本当に概説レベルでざっくり行くよ(´・ω・`)

数学は字面の通りに考えると「数」の学問である。実際、古代ギリシャより盛んに研究されている数論は「数」そのものの学問であるし、代数学は方程式を満たす「数」を求めることに、幾何学は物体から長さや角度などの「数」を測りとることに、それぞれの起源を見出すことができる。だから確かに「数」は古来より数学最大の関心事だったといえよう。
しかし、数学が「数」だけを研究する学問であるかというとそれは誤解である。現代の数学はあらゆる抽象的な対象に適用されうるものなのだ。これから紹介する群論は対称性という数の範疇に収まりきらない事物の性質を解き明かすために非常に有用である。そして、それは数学者の自己満足で完結せず、実際の自然界に存在する構造の解析にも応用されている。それでは群論の紹介を始めよう。

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雪の結晶、非常に対称に近い形をしている(´・ω・`)

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 クリスタル、対称性を持った構造が積み重なることで形成される(´・ω・`)


群の定義
群論について考えるために、まず群とは何か知ろう。群とは集合の種類の一つである。集合GがG×Gを定義域とするある二項算法・に対して以下の条件、

G1:Gの任意の元a,b,cについて(a・b)・c=a・(b・c) (結合法則)
G2:Gのある元eがGの任意の元aに対し、a・e=e・a=aを満たす (単位元の存在)
G3:Gの任意の元aに対し、Gのある元bが存在しab=ba=eを満たす (逆元の存在)

を満たすときGをと呼ぶ。 

要約すると、掛け算が定義できるということである。え、それだけ? となりそうだが群は掛け算が定義できること以外、何も条件を付けられていない集合であるということに注意してほしい。すなわち、Gの元は数であるとは限らない。Gの元は集合かもしれないし、なにかしらの操作かもしれない。もしくはヒルベルトの言葉を借りるならば机、椅子、ビールジョッキであってもいい(机・椅子=なんていう計算も定義できたりする)。条件を満たせば後は何でもあり。これが抽象代数、ひいては公理主義的数学なのだ。

ヒルベルト
 ダフィット・ヒルベルト。二十世紀初頭に数学界を主導し「現代数学の父」と呼ばれた(´・ω・`)


群と対称性
この群が対称性とどう関わってくるのか?そもそも対称性とは何らかの操作をしても不変であるということだ。簡単な例だと二次元空間で線対称とはある線に対して折り返すという操作を加えても変わらないことであるし、点対称も面対称も対称性に含まれる。物理学の世界にもローレンツ対称性やミラー対称性といった対称性が存在し、その対称性だけで一つの分野ができるほど重要なものである。実は群によってこの対称性というものが表現できてしまうのだ。具体的にいえば加える操作の集合が群になるのである。
対称

線対称を早速群で表現してみる。折り返すという操作をaとしよう。そして”何もしない”という操作をeとする。そして掛け算・をa・eならば「eという操作をした後にaという操作をする」と定義しよう。こうすれば集合{e,a}は群になる(aの逆元はa自身)。この集合を数学では2次対称群といい$S_2$と書く。線対称とは$S_2$という群の操作で不変である対称性のことである、といえばそれを説明しつくしたことになるのだ。
 

結晶を群で表わす 
結晶の対称性は空間群という全230種類の群の一つとして記述される。今回はその中でもダイヤモンドの結晶の空間群Fd3mを紹介しよう。

http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/large/227bz1.htm

上記のサイトに書いてあるx,y,zの組は空間座標(x,y,z)をその座標に移すという操作を表している。例えばx,1/4 - y,1/4 - zは(x,y,z)→(x,1/4 - y,1/4 - z)という操作だ。ダイヤモンドはこのように非常に多くの操作に対して対称性を持っている。

空間群という道具が便利であるのは結晶を図示するのではなく式で書き表せることである。そして、群論という学問によって群は解析することができる。ただ図で見ているだけでは分からない隠された結晶の性質が、結晶を表現する群を調べることによって明らかになる場合もあるのだ。