KITSCH de F1

F1徒然日記。

アゼルバイジャン&カナダGP〜レッドブル独走状態に

20220629

加齢のせいでどんどん記憶力が頼りなくなり、ちょっと前に行われたアゼルバイジャンとカナダのレースのことも、はっきりと覚えていない状態ではありますが、レッドブルが独走状態になっていることだけはハッキリと認識しております。

勝てる時にしっかり勝ちきるレッドブルとフェルスタッペンの強さは、抜きん出ていると言わなければなりません。中長期的な計画に基づいてチーム体制の構築とマシン開発を行い、レース毎に綿密な戦略を練って実行し、結果に結びつける。あまりにも自分と真逆過ぎて笑えてくるほどです。
とびっきり優秀な人材が集まるF1においても、こうしたプロセスを高次元で実行できるのは、今のところレッドブルとメルセデスだけじゃないでしょうか。残念ながら、そこにフェラーリは含まれておりません。確かに昨シーズン1年を棒に振りながらも、今シーズン戦えるマシンをつくってきたことには、トップチームの底力を感じました。
が、同時に現代F1において急激な成長は至極むずかしことも実感することに。マシンに関しては、パワーアップのためにPUにかなりの負荷がかけてしまっているのは間違いないでしょう。
さらに、チームもシーズン序盤はマシンの優位性で目立たなかった“俺たちのフェラーリ”が、レッドブルに追い上げられたせいで顔を出すようになってきています。マシンの質向上と同じくらいに、いや、それ以上にチームの質向上はむずかしいんですね。

このあたりに関して、チーム代表を務めるマッティア・ビノットさんは得意でない雰囲気が漂っているので心配です。お家芸の内紛がはじまってもオロオロするばかりで、最後は人のせいにするような・・・・・。パニック映画で登場する、さんざん人のせいにした挙げ句、悲惨な最期をむかえるキャラにかぶってしまいます。(ビノットさんファンの方、申し訳ございません!)

チームとドライバーは運命共同体とはいうものの、今シーズンこれまでチームがやらかしたこと(これからやらかすこと)を考えると、ルクレールがかわいそうになってきます。彼が今シーズンに犯したミスは、エミリア・ロマーニャGPでのスピンくらい。後は本当にマシンの力をフルに発揮している。なのにドライバーズランキングでペレスに負けていて、ラッセルやサインツに迫られているって、相当チームが足を引っ張ってますよね。
一見、線が細く見えるルクレールですが、メンタル面は結構図太く、気持ちの切り替えもできるタイプのように感じるので、巻き返してシーズンを盛り上げてくれることを期待しています。

さて、このところ話題になっているのが、ポーパシングに関するレギュレーションの再検証。これは、ポーパシングとバウンシングに苦しんでいるメルセデスのアピールがきっかけになっていると思われますが、少なくともトト・ウォルフさんの今回の言い分は都合が良すぎるように感じます。
レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーさんが言うように、ポーパシング問題にうまく対処しているチームもあるわけで、メルセデスもポーパシングを解消したいなら、車高を上げれば済む話。完全に安全性をだしにして、自分のところのパフォーマンス改善につなげようとするやり方は、カッコいいものではありません。ただ、結果が求められるチームとしては、やれることはすべてするでしょうし、レッドブルやフェラーリだって同じ立場になれば同じようにアピールするでしょう。

FIAは、ポーパシングに関しては基本的にチーム側で対処すべき問題とし、根本的に改善すべき点があるかは今後検証していくという、真っ当な姿勢を示している様子。
これに驚いたのが、言い出しっぺのメルセデス。もし、ポーパシングによる振動の度合いに対して規制されることになれば、さらに自分のところのパフォーマンスにデメリットが生じる可能性がある。それで、慌てて「うちはグラウンドエフェクトによるポーバシングの問題は解決した。問題はサスペンションによるバウンシングである」みたいなコメントを出しました。
こうしたやりとりも、ちょっと引いてみると滑稽で、かわいらしさすら感じてしまいます。どうやったってロビー活動はなくならないのですから、こうした水面下での攻防戦もF1の一部として楽しんだ方が得な気がします。

モナコGPやっぱりフェラーリはフェラーリのままだった

20220605

まずは、伝統のモナコGPで勝利をおさめたレッドブル〜ペレス、誠におめでとうございます!
刻々と変わる状況に応じて、瞬時にベストな判断を下すことが求められるなか、すべてをミスなく遂行した素晴らしい勝利でした。前戦のスペインでは、チームからフェルスタッペンを勝たすための戦略を押しつけられた感もあったので、今回の喜びはひとしおでしょう。そして、ご褒美として契約2年延長をゲット! マクラーレンを1年でお払い箱になった時、まさかここまでキャリアを積み重ねるとは思いませんでした。人生あきらめてはいけませんね。

一方、ペレスの契約延長によって事実上レッドブルへの昇格がなくなったガスリーにとっては、最悪の展開となりました。契約が残っているアルファタウリで、もう1年契走りつづけるのはメンタル的にきびしいでしょう。もし来年もアルファタウリで走ることになったら、ペレス先輩をお手本にして、ふてくされずにがんばってほしいものです。

さて、ペレスのお祝いが終わったところで、フェラーリです。スペインではルクレールが圧巻のポールで、決勝でも楽勝の展開に持ち込みながら、PUトラブルでリタイヤ。あれだけあったポイント差もあっという間に消滅し、ドライバーズランキング首位から陥落という最悪の結果でした。そんな悪い流れでも、低速コーナーが大半のモナコではフェラーリが有利とされ、巻き返しが期待されていました。
がしかし・・・・、決勝日の天気が雨と予測されているのを知った瞬間から、イヤな予感はしておりました。それは、ルクレールが順当にポールを獲っても消えませんでした。“イヤな予感”とは、もちろんドライバーがミスしてウォールの餌食になることではなく、チームの戦略がこんがらがってレースを台無しにすることです。で、案の定しっかりと“俺たちのフェラーリ”を実行してしまいました。

決定的なミスは、16周目にペレスがフルウェットからインターミディエイトに履き替えた時の対応の遅さ。ペレスを抑えるのであれば、17周目にルクレールを入れなければならないところを18周目に呼び入れ、まんまとアンダーカットされてしまう。
「どうしょ、どうしょ」と慌てて判断が遅れるのはお馴染みのパターンですが、17周目に入らなければアンダーカットされるのは分かっていたのだから、対応が1周遅れた時点で真っ正直に18周目に入れるのではなく、サインツと同じようにステイした方がよかったと思うのですが。

さらに、インターからドライ〜ハードへの交換では、周回遅れのラティフィに邪魔されたこともあり、サインツがペレスにオーバーカットされただけでなく、ルクレールもフェルスタッペンに前に出られてしまうことに。
状況的に2台連続でピットインさせたのは仕方ないにしても、ブレブレの無線指示はいかがなものか。そら、ドライバーにしてみたら、あのタイミングで変えられたらキレるわ。結果はひとまず置いといて、ああいう時にズバッと言いきれる人がいないのがフェラーリの弱み。
レッドブルにしてみれば、ペレスを使って揺さぶりをかけたら「ビンゴ!!」という感じでしょう。これがメルセデス相手なら、また違う結果になっていたんじゃないでしょうか。
う〜ん、この調子だと、フェラーリはまだまだ“俺たちの”を発動しそうです・・・・。

そして、ふとランキング表を見ると、今回ペレスが優勝したことで、ドライバーズランキングの上位3位が大接近。ここはひとつペレスにはチャンピオンを狙って、忖度なしでバチバチやってほしい。

エミリア・ロマーニャGP〜フェルスタッペンの逆襲

20220428

強いレッドブルが戻ってきた! ライバルのホームであるイタリア〜イモラで!!
今回のレッドブル〜フェルスタッペンの勝ちっぷりは、「タイトル争いはこれからやで!」というメッセージを突きつける狼煙となりました。

実はわたくし、前戦のフェラーリ〜ルクレール圧勝を目の当たりにし、今回も優勝は手堅いと予想しておりました。予選でフェルスタッペンがポールを獲ってもまだ、赤旗が出なければルクレールがポールだったと思っておりました。
しかし、スプリントレースで先頭を走るルクレールをフェルスタッペンが攻め落とした辺りから、「あれっ?!今日は牛さんの方が速いかも」という気配が。それは、予選でしくじり気味だったペレスが順位を上げていたことからもうかがえました。しかもタイヤの保ちはレッドブルの方が良く、レースになればさらに有利になると考えられました。

レースはちょい濡れのコンディションで、スタートするとフェルスタッペの一人旅状態。ペレスも一度はルクレールにオーバーカットされたもののすぐに抜き返し、1-2フィニッシュ! 大量点を稼ぎ、フェラーリとの差をグッと縮めました。
そうなんです。もともとレッドブルにトラブルさえなければ、ドライバーズタイトル、コンストラクターズタイトル共に、一進一退のデッドヒートだったんです。まぁ、そんなことを言ったら身も蓋もありません。シーズンはこれから。この様子だと終盤までタイトル争いはもつれそうですね。“俺たちのフェラーリ”が発動されなければ・・・・。

フェラーリはこれまでの3戦、落ち着いた“らしくない”戦いぶりでしたが、今回は本来の持ち味であるドタバタぶりを発揮。まずは予選でサインツがクラッシュ。レースでもリカルドに当てられ、早々にリタイヤ。彼は悪い流れがなかなか断ち切れませんね。応援しているドライバーの一人なので、何とか復調してほしい。
そして今回はルクレールもやっちゃいました。着実に3位でフィニッシュすべきところを、攻めすぎてスピン。結果的に7ポイントをロスすることに。
しかし個人的には、あの時ルクレールはペレスに対してDRS圏内まで迫っていたので、オーバーテイクを仕掛けたこと自体はOKだと思います。今回はうまくいかなかっただけ。ティフォシやイタリアのメディアもご愛嬌といったところじゃないでしょうか。ただ、もう一回同じミスをしたら大騒ぎになるのは間違いありません。でもまぁ、ルクレールはぱっと見、繊細な印象を受けますが、なかなかどうして、心臓に毛が生えているタイプなので、これで萎縮することはないでしょう。

ドライバーのミスで目立たなくなっていますが、チームも予選のQ3でルクレールを温存させる作戦を採ってポールを奪われたり、レースの終盤レッドブルをかき回すためにピットインさせたところノリスに交わされてしまったり、“俺たちの”の片鱗を見せていました。レッドブルと最後まで盛り上げてもらうために、もう一度引き締めてほしいところです。

中団勢で良い走りをしたのは、ノリス、ラッセルの若手組。マグヌッセン、ボッタスのベテラン組も好調をキープ。
マクラーレンの開幕戦での絶不調は、テストでのトラブルで調整が遅れたことが原因で、マシン自体はそこそこと見ていいんでしょうか?
ラッセルは今回もハミルトンを上回る好走。彼はフェルスタッペン、ルクレールと共に次の時代を築く逸材なので、今の結果に驚きはありません。マシンが改善されれば、あッと驚く走りを見せてくるでしょう。
マグヌッセンも若い時分のやんちゃキャラが好きで、ドライバーとしての腕前も関脇レベルはあると思っているので、これからもレースをおもしろくしてくることを期待しています。

オーストラリアGP〜ルクレール独走体勢へまっしぐら

20220418

今シーズンの3戦目となるオーストラリアGPは、新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催ということで大盛りあがり。確かオーストラリアは感染対策厳しめだったと思うのですが、ほとんどの観客はマスクをしてなくてビックリ。国民性の違いを改めて実感しました。日本も早くマスクなしで出歩けるようになってほしいものですが、なかなか元通りにはならないでしょうね。

さて、レースの方はというと、フェラーリ〜ルクレールの圧勝という結果に。レッドブル〜フェルスタッペンと接線になると思っていたのですが、予想外にマシンの戦闘力的に差があり、ちょっと太刀打ちできない状態でした。しかもマシントラブルでリタイヤという、最悪の結果になりました。これで早くも2戦リタイヤ。レッドブルが信頼性の面で深刻な問題を抱えているのは間違いありません。
ポイントもトップをひた走るルクレールと46ポイントのギャップが・・・・。まだまだ何が起こるか分かりませんが、タイトル争いで苦しい出だしになってしまいました。

それにしても、今年のルクレールは隙なしの完璧な走りをしていますね。以前はイケイケドンドンな感じで、強引な走りをして「あ〜ぁ・・・・」ということもありましたが、レースウィーク全体をコントロールできるようになったように感じます。
でも、実は昨シーズンも地道にポイントを積み重ねていたんですよね。ポールを獲ったモナコGPをはじめ、ビッグポイントをゲットするチャンスに限ってトラブルが発生するなど不運に見舞われたのに、チームメイトのサインツとほぼ同じポイントを獲得していたわけですから。逆にサインツはコツコツとポイントを取るイメージがありますが、去年は表彰台に登ったレースで荒稼ぎしていました。意外です。
ルクレールは、ようやく戦えるマシンを手にして、いよいよ才能開花というところでしょうか。今のところ苦戦しているサインツはだんだん焦りが出てきて、今回のミスにつながってといえなくもありません。そういう目で見るせいか、今年は不機嫌な顔をしていることが多い気がします。このままルクレールが独走すると盛り上がりに欠けるので、サインツの巻き返しを期待しています。

その他には、マクラーレンが復調の兆しを見せたり、アルピーヌ〜アロンソが速さを見せつけたり(この人、ホンマにスゴイな)、地力のあるチームがいるべきところに戻ってきた印象を受けました。まだまだ中団勢はレース毎に激しく変動しそうですが、シーズンが進むにつれて今回のレースのような順列に落ち着いてくるように思います。
メルセデスはフェルスタッペンのリタイヤもあり、ラッセルが表彰台に登ったものの、トップチームに追いつくのはむずかしい雰囲気。それにしてもマルコ爺さんのテスト時の予想、まったく当たっとらんな。まぁ、それはいつものことか。

サウジアラビアGP〜フェルスタッペンvsルクレール、至極のバトル

20220402

午前2時レース開始という50オーバーにはつらい状況ながら、がんばって観戦してよかったと思えるレースだったサウジアラビアGP。トップのフェルスタッペンと2位のルクレールとの差は僅か0.549秒。しかも抜きつ抜かれつのバトルもあり、まさに至極のレースでした!

まず、予選ではペレスが史上最遅のポール獲得というサプライズ。ただペレスはフリー走行からずっとフェルスタッペンよりも乗れている感じで、フェルスタッペンを上回ってもおかしくない気配はありました。にしても、まさかポールを取るとはお見事です!
開幕戦を1-2で飾ったフェラーリは、タイプの違う今回のコースでも好調。強さが本物であることがうかがえます。ルクレールとサインツの戦いも熱を帯びてきて見応えがありますね。サインツが予選でチームメイトに負け、あそこまで悔しさを前面に出すことって、これまであまりなかったような・・・・。
ハミルトンのQ1敗退も大きな驚きでした。マシントラブルとかアタックのタイミングを逃したとかではなく、普通に走って通過できず、さらにラッセルはQ3に進み6位をゲットしたのだから本人はショックでしょう。
ただマシンのポテンシャルがそこそこあるのは間違いありません。ラッセルもバウンシングが解決すれば、今抱えている問題の99%は解決すると言っているようなので、そうなれば更にトップ2に近づくことができるでしょう。
余談ですが、今のところ「バウンシング」「ポーパシング」「ポーポイシング」など、いろんな言葉が使われていますが、個人的には「バウンシング」に落ち着いてほしいなと思っています。

さて、レース序盤は大きな波乱もなく、様子見の状態。しかし、ジェッダ・サーキットはコース幅が狭く、両サイドともコンクリートウォールで囲われているため、いつハプニングが起きても不思議でない状況。
と思っていたら、トップを快走していたペレスが真っ先にピットインした直後にセーフティカーが入るという展開。原因となったのは、またしてもラティフィ! 昨シーズンの最終戦につづき、劇的なドラマを演出することになりました。
またフェラーリが、ルクレールのアンダーカット対策のためにペレスをピットインさつるように向けた作戦も、フェラーリらしからぬ巧妙な動きでした。結果的にその作戦がハマったわけですから、フェラーリにすればしてやったりです。

話は少しそれますが、サーキットというのは本来、安全性はもちろん、できる限りレースを走りきれる環境を確保するのが前提。ジェッダ・サーキットはこの条件を満たしているとはいえず、ハプニングが起こると一瞬盛り上がるものの、しばらくすると「ハプニング自体が予定調和やん」と冷めてしまう気がしないでもありません。レース前日にテロ行為が行われる場所での開催も含め、FI運営組織は見直す必要があるんじゃないでしょうか。

トップに立ったルクレールが危なげなく周回を重ねるなか、2位に上がったフェルスタッペンは無理して追いつこうとせず、レース終盤の備えている様子。作戦通り、後半になるとジワジワとルクレールの背後に忍び寄り攻撃開始。前戦と同じように激しいバトルが繰り広げられ、話題となったお互いの「お先にどうぞ走法」のかまし合いとなりました。確かに度が過ぎると何か引っかかる違和感があり、単に滑稽でもあるので、DRSゾーンの調整は必要ですね。

そして、残り3周のところで遂にフェルスタッペンが見事なオーバーテイクをキメて逆転。しかしルクレールも諦めず再逆転を狙いますが、イエローフラッグが出て終了。

レース中の無線ではアドレナリン噴出状態で激しい言葉が行き交うものの、レースが終わればサムアップをしてライバルを称えている姿は、見ていて気持ちいい。シーズンが佳境に入っても、今のライバル関係を保ってほしいものです。(といいながら、バチバチ、ドロドロになるのを期待する自分がいることも否定できません)

今シーズンのフェラーリとレッドブルのマシンは、まったく異なる特性を持ちながら、ほぼ互角の速さであるのがおもしろい。これにメルセデスの2人が絡んできたらサイコーです!

フェラーリ、実力の1-2フィニッシュ!

20220323

いやぁ、いきなり波乱の開幕戦でした。去年、いや今年のプレシーズンテスト、いやいや土曜の予選終了後でも、フェラーリの1-2フィニッシュを予想した人はほとんどいなかったんじゃないでしょうか。残念ながらが、「ワンチャンいけるかも」と予防線を張っていた程度の方は、予想ハズレとさせていただきます(僕もその一人です)。
実際メディアでも、レースになればレッドブル〜フェルスタッペンがぶっちぎるという下馬評でした。しかし蓋を開けてみると、フェラーリは一発の速さだけでなくレースペースも速かった。しかも優勝を飾ったルクレールの走りからすると、まだ余力を残しているようにも感じます。
それにしても1回目のタイヤ交換後のフェルスタッペンとの抜きつ抜かれつの攻防は見応えがあり、二人ともドライバーとして成長したことが伝わってきて熱くなりました。2〜3年前なら、どちらも強引な走りをして接触というパターンだったでしょう。ルクレールはチームメイトのサインツと比較しても週末通じて上回り、存在感を発揮。まさに面目躍如といったところ。

今回の開幕戦はフェラーリの予想以上の速さをはじめ、メルセデスの“実は三味線弾いてないんじゃね?説”、“ハース&アルファロメオかなり速い説”、“マクラーレン地味にヤバい説”など、「もしかして」が現実化する展開に。メルセデスは三味線こそ弾いていませんでしたが、バルセロナテストからゼロポッドを試した方が良かったですね。結果論ですけど、コンスト8連覇の過信があったかもしれません。
それでもハミルトン3位、ラッセル4位をゲットするあたりはさすが。個人的にラッセルがハミルトンを速さで上回ることを期待していたのですが、そう甘くはありませんでした。やっぱり7タイムズチャンピオンはすごいわ。
ラッセル本人はそのヘんのところは冷静で、表立ってライバル意識は出さず、「大先輩をお手本にして成長していく所存です」という態度を崩さない。もちろん内心では「絶対に勝ったるで!」と思ってるんでしょうけど、今は吸収できることは吸収して、良きタイミングが来たら真っ向勝負するつもりなんでしよう。ハミルトンとラッセルの関係は、これからの楽しみのひとつです。

それと、本家AMGだけでなくマクラーレン、アストンマーティン、ウイリアムズと、メルセデスのカスタマーチームが振るわなかったところをみると、PUに何か課題があるのかもしれません。しかし、そこはメルセデス。ヨーロッパラウンドあたりには改善してくるでしょう。フェラーリ、レッドブルはそれまでにポイントを稼いでおきたいところです。

PUといえばホンダが全面サポートする、RBPTのPUを積むレッドブル勢は、4台中3台リタイヤと厳しい結果に。今のところ原因は明らかにされていませんが、燃料ポンプの不具合と考えられている様子。テストで限界までプッシュしなかったため、実戦状態でのチェックができなかったことが痛かった。むぅ、これもメルセデスと同じく、能ある鷹が爪を隠したことがトラブルにつながったような・・・・。そろそろトップチームのなかで「爪を隠し合いって、デメリットの方が大きくね?」という議論が出てきていいと思います。

さて、今回ファンや関係者を驚かせたのが、フェラーリ製のPUを搭載するハースとアルファロメオ。特にハースは急遽マゼピン坊ちゃまに代わってレギュラードライバーに指名されたマグヌッセンがはりきって、5位に食い込む大活躍。以前から「やればできる子」と応援していたドライバーなのでうれしいです。

アルファロメオもトラブルは多いものの、戦えるマシンをつくってきました。予選でハミルトンの横に並んだボッタスにすれば、してやったり!でしょ。スタートでは去年までと同じようにやらかしてしまいましたが、そこから挽回して6位でフィニッシュしたのは本当に速い証拠。
今回のレースをみる限り、去年とくらべて劇的にオーバーテイクが増えた印象は受けませんでしたが、ボッタスの追い上げからするとレギュレーション変更は効果があるように思います。

一方、バルセロナで評価が高かったマクラーレンは急下降。正直、マクラーレンの不発がいちばんの番狂わせでした。
「フィーリングは悪くないけどタイムを見ると遅い」、「なんかよくわからんけどグリップがない」というのがドライバーの声。これって、いちばん面倒なヤツやん。マクラーレンの躍進を期待していただけに残念だし心配。

しかしまだ、シーズンははじまったばかり。各チーム様子見という部分もあるはず。次のサウジアラビアで、今シーズンの勢力図がより鮮明に見えてくるでしょう。

F1を愛し、F1から愛されたライコネン

20220314

キミ・ライコネンが2021シーズンをもって、19年に及ぶF1キャリアに幕を下ろしました。彼のクールなスタンスからすると、まさかここまで長く走ると思いませんでした。正直、1回目のフェラーリとの決別で「F1はもういいわ」という気持ちになっているだろうと思っていたので、ロータスからカムバックした時は意外でしたし、フェラーリへの復帰はさらに驚きました。

僕にとってライコネンは贔屓の一人でしたが、彼ほど掴みどころのないドライバーはいませんでした。『北斗の拳』に例えるなら、風のジューザ。超マイペースな性格だけでなく、天賦の才に恵まれなが、どこかそれを最大限に発揮しきれない印象を受けるところも共通するように思うのです。
ライコネンに関しては、とにかくマクラーレン時代のカミソリのようなキレた走りのインパクトが強烈でした。2005年の鈴鹿での16台抜きは、完全に伝説になっていますね。
しかし、その後のキャリアについては「凄いんだけれど、もっと速いドライバーじゃなかったっけ?」という、歯がゆさを感じつづけていたのが正直なところ。特に2度目のフェラーリ在籍時はキャリア後半だったことや、チームメイトが全盛期だったこともあり、後塵を拝することが多くなってしまいました。事実上セカンドドライバーだったのは仕方ないにしても、チームから“それにしても”な扱いを受ける姿を見るのは辛いものがありました。

ライコネン自身はファンれよりも遥かに悔しい思いをしているにもかかわらず走りつづけたのは、F1というトップカテゴリーでレースをすることを愛していたから。世界中のいちばん凄いヤツらを打ち負かす。そのことだけが、ライコネンのモチベーションだった。彼とは一言も言葉をかわしたことはないし、死ぬまで話すことはないでしょうけど、それだけは分かります。
ライバルを打ち負かすことしか興味がないから、チームメイトやチームに対してややこしい動きをしない。彼の中ではそういうことをして勝っても気持ちよくないのでしょう。
彼のそうしたスタンスが走りや、ぶっきらぼうだけれどどこかユーモアのある言葉からヒシヒシ伝わってくるから、多くの人が彼を応援したのだと思います。僕もその一人。

通算21勝、ポールポジション18回、表彰台103回、ファステストラップ46回、タイトル獲得1回という数字が、彼のドライバーとしての能力を正確に表わしているのかは分かりません。
でも、彼の魅力や存在感は、この数字よりはるかに大きいことは間違いありません。

バルセロナ合同テストはじまる

20220224

いよいよはじまりました、バルセロナ合同テスト。
毎年心ときめく瞬間です。どのチームがいい具合にマシンを仕上げてきたのか、どのドライバーがノッているのか。ネットや雑誌を見て、あれやこれや夢想する楽しさは格別。しかも今年は大幅なレギュレーション変更があり、各チーム独自のコンセプトやアイデアを盛り込んできたためワクワクはさらに倍。
といっても僕の場合は、マシンに関してボ〜ッと眺めて「何となく違うカタチしてるなぁ」というレベルなので、「サイドボンツーンが○○で〜」みたいなことは一切書けません(キリッ!)。

新車発表会や今回のテストの画像を見たところ、個人的にはカラーリングも含めフェラーリがいちばんグッときました。
いちばん好みでないところを挙げても仕方ないのでやめときますが、いつも洗練されたマシンを出してくるメルセデスが今年は微妙だったように感じます。

どこのマシンが速いのか? こればかりはバリバリのプロですら開幕戦の予選までははっきり分からないので、家でまったりネットニュースを見ているだけの私に分かるワケありません(そんなことは誰からも期待されていませんが)。
ただ、フェラーリは調子良い様子。毎年フェラーリとマクラーレンはテスト序盤から張り切ってタイムを出す傾向があるものの、今年はタイムの出方がスムーズで、マシンのポテンシャルを感じます。昨シーズンを捨てた甲斐があったのではないでしょうか。チーム代表のビノットさんもひと安心といったところ。
マクラーレンも初日、ノリスがトップタイムを出しましたが、一人だけC4タイヤを履いていたのであまり参考にはならないものの、それでもやっぱりタイムは出た方が良いので、まずは好スタートをきったといっていいでしょう。
メルセデスとレッドブルについては、いつものように化かし合い。少なくともバーレーンでのテストまで手の内は見せないでしょう。

中団を形成するであろうアルピーヌ、アルファタウリ、アストンマーチンはわかりません。残念ながらハースとアルファロメオは今シーズンも厳しそうですね。

特に贔屓のチームがない僕にとっては、できる限り各チームの差が縮まってほしいのですが、蓋を開けたらサプライズはなく、いつも通りメルセデスとレッドブルが速そうだなぁ。

アブダビGP〜劇的過ぎる展開でフェルスタッペン初タイトル

20211224

まずはフェルスタッペンにとって初となるドライバーズタイトル、おめでとうございます!
彼がトロロッソからレッドブルに昇格していきなりライコネンをおさえて優勝してしまい、度肝を抜かれてから短くない年月が過ぎましたが、ついに絶対王者ハミルトンを下してテッペンに立ちました! タッペンがテッペン・・・・・、オヤジになるとダジャレを止めるパッキンが緩んでしまい申し訳ございません。

フェルスタッペンがデビューして随分経ったといってもまだ24歳。しかもメルセデス〜ハミルトンに勝負できる体制が整ったのは今シーズンがはじめてなので、初優勝の時と同じくワンチャンスを確実にモノにしたといえるでしょう。

それにしても今シーズンの最終戦は“筋書きのないドラマ”といいますか、見えない力によって“筋書かれたドラマ”といいますか、とにかくとんでもなく劇的な展開でした。
僕はメルセデス〜ハミルトンのファンでも、レッドブル・ホンダ〜フェルスタッペンのファンでもありませんが、心情的には「もういい加減、誰かにメルセデス〜ハミルトンを負かしてほしい」と思っていたクチです。ですが、同時に最近飛び交っている“メルセデス忖度説”は完全にスルーしているクチでもあります。
シーズン通してどちらにも有利・不利になるジャッジが下されており、依怙贔屓なんかではなく、単にレースディレクターであるマイケル・マシさんのオロオロが問題だっただけのように思います。逆に一貫性のないジャッジを一貫して下してくれたおかげで、シーズン通して丁度良いバランスになったんじゃないでしょうか。
両チームの戦略、両ドライバーのドライビングに関しても、多少行き過ぎて問題になったことはあるにせよ、「タイトルかけて戦っているんだから、それくらいのことはするでしょ」レベル。
F1が好きなら、ここは相手をヤジるのではなく、歴史に残る激しく熱い戦いを繰り広げてくれた両陣営を讃えたいところです。

最終戦に至る流れは、シーズン終盤のブラジルGPからビックリするくらいハミルトンが速くなり、フェルスタッペンとのポイント差を縮め、最終戦を前にして同ポイントに。勢いは完全にメルセデス。ただ、優勝回数でフェルスタッペンが有利なため、いつもに増して強引なタッペン走法をするのではないかという不安も。そして、経験豊富なハミルトンがそれをどう交わして前に出るかが注目されていました。
そんな中フェルスタッペンがポールを奪取。改めて彼の強心臓に驚きました。普通なら脚ガクガクでまともにアクセルワークできないでしょ。
そうはいってもQ2でミディアムタイヤにフラットスポットをつくったり、決勝のスタートで出遅れたりするところに、彼の緊張が伝わってきました。

決勝はソフトを履いたフェルスタッペンが、ミディアムを履いたハミルトンに先行されたことで、俄然ハミルトンが有利になりました。改修されたヤス・マリーナ・サーキットは抜きどころがあまりなく、しかもフェルスタッペンのタイヤは早々にタレはじめ、ジリジリと引き離される苦しい展開。
第2スティントもペレスが必死のパッチの抵抗でハミルトンをおさえたおかげで、一時はフェルスタッペンとのギャップが縮まったものの再び引き離され、レッドブルとしては手の打ちようがない状況。

しかし、長くF1を観戦している人ならおわかりになると思いますが、こういう時に限って“何か”が起こるんです。しかも今回のレースは、そのニオイがプンプン漂っていた。諦めが早いいつもの僕なら、「ま〜けた」と居眠りしてしまうところですが、今回ばかりは左斜め上から電波が届いたこともあり、よそ見をすることなく観戦をつづけていました。

そして、ラスト5周でのラティフィのクラッシュ! からのセーフティカー。そしてそして、ラスト1周で見せた執念の大逆転! もちろんフェルスタッペンも凄かったのですが、摩耗したハードタイヤでほぼ新品ソフトタイヤのフェルスタッペンを抜き返そうとするハミルトンにも鬼神を感じました。

正直、マシの対応には疑問符が残りますが(忖度ではなく、単に不手際という意味で)、前述の理由によりスルーで良いでしょう。
また、今回のフェルスタッペンの勝利はラスト1周の展開だけでなく、ペレスのがんばりがあったからこそ、セーフティカーが入った時にハミルトンがタイヤ交換できなかった。そしてもうひとつ、ボッタスが中団に埋もれて、ペレスを攻め立てられなかったことも大きな要因となっています。そうしたことを合わせると、やっぱり結果通りで納得です。

プレッシャーから解き放たれ、喜びを全身であらわすフェルスタッペン、マシンを降りず虚空を見つめるハミルトン、ヘッドセットをもぎ取るトト、みんなカッコ良かった。そして、自ら勝者に歩み寄り、ライバルを祝福したハミルトンは7度のチャンピオンに相応しい。

世界から度が過ぎた才能の持ち主が集まり、度が過ぎた情熱でタイトルを争うF1。今シーズンは、その魅力を存分に楽しむことができました。ありがとう!

メキシコGP〜勝利への意思

20211111

強いわ、フェルスタッペン。まだ20代前半で、本格的なタイトル争いは初めてなのに、あの落ち着きようとブレのなさはどうしたものか。
僕なんか50代に突入しているにもかかわらず、ちょっと想定外なことが起こるとオロオロしてしまう。その情けなさに比べると(そんなもんと比べるものじゃないですが)、誠にアッパレです。

もともと今回の舞台、エルマノス・ロドリゲス・サーキットはレッドブル〜フェルスタッペンが有利といわれ、フリー走行では前評判通りの速さを見せていたのに、予選Q3になるとアンラッキーもありつつメルセデス勢に逆転を許してしまいました。並のドライバーならこれでペースが乱れて、レースもガタガタになってしまうパターンが多いのに、フェルスタッペンは瞬間的には怒っても、マシンを降りてヘルメットを脱げば感情をコントロールできてしまうところがただ者じゃない。
現に充分人生経験を積んだホーナー代表やマルコ顧問でも素でキレて、メディアで門下の角田クンに非難してました。あれはいくらなんでも角田クン、かわいそう。完全に戸惑ってましたやん。ちょくちょく見られる、レッドブルの悪いところが出てしまいました。

もうひとつフェルスタッペンが凄いところは、どんな状況でも諦めず、最善の結果を得るためにどうすればいいかを考え、自分にはそれができると確信し、実際に実行しちゃうところ。これは複数回チャンピオンになる人にみられる性質。
今回の場合でいうなら、抜きにくサーキットで勝つためは、スタートでメルセデス2台を抜かないと苦しい展開になるのは明らか。そんなことは誰でも分かりますが、実際にするのは至難の業。しかしフェルスタッペンは一抹の迷いもなくボッタスのトウを使ってアウト側に並び、ギリギリまでブレーキングを遅らせてトップに踊り出ました。普通なら「あわわわッ」ってなってオーバーシュートするか、クルリと回ってしまうところ。強い意思を持ってミッションを遂行する力は、現役トップといっていいでしょう。

「それに比べて」といっては申し訳ないですが、ボッタスはまたまたやらかしました。せっかく予選ではいいところを見せたのに、肝心のレースではスタートダッシュで遅れ、簡単にフェルスタッペンにトウを使わせ、さらにハミルトン側に寄せてメルセデス〜ハミルトンの戦略をブチ壊した上、自分自身もスピンして最下位に落ちて、そのままポイント圏外でフィニッシュという、まさにボッさん祭り。今シーズンの彼はレッドブルにとっても、味方のメルセデスにとってもデンジャラスな存在です。

優勝争いはスタートで決まりましたが、今回は母国グランプリとなるペレスが好調で、レース終盤ハミルトンを追撃する展開は見応え充分。あそこで粘り切るハミルトンはやっぱり流石です。
余談ですが今回のカメラワーク、何か見たいところをなかなか映してくれなかったように感じたのですが気のせいでしょうか。

タイトル争いはフェルスタッペンが優勢ではあるものの、まだまだ1回リタイヤすれば一気に形勢逆転してしまうポイント差。次のブラジルに勝って、26ポイントのギャップをつくれば、いよいよタイトルが見えてきます。

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