2015年12月
2015年12月30日
忘年会
大晦日も間近に迫った12月29日(火)、
池袋にあるアラビア料理(レバノン料理)店で、
あいの会の忘年会を行いました。
この日は難しい話は抜きにして、
アラビアンナイトな雰囲気の絨毯座敷でくつろぎ、
子羊の丸焼きをみんなで囲んで、
楽しい時間を一緒に過ごそうというものでした。
中東独特の水煙草もコースに入っていたので、
代わる代わる初めての体験を楽んだりもしました。
あいの会を3家族で結成した当初は、
「おいしいものを食べながら語る時間を作ろう」
ということが考えていたことのすべてでした。
韓国料理店、インド料理店、ハワイ料理店・・・
と毎回場所を考えていた当時をなつかしくも感じます。
今はメンバーも増え、責任も生まれていますが、
それでも結成当時の気軽でアットホームな雰囲気、
そしてお互い負担にならずに助け合える連帯感は、
変わらず大切にしたいと再確認する場になりました。
来年も、再来年も、私たちあいの会は、
あたたかい会であり続けたいと思っています。
今年も多くの方に支援していただきました。
ありがとうございます。
また来年も引き続きよろしくお願いいたします。
2015年12月29日
読売新聞への取材記事掲載(2015.12.28朝刊) ~心情等伝達制度について~
読売新聞の12月28日付け社会面朝刊に、
小沢家の取材記事が掲載されました。
保護観察制度のなかの心情等伝達制度について、
記者に思いを伝え、それが記事になった内容です。
記事になったことで、波及効果が生まれ、
この制度への理解がもっと拡がることを願っています。
同時にこの制度をどう活用するかについて、
小沢家の例をここで補足したいと思います。
心情等伝達制度を使うかどうかについては、
最終結論として「使う」という判断をしましたが、
話し合いの過程で、家族間でも意見が分かれました。
使った理由は、まずこちらの意向を加害者に伝えるためでした。
裁判だけでは見えなかった真実があるのなら、
裁判対策などと考える必要もなくなった今こそ、
それを加害者から聞いてみたかったということもあります。
また加害者に出くわすことには抵抗がありました。
そのため制度を通じて、加害者に求めたことは、
自宅には来ないでほしいこと、
奪われた両親の墓などの行動圏には入らないでほしいこと。
そうした思いを何よりも伝えたかったのです。
例えば、両親の命日にお墓参りに行き、
そこでばったり加害者に会うことはとても怖い。
墓に手を合わせられることすら嫌という思いもあります。
さらに言えば、心情等伝達制度はとてもわかりにくい制度です。
突然受け取る加害者仮釈放の通知から、実際の仮釈放まで、
そして特に交通事件の場合は保護観察期間終了まで、
あっという間に過ぎてしまうので、伝えることを考え、
何を伝えたいのか内容を絞る必要もありました。
被害者にとってのメリットとデメリットも考えさせられました。
被害者によって、当然その価値観も違います。
そのためか対応した保護観察官とも探りながらのやり取りが続き、
最後まで終着点を見つけにくかったようにも感じました。
またそのやり取りも複雑なために、わからないことや
困惑も多く、支援者なしではずっと不安がつきまといました。
確かに目の前には本来対応してもらう保護観察官がいます。
しかし、やはり、公判の時の検察官との話し合いの時と同様に、
公的な立場の方ではどうしても「言えないことがある」壁がある。
だから保護観察官を前にして、迷ったりすることもありました。
東京では、加害者の心情等伝達制度が利用できるタイミングで、
被害者・遺族に対して電話連絡があるのですが、
東京以外では必ずしもそうではない現実もあります。
小沢家も、当然連絡があると思って、電話を待ち続けていたら、
そこまでフォローしてもらえないことを後から知りました。
都道府県によって、伝え方に違いがあるようです。
なので全都道府県で、しっかり伝える必要があると感じました。
家族同士の意見の違いをお互い理解し、認め合うことも大切です。
家族のなかで意見の食い違いがあったのは述べたとおりですが、
4人全員が意見をばらばらに述べることで、
それぞれの意思を伝えることができました。
そうしたことも大切なのではないかと思いました。
そもそも保護観察制度も、そのなかの心情等伝達制度も、
制度そのものを知らない被害者・遺族もたくさんいます。
「更生」という言葉に対する複雑な思いもあります。
加害者にとっても、更生が必要であることは理解しています。
しかし社会にいきなり放り出されて、そのまま放置され、
再犯を繰り返しては意味がないと思うのです。
そもそも被害者・遺族が望むことは「更生」なのか。
心情等伝達制度が一時的なものではないようにするために、
もっと考えなければならないことはたくさんあると感じました。
被害者にとっては、加害者の社会復帰の「更生」よりも、
裁判が終わってから、裁判対策という計算が必要なくなった後、
初めて見えるかもしれない本心を知りたい思いがあります。
そして裁判では言えなかった思い、裁判が終わってからの思い、
その苦しさを一生負う事実を知ってもらいたい気持ちがあります。
一時的な、形ばかりの法廷での謝罪ではなく、
心から一生償う「真の更生」でなくてはならないと思うのです。
まだまだ理解しにくい制度だと思います。
できるなら満期出所の前に加害者の更生があってほしい。
そして賠償が開始されていない被害者の視点についても、
あらためて検討してもらう必要があると思いました。
司法に関わるどの制度でも言えることですが、
地域によって差があり、被害者同士でも相談がしにくい現状を、
改善して、全国で差の出ないようにしてほしいと思います。
もっとわかりやすいパンフレットを作って配ったり、
制度を利用した人の声をもっと聴く制度を作ってほしいと思います。
2015年12月28日
生命のメッセージ展in早稲田大学2015 最終日のお手伝い(2015.12.19)
中村正文が、12月19日(土)まで開催されていた
「生命のメッセージ展in早稲田大学2015」最終日に、
再度お手伝いに行ってきました。
【紹介サイト】
生命のメッセージ展in早稲田大学2015
https://www.facebook.com/inochi.message2015
http://www.inochi-message.com/pre
1週間にわたるメッセージ展では来場者が絶えず、
多くの人にメッセージが伝わっただろうと思います。
中村は、閉幕後の懇親会にも行ってきましたが、
そこでも多くの支援者、被害者、遺族の方と語り合い、
その絆の強さと温かさを感じて帰ってきました。
あくまで個々人の自由な意思と志向によっていますが、
あいの会の中の少なくないメンバーが、
同時に生命のメッセージ展にも関わっています。
こうした懐の深い縁に繋がることができていることは、
私たちにとってもとても心強く、励みになっています。
法務省での講演活動(2015.12.16)
報告が遅れてしまいましたが、
12月16日(水)、法務省で講演活動を行ってきました。
話をしてきたのは小沢樹里と恵生の2名。
話を聞いていただいたのは、東京都の保護司の方々でした。
40人ほどの方がきていました。
今回は常磐大学の諸澤英道教授もお話をされていました。
念の為、補足しますと、諸澤教授は被害者学の権威で、
各所での被害者支援にも尽力されている方です。
諸澤教授は、加害者理解だけでとどまるのではなく、
被害者への理解こそ保護観察官の職務でも重要で、
本来の職責である犯罪者の再犯防止のためにも、
被害者理解は欠かせないというお話をされていました。
諸澤教授のお話があって、その後質疑応答。
そして小沢2名が話をして、再び質疑応答という流れでした。
私たちからは、実際に厳しい経験をした当事者として、
当時の話、振り返って思うこと、支援や理解の必要性、
などを伝えさせていただきました。
なかには泣きながら話を聞いてくれた方もいて、
話の後の質疑応答でもとても質問が多く、
保護観察所長の方からも、
「社会が被害者を知るという原点に戻って考えたい」
という話もいただき、経験を共有できた実感がありました。
諸澤教授がされた話をあらためて振り返りますと、
考えさせられる話がたくさんありました。
最近変わりつつある報道機関の話。
ストーカー被害にあった人の住民票の閲覧制限は、
より徹底されるようにしなければならないこと。
加害者に対する損害賠償の取り立てのために、
口座の情報開示なども必要であること。
また死亡事件が起きた場合、遺族の許可を得ることなく、
検体として臓器を勝手に取っているケースがあること。
小中学生の段階で、被害者への理解を深めることが、
将来の犯罪の抑止や被害者への理解につながること。
日本の刑務所では、懲役受刑者は刑務作業をしているが、
世界的にこれはとても珍しく、
他の国では希望した人だけが作業を行う場合が多いこと。
日本での再犯率は非常に高く、これまでの刑務所内での
指導教育だけでなく、社会の中での措置も大切であること。
映画「デッドマンウォーキング」の話もあり、
この映画は元々死刑廃止のメッセージが込められたものですが、
ショーン・ペン演じる死刑囚が最後の最後に、否認をやめ、
「本当は私が殺した」と真実を口にしたシーンからわかるように、
死刑がなければ真実はわからないままだったということ。
罪を認める→謝罪する→賠償する→刑に服する→許されて社会復帰
という償いのサイクルという話もありました。
この話を聞いた時、現在の日本の刑事公判における、
形式的に頭を下げるだけで減刑の理由にされる矛盾を感じました。
本心からの謝罪がなければ、償いすら始まらないと思います。
保身や減刑を目的とした謝罪は、決して遺族には伝わりません。
賠償もせず、減刑も果たした上で、有罪判決を受けても、
それは己の犯した罪から逃げるのと同じだと感じました。
また海外では1つ1つの罪に対してそれぞれ刑が科され、
合計して100年服役する刑が出ることもあります。
日本では考えられない話ですが、小沢一家が事件に遭った時、
これは飲酒運転と大幅な速度オーバーでの正面衝突でしたが、
「危険運転致死傷罪の中の飲酒」しか罪に問われず、
小沢一家は速度オーバーも罪に加算してほしいと訴えましたが、
前例があり認められないと聞き、納得できないまま終わりました。
またオーストラリアではメディエーション・ユニットという制度があり、
これは犯罪加害者と被害者が和解しあう場所を提供するものですが、
・長期にわたり、謝罪をすることが前提とされている
・被害者に会う場合、このユニットの許可なく会うことはできない
・死ぬまで謝罪が必要と考える
・出所したからこその謝罪がある
などという考え方での活動があることも知りました。
こうした世界の事例を思う時、裁判の判決だけで終わるのではなく、
このような長期的な支援が日本でも必要だと痛感しました。
2015年12月17日
生命のメッセージ展in早稲田大学2015
あいの会の中村正文が、早稲田大学で開催された
生命のメッセージ展のお手伝いに行ってきました。
【紹介サイト】
生命のメッセージ展in早稲田大学2015
https://www.facebook.com/inochi.message2015
http://www.inochi-message.com/pre
【開催期間】
12月14日(月)~19日(土)10:00〜18:00
【場所】
早稲田大学 早稲田キャンパス小野梓記念館
(27号館地下1階ワセダギャラリー)
12月15日に行ってきたのですが、その当日は、
「 「生命のメッセージ展」のこれまでとこれから」
と題したシンポジウムがあり、話を聞いてきました。
あいの会でも、少なくないメンバーが、
生命のメッセージ展の活動に参加しています。
住んでいる地域や所属している団体を超えて、
「理不尽に大切な人のいのちを奪われた」
という共通項で結びつく人たちの活動は、
多くの被害者遺族の心の支えとなっています。
私たちもこうした繋がりに縁のあることを感謝し、
生命の尊さを訴える動きに、
少しでも関わっていけたらと思っています。
今回のメッセージ展は12月19日(土)まで開催しています。
少しでも関心のある方は、ぜひ足を運んでいただき、
メッセンジャーたちの声に耳を傾けてほしいと思います。
2015年12月16日
内閣府「第3次犯罪被害者等基本計画案」への意見応募
「第3次犯罪被害者等基本計画案骨子」
に対する意見募集を内閣府で行っていました。
内閣府 意見募集ページ
http://www8.cao.go.jp/hanzai/kou-kei/event/iken/h27/bosyu.html
第3次犯罪被害者等基本計画案骨子
http://www8.cao.go.jp/hanzai/kou-kei/event/iken/h27/pdf/kosshi.pdf
あいの会でも、計18案を提出しました。
全て必要な措置だと考えていますが、
たとえすべてがそのまま実現しなかったとしても、
いくつかでも実現の引き金になれば、
被害者支援に向けた前進になると考えています。
***
あいの会より出した意見案(計18案)
①臓器移植についての支援をしてほしい
臓器移植について意見提起します。大切な家族を突然の交通事故で亡くし、正常な判断力を喪失しているさなかを狙うように、その家族に臓器移植を執拗に持ちかけ、同意書に署名をさせる事例があります。特に交通事故は、新鮮な臓器が入手できる「漁場」という様相もあって、脳死判定を受けた交通事故遺族が二次被害に遭うケースが散見されています。そのために心神喪失に近い状況で署名をしてしまったあと、後々まで後悔の念にさいなまれる遺族もいます。そうした遺族を二度と出さないためにも次の施策を要請します。以下の要望は、残された家族を一人にさせないための提案になります。
・犯罪被害者が病院に搬送された後、脳死の判定がされる状態になった場合、被害者の家族が、臓器提供等について冷静な判断ができるようにするため、医師は、速やかにその旨を事件を担当する警察署の担当部署に通報するとともに、警察では、早急に被害者の家族に寄り添うことができる犯罪被害者支援者を付けるような体制を整えてほしい
・医療従事者は犯罪被害者の家族への説明の際に、その心情に十に配慮した対応、説明を行ってほしい
犯罪被害者の家族が、臓器提供について冷静な判断ができず、結論を出すことができずにいる場合は、臓器提供をしない選択肢があることを明確に伝えたり、判断をすることができるための時間を設けることをルール化するとともに、執拗な勧奨などは論外であることを明文化して欲しい。医療従事者が執拗な勧奨を行ったときは、行政処分や適切な指導を行うようにして欲しい。
・犯罪被害者が臓器移植した際のネットワークを構築してほしい。他の人の事例を知らされないままだからこそ余計な苦しみを抱える場合もあるため、他の臓器提供合意者との交流を持つことができるようにしてほしい。臓器提供を検討しなければならない立場に置かれた者にとって検討するための情報が決定的に欠落していることが問題を大きくしている。
・犯罪被害者が臓器提供した際の心情についてヒアリング調査を行い、それをデータベース化して、開示してほしい。家族を犯罪被害で脳死に追いやられ、臓器提供に同意する家族にとっては、比較の対象すらなく、自らの「その時のその決断」しかない。だからこそ、「他人の思い」をきちんとデータ化し、それを臓器提供検討者に見えるようにし、後々後悔することがないようにするため、「正しい判断」をすることができるための材料提供をしてほしい。
②警察署へのソーシャルワーカーの配備をしてほしい
警察署へのソーシャルワーカーの配備について意見提起します。犯罪被害に遭った直後に、警察の事情聴取を受けたり、実況見分に立ち会ったりすることは、被害者・遺族にとって、大変ストレスの多いことです。そんななかで多くの被害者・遺族は、たった一人で、誰からのアドバイスや援助もなく、その対応をしなければなりません。そうしたなかで精神のバランスを崩してしまう人もいます。
息子を交通事故で失った当会会員が経験した例をお話しますと、遺族調書を取られる際、警察署内の狭い一室でノートパソコンを仕切りに警察官と二人きりで対面で座らされ、遺族である会員に対して、ねぎらいや気遣いの言葉も一切なく、まるで被疑者に対する取り調べのような厳しく冷たい口調での対応でした。その時は、硬いパイプ椅子に6時間以上も座らせられ、休憩も与えられず、飲み物も出してもらえず、つらい経験を振り返る心理的苦痛に加え、渇きに耐える肉体的苦痛も感じながらの聴取となりました。そして最後に担当警察官は、印刷した調書に対して、一方的に署名と捺印を迫ってきました。肉体的にも精神的にも疲労が限界で、意識も朦朧としていた会員は、異論を述べたり反論することなどできず、ただ言われるままに内容をきちんと確認することもできないまま署名・捺印をしてしまいました。
そうした思いを被害者・遺族にさせないようにケアをし、そのストレスや戸惑いを少しでも軽減させるためにも、警察署内にソーシャルワーカーを配置し、事情聴取などで警察署を訪れる被害者・遺族に対して話しかけ、困ったことはないかヒアリングができる体制を築いてほしいと考えます。決定的なアドバイスをするのではなくても、「無理しなくていいですよ」「いま決めなくてもいいですよ」と、家族ではない他人が言ってくれることが大切な意味を持つと考えています。
③裁判所での割高なコピー料金を是正してほしい
裁判所での割高なコピー料金について意見提起します。あいの会として協議した意見を提出させていただきます。現在、裁判所内で裁判記録をコピーするとなると通常に比して料金が割高に設定されています。当会会員が経験した例では、1枚40円、カラーになると1枚60円でした。結局、コピーした枚数は数百枚に及び、かかった費用も数万円単位になりました。
コピーは通常でも1枚10円、スーパーなどでは1枚5円で取ることのできるものです。犯罪被害に遭うと、通常の社会生活が維持できなくなり、経済的にも困窮する例が少なくありません。せめて犯罪被害者が自身の関係する裁判記録をコピーしようとする場合は、市場相場の1枚10円以下でコピーができるようにしてください。また被害者・遺族に関しては、意図せずにそうした事情に巻き込まれたことを勘案して、無料で提供しても良いくらいだと考えます。具体的にどのような利権が発生しているかつまびらかではありませんが、そのような場所で、犯罪被害者を相手に、利益を上げようなどとは考えないでほしいと思います。
④犯罪被害者支援精通弁護士の基準を上げてほしい
犯罪被害者支援精通弁護士の基準について意見提起します。犯罪被害者支援精通弁護士は基準も質もまちまちで、そのための二次被害も発生しています。被害者・遺族が精通弁護士だからと依頼したところ、全く精通しておらず、ただ研修会に参加しただけとか、事件を1回手がけただけという弁護士も多く、本当は誰が精通しているのかわかりづらくなっています。その人が本当に被害者の側に立ってくれる弁護士かどうかも疑わしい事例もあります。そのため、下記の2点を要望したいと思います。
・犯罪被害者支援精通弁護士の基準を厳しくしたうえで、明文化してほしい。
・適正な委任団体から推薦を受けた講師による研修を受けさせるなど、よりきめ細やかな被害者への配慮を行い、適切な活動を行うことができるような教育の機会を増やしてほしい。実際には加害者弁護しかほとんど経験のない弁護士が研修などを行っても意味がないと考える。そうならないためにも、遺族団体からヒアリングを行って、いくつかの推奨できる委任団体を定め、その委任団体が推奨する人物による研修の機会を作ることが望ましい。
⑤日本弁護士連合会の加害者偏重姿勢を指導してほしい
日本弁護士連合会の加害者偏重姿勢について意見提起します。日弁連(日本弁護士連合会)の近年の加害者偏重姿勢は目に余るものがあります。加害者に寄り添い、被害者を泣かせ、犯罪を助長させて、弁護市場を作り出すことが使命であるかのように感じることがあります。
先日も耳を疑うような報道がありました。日本弁護士連合会がまとめた「死刑事件の弁護のために」という手引についてです。死刑求刑が予想される事件の弁護活動において、公判への被害者参加に断固反対するように求め、取り調べでも原則黙秘せよと書いている内容です。この手引では、裁判官と裁判員に死刑判決を回避させることを「唯一最大の目標」とまで明記しています。犯罪被害者支援弁護士フォーラムも抗議声明出していますが、私たちも強い憤りを覚えています。被害者参加制度への無理解、刑事弁護人の本来の職掌のはき違え、被害者への冒涜に他ならないからです。あらゆる悪辣な手段を使ってでも、犯罪者を擁護し、被害者を愚弄しようとする日弁連はすでにまともな団体とは言えなくなっています。
「人殺しを許す慈悲は人殺しを育てるに等しい」とはシェークスピアが『ロミオとジュリエット』で語っている言葉ですが、まさに現在の日弁連の姿は「人殺しを育てる」ものに他なりません。日弁連に対して指導を行い、法律家団体本来の職責に立ち返るよう指導してほしいと考えています。
⑥犯罪被害者給付の基準を見直してほしい
犯罪被害者給付の基準について意見提起します。加害者が加害行為に伴って負傷した場合、その治療は公費でまかなわれているにもかかわらず、被害者は、被害にあったために通常の生活にも支障をきたしながら、家賃や光熱費、食費、学校費用、生活費を用意し、さらに病院の通院や治療費、薬代まで支払わなくてはならず、二重三重に苦しめられている現状があります。被害者も加害者も人権を平等に扱ってほしいですし、あまりにも不平等だと感じています。加害者の治療が公費でまかなわれるのであれば、当然のこととして、被害者の治療も公費でまかなってほしいと考えます。具体的には下記の改善を求めます。
・被害者の医療費は現物支給としてほしい(つまり一時的にも被害者が支出することなく、最初から公費での支払処理がされるようにしてほしい)
・親族間の犯罪であっても犯罪被害者給付がされるようにして欲しい(現在は、親族間不支給の原則があるが、事態はさまざまであり、親族間の加害・被害関係だから、犯罪被害者給付はしないというのは理不尽。原則支給として、あきらかにおかしな事案であれば不支給とすればよい)
⑦医療従事者に対する犯罪被害者への理解を求める施策を行ってほしい
医療従事者に対する犯罪被害者への理解について意見提起します。医師・看護師などの医療従事者や、その養成機関である大学医学部・看護専門学校の教師・生徒に対して、もっと犯罪被害者の声を届けたいと思っています。そのためにも下記を要請します。
・病院・大学医学部・看護専門学校と、警察・地域との連携をより密にする施策を検討してほしい。
・大学医学部・看護専門学校で、犯罪被害者の心情を理解するための科目を設置し、それを必修としてほしい。
・またそこまで実現する前にも、犯罪被害者や遺族を呼んでの講演を1年に1回は行い、全ての医学部生や看護学校生が卒業までに数回はそうした講演を聞く機会を得られるようにしてほしい。
⑧保護司・保護観察官への犯罪被害者への理解を求める施策を行ってほしい
保護司・保護観察官への犯罪被害者への理解について意見提起します。最近、当会会員が保護司や保護観察官を対象とした講演を行うことがよくあります。そこで痛感することは、全体的に被害者に対する理解が極めて乏しいことです。ずっと加害者に寄り添う職務を続けてきたためもあるかもしれませんが、根本的な部分から啓蒙活動を行っていく必要があると考えています。そこで下記の点を要望します。
・保護観察官資格試験に被害者理解の内容を盛り込んでほしい。
・保護司・保護観察官の導入研修に被害者理解の項目を盛り込んでほしい。
・犯罪被害者や遺族を呼んでの講演を全国の保護司会などで定期的に行うようにしてほしい。
⑨公判前手続きにおける被害者意見の伝達を努力目標でなく義務にしてほしい
公判前手続きにおける被害者意見の伝達について意見提起します。「第三次犯罪被害者等基本計画案骨子」における第3-1-(6)-イにおいて、「~必要な配慮を行うよう努める。」「~伝えるよう努める。」は、それぞれ「~必要な配慮を行わなければならない。」「~伝えなければならない。」と文言を修正してください。努力目標では結局、画餅になるだけで、実効性に疑いを持たざるを得ないからです。これらは必ず果たさなければならない義務である必要があります。
⑩「不起訴事案等に関する情報提供」は必ず「事前」に行うようにしてください
不起訴事案等に関する情報提供について意見提起します。「第三次犯罪被害者等基本計画案骨子」における第3-1-(21)-イにおいて、「事前・事後に」とある文言から「事後に」を削除してください。これは不起訴処分とした「事後に」、被害者・遺族に対して、その結果報告のみすることを許可していることになるからです。不誠実な被害者・遺族対応が横行する温床になりかねません。不起訴にするかどうかは、必ず事前に説明が行われる必要があります。
⑪「告訴に対する適切な対応」については「可能な限り受理」としてほしい
告訴に対する適切な対応について意見提起します。「第三次犯罪被害者等基本計画案骨子」における第3―1-(2)に記載の文言は全て不要と考えます。これらの5行を全文削除し、「告訴に関しては、可能な限り受理するものとする」との一文で集約すべきです。現在の骨子の文言は、率直な言い方になりますが、警察官の業務削減のための免罪文となっていると疑わざるを得ません。
⑫「公判記録の閲覧・謄写制度」は広範囲かつ原則開示としてください
公判記録の閲覧・謄写制度について意見提起します。第3―1-(5)の「また、刑事確定記録の閲覧に際して~」以下の5行は削除してください。開示しないための言い訳に使われるだけであると思慮します。その代わりに「被告人や証人等の住所、ならびに勤務先、および職業、および交通事故における加害車両の所有者、使用者の開示もできるようにする」との文言を書き加えてください。
⑬職業運転手による交通事故ではドライブレコーダー等の提出を義務化してほしい
職業運転手による交通事故でのドライブレコーダー等の提出について意見提起します。職業運転手が交通事故の加害者となった場合、運転手の健康管理表・運行状況・タコメーター・車両のドライブレコーダーの提出を義務化してほしいと考えます。これらが義務化されていないから、運送会社やバス会社などの組織ぐるみの隠ぺい工作を許すことになっている現状があります。
⑭「上訴に関する犯罪被害者等からの意見聴取等」は事前義務としてほしい
上訴に関する犯罪被害者等からの意見聴取について意見提起します。犯罪被害者等から意見聴取を実施する際は必ず「事前」に実施してほしいと考えます。「第三次犯罪被害者等基本計画案骨子」における第3―1-(9)において、「~犯罪被害者等から意見聴取等を実施するなど」の文言の前に、「事前に」と付け加えてください。検察内で上訴しないと決めてから、意見聴取をしたところで、何の意味もないからです。犯罪被害者のためにならないことを、「やることはやりましたよ」という免罪文として利用されても困るだけです。
実際に当会会員が経験した話で言えば、交通事故で母親を奪われた会員の公判で執行猶予付きの判決が出てしまい、控訴のお願いに行きたいと検察官に連絡しても、ずっと不在と言われ、控訴期限の前日にようやく会ってもらえて、一方的に不起訴と伝えられただけという事例もありました。そのような悔しい思いをする被害者・遺族を出さないようにしてください。
⑮保険会社の意のまま「作文」を書くアルバイト医師・仲介業者を規制・指導してほしい
保険会社の意のまま「作文」を書くアルバイト医師・仲介業者を規制・指導について意見提起します。交通事故の民事訴訟において、保険会社から金銭を受け取り、アルバイトとして、その保険会社の意のままに専門家の意見と称した「作文」を書く医師がいます(あるいは名を貸すだけで作成にも関わっていない可能性もあります)。そうした内容は、効を奏しているかは別として、保険会社が支払う賠償額を少しでも安くしようとする目的で、交通事故で命を奪われた犠牲者やその遺族を侮辱し、冒瀆するものとなっています。
当会会員の例で言えば、信号無視で横断歩道に突っ込んできた加害者に母親の命を奪われ(その間5日間、生死の境をさまよいました)、民事訴訟になるや手のひらをかえしてきたのですが、その際、保険会社から仲介会社経由で医師の意見書を出してきました。その内容は、因果関係のあまりにはっきりしたシンプルな交通事故に対して、「入院中にベッドから転落して頭を打ったことが死因に違いない」という荒唐無稽なものでした。
その冒瀆的な態度に会員ははらわたが煮えくり返る思いをしました。そんな「意見書」を目にして、なかには心が折れて崩れ落ちてしまう遺族もいると思います。
医師としての医学的見地から相応の見解を述べるならわかります。しかし、保険会社の指示のまま、医の倫理を踏みにじり、でたらめな作文制作によるアルバイト行為が横行している実態があります。ついては、金融庁や厚生労働省などの監督官庁における、こうした保険会社、仲介業者、医師(医師会、学会)への規制、指導・処分を行えるようにしていただく必要があります。
そこで以下の意見を提案いたします。
・そうした医師免許を悪用する悪質なアルバイト行為を規制する行政施策を進めてほしい。
・交通遺族よりそうした事例がないか意見募集をしてほしい。
・問題のある事例の対しては指導・処分を行うようにしてほしい。
⑯司法解剖実施に際しては遺族配慮を考慮した運用マニュアルを策定・運用してほしい
司法解剖について意見提起します。殺人や致死犯罪、交通事故において、故人に対する司法解剖が行われることがあります。それが必要なことは理解していますが、実態はかなり凄惨です。当会会員でも交通事故で奪われた家族を司法解剖された者がいますが、司法解剖後の、さんざんに切り刻まれ、ゾンビのような、人間の尊厳を奪い取られた凄惨な姿を目の当たりにして、一目見た次の瞬間、思わず座り込んでしまったことを今でも思い出すとのことです。また切り口からは内臓の腐臭と思われる異臭が漏れ、喉元は乱暴に縫い合わせられ、頭部は丸坊主にされた上に、ホチキスのようなもので乱暴に止められていました。
またその前後でも故人の尊厳の踏みにじられるようなことがありました。大学病院に搬送された時、裏門から搬送されたのですが、職員の喫煙スペースのような場所を通りました。煙草臭く、灰の散乱している中で、煙草を片手に紫煙を吐き出した医師(職員?)がいて、我々を見るや「おっ?」という表情をしていました。
こうしたことは改善してほしいので、以下を提起します。
・人払いなどの搬送マニュアルを徹底してほしい。
・ホチキス止めはやめてほしい。現在の医療技術では目立たなくする処置は問題なく可能です。
・いまの医療技術では脳の検査も丸坊主にしなくても問題なく可能なはず。目立たなくする処置に変更してほしい。
・司法解剖後は公費でエンバーミングを行ってほしい。
・搬送が遺族の自費になっています。遺族の意向に関係なく、遺族の責任外の事件事故で、国の命令として行われるのだから、公費でまかなってほしい。
⑰矯正施設で被害者が講演する際に配慮してほしい
矯正施設で収容者に被害者が講演をすることは、彼らの反省を促し、大切だと思う。遺族は、苦しい気持ちを乗り越え講演に出かけている。施設の多くは遠方にあるため苦労して出向いている。被害者が講演を行う際は、原則最寄り駅までの送迎と、相応の予算措置を願いたい。現状は、あまりに少なすぎる予算で動いている。
⑱被害者に加害者情報の開示をしてほしい
損害賠償請求訴訟のために、被害者が、保護観察所に加害者の住所を訊いても、教えてもらえない現実がある。そのため権利行使ができないのは、制度の不備である。弁護士法に基づき照会した場合、知らせることを原則化してほしい。
2015年12月01日
ハートバンド2015
犯罪被害者週間全国大会(通称:ハートバンド)
毎年11月最終土曜日に行われる年1回の大イベント。
全員ではなく、都合の付いた人のみにはなりますが、
今年もあいの会メンバーで参加してきました。
ご遺族の講演。
そして恒例の車座トーク。
今年も悲しい話があり、温かい応援の声がありました。
今年の遺族講演は、連続リンチ殺人事件のご遺族と、
フザケ運転による暴走車死傷事件のご遺族のお話でした。
いまだに許せない無法者がいて、許せない犯罪がある。
そしてそれを少しでも軽くしようとする許せない司法がある。
そして続く車座トークでも、多くの話が出ました。
代表の小沢樹里からは、臓器移植に伴う二次被害の問題を、
顧問の高橋弁護士からは、日弁連の加害者偏重問題を、
副代表の東からは、金銭のために保険会社の指示のまま、
デタラメな作文を書くアルバイト医師が横行する問題を、
車座トークにおいて、それぞれ意見提起させていただきました。
そして円卓を囲んでの懇親会、さらに場所を移しての二次会、
と久しぶりに再会する遺族仲間との触れ合いのひと時は、
何回目でも、とても大切な時間と空間であり続けていました。
2日目は朝からいくつかにわかれての分科会。
ここでもとても有意義な議論に接することができました。
来年も、再来年も、ハートバンドがある限り、
私たちも足を運び続けることになると思います。