N160
  〈 銅版画  N160 日の当たる玄関で 2009〉

ウォーキングカーに腰かけて娘の園芸を見ている年老いた義母。
外は陽光が溢れている。

このとき義母92歳。
視線の先にあったのは住み慣れた故郷の庭だったかもしれない。

短い期間だったが、義母がわが家で暮らしていたときのこと。
ち絵さんが外出して、わたしと義母と二人だけのときがあった。
義母が散歩に出たいと言うので、家の周りを歩いてみることにした。
義母はウォーキングカーで歩いた。
道路に出てすぐ、ウォーキングカーが急に先に進み、義母は押さえていた手を離さなかったから、身体がつんのめってしまった。

路面に顔を打ち付けて鼻血が出た。
わたしはあわてた。
どうしたらいい。
とそこへ、運よくち絵さんの車が近づいてきたのだ。
助かった!

すぐに自宅に引き返し、ち絵さんに手当してもらった。
義母はウォーキングカーに慣れていなかったので、咄嗟の時にブレーキを掛けることができなかった。
とは言え、そういう緊急事態の時にわたしの対応がお粗末だったのは認めざるを得ない。
せめてティッシュとかタオルハンカチぐらい持ってなければ、と思った。

少し心が痛い思い出だ。