「鬼は外、福は内!」

 民主党幹事長、小沢一郎の不起訴情報が永田町を駆けめぐった3日夜、東京・赤坂の衆院議員宿舎の食堂は、ときならぬ熱気と喧噪(けんそう)に包まれていた。着ぐるみで赤鬼、青鬼にふんした議員に、小沢と首相、鳩山由紀夫の「お面」をかぶった女性議員ら。民主党議員30~40人が集まり、節分の豆まきに興じたのだった。

 「大変な時期だからこそ党内の結束を固めたい」

 呼びかけ人の一人はこう語る。会合はやがて飲み会となり、文部科学相、川端達夫も顔を出した。2次会も開かれ、「ちょっとふざけすぎたかも」(1回生議員)と声が出るほどの盛況ぶり。さながら事件が小沢本人に及ばなかったことを祝う「前夜祭」となった。

 だが、すでに小沢の元秘書の衆院議員、石川知裕らの起訴は確実視されていた。本来ならば、もっと事態を深刻に受け止めるのが普通だろう。ところが、民主党ではそうはならない。

 1月末には、東京・小菅の東京拘置所に勾留(こうりゅう)中の石川に対し、当選同期(2回)議員を中心とした33人の議員が署名した激励文を届けた。そこには、こう記されている。

 「必ず戻ると信じています! 待っているぞ!」

 石川は東京地検特捜部の調べに対し、政治資金収支報告書に故意に虚偽記載したことを認めている。その罪状を軽視し、無邪気に「待っている」と書く議員らが国会を闊歩(かっぽ)している。

                   ◇

 ■神妙一転…「オシッ!」

 民主党幹事長の小沢一郎は4日は朝から夕まで東京・元赤坂などの個人事務所にこもっていたが、自らの不起訴処分が決まると党本部に姿を現した。

 「私の政治団体に関することで国民、同志の皆さんにご迷惑、ご心配をおかけしたことを心からおわび申し上げます」

 小沢は神妙な面持ちでこう語った後、部屋を出際に「オシッ!」と右拳を上げた。この後、東京都世田谷区の自宅にほど近い居酒屋に秘書らと立ち寄った。「祝杯ですか」という記者の問いかけには無視を決め込んだ。

 ◆天の声で中止

 この日、急遽(きゅうきょ)取りやめとなった会合がある。取り調べの全面的な録音・録画を目指す民主党の「可視化議連」だ。この日は法務官僚を呼んで2回目の会合を開くはずだった。

 「天の声だよ。起訴されなくなったから、もうやる意味はないということだ。そもそも(可視化を嫌がる)検察に圧力をかけるのが狙いだったから…」

 メンバーの一人は率直に明かす。党所属議員は、小沢の手のひらの上で好きなように転がされる存在のようだ。

 もっとも、小沢が在宅起訴処分になるとの見方が強かった先月31日には、小沢と距離を置く議員から、小沢の進退に言及する発言が火を噴いた。

 「新たな局面が生まれた時は、われわれも厳しく自浄能力を発揮していかねばならない」(国土交通相の前原誠司)。元政調会長の枝野幸男や財務副大臣の野田佳彦も、それぞれ小沢続投を牽制(けんせい)してみせた。

 だが、こうした反撃ののろしはたちまちかき消える。前原は3日夜に小沢の幹事長続投容認を表明。野田は4日の記者会見で、小沢が説明責任を果たしているかに関し「努力はされてきた。スピーディーになった」と評価し、恭順の意を示した。

 ◆けじめになる日

 小沢周辺は「前原、枝野、野田らは小沢批判の前日に集まり、打ち合わせた上で進退発言をしたようだ。おそらくどこからか『小沢は在宅起訴となる』という情報が入ったのではないか」と打ち明ける。

 そうだとすると、前原らは誤情報を基に決起しかけ、慌てて軌道修正を図ったということになる。

 「真実は一つ。小沢幹事長を信じていると終始言ってきた。きょうは一つのけじめになる日かと思う」

 小沢に近い参院議員会長の輿石東は4日の記者会見でこう強調し、問題は解決したとの認識を示した。党内の多数派を占める小沢シンパは勢いづいている。

 議員グループ「一新会」に所属する議員約25人は4日昼、国会にほど近い筆頭国対副委員長(一新会事務局次長)、松木謙公の事務所に集まった。一新会は熱烈な小沢支持者が多く、政治資金規正法違反の罪で起訴された石川知裕を支援するため、メンバーから各1万円を集めもした。「徹底的な捜査で潔白が証明されたわけだから、参院選もこれで戦える」。集まったメンバーは口々に安堵(あんど)の声を漏らした。

 ◆まるで民主集中制

 「何もモノが言えないような民主党ではない。明らかにつくられた虚像だ」

 首相の鳩山由紀夫は4日の参院決算委員会でこう述べた。1日の衆院代表質問への答弁でも、次のように強調していた。

 「民主党は選挙を経て代表を選出し、代表が幹事長ほかの役員を選任する。健全な党内民主主義を貫いていて、幹事長が党や政府を支配することは一切ない」

 だが、実際には小沢に逆らったり、諫言(かんげん)したりできる議員はまずいない。民主党の最高実力者が、小沢であることを疑う国会議員もいないはずだ。

 いったん指導部(者)を民主的に選んだら、後はその決定に無条件に従い続けるという民主党の現状は、レーニン主義を引き継ぐ旧ソ連、中国共産党などの「民主集中制」にそっくりではないか。

 小沢自身が昨年12月に訪中して国家主席の胡錦濤と会談した際、中国人民解放軍を念頭に置いて「野戦軍の最高総司令官として(日本)解放の戦いに徹していきたい」と述べている。

 不起訴になっても小沢をめぐる政治資金疑惑がすべて解消されたわけではないが、党内の小沢支配はますます強化されかねない。

 「起訴された小沢さんの元秘書らは、別に自分の収支報告書に虚偽記載したわけではない。親の責任を子がかぶるような話だ」

 民主党衆院議員、村越祐民はこう明言した。だが、実名で小沢を批判する民主党議員はほかにはもういない。

                   ◇

 小沢の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で、結局、小沢自身は起訴を免れた。この“朗報”に、党内では、小沢を支持する議員らが勝ちどきをあげる一方で、多くの議員は事件の深刻な影響から目をそらすように白々しい沈黙を保っている。軽薄さと重苦しさが奇妙に入り交じる「小沢帝国」の現状をリポートする。(敬称略)

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