2015年08月06日

平和宣言【平成 27 年(2015 年)広島市長 松井 一實氏】 
広島市は毎年8月6日に、原爆死没者への追悼とともに核兵器廃絶と世界恒久平和の実現 を願って平和記念式典を行い、広島市長が「平和宣言」を世界に向けて発表しています。 広島・長崎の悲惨な体験を再び世界の人々が経験することのないよう、核兵器をこの地球 上からなくし、いつまでも続く平和な世界を確立しようと、これからも平和宣言は訴え続 けていきます。

平 和 宣 言 

私たちの故郷(ふるさと)には、温かい家族の暮らし、人情あふれる地域の絆、季節を彩る 祭り、歴史に育まれた伝統文化や建物、子どもたちが遊ぶ川辺などがありました。1945 年 8 月 6 日午前 8 時 15 分、その全てが一発の原子爆弾で破壊されました。きのこ雲の下には、 抱き合う黒焦げの親子、無数の遺体が浮かぶ川、焼け崩れた建物。幾万という人々が炎に 焼かれ、その年の暮れまでにかけがえのない 14 万もの命が奪われ、その中には朝鮮半島や、 中国、東南アジアの人々、米軍の捕虜なども含まれていました。 辛うじて生き延びた人々も人生を大きく歪められ、深刻な心身の後遺症や差別・偏見に苦 しめられてきました。生きるために盗みと喧嘩を繰り返した子どもたち、幼くして原爆孤 児となり今も一人で暮らす男性、被爆が分かり離婚させられた女性など――苦しみは続い たのです。 「広島をまどうてくれ!」これは、故郷(ふるさと)や家族、そして身も心も元通りにしてほ しいという被爆者の悲痛な叫びです。 広島県物産陳列館として開館し 100 年、被爆から 70 年。歴史の証人として、今も広島を見 つめ続ける原爆ドームを前に、皆さんと共に、改めて原爆被害の実相を受け止め、被爆者 の思いを噛みしめたいと思います。 しかし、世界には、いまだに 1 万 5 千発を超える核兵器が存在し、核保有国等の為政者は、 自国中心的な考えに陥ったまま、核による威嚇にこだわる言動を繰り返しています。また、 核戦争や核爆発に至りかねない数多くの事件や事故が明らかになり、テロリストによる使 用も懸念されています。 核兵器が存在する限り、いつ誰が被爆者になるか分かりません。ひとたび発生した被害は 国境を越え無差別に広がります。世界中の皆さん、被爆者の言葉とヒロシマの心をしっか り受け止め、自らの問題として真剣に考えてください。 当時 16 歳の女性は「家族、友人、隣人などの和を膨らませ、大きな和に育てていくことが 世界平和につながる。思いやり、やさしさ、連帯。理屈ではなく体で感じなければならな い。」と訴えます。当時 12 歳の男性は「戦争は大人も子どもも同じ悲惨を味わう。思いや り、いたわり、他人や自分を愛することが平和の原点だ。」と強調します。 辛く悲しい境遇の中で思い悩み、「憎しみ」や「拒絶」を乗り越え、紡ぎ出した悲痛なメッ セージです。その心には、人類の未来を見据えた「人類愛」と「寛容」があります。 人間は、国籍や民族、宗教、言語などの違いを乗り越え、同じ地球に暮らし一度きりの人 生を懸命に生きるのです。私たちは「共に生きる」ために、「非人道性の極み」、「絶対悪」 である核兵器の廃絶を目指さなければなりません。そのための行動を始めるのは今です。 既に若い人々による署名や投稿、行進など様々な取組も始まっています。共に大きなうね りを創りましょう。 被爆 70 年という節目の今年、被爆者の平均年齢は 80 歳を超えました。広島市は、被爆の 実相を守り、世界中に広め、次世代に伝えるための取組を強化するとともに、加盟都市が 6,700 を超えた平和首長会議の会長として、2020 年までの核兵器廃絶と核兵器禁止条約の 交渉開始に向けた世界的な流れを加速させるために、強い決意を持って全力で取り組みま す。 今、各国の為政者に求められているのは、「人類愛」と「寛容」を基にした国民の幸福の追 求ではないでしょうか。為政者が顔を合わせ、対話を重ねることが核兵器廃絶への第一歩 となります。そうして得られる信頼を基礎にした、武力に依存しない幅広い安全保障の仕 組みを創り出していかなければなりません。その実現に忍耐強く取り組むことが重要であ り、日本国憲法の平和主義が示す真の平和への道筋を世界へ広めることが求められます。 来年、日本の伊勢志摩で開催される主要国首脳会議、それに先立つ広島での外相会合は、 核兵器廃絶に向けたメッセージを発信する絶好の機会です。オバマ大統領をはじめとする 各国の為政者の皆さん、被爆地を訪れて、被爆者の思いを直接聴き、被爆の実相に触れて ください。核兵器禁止条約を含む法的枠組みの議論を始めなければならないという確信に つながるはずです。 日本政府には、核保有国と非核保有国の橋渡し役として、議論の開始を主導するよう期待 するとともに、広島を議論と発信の場とすることを提案します。また、高齢となった被爆 者をはじめ、今この時も放射線の影響に苦しんでいる多くの人々の苦悩に寄り添い、支援 策を充実すること、とりわけ「黒い雨降雨地域」を拡大するよう強く求めます。 私たちは、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるとともに、被爆者をはじめ先人が、 これまで核兵器廃絶と広島の復興に生涯をかけ尽くしてきたことに感謝します。そして、 世界の人々に対し、決意を新たに、共に核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて力を尽 くすよう訴えます。
平成 27 年(2015 年)8 月 6 日 広島市長 松井 一實

世界恒久平和の実現を心より願います。 
市本貴志 拝




市本貴志ichi2429 at 23:30│コメント(0)

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