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 室戸岬では車を駐車場に停めて,岩の間を歩いたり,展望台に上ったり,中岡慎太郎像と写真を写したりしました。土産物屋の一軒もなく,中岡慎太郎像と一緒に写真を写すにもそれを頼む人さえなかなか見つからないと,日本の有名な観光地にはあり得ない状態で,私は非常に好感をもちました。
 この旅では,この室戸岬の先端の数キロだけが,私の心を満たしてくれました。それにしても遠いところでした。
 室戸岬から先は四国の東側の海岸に沿って走りました。高知市に泊まるということと室戸岬に行くということ以外は何の予定もなく出かけた四国への旅でしたが,わずか1泊2日,復路は淡路島を一挙に高速道路で走り抜け,そのまま帰宅しました。

 室戸岬から少し北東側にいったところに「御厨人窟」(みくろど)がありました。 御厨人窟は四国八十八箇所番外札所のひとつです。神明窟(しんめいくつ)も隣接しています。
 これらは隆起海蝕洞で,それぞれ祠が祀られており,御厨人窟には五所神社があり祭神は大国主命,神明窟は神明宮があり祭神は大日孁貴となっています。
 御厨人窟は平安時代の初期,弘法大師がこの洞窟に居住したと伝えられています。この洞窟から見える風景は空と海のみで,ここから「空海」の法名を得たとされます。また,神明窟で難行を積みその最中に明星が口に飛び込み,この時に悟りが開けたと伝えられています。
 現在は落石のため崖前の全面に柵が設けられていて,洞内への立入りはできません。

 ここで岐阜から来ているというひとりのお遍路さんに会いました。彼は私とほぼ同じくらいの歳で,毎回高速バスで来ては数日間歩いているのだそうです。私は,これだけ健康なら行けるうちに海外に出かければいいのにと思ったことでした。
 このあたり,車で走っていると,道路の脇はお遍路さんだらけですが,道が狭いので危険です。お遍路さんは,定年退職後の人や外国人ばかりなのですが,学生時代は「ブカツ」漬けで就職すれば残業ばかり,そうした人たちが定年退職して自分とはじめて向き合うために遍路旅をするという気持ちはわからなくもありません。そうした人生をおくらなかった私はやらないでしょうが。

 しかし,この四国八十八箇所巡礼といってもありがたいことばかりではなく,今の状況は1930年ごろに整備された四国を支える観光ビジネスで,所詮人間のやっていることだから欲得がらみの問題もあります。世の中なんてそんなものです。詳しく知りたい方は「62番札所」とでも検索してみてください。 
 ところで,私は先日胃カメラを使った検査をして,そのときに,突然,この結果次第ではこれで私の夢もすべて終わりだなあ,という焦燥感に襲われました。人生なんてたかがそれだけのものか,と。そう思ったら,時間がこれまで以上に貴重なものに思えてきました。それとともに,世の中の雑事やらさまざまな騒がしいニュースやら,そうしたことのすべてがより馬鹿らしく思えてきました。

 その後,夫婦岩を過ぎ,白浜海岸まで走ってそこで昼食をとりました。白浜海岸は四国屈指の遠浅の砂浜海岸で,夏になると海の家が設置され,大勢の海水浴客で賑わうといいます。ここは満ち引きの差が「普通じゃない!」ということです。遠浅の海岸で沖合まで約50メートルも浅瀬が続いているからです。
 このように,四国は,室戸岬あたりから東海岸の白浜海岸あたりまでが見どころで,そのあたりだけは風光明媚でとても素晴らしいところです。それにしても,本州から行くには高速料金は異常に高く,時間もかかり,せっかく到着してもほとんどの場所は山と軽トラばかり。九州の久住高原とは違って星を見るような空の開けた場所もありません。時間とお金とそれに見合った風景を考えると,ハワイへ行った方がはるかに安上がりだなと,これが私の結論です。