2004年09月26日

『乳房、花なり』荒木経惟、宮田美乃里

荒木_乳房乳ガンで乳房を失った歌人・宮田美乃里にヌードを撮って欲しいと手紙をもらった荒木。

「朽ちて散っていくように、ありのままを受け止めて生きていきたいと思うのです…普通の均整の取れた裸体ならば飽きるほどご覧になっておられることでしょう。けれども、私は、ちょうど枯れかけた花のように、片方の乳房がありません…そこには、私の人生があります」

荒木が写真を撮り、宮田が歌を詠む。
乳房がなく、代わりに手術の傷痕が残る宮田の胸は、意外にも醜さを感じさせない。顔も凛として美しい。しかし、美醜の判断は個人の好みによるところが大きい。元来、荒木は比喩ではなく「枯れかけた花」そのものも頻繁に被写体にしてきたし、腹の出た人妻のヌードを撮っても「すべての女は美しい」とうそぶいてきた。(後になって、やっぱり美しくないと言ったりもする)問題は、第三者が判断する被写体の美醜ではないのだ。
宮田が手紙を書いたのが、他のどの写真家でもない荒木であること。若くて健康的であるなら篠山紀信に撮ってもらう方がいいだろう。藤代冥砂、若木信吾、蜷川実花でもいい。しかし、乳房を失った時には荒木以外に選択の余地はないだろう。そもそも、荒木という写真家の存在がなければ、乳房を失った体を写真に残したいと思っただろうか。この写真集はそんな気にさせる。荒木は唯一無二の写真家なのである。

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hustla_1_push at 04:50│Comments(4)TrackBack(0)写真集 

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この記事へのコメント

1. Posted by ぽかり   2004年10月04日 14:32
はじめまして、こんにちは。
私もこの写真集、拝読しました。
で、同じことを感じました。
荒木氏のすごさというのか、存在の独自性をつくづくと感じました。
どうしたら、こんな写真がとれるのだろうかと、いつもこの人の写真を見て思います。この写真集は彼の写真の中で特に好きな写真というわけではありませんが、やはりそれでもすごいと思いました。
2. Posted by HUSTLA   2004年10月05日 00:00
荒木はフレームの中にストーリーを作れる写真家ですからね。
物語る写真家であり、物語られる写真家でもある。天才です。
対して篠山は、フレームの外からの良き観察者です。これも才能。
凡人は、凡人であるが故に、凡人である自らを、時に凡人と気付かず、また時に凡人だと開き直りながらも、物語ってしまうものです。これは非常に見苦しいので気をつけたいです。
3. Posted by 聡   2004年12月05日 02:19
なぜ、この写真集に対しての評論に、藤代氏、若木氏、蜷川氏の名前を出す必要があったのですか?教えてください。
4. Posted by 智野   2004年12月05日 12:26
藤代冥砂、若木信吾、蜷川実花でもいい。しかし、乳房を失った時には荒木以外に選択の余地はないだろう。そもそも、荒木という写真家の存在がなければ、乳房を失った体を写真に残したいと思っただろうか。この写真集はそんな気にさせる。荒木は唯一無二の写真家なのである。

僕も荒木以外には大橋仁くらいしか思いつかないですね。冬春展に行って荒木の撮った宮田さんの写真を見て凄く感動しました

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