ある素数pを特別視してできた数がp進数であり、p進数の集合がp進数体である。ところでp進数体は名前の通り数学の集合の中でもという種類の集合だ。体とは大雑把に言えば足し算、引き算、掛け算、割り算が定義できる集合のことで、有理数、実数、複素数などは体である(興味のある人は群論、環論、体論でセットになっている教科書を読むといいかもしれない)。すなわちp進数体、$Q_p$にも足し算、掛け算などの演算が考えられるのだ。今日は具体的な計算を通じて$Q_p$の性質に迫っていこう。

さて、前回、$Q_p$はp進距離について有理数体を完備化したものだと言ったが、これでは具体的にp進数がどんなものか分からないだろう。p進数をこれから具体的に書き表してみる。p進数aは以下のように書ける:\begin{equation}a  = \sum_{n=N}^{\infty} a_n p^n \end{equation}Nは整数、a_nは0からp-1までの数だ。珍妙な形をしていると思うかもしれない。だが、よくよく考えるとこれは実数の十進小数展開とほぼ同じ形だ:\begin{equation}a  = \sum_{n=N}^{\infty} a_n 10^{-n} = a_N a_{N+1} \cdots a_{-1} a_0 . a_1 a_2 a_3 \cdots \end{equation}小数が小さい方に無限個の桁があるのに対し、p進数は大きい方に無限個桁がある。これでは数の大きさが無限大になってしまうのではないか?しかし、前回やったように、p進距離で考える大きさだと、驚くべきことに普通の意味で大きい数の方が小さいということもありえるのである。例えば$|p^{10}|_p =p^{-10},|p^{100}|_p = p^{-100}$なので、$|p^{10}|_p  > |p^{100}|_p$。だから、実数の観点では無限大に発散しているような数も、p進数の世界では全く問題ないのである。

抽象的な話が続いているから以後簡単な例で考察を進めよう。素数3を特別扱いした3進数体について考える。
3susumusuu
有理数1,2,1/3,10は全部3進数に含まれている。展開をすると、$1=1,2=2,\frac{1}{3}=0.1,10=101$である(この辺りは二進数の展開とも同じ)。しかし、これだけでは面白くないので有理数ではない3進数を出そう。ずばり1111111111111111111111111というように1が無限個続いている数である。\begin{equation}\cdots111111111111111111111 = \sum_{n=0}^{\infty} 3^n\end{equation}
これと上にあげた普通の数を足し算してみよう。すると
$1+ \cdots 111111111111 = \cdots 111111111112$
$2+ \cdots 111111111111 = \cdots 111111111120$
$\frac{1}{3}+ \cdots 111111111111 = \cdots 111111111111.1$
$10 + \cdots 111111111111 = \cdots 111111111212$
要するに各桁を足してしまえばいいわけである。引き算も同じ要領である。

次に掛け算割り算を考えよう。これも単純に考えてよい。

$1 \times \cdots 111111111111 = 1 \cdot \sum_{n=0}^{\infty} 3^n  =\cdots 111111111111$
$2 \times \cdots 111111111111 = 2 \cdot \sum_{n=0}^{\infty} 3^n = \cdots 22222222222$
$\frac{1}{3} \times \cdots 111111111111 = \frac{1}{3} \cdot \sum_{n=0}^{\infty} 3^n  = \cdots 111111111111.1$
$10 \times \cdots 111111111111 =  = 10 \cdot \sum_{n=0}^{\infty} 3^n \cdots 222222222211$
結局、Σの中身について普通の掛け算をしたあと、整理しなおすだけである。割り算も同様に考えてよい。

今回分かったのはp進数と仰々しく書いたが内実はそんなに難しいものではないということだった。問題はわざわざ何故このような数を使うのかということである。次回はp進数を用いて作られたp進タイヒミュラー理論がどんな威力を発揮するのか、ということについて見ていきたい。