2007年04月24日

偶然の母の写真


偶然撮れた写真で大喜びしているのが、うちの母。



美人でもなければ写真映りがいいわけでもない。

だた偶然が重なっただけのことだと思うのだが。

初めは15年くらい前のこと。



近所の男の子が高校球児となり、夏の甲子園に出場したことがあった。

親御さんは大喜びで応援バスをチャーターし、

地区から観光バス3台、総勢200人くらいで出かけた。



すでに一人暮らしをしていた私は行かなかったが、人が集まるところに行くことが何より楽しみな母は近所のおばさんともちろん参加した。



帰ってきた母から、初めて甲子園に行った感想を電話で延々と聞かされて辟易したのを覚えている。

翌日も早朝からまた電話で起こされた。



地元の新聞に母の写真が載っているという。

急いで紙面を送ってもらったが、そこには、母がタオルを首にかけ、すごい顔で応援している写真がカラーで掲載されていた。



応援していたチームに得点が入り、大喜びしているところを偶然に撮られた写真だと思うが、迫力満点だった。

母はいたく感激したらしく、その日の新聞は今でも実家に大切に取ってある。



その後も、地元で開催されるイベントにかなりの割合で出かけていた母は、

「熱心に雛人形を見る観光客」

とか、

「興味深く遺跡を巡る参加者」

などさまざまなコピーとともに地元紙の紙面に載った。



「偶然とはいえ、同じ新聞にこんなに何回も載る人っているかしら?」

というのが、母の唯一の自慢らしい。



初めて写真が載ってから15年。

今では、近所に子どもがいなくなり、イベントもなくなった。



実家に帰ると、

「あの子は今どうしている」

「皆が集まっていたあそこはもうなくなった」

など懐かしい話ばかり。



そのかわりにお年寄りが多くなり、見たことがない人も増えて寂しくなるばかりだ。



しかし、件の母だけはすこぶる元気で、さらにパワーアップしている。

テレビや新聞を情報源にして、いまだにあちこち出かける毎日だ。



過疎化が進み、新聞やテレビに取り上げられることが少なくなったせいか、最近母が出て行く場所は記事にならなくなった。

写真も紙面に載らない。



近いうちにまた母の写真が載らないかなあ。

もし、今度昔みたいに偶然撮られた写真が新聞に載ったら、それを見ながら今度は私も一緒に喜んであげたいなあと思っている。



メイクやヘアスタイルを今でも気にする母。



おしゃれしながら出かける母が、偶然撮られた写真が掲載されることを一番楽しみにしているのかもしれない。



ichiha_ra at 08:26│clip!