IMAG1811

Yui はわが家に来て羽根を伸ばす。
大きな紙に絵を描いて壁に貼った。
紙の上端にはタイトルが書いてある。
「おばあちゃんとおじいちゃんの家ちず」

三角屋根の家は1Fと2F(原文のまま)に分かれていて、それぞれドアや窓が付いている。
位置関係は正しいが、平面図にはなっていない。
「おばあちゃんのへや」「キッチン」「リビング」「おじいちゃんのへや」「くつをおくところ」などが四角い形で壁にくっついている。
──はは、これはおもしろいぞ

Yui が帰ったあとで、わたしはその家ちずに密かに描きこみをした。
小さく、ちょっと見には気づかないようにさりげなく。

とんがった屋根のてっぺんにはかかし
屋根裏の隅にネズミ
ついでにクモの巣とクモ
キッチンにはおだんご
軒先にテルテル坊主
エトセトラ、エトセトラ

Yui がまた来たとき、真っ先に家ちずを見て素っ頓狂な声を挙げた。
「きもちわる~いッ!」
「ものおき」の中にゲジゲジが描いてあったのだ。
Yui は虫が苦手だ。
知ってて描いたのではないのだが。
仕方がない、全部消した。

あとで判ったことだが、Yui はゲジゲジはいやだったが、他のものはそれほどでもなかったようで、
帰るときにおばあちゃんに伝えたらしい。
ち絵おばあさんが言うには
「『また描いていいよ』だって」
そうか、そうか、それじゃあ、
となってまた描くことにした。

家ちずの前を通るたびに一つか二つ。
例えば
おばあちゃんのへやから突き出ている生きたタコが取りついたおばあちゃんの頭
屋根のてっぺんの風見鶏
部屋のあっちとこっちから突き出ている足
釣りあげられて暴れている魚
「くつをおくところ」に散らばっている泥だらけのアシアト
屋根から手が出てたこ糸が伸びて、その先に風に舞う凧
窓から覗く黒い帽子をかぶったのっぺらぼう
そのほか猫だのアリだの
ゲジゲジは面白いのだが、嫌われるからやめた。

実はこのちず、玄関から入って真ん前の壁に貼ってあるものだから、一番目に付くところだし、その場所は何やらジンクスがらみだからち絵さんが気にしている。
(鏡や絵を飾ってはいけないと)
「あれをリビングの壁に移したいんだけどいいかしら」
わたしは返事をしなかった。

こっそり描きこみをするのにいい場所だし。