修習までの流儀ヾ(´ω`=´ω`)ノ
- author: i_pan
- 2014年05月27日
第1 はじめに
僕は,検事任官を志望していますが,現時点では,任官していない状態なので,任官(裁判官の任官も含む)のための勉強について,適格なアドバイスをできるのかは,自信がありませんが,参考になれば幸いです。
なお,以下では,「過去問」という言葉が何度も出てきますが,これは,いわゆる過去問そのものではなく,修習生の先輩方が,起案の過去問を,守秘義務やプライバシーに反しない形でアレンジしたものですので,注意してください。
また,以下の見解は,裁判所等の公式見解ではなく,あくまでも,僕が感じたところを書いたものですので,注意してください。
第2 採用の条件
僕が見る限り,特に裁判官については,修習の成績(司法試験の成績)が重視されています。
この「修習の成績」とは,①民裁の導入起案+問研起案,②刑裁の導入起案+問研起案,③検察の全国一斉起案の成績のことで,成績は,高い方から順に,A・B・Cの三段階で「相対」評価がされます。
そして,裁判官志望の修習生は,基本的には,すべての成績でA評価を採る必要があります。
※用語の意味
①導入起案・・・・これは,刑裁又は民裁修習開始後,一週間ぐらい経過してから受ける試験のこと。
②問研起案・・・・これは,導入起案受験後,2週間ぐらい経過してから受ける試験のこと。
③検察全国一斉起案・・・これは,検察修習が開始されてから一週間経過後ぐらいに受ける試験のこと。
以上から,明らかなように,いずれの起案も修習開始後,すぐに受験しなければならないため,その対策については,完全に修習生に丸投げされている状態にあります。
(弁護士志望の人を除いて)修習開始前に,対策しておく必要があるのは明らかです。
もっとも,68期の修習生からは,67期とは違って,実務修習開始前に,集合修習(答練みたいなもの)の一部を前倒して,刑裁・民裁・検察起案のノウハウを伝授してくれる様です(羨ましい・・・)。
第3 方法論
1 刑裁
(1) 出題内容
導入起案も問研起案も問題は,大きく分けると,①事実認定問と②手続問から構成されています。
ア 事実認定問
①被疑者が犯人であるか否か(=犯人性という)の認定をさせる問題,②犯罪が成立するか否か(=犯罪の成否)の認定をさせる問題の,いずれか一方又は双方が出されます。
イ 手続問
これは,別名「法律問」とも言われ,刑事手続きに関する知識を問う問題のことです(司法試験みたいな問題も過去に出題されたことがあります)。
ただ,この点については,66期から出題傾向がガラリと変わり,かなり難しくなりました。
従前の問題は,例えば「当事者が,被告人に対して,書面を示して尋問する場合,裁判所の許可が必要であると定めた条文を指摘せよ」,的な,極めてeasyな問題で,サービス問題の様相を呈していたのですが,66期からは,主に,公判前整理手続きに付された事件を素材にした長文の事例問題を対象に,訴え提起~判決に至るまでの各時点における,裁判所のなすべきことを記述させる事例問題になっています。
(2) 対策
ア 事実認定問
「過去問」を素材にして,記録から事実をピックアップし,それを意味づけするという作業を繰り返すのがベストです。
市場に存在する修習本,ex:刑事事実認定50選上下等の本もありますが,これは,事実認定の際の目安となるファクターが(少し)記載されているため,有用ではあるものの,問題を解く上で一番上様な「記録から事実をピックアップして,意味づけする」というプロセスを経ることができないため,対策としては,迂遠です。
イ 手続問
僕が聴きたいぐらいです(;ω;)。
残念ながら,傾向が変わった手続問のGOODな対策方法は,今のところ模索中です。
2 民裁
(1) 出題内容
ア 導入起案
導入起案は,主に,主張整理と書証の形式的証拠力の理解を問う問題が出されます。
「主張整理」とは①訴訟物の種類,(複数ある場合にはその)個数・併合形態の指摘,②要件事実の整理(請求原因や抗弁・再抗弁を指摘させる問題と,法律要件から要件事実が導かれる過程を説明させる問題のこと)をさせる問題のことです。
「書証の形式的証拠力の理解を問う問題」とは,いわゆる「事実認定」(すなわち,当該事案における実質的争点(争いのある「主要」事実のうち、書証等により容易に認定できる争点を除いた部分のこと)を指摘させたうえ,当該事実を積極・消極方向に導く事実の指摘と・その推認過程を説明する問題)をがっつり出すのではなく,いわゆる私文書の二段の推定って何なの?という部分について,超短い事例を素材に説明させる問題のことです。
イ 問研起案
65期から傾向が変わり,先ほど説明した「事実認定」の問題「だけ」が出ます。
※かつては,問研起案でも,主張整理がメインだったのですが,傾向が変わったみたいです。
(2) 対策
ア 導入起案
主張整理の部分については,岡口先生の要件事実問題集(特におすすめ)又は要件事実30講を素材に,何度も繰り返し演習を積むことで十分点を採れます。
※僕は,両方やりました。
この主張整理の部分における「過去問」の位置づけですが,出題のレベルを把握する際の参考にするにとどめ,演習は,岡口先生の本で積むことをおすすめします。
二段の推定の理解については,大島裁判官の,「民事裁判実務の基礎下巻」の冒頭部分(又は,合格後に研修所から送られてくる「事例から考える民事事実認定」)を読めば十分いけます。
イ 問題研究起案
①まず,「事例から考える民事事実認定」(白表紙:事件記録を基に,事実認定の演習が積める超お勧め本)を3回ぐらい読む。
②次に,又は,①と並行して,大島裁判官の本に掲載されている演習問題1個をやる(※ただし,事例から考える民事事実認定の立場と大島裁判官の採用する立場が異なる部分が結構ありますので,注意してください)。
③以上を踏まえて,「過去問」に取り組む。
m
3 検察
(1) 出題内容
①事実認定問,すなわち,被疑者が,犯人であるか否かの認定(犯人性)+犯罪の成否等を検討させる問題と,②手続問(まさに、司法試験みたいな問題ex:実況見分調書の指示説明部部の証拠能力について論ぜよ的な問題)で構成されている。
(2) 対策
ア 事実認定問
「過去問」に取り組むのがベストである。それ以外は,ない。
ただ,刑裁における事実認定の方法論の応用が効くため,あまり心配しなくても大丈夫でしょう。
イ 手続問
「検察演習問題」という白表紙があり,これを読めば十分です(読まなくても,司法試験における刑事系についての理解がある人なら,特段対策不要)。
以上で終わりになりますが,修習予定者の方々の参考になれば,幸いです。
- i_pan at 18:30
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この記事へのコメント
i-panさん
いつも、ブログを読ませて頂いてる者です。私は、今年の司法試験を受験したのですが、全く手応えが無く、もう一年だけ、反省を踏まえて受験しようと考えています。敗因は、i-panさんも強調されていた時間管理に対する甘さです。再現して答案構成的な物を作って客観的に見ているのですが、やはり時間不足でほとんど三段論法の体をなさず、作文もどきの答案であったと気付かされました。
二回目は、時間管理を意識した答案構成や起案の訓練を中心に計画を組もうと考えています。
そこで、勉強方法についてお聞きしたいのですが、i-panさんは、二回目の司法試験対策として、ゼミを組まれましたか?また、予備校の答案練習会に参加されましたか?ブログを拝見している限りでは、お一人で答案構成をされていたと思うのですが、教えて頂ければ有難いです。
長文になって申し訳ございません。
その「岡口先生」にTwitterで紹介されていますよ〜
https://twitter.com/okaguchik/status/471570553896050689
なおきさん。
まだ結果が出ていない段階で、「何がダメだったのか」が分かっているだけでも、なおきさんにとって、一度目の司法試験を受けたかいがありましたね(^^
なおきさんが、仮に不合格だった場合を想定して、質問に回答させていただきます。
①予備校の答練を受けたか
僕は、辰巳が提供する答練を、9月~3月の全国模試も含めて、すべて受講しました。
※論文の流儀で、書いたように、僕にとっては、答練は、必須でした。
②ゼミを組んだか
僕は、在学中から、浪人時代も含め、一度もゼミを組みませんでした。
※なお、一度目の司法試験に落ちたときの敗因分析も、すべて自分だけでやりました(他人にアドバイスを求めたことがない)
その理由は、仮にアドバイスを求めた場合、「基本書を通読しろ」とか、「判例百選をよめ」などと、僕にとっては、到底受け入れがたいアドバイスをされるのが、目に見えていたからです。
仮に、このアドバイスを受け入れて、2度目の司法試験挑んでいたら、十中八九落ちていたと思います。
この様に、方法論は、人それぞれなので、なおきさんが、仮に、不合格だったとしても、自分の方法論がすべて間違っていたと考えないで欲しいです(^ω^
m
i-panさん
お返事有難うございます。私が、i-panさんのブログを見つけたのが最近なこともあって、「論文の流儀」という記事を拝見していませんでした。そちらで既に予備校の答練の受講について書かれていましたね。よく過去の記事を調べないで質問してしまい申し訳ございませんでした。
私は、今年の司法試験の受験において、様々な合格者の方から「ゼミで互の答案を検討せよ」「判例百選を解説を含めて全て潰せ」「予備校の答練の問題は質が悪く、論点主義に陥るから受けない方が良い」「基本書は6回以上読め」など様々なアドバイスを頂きました。それが全て合格に必要と思い込んで、全てをやろうとして消化不良に陥ってしまった側面が否めません。
i-panさんがおっしゃるように勉強方法は人それぞれ様々なはずですので、2回目は、周囲に惑わされずに自己流でいこうと思います。i-panさんや他の方の勉強方法もいろいろ盗んで試行錯誤しながら勉強します。ゼミも周囲が集まってやっていて取り残されたと感じ、不安になることも時々あったのですが、自己に不要なゼミは無理に参加しないことに決めました。
2回目を受けるからには、上位合格したいので、6月から心機一転、受験生に復帰することにします。勉強時間が肝だとi-panさんもおっしゃるように、平成27年度司法試験受験生で一番勉強したと自負できるくらい勉強時間を確保しようと思います。絶対にこの悔しさを晴らして、i-panさんにも良い報告ができるように努力します。
またまた長文になってしまい、申し訳ございません。有難うございました。
i-panさんも、素晴らしい検察官になって下さいね。ご活躍を期待しています。
なおきさん。
そんな謝る必要なんてないですよ!(^ω^;
流儀シリーズをしっかりと整理していなかったので、過去の記事を見つけられなくても仕方ありません。
さおきさんも、自分流を貫いて合格してください。
ただ、勉強の過程で、自分の方法論が正しい方向を向いているのかの検証は、必ずしてください。
※なお、検証の方法として手っ取り早いのが、答練だと思いますので、答練を受講するという選択肢も考えていいと思います。
通りすがりさん。
アクセスカウンターが異常なまでに上昇してるので、
なんでだろう、と思っていたのですが、
なんと、あの岡口裁判官が僕のブログを・・・!!
光栄です(^^
左陪席や同期の修習生を見てる感じだと、任官希望に検察一斉起案の成績はあまり関係ないと思います。
67期さん
各々の教官が採る立場によって、裁判官採用の基準には、若干のズレがあると「思って」います。
その点を、今回の記事の中で、「基本的には」、すべての成績でA評価を採る必要がある、という記載で表現したつもりでしたが、伝わりにくかったかもしれません。
はじめまして。ブログの記事、大変参考になります。
私は、憲法に対する苦手意識が強く、憲法を集中的に勉強したいのですが、i-panさんがベース問題集として使われていた憲法の演習書があれば教えてください。
修習でお忙しいと思いますが、お時間があるときに回答よろしくお願いします。