2015年03月
2015年03月29日
【寄稿004】「交通事犯における記録の重要性」(日本交通事故調査機構代表 佐々木尋貴様)
あいの会ブログでは、専門家のリレー寄稿掲載を行っています。
寄稿第4回目になる今回は、宮城県警で交通警察官を長年務められ、
現在は、株式会社日本交通事故調査機構の代表として、
交通遺族・被害者のための現場検証調査を行っている佐々木尋貴様に、
理解しておくべき現場記録の重要性について寄稿していただきました。
以下、佐々木様から寄せられた寄稿になります。
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大切な方が突然の交通事故で命を奪われてしまったり、重度の傷害を負わされた時、ご遺族や被害者が切に願うのは、「奪われた命を返して欲しい」「元の生活に戻して欲しい」ということだと思います。また「なぜこんな結果になってしまったんだ?何が起きたんだ?」という事件事故の真実を知りたい思いが込み上げてくるのではないでしょうか。
失われた生命、身体を元に戻すことはできません。財産犯・知能犯と異なり、被害の原状回復を願う希望すら一気に失われてしまうのです。
一方、真実を知りたいという思いについても、警察に全てを委ねるしかなく、遺族の立場として主体的に事件事故の真相究明に参加する機会もありません。
交通事故捜査では利害損得や被害感情のない目撃者は、全くの他人でも大変重要な捜査上の参考人になります。しかし最も心を痛めているご遺族は、事故について説明を求めても、捜査上の秘密とか現在捜査中であるとの回答しか得られず、結局は被疑者と目撃者によって形作られた交通事故のシナリオで事件が進められているのではないかと不信感を抱いてしまうのです。
ところで、交通事故事件捜査で警察官が行う現場検証は、ご遺族や被害者が期待した内容の捜査を細大漏らさず実施しているものではありません。それゆえ、ご遺族が希望したとおりの捜査が尽くされていないという理由で、「杜撰な捜査」が行われたと評価されるものではないのです。
しかし、ここで問題となるのが交通事故発生のメカニズムを、現場に行ったことがない検察官や裁判官に対して、警察としてどのような捜査を行って証拠保全したのかが正確に報告されないことがあることです。
一般的には、事故発生現場で実施した実況見分調書の証拠能力は絶大です。
ところが、警察官の故意、過失にかかわらず、実際には多くの部品が散乱していたのに現場見取図には記載されていないし、写真撮影もされていない。道路に残っていたスリップ痕が正しく再現されていないといった実況見分調書が現実に作成されることがしばしば起きているのです。
このような現場の状況を正しく再現していない、いわば「杜撰な実況見分調書」の弊害が、その後長期間にわたって、ご遺族、被害者を刑事上、民事上ともに、様々な観点から悩ませる原因になっていると思います。もちろん、被疑者にとっても、事実誤認のまま処罰を受ける恐れがあるのです。
現場に残されたさまざまな痕跡は、時間の経過にともなって、急激に逸散、風化、消滅するので、後日再現することは不可能です。
本来なら、警察官が交通事故捜査の全てを正確に記録すべきものですが、現状をみると、まだまだ警察官に全幅の信頼を寄せることはできません。また、警察官が記録していたとしても、それをご遺族、被害者がいつでも自由に閲覧できるものでもありません。
ご遺族、被害者など、交通事故の当事者としては、警察と重複すると思われても、
①できるだけ早い段階で正確な現場の状況を記録する
②処分される前に車両の状態を記録する
③処分する前に着衣、所持品などを記録する
ことが、とても大切だと思います。
たった3点ですが、深い悲しみと絶望のどん底にあるご遺族、被害者が、これらを直接、冷静に行うことは困難です。
そこで私は、長年交通警察官として培った経験を、今後は被疑者検挙を目的とした警察組織のためにではなく、ご遺族、被害者などが理不尽な捜査結果による二次被害に遭わないために利用したいと思っています。
事故処理の方法と結果に不安や疑問を感じることがあったなら、いつでもご連絡下さい。
なお、被害者を支援してくれる弁護士の助けが絶対必要なことは言うまでもありません。
関東交通犯罪遺族の会(あいの会) 顧問
株式会社日本交通事故調査機構 代表取締役
佐々木尋貴
日本交通事故調査機構ウェブサイト
http://www.jikochosa.co.jp/
https://www.facebook.com/jikochosa
2015年03月26日
【寄稿003】「元検察官の立場から」(元検察官・依田隆文様)
私たちあいの会では、関係する専門家の方に寄稿をお願いし、
理解と知識を広げていくためのリレー寄稿掲載を行っています。
髙橋正人弁護士(2014.1.19)、河野敬弁護士(2014.5.5)の寄稿から
間が空きましたが、今回は元検察官の依田隆文様にお願いをしました。
以下、依田様から寄せられた寄稿になります。
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真実を知りたいという被害者やそのご遺族のお気持ちと、真実を明らかにし、被疑者(被告人)に対して適正かつ相応の処罰をしたいとの検察官の思いは同じであると思っています。
ところで、検察官が事件の捜査に関わるのは、通常の場合、警察から事件の送致を受けてからということになります。
ところが、特に交通事故事件では、その多くは被疑者が逮捕されていないいわゆる在宅事件ですから、事件発生から送致までに相当の時間を要することになります。
また、交通事故事件で被害者が大怪我をした場合や、亡くなってしまった場合には、事故の状況等について話すことも、実況見分に立ち会うこともできないということになります。
そのため、被害者やそのご遺族の立場からすると、検察官に事件送致がされるまでに、もっぱら被疑者の言い分に従って捜査が進められてしまうのではないか、そのために真実がねじ曲げられてしまうのではないかとの思いを抱かれるのではないかと思います。
検察官は、警察からの送致記録に疑問があれば、関係者を取り調べ、警察に指示するなどして所要の捜査を遂げた上で処理をする努力をしていますが、その過程で、被害者やご遺族の方からの疑問、捜査・事件の処分についてのご要望等があれば、これをお聞きして、必要な捜査を遂げ、ご説明をすることにしています。
ですから、事件について疑問等があれば、検察官に事件が送致された後、事件を担当する検察官(検察庁では、被疑者の氏名や送致警察署、送致年月日が分かれば、事件を担当する検察官がわかります。)に連絡をし、検察官と会って要望を伝え、あるいは疑問に思っている点について説明を求めると良いと思います。
もっとも、捜査の途中では説明ができない場合もありますし、また、検察官は、法と証拠に基づかない判断をすることはできませんので、必ずしもご要望に沿えない場合があることはご了承ください。
次に、事件が公判請求された場合には、公判を担当する検察官との十分なコミュニケーションが必要だと思います。
公判請求された事件について、被害者やご遺族が関与するのは、被害感情等について証人として出廷することになった場合や意見陳述をすることにした場合、あるいは被害者参加することを決めてからという場合が多いように思います。
しかし、公判において、被害者やご遺族の思いが十分に反映されるためには、公判を担当する検察官が、捜査で得られた証拠を検討し、公判での立証方針を考える段階から密接に連絡を取り、ご意見、ご要望等があれば、検察官に伝えておくことが重要だと思いますし、特に、公判前整理手続きが実施される事件では、非公開の手続きの過程で、公判における争点や取り調べられる証拠が絞り込まれますので、できるだけ早い段階から検察官と連絡を取り、意思の疎通を図っておくことが重要だと思います。
なお、被害者参加をする場合には、被害者を支援してくれる弁護士(被害者参加弁護士)の助けを借りることができます。
関東交通犯罪遺族の会(あいの会)顧問
元検察官 依田隆文
2015年03月25日
板橋区立中学校での講演活動(2015.3.13)
3月13日(金)、板橋区の中学校に招かれ、講演をしてきました。
今回、話をさせていただいたのは、小沢樹里と小沢恵生でした。
話を聞いてくれたのは、もうすぐ卒業を迎える3年生の皆さんで、
約150人ほどの生徒さんたちが熱心に話を聞いてくれました。
私たちの話す内容の大筋は、これまでとそんなに変わりません。
事件のこと、その後の苦しかったり悲しかったりしたこと、
裁判のこと、家族のこと、今のこと・・・などなどを話しました。
ただ、そんななかでも、特にいままさに義務教育を終えて、
これから世界が広がっていく生徒さんたちのことを考えた時、
強調して伝えたことは、これからもっと大きな責任が出てくるし、
人の命の大切さももっと考えていってほしいということでした。
大切な人の命は、失って初めてその本当の尊さがわかるものです。
でも大切な人の命が奪われるような悲劇は少しでもなくしたい。
いま話を聞いてくれている中学3年生の皆さんには、
これからの人生のなかで、被害者にも加害者にもなってほしくない。
そのことを、いま気軽に自転車に乗っている時も、
将来、バイクや車を運転するようになった時も忘れないでほしい。
そんな思いを伝えてきました。
この春中学を卒業する約150人の今回聞いてくれた皆さんが、
これから人生で、自転車やバイクや車のハンドルを握る瞬間、
その心の中に、私たちの話の断片が少しでも生き続けていたら、
悲劇を減らすための貢献も少しは果たせただろうと思っています。
2015年03月22日
読売新聞の取材記事(2016.3.5)「自転車 潜むリスク」
3月4~6日にかけて、読売新聞大阪本社では、
「自転車 潜むリスク」
と題した上中下の計3回の特集記事を掲載しました。
自転車による交通事犯の実情を取り上げた記事ですが、
その2回目となる3月5日(木)の紙面に、
あいの会の東光宏の取材内容が掲載されました。
記事の詳細については、下記に貼り付けた内容に譲ります。
私たち遺族からみて、100%満足な内容ではありません。
不足な論点も、誤認識の事実も、ゼロではありません。
ただ何も整備されていない自転車をめぐる問題に対して、
その未整備に翻弄される人たちの姿を、できる限り
浮き彫りにしようとする姿勢は評価したいと思います。
取材を受けた東も、読売新聞記者と対面で2回、
電話確認では10回以上、話をしています。
丁寧な取材の結果の、バランスの取れた記事だと考えています。
社会面(テレビ欄裏面)の大きな扱いの記事でしたが、
大阪本社版なので、東日本では閲覧ができないようです。
ですので、画像とPDFの両方で、共有させていただきます。
http://blog.livedoor.jp/i_nokai0708/yomiuri201503jitensyarisk.pdf
2015年03月17日
中野区社会福祉協議会での講演活動(2015.3.4)
3月4日(水)、あいの会の中村正文が、
東京の中野区社会福祉協議会で講演活動をしてきました。
社会福祉協議会の犯罪被害者等生活サポート事業の中で、
支援員のフォローアップ研修があり、
そこに講師として招かれ、話す機会をいただいたものです。
中村は5年前、無法なタンクローリーに妻を奪われて以来、
それまでの幸せな生活が一変して、幼い子ども2人を抱えて、
慣れない男手での育児に追われる日々を過ごしました。
仕事との両立もままならず、苦しい思いをしてきました。
そうしたつらい経験を、今回は支援員に伝えてきました。
中村は、支援を最も必要としてきた遺族の一人でした。
中野区社会福祉協議会では犯罪被害者支援の一つとして、
生活の困りごとを支える家事援助サービスを行っています。
これは当然、交通犯罪の遺族や被害者も含まれます。
中野区では、犯罪被害者はこの家事援助サービスを
3ヶ月間無料で利用できるそうです。
これはもっと知られるべきサービスだと考えます。
しかし実際、まだほとんど利用はないそうで、
これからの支援制度となるサービスだろうとのことです。
また、いざ犯罪被害者になって、生活に支援が必要でも、
やはり生活に他人が入ってくることに抵抗のある人もいて、
もっと自然な利用をしてもらうまでは壁もあるようです。
しかし犯罪被害者になってしまうことになったら、
下手な我慢は、事態を悪化させ、有害ですらあります。
苦しいときは苦しいと声を出すことはとても大切です。
ですので、まずはお試しの感覚でもいいから、
受けられる支援は受けてみてほしいと思っています。
犯罪被害者支援弁護士フォーラム 第2回シンポジウム(4月19日)の案内
犯罪被害者支援弁護士フォーラム(VSフォーラム)主宰で、
「裁判員裁判の問題」をテーマにしたシンポジウムが開催されます。
犯罪被害者支援弁護士フォーラムHP
http://www.vs-forum.jp/proposal/545.html
交通犯罪とも関わる議論がされますので、案内させていただきます。
顧問としてあいの会を助けていただいている高橋正人弁護士が
今回はコーディネーターをつとめられます。
テーマ:「裁判員裁判の問題」
第1部:遺体写真の証拠制限
第2部:裁判員裁判の死刑判決破棄
日 時:2015年4月19日(日)12:30~(12:00開場)
場 所:日比谷図書文化館大ホール
※会場HP:http://hibiyal.jp/hibiya/index.html
※東京メトロ・霞ヶ関駅、都営三田線・内幸町駅より徒歩3分
遺族や被害者だけでなく、被害者支援に取り組んでいる方、
被害者支援に理解のある方ならどなたでもご参加いただけます。
事前の申し込みも不要とのことですので、
お時間のある方は、ぜひご参加いただけますと幸いです。
2015年03月04日
あいの会定例会兼懇親会(2015.3.1)
3月1日(日)に、あいの会の定例会を行いました。
話し合った内容は、4月の総会に向けた会の体制について。
そして、ある二次被害に遭った会員の対応策についてでした。
内々の話も多いので、ここで書き連ねる内容はありませんが、
定期的に会って、お互いの顔を見て、語り合う機会を重ねることは、
とても大切なことだと、毎回々々、実感する時間となります。
被害者遺族になっても、一人ではないし、応援してくれる人がいる。
それを実感する場を持つことができるかどうかは、とても重要です。
私たち交通犯罪被害者遺族の多くに共通する思いとして、
まず専門家や、近い経験をした遺族に話を聞いてもらいたいし、
また同じ遺族がいたら、隣に座って、耳を傾けたいと思っています。
あいの会は、他の会と比べても、人数も歴史もまだまだ浅い会です。
しかし、味方になってくれる、とても頼りになる方々もいます。
そして、あいの会が誇れるものがあるとするならば、
なによりも、メンバー同士のあたたかさと支え合いの強さです。
一人では無理なことも、助け合えば乗り越えられることもあります。
「被害者遺族になる」という、決して真っ白なだけではない、
そして後戻りのできない世界に足を踏み入れた仲間同士だからこそ、
お互いの想いを、これからも分かち合っていきたいと思っています。
LIVE SDD 2015(2015.2.22)
毎年の行事となりますが、今年もあいの会の小沢家一家は、
2月、大阪で行われる「LIVE SDD 2015」に参加してきました。
「LIVE SDD 2015」の公式サイト
http://fmosaka.net/sdd/live_sdd_2015/
SDD=STOP! DRUNK DRIVING=飲酒運転をなくそう
飲酒運転撲滅に賛同するアーティストが集まり、
コンサートを通じて、メッセージを伝えていくイベントです。
2月22日(日)がコンサート当日だったのですが、
その前日の土曜日に、大阪のテレビ局の取材を受けました。
そしてその縁で、今回のLIVE SDDに参加される
スターダストレビューの方々にお会いする機会がありました。
小沢克則・樹里が出した本『交通犯罪』も知っていて、
いつも応援しているという温かい言葉ももらいました。
そんななかで迎えた当日のコンサート。
スターダストレビューの「愛の歌」が特に心にしみました。
「心が朽ち果てて、泣いた後でも、愛の歌を歌えば、
喜びも哀しみも分かち合えて、想いはひとつになる・・・」
そんな歌詞が、私達あいの会への応援歌のようにも感じました。
スターダストレビューの方々には、
後日ライブにも招待してもらえることになりました。
こんなふうに、応援してくれる人たちに出会うことができて、
私たちの活動に、また励ましをもらって、帰ってきました。
被害者も加害者も出さない活動を続けていく思いを強くしました。