力的人生観、③「隣人を押しのけても出世することだけを考えて生活したい」などを否定する博愛的人生観、④「人は人、自分に合った生き方をしたい」といった多彩的人生観、⑤「自分は社会の秩序に従って生きていきたい」といった道徳的人生観、⑥「他人にわずらわされることなく自分だけの内面生活を続けたい」といった自己沈潜的人生観、という6つの人生観を抽出した。
➔調査の結果、多彩的人生観や努力的人生観が高く支持された。

【文献】
『よくわかる認知発達とその支援』(ミネルヴァ書)
『図でよむ心理学 発達』(福村出版)
『やさしい青年心理学』(有斐閣アルマ)








1.情報処理能力の発達
私達は様々な情報を受け取ると、何らかの判断をして応答したり行動する。こうした過程を情報処理という。情報処理能力には、流動性知能と結晶性知能がある。

①流動性知能:新しいことを学習したり、環境に適応したりするために生まれつき備わっている力で、推理、短期記憶、知覚速度などがこれにあたる。青年期から成人期でピークに達する。
②結晶性知能:成長する過程で身につけていく、知識や経験の豊かさと結びついた能力。生涯にわたって発達する。
➔青年期は流動性知能が発揮される時期で、また結晶性知能が深化しはじめる時期。
➔加齢によって衰えやすいのは流動性知能、衰えにくいのは結晶性知能である。
2.抽象的思考の獲得
青年期は抽象的に物事を考えることができるようになる。11、12歳頃に芽生え、15、16歳頃に安定する。形式的操作は、①仮説演緯的思考、②組み合わせ思考、③命題的思考、の3つが可能になる思考のことをいう。
➔もっとも、すべての青年が形式的操作の段階に達するわけではない。

3.思考過程の意識化
青年期の思考の大切な特徴は自分の思考過程を意識できることにある。自分自身の判断や思考の動きを自覚して、それを制御することをメタ認知という。➔ ①自己の認知についての知識をもち、②自分の認知過程の状態を把握し、③目的に応じて自分の認知行動を制御できること、をいう。

4.視点取得
視点取得(perspective taking)とは他者の見方や立場で物事を考えたり感じたりすること、簡単に言えば「人の考えや気持ちがわかること」を意味している。
✱渡辺は視点取得の能力を、「自分を主張し、他者の立場や気持ちを推測し、自己と他者の立場の違いを調整し、問題解決を図る能力」という対人関係における交渉能力や問題解決能力を含めて拡大的に定義しており、それを「思いやり」と言い換えている。
➔青年は自己内省力が高まると同時に、人に見られる自分を強く意識する傾向がある。
エルカインドは、青年期前期の子どもは心の中に「想像上の観衆imaginary audience」を形成し、自分はいつもその観衆に見られているという自意識過剰な状態に陥りやすいと指摘。
➔青年期前期は青年自身の関心内容と他人の思考が向かう対象とが未分化なため、思考の自己中心性が現れる。
【視点取得の発達】
セルマンは、幼児期から青年期までの視点取得能力の発達は5つのレベルがあると述べている。
①レベル0では、自分の気持ちや感情が他者と区別されず自己中心性が見られる。
②レベル1では、自他の視点を区別して理解することが可能になり、人が主観を持つ存在であることがわかるが、自分の視点で一方向的にとらえることしかできない。
③レベル2では、二者関係における他者(あなた)の視点で自分の視点を理解するという二方向の互恵的な理解が可能になる。
④レベル3では、二者関係を超えた彼あるいは彼女のような第三者の視点で自分や自分たちの視点あるいは自分たちの関係性を理解することが可能になる。
⑤レベル4では法律や道徳といった社会的慣習などの一般化された他者の視点の文脈で自分自身の視点を理解するようになる。
☛視点取得の発達は知能の発達や社会的経験による学習の影響を受けていると考えられ、個人差も認められる。
【視点取得と社会性】
☛視点取得と社会性視点取得の能力は人が社会生活を送る上で極めて重要で、社会性や社会的スキルの一側面。例えば、視点取得は共感性と深く関わっており、人の気持ちを思いやることを可能にする基盤である。
5.現代青年の人生観
人生観とは「人生の目的とは何か」「自分の人生をどう生きるのか」といった問いに対する答えであり、人生や生き真についての見解をいう。

☛熊野道子は日本の大学生を対象にした質問紙調査の結果から、①「集団や社会に積極的に参加するような生き方をしたい」といった協同的人生観、②「努力することによって人生を実りあるものにしたい」といった努力的人生観、③「隣人を押しのけても出世することだけを考えて生活したい」などを否定する博愛的人生観、④「人は人、自分に合った生き方をしたい」といった多彩的人生観、⑤「自分は社会の秩序に従って生きていきたい」といった道徳的人生観、⑥「他人にわずらわされることなく自分だけの内面生活を続けたい」といった自己沈潜的人生観、という6つの人生観を抽出した。
➔調査の結果、多彩的人生観や努力的人生観が高く支持された。

【文献】
『よくわかる認知発達とその支援』(ミネルヴァ書)
『図でよむ心理学 発達』(福村出版)
『やさしい青年心理学』(有斐閣アルマ)







