日赤看護大学での「ふれあいコンサート」、無事終わりました。
日赤広島看護大学で行われた「第4回ふれあいコンサート」に朗読で出演しました。(主催:日赤看護大学男性健康づくりグループ 共催:日赤看護大学学園祭実行委員会、青の会 後援:廿日市市教育委員会)
今回は沖縄の放浪詩人として知られる山之口貘の詩と人生を、茨木のり子さんの『貘さんがゆく』から抜粋して朗読しました。朗読の前後と途中にピアノで「てぃんさぐの花」を弾いて下さったのは西 佳子さん。私が「ここはページをめくる感じで」とか「ここは悲しく短調で」「楽しいリズムで」と勝手なお願いをしたにもかかわらず、あっという間に編曲して下さって、朗読の雰囲気を盛り上げてくださいました。中央の椅子は「貘さんの椅子」。ここに座って貘さんになったつもりで詩を読み、立ち上がったときには「椅子」に貘さんの存在を感じながら朗読しました。
朗読の中で取り上げた詩は
「自己紹介」「会話」「妹へおくる手紙」「求婚の広告」「ねずみ」「ぼすとんばっぐ」「弾を浴びた島」「告別式」の8編。中でも有名な
「会話」の朗読は難しく感じました。本土の女の「お国は?」という問いかけに対する男(貘さん)の「ずっとむこう」「南方」「亜熱帯」という答えにどんな感情を入れたらいいのか。沖縄についてさまざまな表現をしたあとに繰り返される「あの僕の国か!」というフレーズにどんな変化をつければいいのか。少しずつ工夫していって、本番もまた、それまでの練習とは違ったニュアンスになりましたが、まだ読み方に迷っている部分です。
きょうのために練習を重ねてきて、途中で悩んだことがありました。それは簡単に言えば「素材の地味さ」です。貘さんの詩や茨木さんの文章が気に入って読むことにしたのですが、貧乏な詩人の朴訥な生涯には、少なくとも華やかさはありません。お客さんたちの気持ちまで「貧しく」してしまったらどうしよう、小学生ぐらいの子どもたちには分かりにくいかもしれない…そう思ったら、不安が膨らみ始めました。
しかしもう決まったこと、気持ちも結果もプラスに転じていかなくてはありません。―そうだ、衣装は明るいものにしよう。―初めは黒っぽいものを着るつもりでしたが、思い切って赤いスカートにしました。そして子どもたちには、内容は分かりにくくても「舞台の上で何か面白そうなことをやっている」という印象を与えられるように語ろう。―そう決めました。
意味の分からない子どもたちも雰囲気で引き付けることはできる―そう考えるもとになった思い出があります。あれは長男がまだ4歳のとき、お正月のホテルの演芸で落語を聞いたことがあるのです。それも円楽師匠の難しい時事落語でしたが、長男はじっと腰掛けて最後までおとなしく聞いていたのです。周りの大人の方から「よくじっと聞いていられたね」と驚かれたので、忘れられない思い出になっています。それは、その頃からすでに、長男には舞台への関心の芽があったということかもしれないのですが、子どもでも巧みな話芸には聞き入るものだとも思うのです。
私にはそんな技術はありませんが、「面白そうなおばさん」でもいいから引き付けてみたい。そういう覚悟でやろう、と思いました。この私の「決意」を電話で長男に話すと「それでいいと思うよ」という言葉が返ってきて、大きな勇気を貰いました。
結果的には、朗読の時の客席は大人の方がほとんどで、年配の方も多いように感じられたので、安心して語ることが出来ました。舞台から客席の集中度が感じられたので、たぶん、じっくりと聞いてくださった方が多かったのだろうと思います。終了後「朗読というものを初めて聞いたが、とても面白かった」と言って下さった方もあり、胸を撫で下ろしました。「また何かあるときには教えて下さい」という嬉しい声も頂きました。いい機会を下さったコンサートの主催者の方々、応援してくれた友人や家族にも感謝したい気持ちです。
朗読では取りあげなかった貘さんの詩をひとつ紹介しておきましょう。
座布団
土の上には床がある
床の上には畳がある
畳の上にあるのが座蒲団でその上にあるのが楽(らく)
という
楽の上にはなんにもないのであろうか
どうぞおしきなさいとすすめられて
楽に坐ったさびしさよ
土の世界をはるかにみおろしているように
住み馴れぬ世界がさびしいよ
写真下右端はフィナーレの様子です。ピアノやヴァイオリン、声楽の出演者の皆さんもとてもハイレベルな演奏でコンサートとして充実していたと思います。
Posted by hyo_gensya2005 at 23:58│
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