私は機構設計者であるとともに、熱設計者である。
今の会社に入社して、偶然、熱設計の業務をすることになったのが学ぶきっかけであった。
熱設計者とは、製品内の部品を目的の温度に保つように冷却するシステムを設計する者のことをいう。
かれこれ、5年、機構設計の業務とは別に、熱設計に関わってきた。
そんな中で、仕事とは別に、日常生活でもこうした知識を運用できれば楽しいなと感じるようになってきた。これからチョクチョク、色んな現象をシミュレートする手法を紹介していきたいと思う。
今回は、「所望の量の溶液を電熱器(ヒータ)で温めるときに要する時間とお金」をシミュレートする方法を書きたいと思う。
まず、入力するべき項目を考える。
・温める対象( 溶液 )は何か?
→ 水、お酒、牛乳など
・温めるって、何℃にするのか?
→ 25℃くらいの水を100℃にする!など
・温める溶液の量は?
→ 250ml など
・電熱器(ヒータ)への電力は?
→ 1000W など
・ 電力量あたりいくらかかるのか?
→ 30円/kWh など
ざっと、このくらいの情報が必要だろうな~などと思いながら、理論式を考えてみる。
まず、熱とはエネルギーである。
今回の現象は、電気的エネルギーを熱エネルギーに変えるというものである。
故に、入力エネルギー = 出力エネルギー の関係で考えれば、入力は電気、出力は熱とする。
そこで、入力の電気エネルギー( = Qele )を考えてみる。
Qele = P×t ・・・(1)
P;入力電力[W]
t;印加時間[s]
※ W = J/s より、Qele[J]である。
次に、出力の熱エネルギー( = Qth )を考えてみる。
熱せられるのは溶液である。よって、溶液が目的の温度になるのに必要なエネルギーを考えればよい。
溶液には、それぞれ、比熱c[ J/(g・K) ]と密度ρ[ g/cm3 ]という固有量がある。
比熱の単位をみれば分かるように、ジュールというエネルギーを表す量が入っている。
故に、溶液量[g]と温度変化[K]を比熱にかけてあげれば、Qthが求まると分かる。
ここで、溶液量は一般に、ccとか、ml などを用いるので、所望の溶液量としてmlを入力する場合は、溶液固有の密度を使って、gに変換してあげれば良い。
以上から、Qth[J]を式で表すと、下記のようになる。
Qth = c×ρV×ΔT ・・・(2)
ΔT = Te - To ・・・(3)
まとめると、
Qth = c×ρV×( Te - To ) ・・・(4)
となる。
今回、電気エネルーは、熱エネルギーにしか変換されないとしているので、Qele = Qth であるから、
P×t = c×ρ×( Te - To )
⇔
t = c×ρ×( Te - To )/P ・・・(5)
となり、所望の温度にするのに必要な時間を求める理論式ができた。
ところで、電力会社から送られてくる請求書を見ると、料金[円]と使用電力量 [kWh]が記載されている。例えば、これをM[円/kWh]という形にして、Qele、またはQth をかけてあげれば、溶液を温めるのにかかった一回あたりの電気料金C[円/回] が明らかになる。
C = M×Qele ・・・(6)
※ Wh = (J/s)×3600s = 3600J
以上より、溶液を電熱器で温めるのに必要な時間と料金を予測するための簡単な理論式が求められた。これを、Excelで記述してみる。
加熱時間に関しては、(5)式をE12のセルに記述してあげればよい。
その際、E5からE10が使用される。
料金に関しては、(6)式をE13のセルに記述してあげればよい。
その際、E11とE12が使用される。
E6とE7にある、密度と比熱は、ネットで溶液種を検索すれば直ぐにでてくるので個別に参照していただきたい。
計算例は、会社で赤ちゃんが飲むための牛乳を作るのが大変でしょうがないという先輩がいたので、その加熱に必要な時間と料金を見積もってみた結果である。
赤ちゃん用の粉ミルクは、水に溶解させるのに75℃まで加熱させる必要があるので、目標温度を75℃とした。
また、水道水は20℃、入力電力は1000W、電気料金は30円/kWh とした。
※ 1000Wは、安めの電気ポッドが沸騰時に必要とする電力値である。
すると、250ml( 大型哺乳瓶一本分 )を75℃まで加熱するのに、出力のような時間とお金がかかると予測できた。実際との差異は、別途個別に調べていただき、必要に応じて係数をかけるなりして調整していただきたい。
大切なのは、こうして予測できた結果を活用することである。
予測時間から、溶液量や印加電力を調整したりする。
料金から、一日あたり、または一ヶ月あたりの費用を見積もり、切り詰めるなどの行動計画を立ててみる。
例えば、加熱時間をもっと短く出来ないかと考えて、印加電力を変動させたときと加熱時間の関係をグラフ化してみる。
ケトルなどでよくある1600Wくらいの加熱能力を実装すれば、1000Wのときよりも約20秒の時短ができるとか、1kWhあたりの料金が決まっている場合は、0.17円/回のコストダウンができるだとかを見積もることができる。
逆に、4秒くらいで加熱を済ましたい場合は、10000Wも必要になるので、現実的にどうなんよ?という話になる。
このように、シミュレーションは次の行動計画を立てるための強力な目安となるので、是非オススメしたいと思う。
では・・・
今の会社に入社して、偶然、熱設計の業務をすることになったのが学ぶきっかけであった。
熱設計者とは、製品内の部品を目的の温度に保つように冷却するシステムを設計する者のことをいう。
かれこれ、5年、機構設計の業務とは別に、熱設計に関わってきた。
そんな中で、仕事とは別に、日常生活でもこうした知識を運用できれば楽しいなと感じるようになってきた。これからチョクチョク、色んな現象をシミュレートする手法を紹介していきたいと思う。
今回は、「所望の量の溶液を電熱器(ヒータ)で温めるときに要する時間とお金」をシミュレートする方法を書きたいと思う。
まず、入力するべき項目を考える。
・温める対象( 溶液 )は何か?
→ 水、お酒、牛乳など
・温めるって、何℃にするのか?
→ 25℃くらいの水を100℃にする!など
・温める溶液の量は?
→ 250ml など
・電熱器(ヒータ)への電力は?
→ 1000W など
・ 電力量あたりいくらかかるのか?
→ 30円/kWh など
ざっと、このくらいの情報が必要だろうな~などと思いながら、理論式を考えてみる。
まず、熱とはエネルギーである。
今回の現象は、電気的エネルギーを熱エネルギーに変えるというものである。
故に、入力エネルギー = 出力エネルギー の関係で考えれば、入力は電気、出力は熱とする。
そこで、入力の電気エネルギー( = Qele )を考えてみる。
Qele = P×t ・・・(1)
P;入力電力[W]
t;印加時間[s]
※ W = J/s より、Qele[J]である。
次に、出力の熱エネルギー( = Qth )を考えてみる。
熱せられるのは溶液である。よって、溶液が目的の温度になるのに必要なエネルギーを考えればよい。
溶液には、それぞれ、比熱c[ J/(g・K) ]と密度ρ[ g/cm3 ]という固有量がある。
比熱の単位をみれば分かるように、ジュールというエネルギーを表す量が入っている。
故に、溶液量[g]と温度変化[K]を比熱にかけてあげれば、Qthが求まると分かる。
ここで、溶液量は一般に、ccとか、ml などを用いるので、所望の溶液量としてmlを入力する場合は、溶液固有の密度を使って、gに変換してあげれば良い。
以上から、Qth[J]を式で表すと、下記のようになる。
Qth = c×ρV×ΔT ・・・(2)
ΔT = Te - To ・・・(3)
まとめると、
Qth = c×ρV×( Te - To ) ・・・(4)
となる。
今回、電気エネルーは、熱エネルギーにしか変換されないとしているので、Qele = Qth であるから、
P×t = c×ρ×( Te - To )
⇔
t = c×ρ×( Te - To )/P ・・・(5)
となり、所望の温度にするのに必要な時間を求める理論式ができた。
ところで、電力会社から送られてくる請求書を見ると、料金[円]と使用電力量 [kWh]が記載されている。例えば、これをM[円/kWh]という形にして、Qele、またはQth をかけてあげれば、溶液を温めるのにかかった一回あたりの電気料金C[円/回] が明らかになる。
C = M×Qele ・・・(6)
※ Wh = (J/s)×3600s = 3600J
以上より、溶液を電熱器で温めるのに必要な時間と料金を予測するための簡単な理論式が求められた。これを、Excelで記述してみる。
加熱時間に関しては、(5)式をE12のセルに記述してあげればよい。
その際、E5からE10が使用される。
料金に関しては、(6)式をE13のセルに記述してあげればよい。
その際、E11とE12が使用される。
E6とE7にある、密度と比熱は、ネットで溶液種を検索すれば直ぐにでてくるので個別に参照していただきたい。
計算例は、会社で赤ちゃんが飲むための牛乳を作るのが大変でしょうがないという先輩がいたので、その加熱に必要な時間と料金を見積もってみた結果である。
赤ちゃん用の粉ミルクは、水に溶解させるのに75℃まで加熱させる必要があるので、目標温度を75℃とした。
また、水道水は20℃、入力電力は1000W、電気料金は30円/kWh とした。
※ 1000Wは、安めの電気ポッドが沸騰時に必要とする電力値である。
すると、250ml( 大型哺乳瓶一本分 )を75℃まで加熱するのに、出力のような時間とお金がかかると予測できた。実際との差異は、別途個別に調べていただき、必要に応じて係数をかけるなりして調整していただきたい。
大切なのは、こうして予測できた結果を活用することである。
予測時間から、溶液量や印加電力を調整したりする。
料金から、一日あたり、または一ヶ月あたりの費用を見積もり、切り詰めるなどの行動計画を立ててみる。
例えば、加熱時間をもっと短く出来ないかと考えて、印加電力を変動させたときと加熱時間の関係をグラフ化してみる。
ケトルなどでよくある1600Wくらいの加熱能力を実装すれば、1000Wのときよりも約20秒の時短ができるとか、1kWhあたりの料金が決まっている場合は、0.17円/回のコストダウンができるだとかを見積もることができる。
逆に、4秒くらいで加熱を済ましたい場合は、10000Wも必要になるので、現実的にどうなんよ?という話になる。
このように、シミュレーションは次の行動計画を立てるための強力な目安となるので、是非オススメしたいと思う。
では・・・