どこまでも続く青い空、冷たいアスファルト、目の前にいる人人人人人。
その中の一人が、言う
「忘れた方がいいのかもな」
なに、を?
また一人、一人、一人、一人
「ーーーーて、ーーかもしーだーー」
「私はーーーーを、すーーーーの」
「ーーーーがいなければ」
「ーーめぇがーーしなーーーー!」
「ーーーーー、ーーーーー?ーー」
頭がぐちゃぐちゃになる
一人一人の言葉が、オレを、俺、をあ、ああああ、割れる気持ち悪い痛い苦しい 悲しい
夢なら早く覚めてくれ
ここに居たくない
誰か
誰か
誰か
「〜っ、はあっ!!」
パッと目を見開くと、そこには真っ白な天井があった。そうか、オレは寝てたのか…
時計を見ると7時50分。そろそろ支度して出なければ遅刻だ
一階に降りると母さんが「おはよう」と言って朝食を出してくれる
今日はご飯にわかめと大根の味噌汁、鯖の塩焼きにたくあん。
母さんはその日の気分で和食にしたり洋食にする。たまにどこの国だかわからない民族料理を出したことがある。
オレは洋食より和食派だ、パンは食べた気がしない。お米食べろ!って誰かも言ってるし、誰か忘れたけど。
「ご馳走さま」
「はい、お粗末様でした」
オレは食べ終わった食器を片付け、トイレに行き歯を磨いて制服に袖を通した。
鞄を持って靴を履く。母さんに
「いってきます」
と言えば、いってらっしゃいと返ってくる。
もう8時10分、急がなくちゃ。
「…っ、 せ、セーフ!」
8時27分、どうにか間に合った。30分を過ぎると風紀委員にお叱りを受ける羽目になる、お叱りといっても説教ではなく暴力だけど。
玄関で靴を履き替える時にふと気づいた。門の前に恭弥がいなかった。どんなことがあろうと風紀の仕事は欠かさなかったのに、なにかあったのだろうか。
気になったが、時間が危ないからオレは応接室には寄らずに教室に入った。
「おはよー」
「おー、ツナおはよっギリギリだな」
「おはようございます、十代目!」
席の周りには既に山本と獄寺君がいた。獄寺君が日直で早く学校に行くのをランニングしていた山本が見かねて一緒に登校したらしい。人がいなくてつまらなかったと獄寺君が嘆いていた。
「ぜんっぜん人いなくて、しかもこいつと二人きりでつまらないったらありゃしません。」
「で、教室でぐだぐだしてたら先生に見つかって掃除手伝いさせられたんだよなー」
「大変だったね」
「で、床拭いてたらこいつが『雑巾掛け競争しようぜ〜』って言い出して…」
典型的な…あと獄寺君、物まね似てないよ
「で、やったの?」
「やったぜ、ただ拭くよりゲームみたいにしたほうが楽しいし、早く終わるだろ?」
「まあそうだね…ちなみにどっちが勝ったの?」
「あー、騒ぎすぎて廊下の途中で怒られちった」
・・・目に浮かぶなぁ
キーン…コーン…
カーン…コーン…
ガラガラガラッ
チャイムと共に勢いよく教室に入ってきたのは京子ちゃんと知らない女子だった
「はぁっはぁっ…なんとか間に合った〜・・・あ、おはよう。ツナ君」
荷物を机に置いて挨拶してくれた。かなり急いできたせいか、シャツのボタンが掛け違っている。
目のやり場に困る。
「お、おはよう。京子ちゃん・・・」
目を逸らしながら言ったせいか、不思議そうに首を傾げた。
すると、同じく京子ちゃんと一緒に入ってきた女子が京子ちゃんのシャツに手を伸ばした。
「京子ちゃん、ボタン、掛け違ってるよ」
「あ、ありがとう。ゆめちゃん」
女子の名前は「ゆめ」と言うらしい。俺のいた世界では見かけない顔だ。
京子ちゃんの友人だからと言って、俺に関わり合いがあるというわけでもないだろう。(黒川はまぁ・・・うん)
「ずいぶん遅かったじゃねーか、ゆめ。なんかあったのか?」
・・・ん?
「ああ、目覚まし時計セットするの忘れちゃって。京子ちゃんは私を待っててくれて遅くなっちゃったの」
「ははっゆめがそんな理由で遅れそうになるなんて、今日は雪でも振りそうだなっ」
・・・は?
「もう!山本君、からかわないでよ!私だって遅れることくらいあるもん!」
????
え、なに。この世界では山本も獄寺君もこの子と交流があるの?
しかも、獄寺君が女の子の名前を呼ぶなんて…ハルのことも「お前」とかでしか呼ばないのに・・・
「どうかした?そんな固まって・・・具合悪いの?」
「うわっ!?」
ぼーっと考えていると、目の前にその子の顔があってびっくりした。
心臓に悪いって!
「よかった・・・そんなに大きな声出せるんだったら大丈夫だね!
ツッ君♪」
To Be Continued…