2012年02月03日
2011年12月22日
2011年12月21日
2009年06月22日
2009年05月03日
形而上に問われるカクテルと、形而下にあるその実践について
いみじくもカクテルなぞを、さも芸術にありなんとするつもりなど、私には毛頭ない。
おしなべてカクテルとは、それを生業とするものにとってはあくまで純然たる商品なのであって、いかにも芸術を気取るなどとは、私にはいささか面映い。
ただカクテルというものを、バーテンダーにとってひとつの表現のカタチとして求むるにあたって、そこにもっともらしい理由や小難しい理屈、過剰なロマンチシズムなどを擁することに、私は少なからぬ大仰を感じるだけのことだ。
とはいえ、数多の模索と実験が繰り返されてきた、このカクテルというフォーマット、もしくはフレームともいうべきものには何がしかの、それが極めてささやかであるにせよ何がしかの、意味や想いが託されてきただろうことを私は同時にまた、蔑ろにすることができない。
万事、人の手に拠って成るものなれば、そこには作り手と受け手の呼応によって生じた夢や願い、 ひいては祈りや誓い、あるいはときめきや嘆きなどといった、様々な心象などが多少なりとも込められていて然るべきではあろう。
私は何故か、酒の世界に於けるいわゆるカクテルの、そうした部分に魅入られた。
しかしながら酒は、否、酒というものは、その「人の手に拠ってなるもの」の中でも極めて特殊なものといえよう。
その特殊性とはいうまでもなく、極めて明らかに、物理的に「酔う」ということ。
「酔い」とは、熱狂であり陶然であり、あるいは解放であり忘我であり、即ちそれは人にとって、ひとつの幻惑でもある。
私は、酒の世界に生きる中で、この「酔い」に甘んじていた一方で常に、この酔いの呪縛に多くの場合戸惑いを感じ、時に葛藤し苛まれ、しばしば抗っていた。
カクテルとは。酒とは。バーとは。されば人とは。
カクテルグラスをキャンバスに見立てるには無論、感受性に加え、モチーフとイマジネイション、そして何よりそれ以上に、その為のイディオムと話法、手法が欠かせない。
振り返り、私がこの世界で追求してきたものは、それらをロジックとして肯定することにあったような気がする。
酒こそは、魂をほどく妙薬なれば、カクテルとは即ち、処方箋である。
当店は、主にカクテルとワインを提供する店である。
一般的に、いわゆるバーと称される類いの、ただ、ひとつの店である。
そして私は、一介のバーの主人である。
おしなべてカクテルとは、それを生業とするものにとってはあくまで純然たる商品なのであって、いかにも芸術を気取るなどとは、私にはいささか面映い。
ただカクテルというものを、バーテンダーにとってひとつの表現のカタチとして求むるにあたって、そこにもっともらしい理由や小難しい理屈、過剰なロマンチシズムなどを擁することに、私は少なからぬ大仰を感じるだけのことだ。
とはいえ、数多の模索と実験が繰り返されてきた、このカクテルというフォーマット、もしくはフレームともいうべきものには何がしかの、それが極めてささやかであるにせよ何がしかの、意味や想いが託されてきただろうことを私は同時にまた、蔑ろにすることができない。
万事、人の手に拠って成るものなれば、そこには作り手と受け手の呼応によって生じた夢や願い、 ひいては祈りや誓い、あるいはときめきや嘆きなどといった、様々な心象などが多少なりとも込められていて然るべきではあろう。
私は何故か、酒の世界に於けるいわゆるカクテルの、そうした部分に魅入られた。
しかしながら酒は、否、酒というものは、その「人の手に拠ってなるもの」の中でも極めて特殊なものといえよう。
その特殊性とはいうまでもなく、極めて明らかに、物理的に「酔う」ということ。
「酔い」とは、熱狂であり陶然であり、あるいは解放であり忘我であり、即ちそれは人にとって、ひとつの幻惑でもある。
私は、酒の世界に生きる中で、この「酔い」に甘んじていた一方で常に、この酔いの呪縛に多くの場合戸惑いを感じ、時に葛藤し苛まれ、しばしば抗っていた。
カクテルとは。酒とは。バーとは。されば人とは。
カクテルグラスをキャンバスに見立てるには無論、感受性に加え、モチーフとイマジネイション、そして何よりそれ以上に、その為のイディオムと話法、手法が欠かせない。
振り返り、私がこの世界で追求してきたものは、それらをロジックとして肯定することにあったような気がする。
酒こそは、魂をほどく妙薬なれば、カクテルとは即ち、処方箋である。
当店は、主にカクテルとワインを提供する店である。
一般的に、いわゆるバーと称される類いの、ただ、ひとつの店である。
そして私は、一介のバーの主人である。
2009年04月21日
発刊いたしました
2007年11月29日
バーテンダーに求められる資質というのは
厳密な理性と
凛々しい野性と
瑞々しい感性と
柔軟にして広遠な知性。
次回は、自らに求むる訓戒をば披瀝しよう。
凛々しい野性と
瑞々しい感性と
柔軟にして広遠な知性。
次回は、自らに求むる訓戒をば披瀝しよう。
2007年09月12日
プレミアムウォッカ
我々の業界、いわゆる酒の世界は、比較的ゆるやかなスパンでトレンドの起伏が訪れる。
勿論、のべつまくなく業界おしなべて一様のトレンドに支配されているわけではなく、ひとくちに酒と言っても様々なカテゴリーがあり、またマクロ的な動態かミクロ的な現象であるかは、そのトレンドの断面をいかように捉えるかで異なってくる。
また、トレンドというものを如何に定義するかによっても様々な見解が得られるだろう。
マクロな動態としては健康志向や低アルコール化はますます進み、多く人々は淡泊化した結果、例えばビールの世界では発泡酒の隆盛が見られる一方、その反動形成としてのプレミアムビールがあり、ミクロ的現象には規制緩和に端を発する全国各地の地ビールの勃興、ベルギービールの再認知等があげられる。
そうした意味でここ数年酒の世界、いや日本中を席巻していたのはいうまでもなく、ご存知の通り『焼酎』であろう。
ほんの数年前まで、聞こえは悪いが正直『貧者の酒』でしかなかったものが(異論は却下)、ひとつには熱心な生産者達のたゆまぬ品質向上や営業努力が実を結んだといえるし、時代が彼らを求めたともいえる。
ワインブームの衰退の中、健康への訴求や品質・プロフィールのオリジナリティの追求にシフトした焼酎は、マーケティング的な意味での“模索されるポスト”を埋めるにふさわしい個性を獲得し、今や飲料業界の主役の座を占めるに至った。
それはブレンデッドスコッチや日本酒のシェア、ポジションさえも奪った。
(加えて、『いわゆる温暖化』の影響も少なからずある、とはあくまで僕の個人的な見解だが)
未だに一部の有名銘柄が高値で取引されているのも、好況の一現象面として甘受できよう。
缶入り酎ハイ飲料はますます洗練され『RTD』としての一ポジションを確立、どころか牽引すらしている。
さて、世界に目を向けてみると、まったくこれらと呼応する形で今、新しい大きなトレンドの流れを作っているのが『スピリッツ』というジャンルだ。
ジン、ウオッカ、ラム、テキーラ等の、これら基本無色の穏やかな風味の蒸留酒群は、元来カジュアルなポジションにあったが、先進国化、多様化、洗練化、均質化、ひいては技術革新等の、グローバルな意味での消費動向とまさしく連動しながら、新たな局面を迎えているといっていいだろう。
とはいえ、ブラジルのピンガや韓国焼酎などはかねてより国民酒でもあるし(ティピカルであるとはいえ、単一銘柄別で見た場合、両国とも消費量ベースで圧倒的な世界的トップブランドを持つ)、アメリカでもホワイトスピリッツが蒸留酒カテゴリーに君臨して既に久しい。
向かえている新たな局面、それは豊かさのひとつの現象面である“二極化”の中に希求される『プレミアム』というポジションだ。
(おそらくそれは今、“人類が久しぶりに享受しているだろう『長い平和な時代』”のひとつの現れでもある、とは私見だろうか。平和とは、穏やかで豊かであることだ。しかし平和はしばしば、否往々にして富を偏在させる。それが二極化だ。戦争とは破壊行為でもあるがひとつに、偏在した富や権力の転覆でもある。ちょっと横道失礼)
勿論、プレミアムな銘柄は以前より、ボンベイならサファイア、スミノフならツアーなど幾つか存在していたが、ここに来て大きなうねりとなって一群のラインナップが今、まさに百花繚乱の様相を呈している。
特に今、最も華やかで充実しているのが『プレミアムウォッカ』というカテゴリーだ。
次稿では、このプレミアムウォッカを取り上げて言及し、幾つかの考察をしてみたい。
お久しぶりの人気blogランキングよろしく
さあて、そろそろ反撃してもいいですか。
勿論、のべつまくなく業界おしなべて一様のトレンドに支配されているわけではなく、ひとくちに酒と言っても様々なカテゴリーがあり、またマクロ的な動態かミクロ的な現象であるかは、そのトレンドの断面をいかように捉えるかで異なってくる。
また、トレンドというものを如何に定義するかによっても様々な見解が得られるだろう。
マクロな動態としては健康志向や低アルコール化はますます進み、多く人々は淡泊化した結果、例えばビールの世界では発泡酒の隆盛が見られる一方、その反動形成としてのプレミアムビールがあり、ミクロ的現象には規制緩和に端を発する全国各地の地ビールの勃興、ベルギービールの再認知等があげられる。
そうした意味でここ数年酒の世界、いや日本中を席巻していたのはいうまでもなく、ご存知の通り『焼酎』であろう。
ほんの数年前まで、聞こえは悪いが正直『貧者の酒』でしかなかったものが(異論は却下)、ひとつには熱心な生産者達のたゆまぬ品質向上や営業努力が実を結んだといえるし、時代が彼らを求めたともいえる。
ワインブームの衰退の中、健康への訴求や品質・プロフィールのオリジナリティの追求にシフトした焼酎は、マーケティング的な意味での“模索されるポスト”を埋めるにふさわしい個性を獲得し、今や飲料業界の主役の座を占めるに至った。
それはブレンデッドスコッチや日本酒のシェア、ポジションさえも奪った。
(加えて、『いわゆる温暖化』の影響も少なからずある、とはあくまで僕の個人的な見解だが)
未だに一部の有名銘柄が高値で取引されているのも、好況の一現象面として甘受できよう。
缶入り酎ハイ飲料はますます洗練され『RTD』としての一ポジションを確立、どころか牽引すらしている。
さて、世界に目を向けてみると、まったくこれらと呼応する形で今、新しい大きなトレンドの流れを作っているのが『スピリッツ』というジャンルだ。
ジン、ウオッカ、ラム、テキーラ等の、これら基本無色の穏やかな風味の蒸留酒群は、元来カジュアルなポジションにあったが、先進国化、多様化、洗練化、均質化、ひいては技術革新等の、グローバルな意味での消費動向とまさしく連動しながら、新たな局面を迎えているといっていいだろう。
とはいえ、ブラジルのピンガや韓国焼酎などはかねてより国民酒でもあるし(ティピカルであるとはいえ、単一銘柄別で見た場合、両国とも消費量ベースで圧倒的な世界的トップブランドを持つ)、アメリカでもホワイトスピリッツが蒸留酒カテゴリーに君臨して既に久しい。
向かえている新たな局面、それは豊かさのひとつの現象面である“二極化”の中に希求される『プレミアム』というポジションだ。
(おそらくそれは今、“人類が久しぶりに享受しているだろう『長い平和な時代』”のひとつの現れでもある、とは私見だろうか。平和とは、穏やかで豊かであることだ。しかし平和はしばしば、否往々にして富を偏在させる。それが二極化だ。戦争とは破壊行為でもあるがひとつに、偏在した富や権力の転覆でもある。ちょっと横道失礼)
勿論、プレミアムな銘柄は以前より、ボンベイならサファイア、スミノフならツアーなど幾つか存在していたが、ここに来て大きなうねりとなって一群のラインナップが今、まさに百花繚乱の様相を呈している。
特に今、最も華やかで充実しているのが『プレミアムウォッカ』というカテゴリーだ。
次稿では、このプレミアムウォッカを取り上げて言及し、幾つかの考察をしてみたい。
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さあて、そろそろ反撃してもいいですか。
2007年08月24日
夏休み
26日(日)27日(月)は
営業お休みいたします。
関西屈指の大渓谷、瀞峡をカヌーで下ってきます。
親子二人、ニュースに出ない様に(笑)気をつけて行ってまいります。
営業お休みいたします。
関西屈指の大渓谷、瀞峡をカヌーで下ってきます。
親子二人、ニュースに出ない様に(笑)気をつけて行ってまいります。
2007年08月12日
本日は高野山にて
ご先祖様供養。
後、司馬遼太郎大先生ゆかりの宿坊にて精進料理をば。
俗世を離れ悠久に思いを馳せ
ひととき風雅に身を委ねる。
よって本日(12日)のみ、営業お休みいたします。
明日(13日)以降、通常通り営業いたします。
後、司馬遼太郎大先生ゆかりの宿坊にて精進料理をば。
俗世を離れ悠久に思いを馳せ
ひととき風雅に身を委ねる。
よって本日(12日)のみ、営業お休みいたします。
明日(13日)以降、通常通り営業いたします。
2007年07月27日
ゆっくりじっくり
書きたいのだけれど、まったくもって、時間がない。
おかげさんで、忙しい。
猫の手も借りたいくらいだ。
ここで働きたいヤツ
一流のバーテンダーになりたいヤツ
挙手!
おかげさんで、忙しい。
猫の手も借りたいくらいだ。
ここで働きたいヤツ
一流のバーテンダーになりたいヤツ
挙手!
2007年07月12日
さ〜て
リニューアル以降の猛烈な忙しさ慌ただしさも
ぼちぼち落ち着いてきたことだし、
そろそろ書こうかなっと。。
ぼちぼち落ち着いてきたことだし、
そろそろ書こうかなっと。。
2007年06月24日
2007年06月21日
2007年06月17日
2007年06月09日
本日より
リアル本店は、全面大改装工事。
カウンターのしつらえもテーブルもソファも
よりラグジュアリーに
よりハイパーに
より高度なミキソロジーの具現を目指し
生まれ変わります。
お楽しみに。
リニューアルオープンは15日(金)の予定。
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よりハイパーに
より高度なミキソロジーの具現を目指し
生まれ変わります。
お楽しみに。
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2007年05月26日
2007年05月11日
Infusion
厳密にいえば、インフュージョンとは“注入すること”、もしくは“注入されたもの”そのものを指す語だ。
漬けることの行為のみを指す語、すなわち“浸漬”ならば、それはマセレーション(maceration)であって、そこから“出てくるもの”はエッセンス(essence)という。
またちなみに、“混入すること”もしくはそれらが“混入されたもの”は、インターフュージョン(interfusion)といって、またエッセンスが蒸溜の様に、元の材料から“分離・抽出”された場合は(これは『ex』の接頭辞(=外へ、等の意)に明らか)、それをエキストラクト(extract)、日本では普通、略してエキスという。
よーするに
わかりやすく言えば、 酒などに材料をマセレーションすることにより、様々なエッセンスがインターフュージョンされた溶液のことをインフュージョンというわけだ。
わかりる?
笑
ということで
否、その前に 、現在、一般に我々に用いられているインフュージョンの定義は、今までの『漬酒』とは若干にニュアンスがあるということを説明したい。
(少し横道:この「ニュアンスがある」という用法は、おそらくこれが正しい気がするのであえて書く。 「ニュアンス」という語それ自身が「微妙な差異」を意味しているからだ。「ニュアンスが違う」というのは「頭痛が痛い」と同じ用法な気がする)
漬酒とは通常、主に保存を目的として、その経時変化の中で穏やかな成分の抽出がなされ、ひいて熟成によって融和した妙味をこそ得るものであるのだが、インフュージョンの場合は、そのアルコールの溶解力(水にも油脂類にも非常に強い親和性)をもって、素早くフレッシュな成分(エッセンス)の抽出を求めるものといえる。
また、漬酒の場合、一般的に用いられるのは主にひとつの素材であり、ベースにも多くの場合はニュートラルな、もしくは比較的穏やかな『広義なスピリッツ』が用いられるのに対し、インフュージョンの場合は、しばしば複数の素材を用い、またベースとなる酒にも様々なもの(リキュール等)が用いられるのがユニークな特徴だ。
それはある意味、カクテルの概念的な手法でもあり、平たく言い換えれば、『作りおきのカクテル』とも言い得よう。
また漬酒は、それ単体で楽しむことを目的に作られるのに対し、インフュージョンは、カクテルの一素材、一マテリアルとして、ミクスチュア(mixture)の可能性=ミキサビリティ(mixability)のポテンシャルを高めることを目的にも作られる。
それは往々に、カクテルのスパイス的な役割を果たす。
ことほどかように、インフュージョンとは、いわゆる“これからのカクテル”において、非常に重要なエレメントといえるものだ。
ここで、ミキソロジーにおいての“いわゆるカクテルなるもの”が、厳密な意味で再定義を必要とすることに、改めてお気付きになられるだろうか。
要するにカクテルとは
ただ単に“混ぜ合わされただけ”のものではなく、“今、飲むその直前に混ぜ合わされた”という事実、いわばエネルギーの高い状態、つまり“作りタテ”であることこそが、その本来の定義なのだ、ということをおわかりいただけるだろうか。
ひとつわかりやすい例を挙げよう。
例えば『マティーニ』。
レシピは、ご存知の通り、ジンとドライ・ヴェルモット。
(注:“比率うんぬん”や“エピソードなんたら”、果ては”オプションがどーだの”等を、当然ここでは割愛する。暴論のそしりを承知ながらあえて言うが、もはやそうしたものは、懐古趣味かスノビズムもしくは過剰なロマンチシズムに過ぎない)
マティーニというものが、ジンとドライ・ヴェルモットの、適当な割合の混合物であるというだけならば、要するに、大きなカラフェもしくはデカンター等に、たっぷりと作り置きしておけば良い話になるのだ。
厳密な比率を求めるのであれば、むしろその方が正確である。
果たして、その混合液は、カクテルとして『マティーニ』であるか否か。
そう。
言うまでもない。
勿論、答えは否である。
ミキソロジーにおいて厳密にカクテルとは、すなわち『タテ』であることだからだ。
(『タテ』については、随分と以前にこのブログでも述べた。参照)
これは、このところ市場に賑やかな『RTD(Ready To Drink)』についても、同様の意味において再定義を促すものだ。
とまあ、ブログでは一応ここまでにしておいて、 まずはインフュージョンが切り開く、新たなカクテルの地平の一部をご紹介しよう。
といいつつ、長くなってきたので今日はこの辺で。
続きをご期待の方は 人気blogランキングクリックよろしくである。
漬けることの行為のみを指す語、すなわち“浸漬”ならば、それはマセレーション(maceration)であって、そこから“出てくるもの”はエッセンス(essence)という。
またちなみに、“混入すること”もしくはそれらが“混入されたもの”は、インターフュージョン(interfusion)といって、またエッセンスが蒸溜の様に、元の材料から“分離・抽出”された場合は(これは『ex』の接頭辞(=外へ、等の意)に明らか)、それをエキストラクト(extract)、日本では普通、略してエキスという。
よーするに
わかりやすく言えば、 酒などに材料をマセレーションすることにより、様々なエッセンスがインターフュージョンされた溶液のことをインフュージョンというわけだ。
わかりる?
笑
ということで
否、その前に 、現在、一般に我々に用いられているインフュージョンの定義は、今までの『漬酒』とは若干にニュアンスがあるということを説明したい。
(少し横道:この「ニュアンスがある」という用法は、おそらくこれが正しい気がするのであえて書く。 「ニュアンス」という語それ自身が「微妙な差異」を意味しているからだ。「ニュアンスが違う」というのは「頭痛が痛い」と同じ用法な気がする)
漬酒とは通常、主に保存を目的として、その経時変化の中で穏やかな成分の抽出がなされ、ひいて熟成によって融和した妙味をこそ得るものであるのだが、インフュージョンの場合は、そのアルコールの溶解力(水にも油脂類にも非常に強い親和性)をもって、素早くフレッシュな成分(エッセンス)の抽出を求めるものといえる。
また、漬酒の場合、一般的に用いられるのは主にひとつの素材であり、ベースにも多くの場合はニュートラルな、もしくは比較的穏やかな『広義なスピリッツ』が用いられるのに対し、インフュージョンの場合は、しばしば複数の素材を用い、またベースとなる酒にも様々なもの(リキュール等)が用いられるのがユニークな特徴だ。
それはある意味、カクテルの概念的な手法でもあり、平たく言い換えれば、『作りおきのカクテル』とも言い得よう。
また漬酒は、それ単体で楽しむことを目的に作られるのに対し、インフュージョンは、カクテルの一素材、一マテリアルとして、ミクスチュア(mixture)の可能性=ミキサビリティ(mixability)のポテンシャルを高めることを目的にも作られる。
それは往々に、カクテルのスパイス的な役割を果たす。
ことほどかように、インフュージョンとは、いわゆる“これからのカクテル”において、非常に重要なエレメントといえるものだ。
ここで、ミキソロジーにおいての“いわゆるカクテルなるもの”が、厳密な意味で再定義を必要とすることに、改めてお気付きになられるだろうか。
要するにカクテルとは
ただ単に“混ぜ合わされただけ”のものではなく、“今、飲むその直前に混ぜ合わされた”という事実、いわばエネルギーの高い状態、つまり“作りタテ”であることこそが、その本来の定義なのだ、ということをおわかりいただけるだろうか。
ひとつわかりやすい例を挙げよう。
例えば『マティーニ』。
レシピは、ご存知の通り、ジンとドライ・ヴェルモット。
(注:“比率うんぬん”や“エピソードなんたら”、果ては”オプションがどーだの”等を、当然ここでは割愛する。暴論のそしりを承知ながらあえて言うが、もはやそうしたものは、懐古趣味かスノビズムもしくは過剰なロマンチシズムに過ぎない)
マティーニというものが、ジンとドライ・ヴェルモットの、適当な割合の混合物であるというだけならば、要するに、大きなカラフェもしくはデカンター等に、たっぷりと作り置きしておけば良い話になるのだ。
厳密な比率を求めるのであれば、むしろその方が正確である。
果たして、その混合液は、カクテルとして『マティーニ』であるか否か。
そう。
言うまでもない。
勿論、答えは否である。
ミキソロジーにおいて厳密にカクテルとは、すなわち『タテ』であることだからだ。
(『タテ』については、随分と以前にこのブログでも述べた。参照)
これは、このところ市場に賑やかな『RTD(Ready To Drink)』についても、同様の意味において再定義を促すものだ。
とまあ、ブログでは一応ここまでにしておいて、 まずはインフュージョンが切り開く、新たなカクテルの地平の一部をご紹介しよう。
といいつつ、長くなってきたので今日はこの辺で。
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2007年05月05日
Illegal
=イリーガル
=違法
いきなり物騒なお題ですが、まずはこのニュース。
手作り果実酒は法律違反
むむ。
残念なことである。
私見としては、早急な法改正、規制緩和を望むものだ。
法というものは、現実に則して日々見直し、また必要とあらば改めるべきものである。
(憲法もまた然り。おっと話がそれそうだ。自爆)
ともあれ
ここ数年、我々の世界でも『インフュージョン』というひとつの漬酒のスタイルが、バーのトレンドとして確立しつつある。
否、もはやトレンドというよりは、多くそのお店の独自性やオリジナリティを担うのに、いまや欠かせないものであるといえよう。
これは、味覚の新たな地平を模索する、ある意味での“美食的要求”でもあるし、またカクテルの優れたインスピレーションを育む、新しいマテリアルとなる可能性を秘めている。
そのことに加え、どころか、この昨今の健康志向や食に対する安全基準への希求的観点からも、プロフィールや内容物の明らかでない、要するに着色料や香料等に依存度の高い、いわばクオリティの低いリキュール等への、これはひとつの回答ともいえるのだ。
更に言うならば、多くリキュールに見られる、アンバランスで過度な甘味には、実際のところ少々、否かなり辟易させられることが少なくない。
この『インフュージョン』とは、それら既製リキュールへの、いわば“アンチテーゼ”なわけだ。
当店でも、オリジナルでユニークなインフュージョンが幾つかあるのだが、いずれもみな好評である。
(ってばらしていいのか、おい。ご愛読者及びリアル店のお客様の皆さん、通報はナシよ。笑)
昨稿の僕のコメントにも書いたが、トリュフを漬け込んだコニャックであるとか、各種ハーブを用いたりまた組み合わせたり、また意外な素材を用いたりなどして、それらによって生じる味覚的ダイナミズムは、新しい発見の喜びをもたらす。
勿論、今までには多くその実験の中で、失敗作やお蔵入り、また顰蹙をかったものなどもまた随分あるのだが。
ま、ややこしい話は、ブログではここまで。
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↑クリックしてくれたら、秘密のインフュージョン・レシピ、次稿にて公開。
=違法
いきなり物騒なお題ですが、まずはこのニュース。
手作り果実酒は法律違反
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私見としては、早急な法改正、規制緩和を望むものだ。
法というものは、現実に則して日々見直し、また必要とあらば改めるべきものである。
(憲法もまた然り。おっと話がそれそうだ。自爆)
ともあれ
ここ数年、我々の世界でも『インフュージョン』というひとつの漬酒のスタイルが、バーのトレンドとして確立しつつある。
否、もはやトレンドというよりは、多くそのお店の独自性やオリジナリティを担うのに、いまや欠かせないものであるといえよう。
これは、味覚の新たな地平を模索する、ある意味での“美食的要求”でもあるし、またカクテルの優れたインスピレーションを育む、新しいマテリアルとなる可能性を秘めている。
そのことに加え、どころか、この昨今の健康志向や食に対する安全基準への希求的観点からも、プロフィールや内容物の明らかでない、要するに着色料や香料等に依存度の高い、いわばクオリティの低いリキュール等への、これはひとつの回答ともいえるのだ。
更に言うならば、多くリキュールに見られる、アンバランスで過度な甘味には、実際のところ少々、否かなり辟易させられることが少なくない。
この『インフュージョン』とは、それら既製リキュールへの、いわば“アンチテーゼ”なわけだ。
当店でも、オリジナルでユニークなインフュージョンが幾つかあるのだが、いずれもみな好評である。
(ってばらしていいのか、おい。ご愛読者及びリアル店のお客様の皆さん、通報はナシよ。笑)
昨稿の僕のコメントにも書いたが、トリュフを漬け込んだコニャックであるとか、各種ハーブを用いたりまた組み合わせたり、また意外な素材を用いたりなどして、それらによって生じる味覚的ダイナミズムは、新しい発見の喜びをもたらす。
勿論、今までには多くその実験の中で、失敗作やお蔵入り、また顰蹙をかったものなどもまた随分あるのだが。
ま、ややこしい話は、ブログではここまで。
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2007年05月01日
イチゴとバジル

このリキュールは、優れたラズベリー・リキュールのひとつとして、どころかカクテルを売りにするバーであるならば、バックバー(←バーの酒棚を、我々は一般にこう呼ぶ)を飾るに然るべき、マスト・アイテムであるといえる。
野趣豊かなで上品な風味は、カシス系カクテルをこれに代えることで、非常に複雑な広がりを持たせられる。
例えて言えば
カシスがカレーパウダーなら
シャンボールはガラムマサラだ。
(なんか、わかるようで全然わからんな。自爆しておこうっと)
何より『セックス・オン・ザ・ビーチ』にも欠かせない。
バーを嗜む方々にとっても、何よりその瀟酒な、といいますかこの極めてデコラティヴなボトル・デザインには、少なからず目を引かれたことがあるはずだ。
で
前から書こう書こうと思ってたんだけれど
角が立つ様な気がするので(←笑)やめておこうと思ってたんだけど、書くよ。
この『シャンボール』には、そのパッケージの1本ごとに、カクテルの小冊子が添えられていて
そこには、実に美しいカクテルの写真と、このリキュールを用いたレシピが載せてある。
現行ヴァージョンはこちら。

前ヴァージョンは、以前にもこのブログで何度か扱ったことがある。
今ではこのリキュールを扱うお店は随分と増えたことだろうが、とはいっても今、さほどに普及しているリキュールであるとは言い難い。
ただでさえ、今だそうそうに知られてはいない(気がする)このリキュール。
一般の方で、このリキュールを自宅用に購入される方というのは極めて稀なことだろう。
だから、このカクテル小冊子の存在は、ごくごく限られたバーテンダー達、のみぞ知るものだ。
更に言えば
ありきたりのバーなら、シャンボールこそ置いてはいても、カクテルに格別頓着がなければ、ここに記されたレシピなんぞには目にも留めないだろう。
英語だし。笑
今日は、そこに載せられてある、レシピのひとつをご紹介しよう。
『Basil Grande』

レシピは
ウォッカ
シャンボール
グラン・マルニエ
クランベリー・ジュース
バジルの葉
イチゴ
あしらいにブラックペッパー
分量と詳細な作り方は、オリジナルへのリスペクトの為、記載しない。
ともあれ
ひと目、バジルやブラックペッパーなど、これまで一般的なフルーツ系カクテルには用いられなかった材料だし、さらにイチゴと合わせるところなどが極めて斬新な、とてもコンテンポラリーなカクテルだ。
日本人の味覚的には、かなりドラスティックな仕上がりになる。
面白いカクテルだ。
ま、受け入れられるかどうかは、TPOと、プレゼンス次第ってところかな。
でも、似たよなの、どっかで見たよな。。
ま、ブログではこの辺にしておきましょう。
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前回の投稿とは、かなり文体が違うな。笑