2026年02月03日
各政党に対し、犯罪被害者の救済に関する考え方を問いました
各政党に対し、犯罪被害者の救済に関する考え方を問いました
選挙にあたり、犯罪被害者の救済に関する考え方について、各政党に質問状を送付しました。あわせて、犯罪被害者の救済をめぐる現状や課題について、当会ホームページにて記事を掲載しています。
本記事は、当会が各政党に送付した選挙質問状の内容とも深く関わるものであり、犯罪被害者の救済をどのように支えていくのか、また、そのための制度や財源の在り方について考えていただくことを目的としています。
各政党への送付について
当会が質問状を送付した政党は、以下のとおりです。
・自由民主党
・中道改革連合
・国民民主党
・日本共産党
・日本維新の会
・社会民主党
・れいわ新選組
・参政党
・チームみらい
現在、当会ホームページにて、各政党からの回答を順次掲載しております。期限後にご回答をいただいた場合も、随時掲載を行う予定です。
選挙にあたり、犯罪被害者の救済について、各政党がどのような考えを持っているのか。まずは、各党から寄せられた回答をご覧ください。
なぜこの9政党に質問状を送付したのか
当会は小さな団体であり、限られた人員と体制の中で活動を行っております。そのため、すべての政党・政治団体に一律に質問状を送付するだけの力を持ち合わせていないのが現状です。
そこで今回は、国政の場において活動実績が確認でき、国家レベルでの政策形成に関与していることが客観的に確認できる政党を目安として、質問状を送付いたしました。
これは、特定の政党を支持または排除する意図によるものではなく、犯罪被害者の救済という重要なテーマについて、国政において責任ある立場からの見解を伺うことを目的とした判断です。
なお、文中に「公明党」と記載している箇所がありますが、現在の衆議院議員選挙においては「中道改革連合」として活動されていることから、当該部分につきましては**「中道改革連合」へ訂正**させていただきます。
罰金刑と財源についての考え方
罰金刑の在り方については、社会の中でもさまざまなご意見があることを、私どもも重々承知しています。そのうえで、私たちは改めて、犯罪被害者の救済を安定的に支える財源を、どのように確保できるのかを模索してきました。
今回、罰金について問題提起を行ったのは、すべての犯罪において、被害者救済のための財源確保の一つとして考えられないだろうか、という視点からです。
なお、私たちは、罰金を引き上げることや、処罰を重くすることを目的としているわけではありません。犯罪被害者の救済という明確な目的のもと、現在の制度の中で、どのような形で安定した支援を実現できるのかを考える必要があるのではないか、という問題提起です。
不安定な生活の中で犯罪被害に遭うという現実
生活が不安定な中で犯罪被害に遭うことは、単に被害を受けたという事実にとどまらず、仕事を続けられなくなる、学業を諦めざるを得なくなるなど、生活そのものを直撃します。
被害者支援と加害者支援の公費の差
日本では、犯罪被害者支援に充てられている公費は、年間およそ100億円前後とされています。一方で、刑務所や拘置所の運営、更生保護、少年院など、加害者側にかかる公費は、年間3,500億円以上にのぼります。
罰金を被害者救済に生かすという選択肢
犯罪被害者が、決して一人で苦しむことのない社会の実現に向けて、今後も当会は声を上げ続けてまいります。
特別休暇制度に関する取り組みについて
また現在、当会では、犯罪被害者・遺族に対する特別休暇制度の義務化を求め、厚生労働省に対し、大臣との面会を要望しております。
裁判への対応、心身の不調、生活の再建など、犯罪被害者が抱える課題は多岐にわたります。
今後も当会では、厚生労働省をはじめとする関係機関に対し、改めて働きかけを行ってまいります。
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
https://i-nokai0708.com/tag/information/
#あいの会 #犯罪被害者 #交通事故 #特別休暇制度
#一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
#選挙 #衆議院議員選挙

2026年01月18日
人権教育啓発情報誌「アイユ」2026年1月号掲載のお知らせ(全4回連載スタート)
このたび、人権教育啓発情報誌「アイユ」2026年1月号(Vol.416)に掲載されました。
そして、2026年1月号より全4回の連載が決定し、今号がその第一回目となります。
今回は、掲載のご報告とあわせて、「アイユ」がどのような媒体なのか、そして連載を通じて私が伝えていきたいテーマについてご紹介します。
■『アイユ』とは(発行元について)
「アイユ」は、公益財団法人 人権教育啓発推進センターが発行している、人権教育・啓発の月刊情報誌です。
http://www.jinken.or.jp/information/jigyou/allyu
このセンターは、自治体の資料でも「法務省及び文部科学省共管の公益法人」と説明されており、
国や自治体の人権施策ともつながりの深い組織です。
そうした媒体に掲載いただけたことを、大変ありがたく感じています。
■どこで読めるの?『アイユ』の届き方
「アイユ」は、主に二つの形で人の手元に届きます。
一つは、自治体(地方公共団体)などがセンターに参画し、必要な情報提供を受ける流れの中で届くルートです。
実際に自治体の資料には、センターへの負担金支出とともに「人権教育啓発情報誌『アイユ』の提供」を受けていることが明記されています。
対象として、市職員(人権啓発に関係する職員)や人権擁護委員が挙げられており、
行政の現場や関係者に届く性格の媒体であることが分かります。
またセンター自体が、地方公共団体だけでなく企業・団体・個人も会員として構成されている、と説明されています。
もう一つは、定期購読として申し込み、毎月郵送で受け取る方法です。
案内では、定期購読は送料無料で毎月届けられるとされています。
つまり「アイユ」は、行政の現場・関係機関・団体、そして必要とする個人へと、静かに、でも確実に届いていく媒体です。
■連載テーマ:交通事故遺族・犯罪被害者が受ける誹謗中傷という“新しい傷”
私が今回、この連載で書いていくのは、交通事故遺族や犯罪被害者であっても、誹謗中傷によって傷つけられてしまう現実です。
誹謗中傷は、交通事故後の「新しい人生」に、さらに「新しい傷」を残します。
目に見えず、説明もしづらい。けれど確実に、人の心を追い詰めていく。
それが誹謗中傷です。
交通事故の被害は、事故の瞬間で終わるものではありません。
その後の裁判、手続き、生活の立て直し、そして周囲や社会から投げつけられる言葉によって、被害は何重にも重なっていきます。
「被害者の側が、黙るしかない」
「声を上げると、また叩かれる」
そんな空気の中で、孤立していく当事者がいます。
私は交通事故遺族として、そして誹謗中傷を経験し苦しんだ人生の中で、
事故後に生むあらたな二次被害の現実を、社会に伝えていきたいと思い、この連載を書かせていただきました。
■読んでくださる方へ(連載に込めた思い)
読んでくださる方の中に、同じ痛みを抱えた方がいたら、あなたは一人ではありません。
そして支える側の方には「言葉が人の人生に与える影響」を、どうか一緒に考えていただけたら嬉しいです。
一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
2026年01月16日
2025年11月15日開催「豊島区 犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウム」の動画が特別に公開されました(2026.1.16)
あいの会副代表理事の松永が登壇し、お話をさせていただきました。
当日の様子が動画として特別に公開されましたので、ご覧いただければ幸いです。
▼動画はこちら
「豊島区犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウム」
https://www.youtube.com/watch?v=zO_WKRCdDiU
■感謝を込めた特別公開への想い
普段、私たちは
直接、生の声で想いを訴えたいという考えから、
動画配信や講演の公開は行っていません。
被害者や遺族の声は、
画面越しや記録として消費されるものではなく、
同じ空間で、同じ時間を共有しながら、
まっすぐに届けたい――
そんな思いを大切にしてきました。
それでも今回、当日の様子を動画として特別に公開することにいたしました。
それは、私たちの想いを真正面から受け止め、
豊島区に犯罪被害者等支援条例をつくってくださったことへの、
心からの感謝を、どうしても形にして伝えたかったからです。
この条例は、自然に生まれたものではありません。
被害者や遺族の声に丁寧に耳を傾け、
「制度として支える必要がある」と決断してくださったからこそ、実現しました。
だからこそ、この動画は、いつもの発信ではありません。
感謝の気持ちを込めた、特別な動画です。
この動画を通して、
条例が生まれた背景や、その重み、
そして「支援がある」という事実が、
今まさに苦しみの中にいる誰かに届くことを願っています。
■映像として残る意味
今回のシンポジウムでは、条例がどのような背景で作られ、どのような支援が必要とされ、
行政がどの方向へ進もうとしているのか、複数の視点で語られました。
想いを言葉にしても、当日その場で聞いた人にしか届かないことは多いです。
けれど映像として残ることで、後から必要とする誰かの目にも届きます。
それは、制度や支援というものが“広がっていく”ためにとても大切なことだと思っています。
■これからに向けて
豊島区が一歩を踏み出したことは、同じように悩む他の自治体にとっても、背中を押すきっかけになるはずです。
支援というものは派手ではなく、時間もかかります。
けれど確かに未来を変えていく力があります。
私自身の体験は、数ある被害の中のたった一つです。
それでも、今苦しんでいる誰かが「助けを求められる場所がある」と思えるなら、それだけで意味があると思っています。
■感謝
条例制定にあたり、真摯に耳を傾け動いてくださった高際区長をはじめ、
豊島区の皆様、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
<参考リンク>
豊島区犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウムについて
https://www.city.toshima.lg.jp/158/2509050914.html

<「豊島区 犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウム」開催概要>
■ 開催日
令和7年11月15日(土曜日)
■ 開催時間
午後2時~4時30分
■ 場所
としまセンタースクエア
■ 内容
・講演会:「犯罪被害の生まれない社会へ~遺族の思い」
・講義:「途切れない支援について」
・説明:「豊島区犯罪被害者等支援条例について」
・パネルディスカッション:「自治体にのぞむ犯罪被害者等支援」
・犯罪被害者等パネル展示
■ 講師
・帝京平成大学教授:大塚淳子氏
・一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(あいの会)副代表理事:松永拓也氏
・新全国犯罪被害者の会(新あすの会):近藤さえ子氏
・公益社団法人被害者支援都民センター相談支援室長:阿久津照美氏
■ 対象
どなたでも
■ 定員
約200名
■ 費用
無料
■ 主催
豊島区
【署名締切】妊婦死亡事故と胎児への被害について ― 日七未ちゃんの署名締め切り(1月25日午前中)のご報告(2025.1.16)
1月26日の第二回公判では、検察としての判断が示される見込みです。
つきましては、本署名活動は1月25日午前中をもって終了とし、
1月26日に、これまでに寄せられたすべての署名を提出いたします。
本署名は、愛知県一宮市で起きた妊婦死亡事故により、
胎児として事故に遭い、緊急帝王切開で生まれ、
現在も重度の障害を負いながら生きている日七未(ひなみ)ちゃんについて、
胎児であったとしても、当然に被害者として認められるべきである、
という思いから続けてきたものです。
短い期間ではありましたが、本当に多くの方にご賛同いただきました。
心より感謝申し上げます。
この署名締め切りについては、研谷さんからの要望によりご連絡しています。
署名は一区切りとなりますが、
日七未ちゃんの被害が正しく認められることを願い、
引き続き裁判の行方を見守っていきたいと思います。
一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
<参考リンク>
妊婦の死亡事故 緊急帝王切開で産まれ、重度の障害を負いながら懸命に生きる娘は被害者ではないのか?「胎児への加害行為に対して過失運転致傷での起訴を求めます」(起訴後は厳罰を求めます)
https://c.org/yJ9sdypPFf
1月25日署名活動終了と1月26日署名提出のお知らせ
https://c.org/WswWgcF2Pt
2025年12月31日
今年もお世話になりました(2025年)
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の活動に対し、
本年も多くのご理解とご支援を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
本年も当会は、交通事故や犯罪によって突然日常を奪われた方々の声に耳を傾け、
相談支援をはじめ、制度に関する情報提供や啓発活動などに取り組んでまいりました。
被害は、事故や事件が起きたその日で終わるものではありません。
裁判や保険の問題、生活の再建といった長期にわたる課題に加え、
近年は、SNSやインターネット上での誹謗中傷、心ない言葉、
さらには報道による二次被害によって、被害者が再び深く傷つけられる現実があります。
当会では今年、
誹謗中傷に関する相談対応や整理を行うとともに、
「批判」と「誹謗中傷」の違いを社会に伝えるための発信、
被害者がこれ以上傷つかないための講演活動や啓発活動にも力を注いできました。
また、被害者や遺族の声を社会制度へとつなげる取り組みとして、
豊島区における被害者支援に関する条例立ち上げへの参加にも関わってまいりました。
現場の声を行政に届け、制度として形にしていくことは決して容易ではありませんが、
一歩ずつでも前進させていくことの重要性を改めて実感した一年でした。
あわせて、被害やその背景を社会全体で考えていただくための取り組みとして、
東京都内の図書館への絵本の寄贈も行いました。
被害者や遺族の置かれている現実を、
より多くの方が知り、考えるきっかけとなることを願っています。
刑事裁判の最中、あるいは裁判が終わった後であっても、
被害者がさらなる苦しみを背負わされてしまう現状は、
決して見過ごされてよいものではありません。
「被害は事故当日で終わらない」
その事実を社会に伝え続けることも、私たちの大切な役割だと考えています。
道半ばではありますが、
一つひとつの声が、確かに次につながっていることを感じる一年でもありました。
来年もまた、
被害者が孤立しない社会、
悲しみや苦しみが置き去りにされない社会を目指し、
活動を続けてまいります。
本年も本当にありがとうございました。
どうか皆さま、穏やかな年末年始をお迎えください。
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢樹里
2025年12月15日
加害者の「出所後」、被害者はどう守られるのか――不安を抱え続ける現実(2025.12.15)
出所後も居住地などの情報 被害者に開示求める
https://news.ntv.co.jp/category/society/6a6d6502684144d894c652508b9d83a9#

会見では、加害者が刑期を終えて出所した後も、被害者が長期にわたり不安や恐怖を抱え続けている現状が改めて示され、
受刑者が出所した後の居住地などの情報を、被害者側が知ることができない現行制度について、改善を求める声が上がりました。
加害者が出所後に被害者へ危害を加える、いわゆる「お礼参り」などのリスクを念頭に、被害者が必要な情報にアクセスできる仕組みの整備が不可欠だと訴えています。
また、会見にはオンラインで、あいの会代表の小沢に加えて、
2016年に東京・小金井市でライブ会場の前においてファンの男にナイフで刺され重傷を負った冨田真由さんのお母さんも参加し、
「加害者の出所後を考えると、私たちは一生、恐怖と不安を抱えなければならない」と語り、被害者や遺族が置かれている現実の重さを訴えました。

2025年12月07日
対談公開のお知らせ――誹謗中傷が命を奪う時代へ【あいの会 × カンニング竹山 対談】
カンニング竹山さんにご出演いただいた回を公開いたしました。
▼会員限定サイト「交通事故遺族の真実」
https://i-nokai0708.magone.jp/fanclub

公開ページ(交通事故遺族の真実):https://i-nokai0708.magone.jp/fanclub/movie
今回の動画では、竹山さんが
「誹謗中傷の問題」
「社会に伝えたい切実な現実」
について、真摯な思いをもって語ってくださいました。
対談収録当日は、緊張感の中にも深い対話が交わされ、
立場の違いに丁寧に配慮しながら話を導いてくださった姿勢が大変印象的でした。
遺族の想いを確かに受け止めていただけたと強く感じております。
今回の動画が、一人でも多くの方に届き、
誹謗中傷や社会的偏見について考えるきっかけとなれば幸いです。
なお、本動画は「交通事故遺族の真実」で11月30日に先行公開しておりましたが、
12月6日に、YouTube「まぐまぐチャンネル(MAGMAG)」 でも公開いたしました。
https://www.youtube.com/watch?v=avGP092sXCw
皆さまにおかれましては、周知・シェアにご協力いただけますと幸いです。
今後とも、関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の活動へのご理解とご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年12月02日
交通事故で家族を亡くしたこどもの支援を考える──盛岡シンポジウムに中村の長男が登壇しました(2025.12.2)
(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/jikosupport/index.html)に、あいの会の中村の長男が登壇しました。

事件当時は4歳で、当時の記憶は多く残っていませんが、
小学校時代に友人たちが特別視せずに接してくれたことに救われたこと、
また、給付型奨学金に支えられたことなどを、質問に答える形で話しました。
交通事件の当事者には、そこに関わるすべての人に深い悲しみがあります。
しかし、子どもたち自身が思いを発信できる場はとても少なく、支援が必要です。
社会全体でこの問題を考え、子どもたちを含めた支援の輪が広がることを願っています。
本シンポジウムは申込制で、オンデマンド配信が行われます。
〉〉https://forms.gle/fc5BHL2fnYPFj8nw9
《 申込み方法 》
・上記URLにアクセスすると申込みフォームが表示されます。
・フォームに必要事項をご記入のうえ登録してください。
・12月4日(木)頃から随時、登録したアドレス宛に視聴URLとパスワードが送られます。
申込期間:12月29日 18時まで
配信期間:2025年12月5日〜2026年1月6日 19時まで
2025年12月01日
【公式声明】自動車安全特別会計の未返済分 5,741億円の一括返済決定について(2025.12.1)
2025年11月、財務省より、自動車安全特別会計から一般会計へ繰り入れられていた未返済分 約5,741億円の一括返済 が正式に決定いたしました。
当会としても、この決定を歓迎するとともに、これまで多くの関係団体と連携して働きかけを続けてきた経緯を踏まえ、ここに公式にご報告申し上げます。

1.本決定の背景
■自賠責保険制度と「自動車安全特別会計」とは
自賠責保険は、自動車事故による被害者救済を目的とし、
保険料およびその運用益で
・療護・リハビリ
・重度後遺障害者への介護
・遺族支援
・事故防止対策
などを行う極めて重要な制度です。
この財源を管理するのが「自動車安全特別会計」です。
■なぜ 5,741億円 が一般会計へ「貸し出された」のか
平成6〜7年度、バブル崩壊後の深刻な財政難により、
・税収の大幅な落ち込み
・社会保障・公共投資の急増
・国債発行の限界
といった複合的要因から、国は一時的な資金確保を目的に
特別会計の資金を“返済を前提に一般会計へ繰り入れる” という措置をとりました。
■長期間返済されなかった現実
一部返済は平成15年度までに行われましたが、
平成16〜29年度の14年間、返済は完全に停止。
その結果、本来、被害者支援のために積み立てられた5,741億円が、長期間返済されない状態が続いたという非常に問題のある状況が続いてきました。
返済が滞ったことで、
本来であれば強化されるべき、
・重度後遺障害者の療護・介護体制
・被害者、遺族支援の拡充
・無保険車対策や事故防止事業
といった重要な領域への影響が懸念され続けていました。
■繰戻し再開と、今回の「全額一括返済」へ
関係団体による要望活動が続き、平成30年度から段階的な返済が再開。
そして令和7年度(2025年度)、ついに
残余全額の一括返済が実現する運びとなりました。
2.当会のこれまでの活動
当会は、交通死遺族の立場から、自賠責制度における被害者・遺族支援の充実を求め、継続的な働きかけを行ってきました。
主な取り組み:
・「自動車損害賠償責任保険制度を考える会」への参加
・財務省への要望書提出
・国土交通省関連委員会における意見提言
・自賠責審議会での被害者側意見の反映
国土交通省の委員の立場からも、返済ロードマップの必要性を繰り返し訴え、制度維持と被害者支援の安定性確保を強く求めてまいりました。
今回の一括返済決定は、被害者・遺族の声が正当に国へ届いた結果であると受け止めています。
3.返済決定の意義
今回の決定により、次の重要な効果が期待されます。
■ ① 被害者支援財源の安定化
療護施設、介護・リハビリ、支援員の確保など、
継続的に必要な被害者救済事業の基盤が強化。
■ ② 遺族支援体制の強化
従来手薄だった遺族支援(相談・心理ケア)の制度的後押しが可能に。
■ ③ 事故防止施策の継続
自動車ユーザーの保険料負担を抑えつつ、
事故防止・無保険車対策などの事業を安定的に継続できる環境が整備。
■ ④ 制度の持続可能性の向上
返済計画が明確になり、自賠責制度に対する社会的信頼が向上。
4.今後に向けて
一括返済は大きな前進ですが、交通事故被害者・遺族が直面する課題は依然として多く残されています。
・重度後遺障害者の生活支援の拡充
・介護者の負担軽減と人材確保
・遺族支援制度のさらなる強化
・無保険車・危険運転など再発防止対
・被害者が孤立しない相談体制の充実
これらの課題に対し、当会は今後も、被害者・遺族の実情を行政・立法機関へ届ける役割を果たし続けます。
5.結び
今回の返済決定に際し、財務省、国土交通省、関係審議会の皆様、
そして長年ともに要望活動を続けてきた関係団体の皆様へ、深く敬意を申し上げます。
すべての交通事故被害者・遺族が尊厳をもって生活し、
必要な支援に確実にアクセスできる社会の実現をめざし、当会は今後も活動を続けてまいります。
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
2025年11月30日
胎児の命は、被害として扱われないのか ―― 一宮市で起きた妊婦死亡事故を受けて

2024年5月、愛知県一宮市木曽川町で、妊娠9か月だった研谷沙也香さん(当時31歳)が車にはねられ亡くなった事故がありました。
お腹の中にいた赤ちゃんは帝王切開で誕生しましたが、脳に重い障害を負って生まれたと報じられています。
遺族の方々は、この赤ちゃん(日七未《ひなみ》ちゃん)も交通事故の“被害者”であるとして、
加害者を「過失運転致傷」の罪でも問うよう検察に求め、11万2,000筆以上の署名を提出したと報道されています。
しかし名古屋地検は、事故と障害の因果関係を調査したうえで、
「胎児への過失運転致傷罪は適用しない」
と判断しました。
同じく交通事故で家族を奪われた“遺族”として、この判断には深い疑問と大きな問題意識を抱かざるを得ません。
参考:
妊婦事故死 胎児への過失致傷罪、立件を断念へ 名古屋地検
https://mainichi.jp/articles/20251128/k00/00m/040/145000c

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■妊婦は亡くなり、生まれた子どもは重い障害を負った。それでも「被害者として扱われない」現実
胎児は母体の一部である――この前提は、法制度上確立している考え方です。
けれども今回の事案では、妊娠9か月という、医学的にはすでに出生可能な時期に達していた命でした。
実際に生まれ、そして「後遺障害という結果」まで残っています。
それでも、刑事裁判上は
“胎児には被害者性が認められない”
という線引きがされています。
遺族としてこの問題を見たとき、突きつけられるのはただ一つです。
「この子の命は、法の中では存在していなかったことになるのか」
事故で亡くなる可能性があった命
事故によって一生背負う障害を負った命
家族にとっては何よりも大切な子どもの命
そのすべてが、
“法の枠組みの外側”
に置かれてしまうことに、私は強い違和感を覚えます。
⸻
■遺族の苦しみは、制度の隙間に置かれてはならない
胎児の法的位置づけは倫理的にも医学的にも慎重な議論が必要だということは理解しています。
しかし今回のように、生まれて、障害という明確な結果がある命についてさえ、刑事裁判の中で「損害」を論じる対象から外されてしまう現状は、あまりにも現実と乖離しています。
命として存在していた事実
事故により奪われ、傷ついたという事実
その後も続く家族の苦しみという現実
これらが、司法の枠の外に置かれてしまったとき、遺族はどこにも救いを求めることができません。
「胎児は被害者になれない」
この制度の壁は、今回の一宮市の事故が示すとおり、確実に遺族を二重三重に傷つけます。
⸻
■今求められているのは、「今の医療と命に見合う制度」
医学は進歩し、胎児はより早い段階から救命可能になりました。
しかし法制度はその変化に追いついていません。
遺族として強く願うのは、
• 出生可能な時期の胎児が事故で障害を負った場合には、刑事司法の対象とする制度の検討
• 家族が正当に補償や支援を受けられる仕組みの整備
• “命として存在した”という事実が司法にも社会にも正しく認められること
です。
今回の事故は、もう一度私たちに問いかけています。
――胎児の命は、本当に守られていると言えるのか?
――遺族が抱える苦しみは、制度によってさらに深められていないか?
この問いを、社会全体で向き合う必要があると切に感じています。









