南米チリで2月27日に発生した巨大地震=マグニチュード(M)8・8=に伴う津波で、チリ沿岸部は壊滅的な被害を受けた。死者・行方不明者は約570人で、1960年に起きた史上最大のチリ地震(M9・5)に比べると、人的被害が非常に少ない。被災地を現地調査した早稲田大学理工学術院の柴山知也教授(海岸工学)らによると、津波は4時間以上も繰り返し押し寄せ被害が拡大したが、50年前の教訓が多くの命を救ったという。(伊藤壽一郎)

  [イメージで見る]チリ地震 津波の到達時間と速度

 ■高さ20・6メートルの波

 「海岸の住宅地は津波に洗われまるで更地のよう。丘の上には船や住宅が打ち上げられていた。相当な被害に違いない」。今月2日に現地に到着した柴山教授は直感した。

 震源を中心とした沿岸約600キロ、38の調査地点の中で、最も南のティウラでは津波の到達した高さが20・6メートルにも及び、「津波のエネルギーの大きさが如実に分かった」という。

 震源の南約100キロの商工業都市、コンセプシオンの北側にあるディチェト地区では、津波が河口から駆け上り、海岸から400メートル離れた住宅地が、高さ7・4メートルに達する津波で破壊されていた。

 「津波は確実に低いところを選んで入ってくる。内陸でも川の近くは注意が必要で、海から離れていても安心してはいけない」

 ■トラップ現象

 被災地の痕跡と住民の証言から、津波は4時間以上にわたって何度も繰り返し押し寄せたことが分かった。

 コンセプシオンのペンコ地区では、4・7~5・4メートルの津波が数時間のうちに何度も繰り返し襲った痕跡が残っていた。その南西のジーコ地区でも3回、6・6~18・2メートルの津波が襲いかかった。

 柴山教授は、浅い陸棚に津波がとらえられて反射を繰り返す「トラップ現象」が起きた、と説明する。

 チリ周辺は、沖合100キロ前後まで、深さ500~600メートルの浅い陸棚が広がり、その先で急激に4千メートル前後の深海へと落ち込んでいる。浅い海と深い海は波の伝わり方が異なるため、境界部では反射が起こり、陸棚上に閉じ込められた津波が何度も沿岸を襲う。

 地形的に閉じられた湾内でも、津波の反復は起こる。柴山教授は「ペンコとジーコは湾に面している。陸棚から湾に入り込んだ津波がさらに増幅し、被害が拡大したのではないか」とみている。

 ■津波教育の効果

 チリ内務省によると、21日までに確認された死者は486人、行方不明者は79人。60年の超巨大チリ地震では5700人が死亡したが、今回は壊滅的な被害状況のわりに人的被害が小さい。

 背景には、徹底した津波教育があった。「チリでは60年の経験に基づき、学校で『大きな地震が来たら津波が来るから高台へ逃げろ』と教えている。それが役立った」

 震源の北約70キロのコンスティトゥシオンでは、約100人の犠牲者の大半は川の中州でキャンプしていた観光客で、ほとんどの住民は丘の上へ逃げていた。

 また、津波が6・4メートルに達して多くの家屋が倒壊したタルカワノ周辺でも、住民はほぼ全員が避難し、亡くなったのは船の保存にこだわった人と、「大丈夫、ここにいる」と言い張った人の2人だった。

 「避難こそが最善の対策」という教訓は日本でも同じ。柴山教授は「日本人の津波に対する意識も十分に高いが、国内の防災情報が広範囲で一律的だ。もっときめ細かく、住民が避難の必要性を判断しやすくしなくてはいけない」と指摘する。

 「地震発生から津波の襲来までには時間的な猶予がある。住民側も事前に計画を立て、合理的に避難すれば、死者はゼロにできるはずだ」

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