火星ダーク・バラード火星ダーク・バラード」 著:上田 早夕里 
『魚舟・獣舟』の書き下ろし中編「小鳥の墓」を読んでから、またこの物語を改めて読み返したくなったのだが、
どうせ読むならオリジナルバージョンを、と。
購入済みの文庫版ではなく、加筆前の単行本版を読む。
※思いっきりネタバレなので、未読の方はご覚悟を、、。
文庫版の著者あとがきに書かれていたように、、、オリジナル版と加筆版で大きく変わったのは、主人公・水島の年齢設定だ。

すなわち、文庫版で40歳となっていた水島は、この版において30歳。
、、、10歳も若いのである。

それだって、ヒロインの少女・アデリーンとは15歳の年齢差。
じゅうぶんに年の差カップルじゃないか、、、っていう見方もあるかもしれない。

というか、若い読者の方から見たら、30歳も40歳さんも、オヤジであることにそう違いはないじゃないか、、、って思えるだろうな。

けど、実際、その年齢を通り越した者からみると、、、
30歳と40歳では、大違いなのである。

まぁつまり、30歳という年齢は、、、そりゃあ十分にアイデンティティも確立したオトナといえると思う。
けれど、いちどその、アイデンティティを揺るがすような大きな出来事に遭遇した場合、、、その自己のアイデンティティを根本からアップデートしようと思うだけの若さがある。

しかし40歳では、根本を変えるのは無理だ。
それまでの人生の年月において築きあげてきた自己を、まったく継承せずにアップデートをかけることは難しい。

、、、そういう年齢なんだと思う。


なので、40歳の水島は、30歳の水島よりもシャープな輪郭を持っている。

アデリーンに抱く感情の種類は似ていても、その感情の処理の仕方が異なってくる。
、、、ということで、ラスト・シーンも当然かわってくる、というわけだ。


ぎゃくに30歳の水島が選んだラスト・シーンは、、、青春の名残のあやふやさ、というか瑞々しさ、、、みたいのを感じるので、
それはそれでアリなんだと思う。


う〜ん、、、これはもう、同じストーリィでよく似てはいるだけど、違う話になっている、という感じでしょうか。



●関連リンク
拙宅記事(文庫版感想) →読了:『火星ダーク・バラード』

Anima Solaris(アニマ・ソラリス)」さんの関連記事 ...とても興味深い記事です。参考になります♪
→著者インタビュー/ 2004年1月 『火星ダーク・バラード』 上田早夕里先生
→ブックレビュー/ 2008年12月 『火星ダーク・バラード』