2025年11月
2025年11月30日
胎児の命は、被害として扱われないのか ―― 一宮市で起きた妊婦死亡事故を受けて

2024年5月、愛知県一宮市木曽川町で、妊娠9か月だった研谷沙也香さん(当時31歳)が車にはねられ亡くなった事故がありました。
お腹の中にいた赤ちゃんは帝王切開で誕生しましたが、脳に重い障害を負って生まれたと報じられています。
遺族の方々は、この赤ちゃん(日七未《ひなみ》ちゃん)も交通事故の“被害者”であるとして、
加害者を「過失運転致傷」の罪でも問うよう検察に求め、11万2,000筆以上の署名を提出したと報道されています。
しかし名古屋地検は、事故と障害の因果関係を調査したうえで、
「胎児への過失運転致傷罪は適用しない」
と判断しました。
同じく交通事故で家族を奪われた“遺族”として、この判断には深い疑問と大きな問題意識を抱かざるを得ません。
参考:
妊婦事故死 胎児への過失致傷罪、立件を断念へ 名古屋地検
https://mainichi.jp/articles/20251128/k00/00m/040/145000c

⸻
■妊婦は亡くなり、生まれた子どもは重い障害を負った。それでも「被害者として扱われない」現実
胎児は母体の一部である――この前提は、法制度上確立している考え方です。
けれども今回の事案では、妊娠9か月という、医学的にはすでに出生可能な時期に達していた命でした。
実際に生まれ、そして「後遺障害という結果」まで残っています。
それでも、刑事裁判上は
“胎児には被害者性が認められない”
という線引きがされています。
遺族としてこの問題を見たとき、突きつけられるのはただ一つです。
「この子の命は、法の中では存在していなかったことになるのか」
事故で亡くなる可能性があった命
事故によって一生背負う障害を負った命
家族にとっては何よりも大切な子どもの命
そのすべてが、
“法の枠組みの外側”
に置かれてしまうことに、私は強い違和感を覚えます。
⸻
■遺族の苦しみは、制度の隙間に置かれてはならない
胎児の法的位置づけは倫理的にも医学的にも慎重な議論が必要だということは理解しています。
しかし今回のように、生まれて、障害という明確な結果がある命についてさえ、刑事裁判の中で「損害」を論じる対象から外されてしまう現状は、あまりにも現実と乖離しています。
命として存在していた事実
事故により奪われ、傷ついたという事実
その後も続く家族の苦しみという現実
これらが、司法の枠の外に置かれてしまったとき、遺族はどこにも救いを求めることができません。
「胎児は被害者になれない」
この制度の壁は、今回の一宮市の事故が示すとおり、確実に遺族を二重三重に傷つけます。
⸻
■今求められているのは、「今の医療と命に見合う制度」
医学は進歩し、胎児はより早い段階から救命可能になりました。
しかし法制度はその変化に追いついていません。
遺族として強く願うのは、
• 出生可能な時期の胎児が事故で障害を負った場合には、刑事司法の対象とする制度の検討
• 家族が正当に補償や支援を受けられる仕組みの整備
• “命として存在した”という事実が司法にも社会にも正しく認められること
です。
今回の事故は、もう一度私たちに問いかけています。
――胎児の命は、本当に守られていると言えるのか?
――遺族が抱える苦しみは、制度によってさらに深められていないか?
この問いを、社会全体で向き合う必要があると切に感じています。
i_nokai0708 at 22:05|Permalink│Comments(0)
2025年11月24日
「高校に行きたい」——交通事故に遭った女の子が直面している、未来をふさぐ社会の壁(2025.11.24)
■「事故に遭った子どもの未来が、高校受験の段階で再び奪われようとしています」
埼玉県に暮らす、ある中学1年生の少女の話です。
彼女は通学中、加害者の無謀な運転によって命に関わる重大な事故に遭い、犯罪被害者となりました。
現在は中学3年生。
事故の後遺症により車椅子で生活をしていますが、懸命なリハビリと家族の支えで、中学校には安心して通えるまでに回復しています。
ところが、今年度に入って高校受験の相談を何度も受ける中で、状況は深刻さを増し、
「このままでは高校に入学できないかもしれない」という現実に、母親は強い苦悩を抱えていました。
「娘には高校に進学してほしい。」
その願いは、事故に遭ったからこそ“同じような境遇の人を助けたい”という娘の夢を支えたいという、母としての切実な思いから生まれたものでした。
同じ年頃の子を育てる私自身、胸が締めつけられるような話でした。
⸻
■ 同世代の母親から聞いた、あまりにも重い現実
突然の交通事故がどれほど人生を変えてしまうのか——
その事実を突きつけられる、緊迫した状況です。
彼女は今、中学3年生。
ただただ、
「高校に行きたい」
「勉強を続けたい」
そう願う、ごく普通の女の子です。
⸻
■ 事故の後遺症として残っている障害
お母さんから伺った現在の状態は次のとおりです。
〈障害者手帳より〉
・脳梗塞・脳挫傷による左上肢機能全廃
・左下肢機能全廃
・高次脳機能障害
〈日常生活〉
・福祉車両(サイドリフトアップ仕様)を使用
・ゆっくり座る動作は改善
・左足を車内に入れるには補助が必要
・立てる時間も増えてきた
・中学校ではサポートを受けながら通常の生活が可能
これは彼女自身の努力と、ご家族の揺るぎない支えがあってこそです。

現在は中学3年生。
ただ、
「高校に行きたい」
「学びたい」
それだけを願っている、普通の女の子です。

■ しかし、高校側からは「受験すら拒否された」
2025年4月から早めに始めた受験準備。
滑り止めを含め、複数の私立高校に個別相談へ出向きました。
ところが返ってきた返答は——
・エレベーターがない
・移動教室が多い
・授業間移動が困難
・安全確保が難しい
そのうえ、
「受験は難しいです」
「察してほしい」
と、校長先生などから実質的な“受験拒否”を示す言葉が伝えられたのです。
障害者差別解消法があるにもかかわらず、
何度も足を運び、何度も断られ、親子は深く傷つきました。
「事故に遭っただけなのに」
「どうして進学すら許されないの…」
涙を流しながらそう語ったと聞きました。
⸻
■ 県立高校にもある「制度の空白」
県立高校には「介助員制度」が存在します。
しかし、大きな問題があります。
介助員が決まるのは “入学後”。
つまり入学直後は、
・トイレ
・階段
・教室移動
すべてに補助がありません。
制度はあっても、子どもが安全に学校生活を送れる形にはなっていないのです。
⸻
■ 健常な高校生ですら休めない現状
高校に通う私の娘を含め、多くの生徒が口を揃えて言います。
・休み時間はほとんどない
・移動教室がギリギリ
・トイレに行く時間すらない
つまり、
今の高校は健常な子どもでさえ“余裕がない構造”なのです。
そこへ麻痺や車椅子の事情が加われば、移動が困難になるのは当然です。
⸻
■ エレベーターは「障害のある子だけのもの」ではない
今回あらためて痛感したのは、
エレベーターは“特別なもの”ではないということです。
・交通事故で後遺障害を負った子ども
・怪我や病気で一時的に移動が難しい生徒
・重い荷物を運ぶ部活動
・高齢や妊娠中の教員の安全
誰にとっても必要な設備です。
学校にエレベーターがなければ、
「働く権利」「学ぶ権利」が脅かされてしまいます。
バリアフリーは“福祉”ではなく、
教育現場の“土台”であるべきです。
⸻
■ 学校教育のバリアフリー化は「急務」
社会全体がバリアフリーに向かっている中、
学校教育だけが昔の構造のまま取り残されています。
・エレベーターがない
・スロープがない
・時間割が移動前提
・施設設計が階段ありき
このままでは障害の有無に関係なく、
「学びたい」という子どもたちの権利が奪われてしまいます。
今回の相談で、私は強く痛感しました。
高校現場のバリアフリー化は、
もはや“特別対応”ではなく“必須の整備”です。
埼玉県に問い合わせた際も、
想像以上に多くの高校でエレベーターが未設置で、
その状況に愕然としました。
⸻
■ 行政と教育現場に求める改善
① 私立高校にも介助制度を整備
② 障害を理由とした受験拒否の抑止ガイドライン
③ 合格段階での介助員申請を可能に
④ 時間割・移動教室の柔軟化
⑤ バリアフリー設備への助成
⑥ 学校ホームページへの設備状況の明示
⸻
■ 事故に遭った子どもの“二度目の未来”を奪わないでほしい
事故は本人のせいではありません。
外側から突然ふりかかる、理不尽そのものです。
そのうえ、進学という未来まで阻まれる現実。
事故の苦しみは一度で十分です。
二度、三度と子どもを苦しめる社会であってはなりません。
私は、お母さんが震える声で語ったあの日の言葉を忘れません。
⸻
■ 埼玉県に今求められていること
事故があったから進学を諦めるのではなく、
「事故に遭っても未来を奪われない県」であること。
高校が受け入れの判断をする前に、
県との連携や設備の確認などを行ってほしかった。
そのうえで判断されたのであれば納得もできたはずです。
私は、
・交通事故遺族として
・子どもを育てる母として
一人の子どもの未来が、社会の無関心や制度の隙間によって奪われていく状況に強い疑問を感じます。
この問題を知っていただくことこそ、
同じ壁にぶつかる子どもたちすべてを守る第一歩です。
来年4月、桜が咲く頃。
彼女が安心して笑顔で高校に通える日々を願って。
このブログをここに記します。
一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里

2025年11月20日
国家公務員で制度化検討へ──犯罪被害者休暇導入率0.9%の社会が動き始めた(2025.11.20)

犯罪被害者休暇、導入率わずか0.9%
——それでも、国家公務員で制度化が検討され始めた“この一歩”は大きい。
11月20日の新聞で、犯罪被害者や遺族が裁判・捜査対応・心のケアのために取得できる
「犯罪被害者休暇」を導入している企業が0.9%にとどまる
という現実が報じられました。
しかし同時に、
国家公務員への制度化が検討され始めた
という、大きな前進も伝えられています。
この国の被害者支援が、ようやく「制度」として動き出した——
私たちはその事実を、何より重く受け止めています。
⸻
■0.9%という数字が示すもの
今の日本では、犯罪被害者休暇の必要性が社会に十分に認識されていません。
・制度の存在自体を知らない
・「必要性を感じない」
・「自社には関係ない」
そうした理由で、多くの企業は制度導入を見送っています。
ですが、私たちは知っています。
ある日突然、誰の人生も奪われ得るということを。
犯罪や交通事故の被害は、いつ、どこで、誰に起きるかわかりません。
制度がなければ、その瞬間に家族の生活は簡単に崩れてしまいます。
⸻
■国家公務員での検討は、社会全体を動かす力になる
行政が制度化に踏み出すことは、
企業・自治体にも大きな影響を及ぼす可能性を持っています。
被害者支援は、個々の企業の“善意”に任せるものではなく、
社会が責任として備える仕組みであるべきです。
国が動けば、民間も動く。
制度は“空気のように当たり前”の形で整っていく。
そのスタートラインに、いまようやく立ちました。
私たち遺族が長い間訴えてきた方向へ、確かな風が吹き始めています。
⸻
■制度の遅れが遺族に与える現実
あいの会にはこれまで、多くの切実な声が届いています。
・裁判のたびに有給を消費し、職場に肩身の狭さを感じる人
・精神科の通院に「私用」で休むしかない人
・事故直後の休み希望を断られ、退職を余儀なくされた人
・心身が限界でも「働くしかない」と追い詰められた家族
国家公務員だけの制度では足りません。
しかし、その一歩がなければ、“誰もが休めない社会”は永遠に続きます。
⸻
■私たちの願い
犯罪被害者休暇は、被害者が「特別扱い」を求めているのではありません。
・裁判
・捜査
・心のケア
・生活再建
・家族のケア
これらは、「加害者によって突然人生を壊された」人が立ち上がるために必要不可欠な時間です。
制度がなければ、被害者や遺族は社会の中で孤立し続けてしまう。
私たちの願いはただひとつ。
同じ苦しみを、未来の誰にも繰り返さない社会をつくること。
⸻
■最後に
導入率0.9%という数字は小さい。
けれど、国家公務員での制度化の検討は“大きな希望”です。
社会の仕組みがひとつ動き始めたことを、
私たちは決して小さく受け止めていません。
声を上げ続けてきた多くの遺族、支援者、行政の方々の想いが、
ようやく形になり始めています。
備える社会へ。
支え合う社会へ。
制度が「想像力の証明」になる社会へ。
あいの会はこれからも、この流れを止めないために声を上げ続けます。
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2025年11月15日
豊島区犯罪被害者支援条例シンポジウムに参加して(2025.11.15)
——全国へ広がる“希望のモデル”として——
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
11月15日、「豊島区 犯罪被害者支援条例 制定記念シンポジウム」に参加いたしました。
会場には、被害者遺族、行政職員、支援者、専門家の皆さまが集まり、
これまでの歩みと、これからの未来を語り合う、大変意義深い時間となりました。


今回のシンポジウムで登壇した当会 副代表理事・松永拓也の講演は、
会場全体の空気を震わせるものでした。
突然最愛の妻と娘を失い、怒涛のような日々の中で味わった
“心の痛み・生活の困難・経済的負担・情報不足・二次被害”
そのひとつひとつが、今なお多くの被害者が直面している現実そのものです。
豊島区が今回制定した条例は、
その現実に、真正面から向き合った内容になっています。
⸻
■なぜ、このシンポジウムが「今」必要だったのか
犯罪被害者の現状は、いまだ社会に十分知られていません。
被害に遭ったその瞬間から、
遺族・被害者は
• 心身の不調
• 生活困難
• 経済的負担
• 裁判・捜査への対応
• 子育て・介護
• 感染症の再発や通院
• そしてSNSなどによる二次被害
こうした“複数の困難が同時にのしかかる”状態に置かれます。
しかし、従来の制度には
「犯罪被害者に特化した生活支援」
はほとんどありませんでした。
被害は突然、理不尽に起きるにもかかわらず、
被害者自身が行政の窓口を探し、何度も説明し、
自力で生活を立て直さなければならない。
その矛盾を、今回のシンポジウムでは
被害者・自治体・専門家が同じ視点で共有することができました。
⸻
■豊島区の条例は、全国のモデルになる
豊島区が制定した条例の特徴は明確です。
◎福祉部に窓口を設置
→ “聞く耳を持つ専門職”が最前線に立ち、
被害者の心情に配慮した対応ができる体制。
◎支援期間が長い・経済的支援が手厚い
→ 数ヶ月ではなく「長く寄り添う」姿勢が制度に明記。
被害直後の混乱時に申請できない人にも対応。
◎生活支援(配食・家事支援など)が制度化
→ 「生きるために必要な支え」を行政が明確に保障。
◎対象が広い(区外の遺族も支援の対象に)
→ 被害者を“線引き”しない、温かい支援。
◎犯罪予防(加害者を生まない教育)を条例に明記
→ 被害者支援条例に予防を明記したのは全国でも先進的。
これは、被害者支援の歴史の中でも特筆すべき条例です。

また、今回のパネルディスカッションでは、
この条例がどのような想いで生まれ、どんな支援が必要とされているのかが、
行政・遺族・専門家それぞれの立場から語られました。
区長からは、都庁時代の経験や、あいの会からの働きかけを受け、
「必ず条例を作る」と決意した経緯が語られました。
福祉部に窓口を置いた理由、区外の遺族も含めた対象の広さ、
遺族支援金と配食・家事・育児支援などの生活支援を組み合わせた制度設計、
さらには「加害者を生まない」ための教育・犯罪予防を
条例に明記したことも紹介されました。
被害者遺族からは、
事件直後に押し寄せる葬儀・捜査協力・裁判・報道対応・SNSの誹謗中傷など、
多数の負担がいまも多くの遺族の現実であること、
「もし当時、遺族支援金があればどれほど救われただろうか」という
切実な声が寄せられました。
また、配食や家事支援に税金が使われることについて、
「社会が『応援します』と言ってくれているようで、本当にうれしい」
という言葉も印象的でした。
専門家・支援者からは、
自治体間の支援格差、窓口体制の限界、職員研修や周知の重要性、
そして市民一人ひとりの関心が制度改善を進める力になる、
という指摘がありました。

⸻
■既存の条例も“アップデート”が必要な時代へ
現在、多くの自治体で犯罪被害者支援条例がつくられています。
しかし、その中には
• 生活支援がない
• 支援期間が短い
• 窓口が福祉部ではなく縦割りのまま
• 被害者の声が反映されていない
など、制度の“古さ”や“不足”が見えるものもあります。
今回の豊島区の取り組みは、
全国の条例が見直され、より実態に沿った制度へアップデートされる
大きな契機になると確信しています。
私は、全国の自治体に呼びかけたいのです。
「豊島区をひとつのモデルとして、
どうか条例の再構築を進めてください」
被害者支援は“更新”が必要な分野です。
現場のニーズは常に変わり続けています。
だからこそ、条例も時代に合わせて一緒に進化していくべきなのです。
⸻
■犯罪被害者が、一日でも早く回復へ向かえるように
被害者遺族は、ある日突然、
望んでもいないのに犯罪被害者になります。
生活は壊れ、心も体も疲弊し、
お金も尽き、仕事にも行けなくなり、
子育て・介護・家事が手につかず、
病院通いが続き、
それでも裁判は待ってくれない。
この“理不尽の連続”を前に、
どれほどの被害者が孤立し、声を失ってきたでしょうか。
豊島区の条例は、
その現実に、初めて光を当て、
「被害者が生きるための仕組み」を形にしたものです。
私は、この条例がきっかけとなり、
犯罪被害者が一日でも早く回復し、
心のケアへつながることを、心から願っています。
そして、今後も当会は国や自治体、議会に対し、
被害者支援の拡充・制度改善の働きかけを続けてまいります。
最後に、今回のシンポジウム開催に尽力された
豊島区長をはじめ、区議会、職員の皆様、関係者の皆様に
深く感謝申し上げます。
一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
小沢樹里

一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢 樹里
11月15日、「豊島区 犯罪被害者支援条例 制定記念シンポジウム」に参加いたしました。
会場には、被害者遺族、行政職員、支援者、専門家の皆さまが集まり、
これまでの歩みと、これからの未来を語り合う、大変意義深い時間となりました。


今回のシンポジウムで登壇した当会 副代表理事・松永拓也の講演は、
会場全体の空気を震わせるものでした。
突然最愛の妻と娘を失い、怒涛のような日々の中で味わった
“心の痛み・生活の困難・経済的負担・情報不足・二次被害”
そのひとつひとつが、今なお多くの被害者が直面している現実そのものです。
豊島区が今回制定した条例は、
その現実に、真正面から向き合った内容になっています。
⸻
■なぜ、このシンポジウムが「今」必要だったのか
犯罪被害者の現状は、いまだ社会に十分知られていません。
被害に遭ったその瞬間から、
遺族・被害者は
• 心身の不調
• 生活困難
• 経済的負担
• 裁判・捜査への対応
• 子育て・介護
• 感染症の再発や通院
• そしてSNSなどによる二次被害
こうした“複数の困難が同時にのしかかる”状態に置かれます。
しかし、従来の制度には
「犯罪被害者に特化した生活支援」
はほとんどありませんでした。
被害は突然、理不尽に起きるにもかかわらず、
被害者自身が行政の窓口を探し、何度も説明し、
自力で生活を立て直さなければならない。
その矛盾を、今回のシンポジウムでは
被害者・自治体・専門家が同じ視点で共有することができました。
⸻
■豊島区の条例は、全国のモデルになる
豊島区が制定した条例の特徴は明確です。
◎福祉部に窓口を設置
→ “聞く耳を持つ専門職”が最前線に立ち、
被害者の心情に配慮した対応ができる体制。
◎支援期間が長い・経済的支援が手厚い
→ 数ヶ月ではなく「長く寄り添う」姿勢が制度に明記。
被害直後の混乱時に申請できない人にも対応。
◎生活支援(配食・家事支援など)が制度化
→ 「生きるために必要な支え」を行政が明確に保障。
◎対象が広い(区外の遺族も支援の対象に)
→ 被害者を“線引き”しない、温かい支援。
◎犯罪予防(加害者を生まない教育)を条例に明記
→ 被害者支援条例に予防を明記したのは全国でも先進的。
これは、被害者支援の歴史の中でも特筆すべき条例です。

また、今回のパネルディスカッションでは、
この条例がどのような想いで生まれ、どんな支援が必要とされているのかが、
行政・遺族・専門家それぞれの立場から語られました。
区長からは、都庁時代の経験や、あいの会からの働きかけを受け、
「必ず条例を作る」と決意した経緯が語られました。
福祉部に窓口を置いた理由、区外の遺族も含めた対象の広さ、
遺族支援金と配食・家事・育児支援などの生活支援を組み合わせた制度設計、
さらには「加害者を生まない」ための教育・犯罪予防を
条例に明記したことも紹介されました。
被害者遺族からは、
事件直後に押し寄せる葬儀・捜査協力・裁判・報道対応・SNSの誹謗中傷など、
多数の負担がいまも多くの遺族の現実であること、
「もし当時、遺族支援金があればどれほど救われただろうか」という
切実な声が寄せられました。
また、配食や家事支援に税金が使われることについて、
「社会が『応援します』と言ってくれているようで、本当にうれしい」
という言葉も印象的でした。
専門家・支援者からは、
自治体間の支援格差、窓口体制の限界、職員研修や周知の重要性、
そして市民一人ひとりの関心が制度改善を進める力になる、
という指摘がありました。

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■既存の条例も“アップデート”が必要な時代へ
現在、多くの自治体で犯罪被害者支援条例がつくられています。
しかし、その中には
• 生活支援がない
• 支援期間が短い
• 窓口が福祉部ではなく縦割りのまま
• 被害者の声が反映されていない
など、制度の“古さ”や“不足”が見えるものもあります。
今回の豊島区の取り組みは、
全国の条例が見直され、より実態に沿った制度へアップデートされる
大きな契機になると確信しています。
私は、全国の自治体に呼びかけたいのです。
「豊島区をひとつのモデルとして、
どうか条例の再構築を進めてください」
被害者支援は“更新”が必要な分野です。
現場のニーズは常に変わり続けています。
だからこそ、条例も時代に合わせて一緒に進化していくべきなのです。
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■犯罪被害者が、一日でも早く回復へ向かえるように
被害者遺族は、ある日突然、
望んでもいないのに犯罪被害者になります。
生活は壊れ、心も体も疲弊し、
お金も尽き、仕事にも行けなくなり、
子育て・介護・家事が手につかず、
病院通いが続き、
それでも裁判は待ってくれない。
この“理不尽の連続”を前に、
どれほどの被害者が孤立し、声を失ってきたでしょうか。
豊島区の条例は、
その現実に、初めて光を当て、
「被害者が生きるための仕組み」を形にしたものです。
私は、この条例がきっかけとなり、
犯罪被害者が一日でも早く回復し、
心のケアへつながることを、心から願っています。
そして、今後も当会は国や自治体、議会に対し、
被害者支援の拡充・制度改善の働きかけを続けてまいります。
最後に、今回のシンポジウム開催に尽力された
豊島区長をはじめ、区議会、職員の皆様、関係者の皆様に
深く感謝申し上げます。
一般社団法人関東交通犯罪遺族の会
小沢樹里

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犯罪被害等支援条例が豊島区制定。副代表の松永が記念講演を実施(2025.11.15)
11月15日、豊島区で開かれた「犯罪被害者等支援条例」シンポジウムでお話しさせていただきました。
豊島区犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウムについて
https://www.city.toshima.lg.jp/158/2509050914.html

2019年に妻の真菜と娘の莉子を失ったあの日から、気づけばもう6年以上が経ちました。
あの頃の私は、悲しみの渦の中で、葬儀や手続きや報道対応に追われながら、「どこに助けを求めればいいのか」さえ分かりませんでした。
でも、それは私だけではなく、豊島区でも、全国でも、犯罪被害によって、突然大切な人を奪われて苦しんできた方が本当にたくさんいます。
その一人ひとりに、それぞれの物語があります。
■豊島区が条例を作るまでの道のり
事故からしばらくして、あいの会として「豊島区にも犯罪被害者支援条例を」とお願いをしました。
そのとき高際みゆき区長は、真剣に話を聞いてくださり、
「必ず実現します」
と言ってくださいました。
あの言葉は、今でも忘れられません。
それから条例制定のための検討会にもあいの会を招いてくださり、今年ついに条例が誕生しました。
豊島区は、被害や喪失を抱えた人を、「見て見ぬふりをしない」と決めてくれた。
その姿勢こそが、この条例のいちばんの価値だと思っています。
■これから、どこへ広がっていくのか
豊島区がこうして一歩を踏み出したことは、同じように悩んでいる他の自治体にとって、優しく背中を押す力になるはずです。
制度は机の上で生まれるのではなく、誰かの痛みを知った人たちが動いたときに生まれます。
豊島区でのこの一歩が、これから全国に静かに、でも確かに広がっていけばいいなと感じています。
■私自身の想い
私の体験は、数ある被害の中の一つにすぎません。
でも、あの時の自分のように苦しんでいる誰かが、少しでも「助けを求められる場所がある」と思えるなら。そのための制度があるなら。
それだけで未来は変わると思っています。
■感謝
あいの会の声に真摯に向き合い、条例を形にしてくださった高際みゆき区長ならびに、関係者の皆様に深く感謝いたします。
■最後に
犯罪被害で愛する人を亡くした悲しみは簡単には癒えません。
けれど、人の優しさや、支える仕組みがあることで、少しだけ前を向ける瞬間があります。
豊島区の条例が、これから支援を必要とする誰かの心に、そっと灯りをともす存在になりますように。
そして私も、これからも静かに活動を続けていきたいと思います。




豊島区犯罪被害者等支援条例制定記念シンポジウムについて
https://www.city.toshima.lg.jp/158/2509050914.html

2019年に妻の真菜と娘の莉子を失ったあの日から、気づけばもう6年以上が経ちました。
あの頃の私は、悲しみの渦の中で、葬儀や手続きや報道対応に追われながら、「どこに助けを求めればいいのか」さえ分かりませんでした。
でも、それは私だけではなく、豊島区でも、全国でも、犯罪被害によって、突然大切な人を奪われて苦しんできた方が本当にたくさんいます。
その一人ひとりに、それぞれの物語があります。
■豊島区が条例を作るまでの道のり
事故からしばらくして、あいの会として「豊島区にも犯罪被害者支援条例を」とお願いをしました。
そのとき高際みゆき区長は、真剣に話を聞いてくださり、
「必ず実現します」
と言ってくださいました。
あの言葉は、今でも忘れられません。
それから条例制定のための検討会にもあいの会を招いてくださり、今年ついに条例が誕生しました。
豊島区は、被害や喪失を抱えた人を、「見て見ぬふりをしない」と決めてくれた。
その姿勢こそが、この条例のいちばんの価値だと思っています。
■これから、どこへ広がっていくのか
豊島区がこうして一歩を踏み出したことは、同じように悩んでいる他の自治体にとって、優しく背中を押す力になるはずです。
制度は机の上で生まれるのではなく、誰かの痛みを知った人たちが動いたときに生まれます。
豊島区でのこの一歩が、これから全国に静かに、でも確かに広がっていけばいいなと感じています。
■私自身の想い
私の体験は、数ある被害の中の一つにすぎません。
でも、あの時の自分のように苦しんでいる誰かが、少しでも「助けを求められる場所がある」と思えるなら。そのための制度があるなら。
それだけで未来は変わると思っています。
■感謝
あいの会の声に真摯に向き合い、条例を形にしてくださった高際みゆき区長ならびに、関係者の皆様に深く感謝いたします。
■最後に
犯罪被害で愛する人を亡くした悲しみは簡単には癒えません。
けれど、人の優しさや、支える仕組みがあることで、少しだけ前を向ける瞬間があります。
豊島区の条例が、これから支援を必要とする誰かの心に、そっと灯りをともす存在になりますように。
そして私も、これからも静かに活動を続けていきたいと思います。




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2025年11月12日
対談掲載のお知らせーー「誰もが被害者になりうる世界で」(2025.11.12)
集英社新書プラスにて、あいの会の松永拓也と、
2025年10月に刊行した『犯罪被害者代理人』の著者であり、あいの会の顧問弁護士の上谷さくら先生との対談が掲載されました。
対談:誰もが被害者になりうる世界で
『犯罪被害者代理人』刊行記念 <松永拓也さん×上谷さくらさん>
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/kamitani_sakura/32295

今回の対談では、被害に遭った後の「自分で選ぶ力」を少しずつ取り戻していくことについてや、
制度を知らずに参加できなかったという状況をなくし、「制度を知った上で自分で決めていく」ことの大切さが語られています。
また、被害者自身がどのような場面で困難に直面し、どのように支援につながっていくべきかという現場の実情も示されました。
この記事を通して、多くの方に“犯罪被害者代理人”という存在を知っていただければ幸いです。
必要な支援につながるきっかけのひとつとなることを願っております。
著書:犯罪被害者代理人
著者:上谷 さくら
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1283-b/
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2025年11月11日
茨城県立水戸工業高等学校で講演を行いました(2025.11.8)
先日、茨城県立水戸工業高等学校にお招きいただき、全校生徒の皆さんに向けて講演を行いました。
「加害者も被害者も生まない社会に」――「交通事故」と「誹謗中傷」から考える、命の尊さと他者への想像力をテーマにお話ししました。
事故の背景や被害者・加害者の現実、そしてSNS社会における「言葉の責任」についてもお話ししました。
■生徒の皆さんの真剣なまなざし
講演の間、生徒の皆さんは一人ひとりが本当に真剣な表情で耳を傾けてくださいました。
交通事故も誹謗中傷も、「相手の立場に立って考える力」が欠けたときに起きやすくなります。
運転中のわずかな油断や、SNSでの軽い一言が、誰かの人生を大きく変えてしまいます。
後日、学校を通じて次のような感想をいただきました。
「心に残った」
「これからの自分の行動を見直したい」
「これからの自分の人生にとても役に立つ講演会でした」
「毎日を当たり前に過ごさないようにしたい」
これらの言葉を拝見し、私自身、伝えるという行為の意味をあらためて感じました。
どんなに悲しい出来事でも、語ることで“誰かの未来を守る力”に変えることができる。
そう信じて続けてきた活動が、確かに届いていることを実感しました。
■最後に
今回の講演を支えてくださった先生方、PTAの皆様、そして真剣に耳を傾けてくださった生徒の皆様に、心より感謝申し上げます。
皆様の温かいまなざしと誠実な姿勢に、私自身がたくさんの勇気をいただきました。
これからも、「加害者も被害者も生まない社会」を目指して、活動を続けてまいります。
茨城県立水戸工業高等学校の皆様、本当にありがとうございました。

「加害者も被害者も生まない社会に」――「交通事故」と「誹謗中傷」から考える、命の尊さと他者への想像力をテーマにお話ししました。
事故の背景や被害者・加害者の現実、そしてSNS社会における「言葉の責任」についてもお話ししました。
■生徒の皆さんの真剣なまなざし
講演の間、生徒の皆さんは一人ひとりが本当に真剣な表情で耳を傾けてくださいました。
交通事故も誹謗中傷も、「相手の立場に立って考える力」が欠けたときに起きやすくなります。
運転中のわずかな油断や、SNSでの軽い一言が、誰かの人生を大きく変えてしまいます。
後日、学校を通じて次のような感想をいただきました。
「心に残った」
「これからの自分の行動を見直したい」
「これからの自分の人生にとても役に立つ講演会でした」
「毎日を当たり前に過ごさないようにしたい」
これらの言葉を拝見し、私自身、伝えるという行為の意味をあらためて感じました。
どんなに悲しい出来事でも、語ることで“誰かの未来を守る力”に変えることができる。
そう信じて続けてきた活動が、確かに届いていることを実感しました。
■最後に
今回の講演を支えてくださった先生方、PTAの皆様、そして真剣に耳を傾けてくださった生徒の皆様に、心より感謝申し上げます。
皆様の温かいまなざしと誠実な姿勢に、私自身がたくさんの勇気をいただきました。
これからも、「加害者も被害者も生まない社会」を目指して、活動を続けてまいります。
茨城県立水戸工業高等学校の皆様、本当にありがとうございました。

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2025年11月04日
法務省刑事局が開催する「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」に出席しました(2025.11.4)
このたび、法務省刑事局が開催する「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」に、あいの会の松永が出席いたしました。
この検討会は、2022年の法改正によって厳罰化された侮辱罪について、施行後の実情や課題を踏まえ、今後の制度改善を検討するためのものです。
会議には、有識者や法律実務家に加え、被害当事者として私のような立場の意見も求められました。
「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00214.html


■被害者として、実体験をもとに訴えたこと
私はこれまで、厳罰化前に1件、厳罰化後に2件、侮辱罪で被害届を提出した経験があります。
被害者として、また社会活動を続ける者として、現行制度の限界と今後の改善の方向性について、下記の意見を述べました。
【意見内容】
【1.厳罰化前後の経験から見た評価】
私は、「自分と同じように交通事故で苦しむ人を一人でも減らしたい」という想いから活動を続けており、その一環としてSNSを通じて発信を行っています。
これまで、数えきれないほどの誹謗中傷を受け続けてきました。
その中で、厳罰化前に1件、厳罰化後に2件、侮辱罪で被害届を提出した経験があります。
厳罰化前と厳罰化後、どちらの立場も体験した身として、厳罰化に対する評価と、今後の課題および改善の必要性について申し上げます。
(1)厳罰化前の事案
2022年3月、愛知県在住の23歳無職男性が、「金や反響目当てで戦っている」と投稿し、さらには私や事故で亡くなった妻と娘を侮辱する投稿を繰り返しました。
私は眠れないほど傷つきましたが、結果は、拘留29日というものでした。
証拠収集や警察への対応、そして侮辱を受け続けた精神的ダメージを考えると、この処分はあまりに軽く、到底納得できるものではありませんでした。
こんなに酷い侮辱が、たった数週間の拘留で終わる現実に、被害者として深い無力感を覚えました。
(2)厳罰化後の事案
2023年11月、SNS上の音声配信機能(Xのスペース)において、元交通鑑定人および交通事故遺族(埼玉50代)ら2名から、私に対する侮辱および、あいの会代表・小沢に対する名誉毀損が行われました。
被害届提出後、略式起訴・罰金刑となりました。
この判断に納得しているわけではないですが、仮にこの事案が厳罰化前であれば、「拘留または科料」にとどまり、これほどの処分は科されなかったはずです。
したがって、厳罰化は被害者の尊厳を守る上で必要かつ有効な一歩であったと考えています。
【2.現行刑罰の限界と更なる見直しの提案】
もちろん、厳罰化していただいたこと自体には感謝しています。
しかし、私は実際に、言葉の暴力によって心を深く傷つけられ、何度も眠れぬ夜を過ごしてきました。
人からは、「言葉だけなのに」「たかがSNSのやりとりでしょ」と言われることもありましたが、被害者からすれば、受けた痛みは、一方的な暴力と変わりません。
「言葉だから軽い罰」「刃物や車ではないから軽い罰」ーーこの考え方は、現代のネット社会には通用しません。
言葉は、人を生かす力と同時に、人を狂わせ、死に追いやるほどの力を持っています。
そして、予防的観点から考えても、現在の刑罰は十分な抑止になっていないと感じます。
したがって、私たちあいの会としては、次のような2つの見直しを提案します。
◾️罰金刑の上限を段階的に引き上げる制度
30万円 → 50万円 → 100万円 と、悪質性や再犯回数に応じて増額できる仕組みを検討していただきたいと考えます。
また、経済力には人によって大きな差があり、「20万円程度なら痛くない」と感じる人もいます。
心身の健康や生活を損なった被害者からすれば、到底納得できるものではありません。
「払いたくない」と思える水準にすることこそが再犯防止につながるのではないでしょうか。
◾️懲役刑の上限を「1年以下」から「3年以下」へ引き上げる
一般予防(抑止)と特別予防(再犯防止)の両面で必要な措置だと考えます。
また、現行の侮辱罪の法定刑が「1年以下」となっている背景には、名誉毀損罪(3年以下・罰金50万円以下)との比較において、
「事実を摘示して他人の外部的名誉を害する名誉毀損罪の方が、事実を示さずに侮辱する侮辱罪よりも、名誉に対する危険の程度が大きい」という従来の考え方があったものと思われます。
しかし、この論理はインターネットやSNSが存在しなかった時代の発想です。
現代では、匿名または多数人からの侮辱が一斉に拡散し、被害者が社会的にも心理的にも追い詰められ、最悪の場合、命を絶つ事例すらあります。
もはや「事実の摘示」があるかどうかだけで、名誉毀損罪よりも侮辱罪の刑を軽くする理由は成立しないと考えます。
現代のネット社会における被害の深刻さを踏まえ、懲役刑の上限を「3年以下」とする見直しを強く要望します。
【3.言論の自由との関係について】
厳罰化が審議されている当時、「厳罰化は言論の自由を萎縮させられるのでは」という懸念の声もありました。
私は今も、SNSの投稿ボタンを押す前に、「また誹謗中傷されるのではないか」という恐怖心に襲われます。
言論の自由を萎縮されているのは、むしろ被害を受けた側です。
また、侮辱罪の厳罰化から3年が経過した現在でも、SNS上では活発な意見交換が行われており、誹謗中傷の被害も依然として発生しています。
この現状を見る限り、厳罰化によって言論の自由が損なわれたとは到底言えません。
むしろ、誹謗中傷防止の観点からは、被害者を守るためのさらなる実効的な対策が求められていると感じます。
【4.警察捜査体制の課題と是正の必要性】
(1)警察による誤った説明
ある警察署で被害届を提出した際、担当者から次のように説明を受けました。
「プラットフォーム側は個人からの開示請求には応じるが、警察からの開示請求には基本的に応じないため、警察は動けない。まず被害者が開示請求をして加害者を特定してほしい。」
しかし、後から調べた結果、これは明確に誤りであることが分かりました。
刑事事件として犯罪の疑いがある場合、警察や検察は裁判所の令状に基づき通信記録の開示請求を行うことが可能なはずです。
したがって、この説明は担当警察官の知識不足、あるいは業務回避による誤った対応であると考えられます。
現場の警察官の認識には大きなばらつきがあり、その結果、被害者が不要な負担を背負わされている現実があります。
(2)専門知識の不足
先に述べた、私が侮辱を受け、代表の小沢が名誉毀損を受けた件では、侮辱罪と名誉毀損罪の違いを警察側が理解しておらず、
「どれが侮辱で、どれが名誉毀損か印をつけて提出してください」
と言われました。
また、担当した警察官は、SNSの仕組みを知らないようで、「Xとはどういうものなのか」「スペースとは何か」を説明するのは非常に大変でした。
私は弁護士の協力を得て対応できましたが、一般市民にとっては極めて困難です。
被害者が日程を調整して警察署を訪ねても、理解の乏しい対応を受ける現状には深い失望を覚えます。
したがって、侮辱罪・ネット犯罪の通報や捜査を専門的に扱える担当者を、各都道府県警に少なくとも1名配置すること、あるいは近隣の署から連携支援を得られる仕組みの構築が必要です。
【5.被害者負担の現実】
現状、被害者は次のような作業を自ら担わざるを得ません。
・スクリーンショットの保存・時刻記録
私は実際、何十枚にも及ぶスクリーンショットを、日時の記録漏れがないよう細心の注意を払いながら、実費で印刷しました。その際に侮辱的な内容を繰り返し見返さなければならず、精神的苦痛は非常に大きいものでした。
・警察や検察との度重なる面談
仕事を終えた後、何度も警察署へ赴き面談を行いました。その中で、先に述べたように知識が不足している方に説明をしなければならず、大変苦しいものでした。
・弁護士への委任
警察から「自ら開示請求をしてほしい」と言われた際、弁護士への委任も考えましたが、経済的負担が大きく、諦めざるを得ませんでした。
・自費による開示請求・通信事業者への対応
同様に、「自ら開示請求をしてほしい」と言われた際、開示請求も非常に金銭的・精神的負担が大きく、諦めました。
このように、被害者は多大な時間的・経済的・精神的負担を背負っています。
このままでは、せっかく侮辱罪が厳罰化されたとしても、被害届を出す気力すら失い、泣き寝入りする人が多数生まれてしまう危険性があります。
したがって、被害者の精神的・金銭的負担を軽減するため、捜査・手続きの一部を行政や公的機関が支援できる仕組みの整備こそ、実効性ある厳罰化につながると考えます。
【6.「違反講習」で再犯防止する仕組みへ】
誹謗中傷の加害者は、「自分は正しい」と思い込むなど、「認知の歪み」を抱える傾向が見られ、刑罰のみでは再犯防止につながりにくい側面があります。
実際、私に侮辱をした20代男性は、現在も多数の人に対して誹謗中傷をしているようです。
そこで、道路交通違反における「違反者講習」のように、SNS上の加害行為に対する教育プログラム(心理教育)を導入することを提案します。
これにより、加害者が被害者の痛みを理解し、再犯を防ぐきっかけになることが期待されます。
さらに、再犯防止の観点からは、加害者教育だけでなく、将来世代に対しても「言葉の影響力」や「他者への想像力」を育てる教育が必要だと考えます。
道徳教育やネットリテラシー教育の中で、他者を傷つけないための発信のあり方を学ぶ機会を増やすことが、社会全体の抑止力強化につながると考えます。
【7.死者に対する侮辱について】
現在の刑法では、死者への侮辱や虚偽の情報拡散について、刑事罰の対象外とされています。
しかし現実には、事件や事故の被害者本人を侮辱する投稿がSNS上で繰り返され、遺族が深く傷つく事例が後を絶ちません。
私自身、亡くなった妻と娘に対して、
「お荷物の子供がいなくなったから乗り換えればいい」「ふたりは死んで当然の人間だ」「社会のゴミが二匹消えただけ」といった言葉や、
「信号無視をした」「スマホを見ていた」といった虚偽の内容を拡散されました。
事実と異なる中傷が広がるたびに、彼女たちの尊厳が踏みにじられ、遺族である私の心も何度も壊れそうになりました。
このような行為は、生きている遺族の心を直接的に踏みにじるものであり、社会的にも到底許されるものではありません。
死者への侮辱行為を明確に処罰対象とすること、少なくとも「遺族の名誉感情を著しく害する行為」として刑法上位置づけることを、新たな検討課題として強く求めます。
【7.まとめ】
私はこれまで、実際に逮捕・処罰に至った事案だけでも複数の経験をしてきました。
しかし、警察が動けなかった事案や、被害届の受理に至らなかったケースも数多くあります。
誹謗中傷は誰にでも起こり得る社会的課題であると同時に、事件・事故の当事者やその周辺の人々では、被害が深刻化しやすいという現実があります。
だからこそ、社会全体の抑止力を高めるために、より厳格な厳罰化の検討が不可欠だと考えます。
侮辱罪の厳罰化は、被害者の尊厳を守るための第一歩だったことは間違いありません。
しかし、捜査体制・罰則水準・再犯防止策のいずれも、まだ十分ではありません。
「言葉で人を殺せる」時代において、社会全体で被害者を守る仕組みを整備することが急務です。
どうか、現場の声をもとにしたさらなる制度改善をお願いいたします。
■想い
今回、こうして当事者として発言の機会をいただけたことに、心から感謝しています。
私が伝えたかったのは、法律の話だけではなく、その「裏にある痛み」です。
言葉は、刃物や車と同じように人を傷つける力を持っています。
だからこそ、被害者の尊厳を守るための制度を、実態に合わせて常に見直していく必要があります。
侮辱罪の厳罰化は、間違いなく一歩前進でした。
しかし、まだ現場では多くの人が泣き寝入りを強いられています。
誹謗中傷は誰にでも起こり得る社会課題です。
そしてそれは、私たちのように命を奪われた家族を持つ遺族にとって、再び心を壊されるほどの現実です。
私は、法律が人の命や心の重さを見失わない社会であってほしいと願っています。
そして、こうした声を通して、これからの制度がより多くの人を守る力になることを信じています。
今後も、あいの会として現場の声を届け続けてまいります。
侮辱罪の厳罰化をきっかけに、「言葉の責任」について社会全体で考える機運が広がることを願っています。
<参考(第1回会議(令和7年9月12日)配布資料)>
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00215.html
侮辱罪の事件処理状況
https://www.moj.go.jp/content/001446562.pdf
侮辱罪の事例集
https://www.moj.go.jp/content/001446563.pdf
この検討会は、2022年の法改正によって厳罰化された侮辱罪について、施行後の実情や課題を踏まえ、今後の制度改善を検討するためのものです。
会議には、有識者や法律実務家に加え、被害当事者として私のような立場の意見も求められました。
「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00214.html


■被害者として、実体験をもとに訴えたこと
私はこれまで、厳罰化前に1件、厳罰化後に2件、侮辱罪で被害届を提出した経験があります。
被害者として、また社会活動を続ける者として、現行制度の限界と今後の改善の方向性について、下記の意見を述べました。
【意見内容】
【1.厳罰化前後の経験から見た評価】
私は、「自分と同じように交通事故で苦しむ人を一人でも減らしたい」という想いから活動を続けており、その一環としてSNSを通じて発信を行っています。
これまで、数えきれないほどの誹謗中傷を受け続けてきました。
その中で、厳罰化前に1件、厳罰化後に2件、侮辱罪で被害届を提出した経験があります。
厳罰化前と厳罰化後、どちらの立場も体験した身として、厳罰化に対する評価と、今後の課題および改善の必要性について申し上げます。
(1)厳罰化前の事案
2022年3月、愛知県在住の23歳無職男性が、「金や反響目当てで戦っている」と投稿し、さらには私や事故で亡くなった妻と娘を侮辱する投稿を繰り返しました。
私は眠れないほど傷つきましたが、結果は、拘留29日というものでした。
証拠収集や警察への対応、そして侮辱を受け続けた精神的ダメージを考えると、この処分はあまりに軽く、到底納得できるものではありませんでした。
こんなに酷い侮辱が、たった数週間の拘留で終わる現実に、被害者として深い無力感を覚えました。
(2)厳罰化後の事案
2023年11月、SNS上の音声配信機能(Xのスペース)において、元交通鑑定人および交通事故遺族(埼玉50代)ら2名から、私に対する侮辱および、あいの会代表・小沢に対する名誉毀損が行われました。
被害届提出後、略式起訴・罰金刑となりました。
この判断に納得しているわけではないですが、仮にこの事案が厳罰化前であれば、「拘留または科料」にとどまり、これほどの処分は科されなかったはずです。
したがって、厳罰化は被害者の尊厳を守る上で必要かつ有効な一歩であったと考えています。
【2.現行刑罰の限界と更なる見直しの提案】
もちろん、厳罰化していただいたこと自体には感謝しています。
しかし、私は実際に、言葉の暴力によって心を深く傷つけられ、何度も眠れぬ夜を過ごしてきました。
人からは、「言葉だけなのに」「たかがSNSのやりとりでしょ」と言われることもありましたが、被害者からすれば、受けた痛みは、一方的な暴力と変わりません。
「言葉だから軽い罰」「刃物や車ではないから軽い罰」ーーこの考え方は、現代のネット社会には通用しません。
言葉は、人を生かす力と同時に、人を狂わせ、死に追いやるほどの力を持っています。
そして、予防的観点から考えても、現在の刑罰は十分な抑止になっていないと感じます。
したがって、私たちあいの会としては、次のような2つの見直しを提案します。
◾️罰金刑の上限を段階的に引き上げる制度
30万円 → 50万円 → 100万円 と、悪質性や再犯回数に応じて増額できる仕組みを検討していただきたいと考えます。
また、経済力には人によって大きな差があり、「20万円程度なら痛くない」と感じる人もいます。
心身の健康や生活を損なった被害者からすれば、到底納得できるものではありません。
「払いたくない」と思える水準にすることこそが再犯防止につながるのではないでしょうか。
◾️懲役刑の上限を「1年以下」から「3年以下」へ引き上げる
一般予防(抑止)と特別予防(再犯防止)の両面で必要な措置だと考えます。
また、現行の侮辱罪の法定刑が「1年以下」となっている背景には、名誉毀損罪(3年以下・罰金50万円以下)との比較において、
「事実を摘示して他人の外部的名誉を害する名誉毀損罪の方が、事実を示さずに侮辱する侮辱罪よりも、名誉に対する危険の程度が大きい」という従来の考え方があったものと思われます。
しかし、この論理はインターネットやSNSが存在しなかった時代の発想です。
現代では、匿名または多数人からの侮辱が一斉に拡散し、被害者が社会的にも心理的にも追い詰められ、最悪の場合、命を絶つ事例すらあります。
もはや「事実の摘示」があるかどうかだけで、名誉毀損罪よりも侮辱罪の刑を軽くする理由は成立しないと考えます。
現代のネット社会における被害の深刻さを踏まえ、懲役刑の上限を「3年以下」とする見直しを強く要望します。
【3.言論の自由との関係について】
厳罰化が審議されている当時、「厳罰化は言論の自由を萎縮させられるのでは」という懸念の声もありました。
私は今も、SNSの投稿ボタンを押す前に、「また誹謗中傷されるのではないか」という恐怖心に襲われます。
言論の自由を萎縮されているのは、むしろ被害を受けた側です。
また、侮辱罪の厳罰化から3年が経過した現在でも、SNS上では活発な意見交換が行われており、誹謗中傷の被害も依然として発生しています。
この現状を見る限り、厳罰化によって言論の自由が損なわれたとは到底言えません。
むしろ、誹謗中傷防止の観点からは、被害者を守るためのさらなる実効的な対策が求められていると感じます。
【4.警察捜査体制の課題と是正の必要性】
(1)警察による誤った説明
ある警察署で被害届を提出した際、担当者から次のように説明を受けました。
「プラットフォーム側は個人からの開示請求には応じるが、警察からの開示請求には基本的に応じないため、警察は動けない。まず被害者が開示請求をして加害者を特定してほしい。」
しかし、後から調べた結果、これは明確に誤りであることが分かりました。
刑事事件として犯罪の疑いがある場合、警察や検察は裁判所の令状に基づき通信記録の開示請求を行うことが可能なはずです。
したがって、この説明は担当警察官の知識不足、あるいは業務回避による誤った対応であると考えられます。
現場の警察官の認識には大きなばらつきがあり、その結果、被害者が不要な負担を背負わされている現実があります。
(2)専門知識の不足
先に述べた、私が侮辱を受け、代表の小沢が名誉毀損を受けた件では、侮辱罪と名誉毀損罪の違いを警察側が理解しておらず、
「どれが侮辱で、どれが名誉毀損か印をつけて提出してください」
と言われました。
また、担当した警察官は、SNSの仕組みを知らないようで、「Xとはどういうものなのか」「スペースとは何か」を説明するのは非常に大変でした。
私は弁護士の協力を得て対応できましたが、一般市民にとっては極めて困難です。
被害者が日程を調整して警察署を訪ねても、理解の乏しい対応を受ける現状には深い失望を覚えます。
したがって、侮辱罪・ネット犯罪の通報や捜査を専門的に扱える担当者を、各都道府県警に少なくとも1名配置すること、あるいは近隣の署から連携支援を得られる仕組みの構築が必要です。
【5.被害者負担の現実】
現状、被害者は次のような作業を自ら担わざるを得ません。
・スクリーンショットの保存・時刻記録
私は実際、何十枚にも及ぶスクリーンショットを、日時の記録漏れがないよう細心の注意を払いながら、実費で印刷しました。その際に侮辱的な内容を繰り返し見返さなければならず、精神的苦痛は非常に大きいものでした。
・警察や検察との度重なる面談
仕事を終えた後、何度も警察署へ赴き面談を行いました。その中で、先に述べたように知識が不足している方に説明をしなければならず、大変苦しいものでした。
・弁護士への委任
警察から「自ら開示請求をしてほしい」と言われた際、弁護士への委任も考えましたが、経済的負担が大きく、諦めざるを得ませんでした。
・自費による開示請求・通信事業者への対応
同様に、「自ら開示請求をしてほしい」と言われた際、開示請求も非常に金銭的・精神的負担が大きく、諦めました。
このように、被害者は多大な時間的・経済的・精神的負担を背負っています。
このままでは、せっかく侮辱罪が厳罰化されたとしても、被害届を出す気力すら失い、泣き寝入りする人が多数生まれてしまう危険性があります。
したがって、被害者の精神的・金銭的負担を軽減するため、捜査・手続きの一部を行政や公的機関が支援できる仕組みの整備こそ、実効性ある厳罰化につながると考えます。
【6.「違反講習」で再犯防止する仕組みへ】
誹謗中傷の加害者は、「自分は正しい」と思い込むなど、「認知の歪み」を抱える傾向が見られ、刑罰のみでは再犯防止につながりにくい側面があります。
実際、私に侮辱をした20代男性は、現在も多数の人に対して誹謗中傷をしているようです。
そこで、道路交通違反における「違反者講習」のように、SNS上の加害行為に対する教育プログラム(心理教育)を導入することを提案します。
これにより、加害者が被害者の痛みを理解し、再犯を防ぐきっかけになることが期待されます。
さらに、再犯防止の観点からは、加害者教育だけでなく、将来世代に対しても「言葉の影響力」や「他者への想像力」を育てる教育が必要だと考えます。
道徳教育やネットリテラシー教育の中で、他者を傷つけないための発信のあり方を学ぶ機会を増やすことが、社会全体の抑止力強化につながると考えます。
【7.死者に対する侮辱について】
現在の刑法では、死者への侮辱や虚偽の情報拡散について、刑事罰の対象外とされています。
しかし現実には、事件や事故の被害者本人を侮辱する投稿がSNS上で繰り返され、遺族が深く傷つく事例が後を絶ちません。
私自身、亡くなった妻と娘に対して、
「お荷物の子供がいなくなったから乗り換えればいい」「ふたりは死んで当然の人間だ」「社会のゴミが二匹消えただけ」といった言葉や、
「信号無視をした」「スマホを見ていた」といった虚偽の内容を拡散されました。
事実と異なる中傷が広がるたびに、彼女たちの尊厳が踏みにじられ、遺族である私の心も何度も壊れそうになりました。
このような行為は、生きている遺族の心を直接的に踏みにじるものであり、社会的にも到底許されるものではありません。
死者への侮辱行為を明確に処罰対象とすること、少なくとも「遺族の名誉感情を著しく害する行為」として刑法上位置づけることを、新たな検討課題として強く求めます。
【7.まとめ】
私はこれまで、実際に逮捕・処罰に至った事案だけでも複数の経験をしてきました。
しかし、警察が動けなかった事案や、被害届の受理に至らなかったケースも数多くあります。
誹謗中傷は誰にでも起こり得る社会的課題であると同時に、事件・事故の当事者やその周辺の人々では、被害が深刻化しやすいという現実があります。
だからこそ、社会全体の抑止力を高めるために、より厳格な厳罰化の検討が不可欠だと考えます。
侮辱罪の厳罰化は、被害者の尊厳を守るための第一歩だったことは間違いありません。
しかし、捜査体制・罰則水準・再犯防止策のいずれも、まだ十分ではありません。
「言葉で人を殺せる」時代において、社会全体で被害者を守る仕組みを整備することが急務です。
どうか、現場の声をもとにしたさらなる制度改善をお願いいたします。
■想い
今回、こうして当事者として発言の機会をいただけたことに、心から感謝しています。
私が伝えたかったのは、法律の話だけではなく、その「裏にある痛み」です。
言葉は、刃物や車と同じように人を傷つける力を持っています。
だからこそ、被害者の尊厳を守るための制度を、実態に合わせて常に見直していく必要があります。
侮辱罪の厳罰化は、間違いなく一歩前進でした。
しかし、まだ現場では多くの人が泣き寝入りを強いられています。
誹謗中傷は誰にでも起こり得る社会課題です。
そしてそれは、私たちのように命を奪われた家族を持つ遺族にとって、再び心を壊されるほどの現実です。
私は、法律が人の命や心の重さを見失わない社会であってほしいと願っています。
そして、こうした声を通して、これからの制度がより多くの人を守る力になることを信じています。
今後も、あいの会として現場の声を届け続けてまいります。
侮辱罪の厳罰化をきっかけに、「言葉の責任」について社会全体で考える機運が広がることを願っています。
<参考(第1回会議(令和7年9月12日)配布資料)>
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00215.html
侮辱罪の事件処理状況
https://www.moj.go.jp/content/001446562.pdf
侮辱罪の事例集
https://www.moj.go.jp/content/001446563.pdf
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「被害者手帳」導入に寄せて — 犯罪被害者支援の歴史と、これからの歩み —(2025.11.4)
平素より、一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(あいの会)の活動にご理解・ご支援を賜り、誠にありがとうございます。
このたび報道された「被害者手帳(被害者カルテ)」導入方針について、私たちは深い感慨と希望をもって受け止めております。
第5次犯罪被害者等基本計画(案)
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/meeting/keikaku_sakutei_senmon/kaisai/53rd/shiryou06.pdf
「被害者手帳」や「カルテ化」の導入へ 来年度からの「第5次犯罪被害者等基本計画」案を公表 警察庁
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2266898

【被害者ノートという取り組みの原点】
今回の国の方針の背景には、被害者が必要な支援情報を自分自身で整理し、支援につなげるための「被害者ノート」という取り組みがあります。
この被害者ノートは、2014〜2015年において当時の内閣府特命担当大臣・有村治子 氏のもとで意義が示されたものであり、
犯罪被害者等基本計画の一環として紹介されています。
参考:
内閣府時代の取り組み紹介(民間アーカイブ)
https://picoton.com/victim-notebook2014/
警察庁 犯罪被害者白書(2015)
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2015/html/zenbun/part1/s1_5_3c06.html
国交省「交通事故被害者ノート」松永さんらが感謝を伝える
https://www.youtube.com/watch?v=3EoX516y9SE
この時期、当会代表の小沢樹里は「被害者ノート」の重要性を訴え、
多分野の当事者と有識者が集う「途切れない支援を被害者と考える会」に参加し、
ノートの企画・構成を考案いたしました。
【当事者がともに創り上げた記録】
2014年から約2年間、小沢樹里と事故当事者の小沢恵生(義理妹)が共に中野区に通い、毎月片道2時間をかけ、手弁当で議論を重ねました。
そこには、殺人事件ご遺族、交通事故被害者、性犯罪被害者、DV・ストーカー被害者といった多様な当事者が参加し、
加えて、自治体職員、弁護士、記者、支援団体関係者といった専門家が力を寄せてくださいました。
行政文書に見られる難しい専門用語を避け、知識がない状況でも理解できる当事者のための言葉でまとめられたノートは、“支援が途切れない社会”をめざす大切な一歩となりました。
【支援体制の現在と未来】
現在、犯罪被害者支援は内閣府から警察庁へと移管されました。
被害直後に最初に接する機関が支援の中心となることは、現場に根ざした支援の実現に向けた重要な一歩です。
しかし、まだ道半ばです。
・二次被害対策
・子ども・家族支援
・加害者への求償制度
・心理的支援の継続
・伴走型支援体制構築
これらを確かな形にしていくため、私たちも引き続き取り組んでまいります。
【結びに】
この動きは、決して誰か一人の努力で実現したものではありません。
悲しみの中で声を上げた当事者、寄り添い支えたご家族、支援者、研究者、行政の方々、すべての方々の歩みの積み重ねによって形づくられた道です。
そして、今もなお困難の中にいらっしゃる全ての被害者・ご遺族の皆さまへ。
「あなたはひとりではありません。」
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢樹里
このたび報道された「被害者手帳(被害者カルテ)」導入方針について、私たちは深い感慨と希望をもって受け止めております。
第5次犯罪被害者等基本計画(案)
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/meeting/keikaku_sakutei_senmon/kaisai/53rd/shiryou06.pdf
「被害者手帳」や「カルテ化」の導入へ 来年度からの「第5次犯罪被害者等基本計画」案を公表 警察庁
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2266898

【被害者ノートという取り組みの原点】
今回の国の方針の背景には、被害者が必要な支援情報を自分自身で整理し、支援につなげるための「被害者ノート」という取り組みがあります。
この被害者ノートは、2014〜2015年において当時の内閣府特命担当大臣・有村治子 氏のもとで意義が示されたものであり、
犯罪被害者等基本計画の一環として紹介されています。
参考:
内閣府時代の取り組み紹介(民間アーカイブ)
https://picoton.com/victim-notebook2014/
警察庁 犯罪被害者白書(2015)
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2015/html/zenbun/part1/s1_5_3c06.html
国交省「交通事故被害者ノート」松永さんらが感謝を伝える
https://www.youtube.com/watch?v=3EoX516y9SE
この時期、当会代表の小沢樹里は「被害者ノート」の重要性を訴え、
多分野の当事者と有識者が集う「途切れない支援を被害者と考える会」に参加し、
ノートの企画・構成を考案いたしました。
【当事者がともに創り上げた記録】
2014年から約2年間、小沢樹里と事故当事者の小沢恵生(義理妹)が共に中野区に通い、毎月片道2時間をかけ、手弁当で議論を重ねました。
そこには、殺人事件ご遺族、交通事故被害者、性犯罪被害者、DV・ストーカー被害者といった多様な当事者が参加し、
加えて、自治体職員、弁護士、記者、支援団体関係者といった専門家が力を寄せてくださいました。
行政文書に見られる難しい専門用語を避け、知識がない状況でも理解できる当事者のための言葉でまとめられたノートは、“支援が途切れない社会”をめざす大切な一歩となりました。
【支援体制の現在と未来】
現在、犯罪被害者支援は内閣府から警察庁へと移管されました。
被害直後に最初に接する機関が支援の中心となることは、現場に根ざした支援の実現に向けた重要な一歩です。
しかし、まだ道半ばです。
・二次被害対策
・子ども・家族支援
・加害者への求償制度
・心理的支援の継続
・伴走型支援体制構築
これらを確かな形にしていくため、私たちも引き続き取り組んでまいります。
【結びに】
この動きは、決して誰か一人の努力で実現したものではありません。
悲しみの中で声を上げた当事者、寄り添い支えたご家族、支援者、研究者、行政の方々、すべての方々の歩みの積み重ねによって形づくられた道です。
そして、今もなお困難の中にいらっしゃる全ての被害者・ご遺族の皆さまへ。
「あなたはひとりではありません。」
一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会
代表理事 小沢樹里
i_nokai0708 at 20:35|Permalink│Comments(0)








