去年暮れから今年にかけてのストーブリーグは、ドライバー以上にチーム代表がシャッフルされるという稀な動きがあり、大きな驚きと共に期待と不安が渦巻いている状態です。
まず先陣を切ったのが、フェラーリのチーム代表とテクニカル・ディレクターを務めていたマッティア・ビノット氏で、30年近く勤めてきたフェラーリを去りました。
意見はいろいろありますが、個人的に今回の辞職は仕方ないように思います。エンジニアとしては優秀であるものの、チームを引っ張るリーダーとしては明らかに適していなかった。チームがミスをした時の言動はもちろん、遡るとベッテルがチームを去ことになった時の態度、さらにはチーム代表に就任した際の動き(あくまで漏れ聞こえるウワサではありますが)に、腑に落ちないものを感じていたのが正直なところ。そんな印象を抜きにしても、今の時代にチーム代表とテクニカルディレクターを兼任していたこと自体がいかがなものかと。
ビノットさんが辞めることでチーム内がざわつくというデメリットはあるのでしょうけど、それよりも彼がチームにいつづけられる状況ではなかったのでしょう。
とはいってもビノットさんはPUに関する造詣が深いので、ガーデニング休暇後は、新規参入を目指すチームから引く手数多なんじゃないでしょうか。ただ大人しそうに見えてかなりの野心家っぽいので、テクニカルディレクター的なポジジョンでは満足しないような・・・・。
さて、ビノットさんに替わってチーム代表に就いたのが、アルファロメオのチーム代表だったフレデリック・バスール氏。彼はレース屋さんなので無茶なことはしないと思いますが、フェラーリのようなトップチームで、しかもクセが強い組織で力を発揮できるのかは謎。ただ、今のところフェラーリのユニフォームが似合っていないことだけは間違いありません。
ビノットさん解任からのバストールさん就任は既定路線でしたが、マクラーレンのチーム代表を務めていたアンドレアス・ザイドル氏がチームを離れ、アルファロメオのCEOになったのはビックリでした。
ザイドルさんはリーダーとしての資質を備えた“出来る人”で、彼がマクラーレンに加わってから、みるみるうちにチームが良くなっていったのは周知の通り。そんな彼をチーム上層部は離すわけはないと思っていたのですが、水面下では前からアウディと交渉が行われていた様子。しかし、そこはザイドルさん。良きタイミングでマクラーレンに事情を伝え、スムーズに移籍。やはり、出来る人です。ただ、マクラーレンとしてはザイドルさんの離脱はイタい。
彼の後を引き継ぐのは、フェラーリ、マクラーレンでキャリアを積み、ザイドル体制を支えていたアンドレア・ステラ氏。彼はエンジニア出身で、堅実に仕事をするタイプのよう。組織の再構築真っ只中のマクラーレンにとってはベターな人選だと思います。
つづいて、これも驚かされたのが、ウイリアムズのCEOとチーム代表を兼任していたヨースト・カピート氏の辞職。彼もザイドルさんと同じくリーダーとして“出来る人”で、ウイリアムズ再建でいい仕事をしてくれると期待していたので残念です。
オーナーの投資会社ドリントン・キャピタルはチームを高く売るために、相当せっかちに結果を求めるなと思っていたら、メルセデスでモータースポーツ戦略担当を担っていたジェームズ・ボウルズが後任に。しかもガーデニング休暇なしで。
これはアルファロメオからフェラーリに移ったバストールさんと同じなわけで、要するにウイリアムズはメルセデスのBチームの色合いを濃くしたことを表しています。
メルセデスとしては、現在PUを供給しているアストンマーティンは何やらストロールパパが本気でタイトルを狙えるチームをつくろうとしているし、マクラーレンは将来どういう立ち位置を考えているのかイマイチわからないし、今のうちに自陣強化を図っておこうという考えなんでしょう。
一方ドリントン・キャピタルは、メルセデスと手を組むことが手っ取り早く成績を上げる(チームの価値を上げる)手といったところでしょうか。この先、いつ・誰にチームを売るのか見ものです。
どちらにしても、すべてのチームに求められるのはレース結果。その舵取りをするチーム代表の仕事ぶりは今シーズン以降の楽しみです。