2006年11月13日

ひろしま演劇祭2006「ハムレット」

広島演劇協会主催、ひろしま演劇祭2006「ハムレット」が終了。11、12日。広島市南区民文化センター大ホール。2回公演。パンフレット

立て看
スタッフカード
打ち上げ











 微力ながらスタッフの一員として公演のお手伝いをしていたので、なかなか記事を更新できませんでした。「ハムレット」無事終了。2日間、2回の公演で合計900名を越えるお客様においで頂き、キャストもスタッフも大いに張り切りました。お出でくださった皆さまに感謝!感謝!です。
 写真上は真っ白でシンプルなパンフレット。デザインは劇団Hamachi主義の森田奈穂さん。芝居に関わりながら、ほかにも色々な才能を発揮する人が多くて驚きます。ちなみに8日の記事に載せたチラシ(フライヤーと言うようです)のデザインは奥村洋司さん(Timide)。ヌード姿のハムレットが話題になりました。
 舞台写真が載せられないのは残念ですが、ホール前に立てられたきれいな看板(写真下左)で雰囲気だけでも感じていただきましょう。私はスタッフとして当日券の販売や掲示物の作成、その他こまごまとしたことに携わりました。写真下中央は「こまごまとした」ことのひとつ、準備や回収を担当したスタッフカードです。表方のスタッフは黒と白を基調にした服装で、このスタッフカードを胸に下げて働きました。大まかな仕事の割り振りは決められていますが、気付いたことには自発的に動くのが鉄則です。ほかの人の仕事を手助けしたり、お客様が気持ちよく観劇できる状況を整えたり、臨機応変に対処しなくてはなりません。これまで関わったことのある現場とは違うので分からないことも多く、十分に役割を果たせたとは思いませんが、できるだけのことはやった、と言ってよいでしょうか。
 写真下右は12日終了後に開かれた打ち上げのようす。30人近いキャストと関係者合わせて50人もの人が集まり、祝杯を挙げました。熱気と鍋の湯煙で全体がモウモウとしています。

 さて肝心の芝居ですが、スタッフも交代で観ることができました。私の観劇日は12日。11日の分は通し稽古やゲネプロを見ました。稽古日に何回か覗いていたので、断片的には数回見ていたことになります。全体として熱く、一体感のある若々しい舞台でした。本来なら4時間ほどもかかろうかという大芝居を休憩を含めて3時間にまとめたスピード感もよかったと思います。

  黒装束のコロスがその時々で兵士や亡霊、群集、黒子などの役割を果たす演出は芝居の展開を勢いのあるものにし、余分な色彩を排除して舞台を引き締めていましたが、最初と最後の抽象的な動きの場面は好き嫌いの分かれるところだと思います。観客のアンケートを垣間見ただけでも「あの場面がかっこよくて好き」と書いている人もあれば、「あの場面の意味が分からないし、好きになれない」と拒絶反応を示している人もいました。観客自身の観劇経験にも拠るところが大きいでしょう。
 コロスの衣装だけでなく、大道具など全体がモノトーンであるだけに、旅回りの役者達の色鮮やかな登場は目を引きました。悲劇の中の楽しめる場面として演出家たちが腕を振るいたがるのも頷けます。
 あちこちにちりばめられたコンテンポラリーダンスの動き(振り付け:玖島雅子さん)には多くの出演者が苦労したようでしたが、観る側にとっては新鮮で、現代的なセンスを感じさせてくれました。回転する大きな観音開きの扉と、可動式で透けて見える2枚の引き戸のみの大道具も無駄のない美しさでした。
 ハムレット(新原英人)は膨大な台詞の海で溺れることなく健闘し、プリンスらしい気品に溢れていたと思います。すべての役者が、それぞれ役柄の構築に努力したあとが伺われ、「精一杯」の舞台のすがすがしさが残りました。
 私は、その中でも「残虐非道」なクローディアス(中井敏哉)が印象に残りました。その理由のひとつはセリフの通りの良さです。「ハムレット」は言葉の多さと、いくら“ほぐした”とはいえ、雅文体の残る難しさが特色です。声の大きさだけではカバーできない。発音のクリアさを加えてもまだ足りない。作品の読み込みと表現の技術がなければすべてを「聴かせる」ことのできない戯曲でしょう。今回は、残念ながら「声はすれども言葉は聞こえず」の状態が少なからずあったことは否めません。その中で、中井さんのセリフはほぼ完璧に細部を伝えていました。兄弟殺しの血塗られた手に慄き、悔い改めることを望みながら、欲望を捨てきれない自分に絶望していくクローディアス。その苦悩のモノローグは聴き応えがありました。「セリフの通りの良さ」はつまり、中井さん自身の「読み」と「表現力」の確かさでもあるに違いありません。
 志賀直哉の短編に『クローディアスの日記』というのがありますが、創作意欲を掻き立てるようなクローディアスの人間的魅力は、ハムレットを越えるものがあるのかもしれません。「ハムレット」の隠れた主役はクローディアス、というのは過言でしょうか。
 可憐なオフィーリア(永野光恵)の身も世もない狂乱振りもなかなかのものでしたが、床に伏しての演技が多かったのは、声を聞かせる点でも、姿を見せる点でも少しもったいなかったではないかという気もします。舞台全体に凹凸がなく、フラット過ぎるのも少し気になりました。

 12日は開演後しばらくして場内に入り、客席のいちばん後ろで立って観ていましたが、意外にも声が十分に届き、言葉も9割がた聞こえました。ホール内の響きのムラで「聞こえ」にも差が出来ているのか、あるいは私の耳がセリフに慣れて自然に聴き取ってしまったのかもしれません。
 私にとって今回の「ハムレット」は、観る回数を重ねるごとにその良さが増していったような気がするのですが、ふつうの観客はやはり「一期一会」。初めて観て、1度だけ観て、良さが実感できるようでなければいけないはずです。容易なことではないけれど、プロでもアマチュアでも、レベルは違っても同じように追いかけるテーマであると思います。

 打ち上げでは、初舞台を踏んだ若い人たちの感激の涙が見られました。舞台を成し遂げたという充実感、いい仲間に恵まれた幸せの涙、先輩たちから励まされた感謝の涙…自覚できるような大きな飛躍があったことでしょう。何度でも乾杯し、遠くの席まで出向いては杯と杯を合わせあう和やかさに包まれていました。「内なる成長」と「外から見た成功度」とが合致するのが理想的な公演というもの…私自身の抱える問題も見据えながら、理想的な公演へと近づけることを願っていました。
 キャスト・スタッフの皆さん、お疲れさまでした!


              
 
Posted by hyo_gensya2005 at 16:13│Comments(7)TrackBack(1) 演劇 

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広島の観劇ブログのリンク集です。 この記事では ひろしま演劇祭2006「ハムレット」 (11月11日??12日@南区民文化センター ホール) について書かれたブログを集めました。
★ひろしま演劇祭2006「ハムレット」【ひろしば(広島演劇ひろば)】at 2006年11月23日 21:29
この記事へのコメント
お疲れ様でした。

広島の演劇人は力があると思う。
よかった。
過去にインプロワークに参加してくれた若者がキャストにいましたが、見違えるほどにたくましくなっていました。
自信なんでしょうね。


Posted by チャボ吉 at 2006年11月14日 23:14
チャボ吉さん、お疲れさまでした。
たくさんの人たちで舞台を作り上げるのは素敵なことですね。できれば、もっと入り込んで一緒に燃えてみたいです。
チャボ吉さんを始め、定例会で顔を合わせるだけの方々といっしょに働けたことも嬉しかったです。
また、いっしょに参加しましょう!
Posted by ひょうげん舎まるち at 2006年11月15日 00:35
お疲れ様でした!
 
舞台はやはり見る側より演じる側がいいですね!!
今度はまるちさんが演じている舞台を見てみたい!と思いました(^^)
 
本格的な演劇って観に行ったことがありません・・・
いい舞台があれば、ぜひ教えてください!
Posted by うっち at 2006年11月15日 17:29
お疲れ様でした。
有名な『ハムレット』を舞台で見られたことを感謝しています。
打ち上げはどんなにか盛り上がったでしょうね。^^
若い人達のパワーが感じられる舞台でした。
これからのご活躍期待しています。
Posted by mon at 2006年11月16日 09:26
うっちさん、monさん、ありがとうございます。
monさんはご主人様とのご来場、ありがとうございました。ストレートプレーはオペラやミュージカルとはまた違ったエネルギーを感じますね。色々な舞台を観ることは、とても勉強になると思います。
うっちさん、広島でもいい公演がたくさんありますから、またご案内しましょうね。ぜひいらしてください。
私も一生のうちにもう1度ぐらいは(高校時代が最後で)演劇の舞台に立ってみたいなあ、と思っています。だんだん新しいことに挑戦するのがキツくなりますけどね…トホホ…それぞれの立場で頑張りましょう!
Posted by ひょうげん舎まるち at 2006年11月16日 09:50
おつかれさまです!
ひろしばの観劇ブログリンクを「ハムレット」から復活しました。
リンクとトラックバックさせてもらいました。
今後もよろしくお願いします!
Posted by トム(snail-house) at 2006年11月23日 22:02
トムさん、「ハムレット」お疲れさまでした。
トラックバック、リンクもありがとうございます。
トムさんは次々と関わる舞台があって、お忙しいことでしょう。また、あちこちでお目にかかりたいと思います。
こちらこそよろしく!
Posted by ひょうげん舎まるち at 2006年11月24日 01:09