とにかく眠い。時差にも程があります。午前4時にスタートするレースは、仮眠をとっても油断をすれば睡魔に襲われる、まさにタイトロープ。
また、途中で子どもが起きてきて学校へ行く準備をしている横で、オヤジが必死にF1観戦しているという、何ともビミョーな感じに。
しかしながら、そんなボヤキが吹っ飛ぶくらい今回のアメリカGPは見応えがありました。
初日のフリー走行1でメルセデス勢がレッドブル勢に対して大きなタイム差をつけた時は、「これはハミルトンがぶっちぎるんじゃないの」と不安になったものの、その後レッドブル勢がセッティングをバンピーな路面に合わせてきたのか調子を取り戻し、予選Q3の最後の最後にフェルスタッペンが渾身のアタックでポールポジションを獲得。熱い展開を目の当たりにし、こちらもレースに向けて否応なしにボルテージが上がります。
ちなみに僕はアンチメルセデスでも、レッドブル・ホンダファンでもありません。メルセデス無双状態に飽き飽きして、今いちばんメルセデス〜ハミルトンを負かしてくれそうなレッドブル〜フェルスタッペンを応援している次第です。
スタートはハミルトンが抜群の蹴り出しでトップに。一瞬接触しそうになりましたが、今回はギリギリのところでフェルスタッペンが我慢。
オープニングラップのバトルが落ち着くと、フェルスタッペンはハミルトンの背後にピタリとつける展開。ペースはフェルスタッペンの方が速いように見え、前に出ればそのまま差を広げていく気配。といってもオーバーテイクはむずかしく、チームは早々にアンダーカットする作戦を遂行。フェルスタッペンもそれに応え、両者がタイヤ交換を終えた時には6.5秒の差をつけて逆転。
第2スティントの後半にハミルトンがジリジリ差を縮めると、レッドブルは再び早めにフェルスタッペンに対して2回目のタイヤ交換を指示。
一方ハミルトンはそこから5周粘ってタイヤ交換。残り19周で二人のタイム差は8.7秒。計8周分フレッシュなタイヤでハミルトンが追い上げるという状況。
1周0.5秒ずつ詰めれば追いつく計算ですが、ハミルトンもレース終盤になるにつれタイヤが摩耗するワケだし、さすがにこれは無理でしょと思っていたら、グイグイ来るじゃありませんか!
周回を重ねるごとにどんどんハミルトンが接近してくるのが分かるほどのペース差。これはマズいですよぉ。ほぼほぼ「やられた」という気持ちでした。
僕はもともとあきらめの早いタイプではありますが、今回の件に関してはチームのボスであるホーナーさんもあきらめモードだったのですから無理はありません。
ラスト2周でついにハミルトンがDRS圏内に。確かに状況としては絶体絶命でしたが、逆にこの頃になるとさっきよりも僕の不安は薄れていました。
それは、フェルスタッペンの走りに安定感があったから。実際ファイナルラップでは再びDRS圏外に引き離して勝利をつかみました。
シーズン序盤までの彼ならタイヤを使い切ってしまい、メルセデス〜ハミルトンの策略にハマっていたかもしれません。しか〜し! 今の彼ははじめてのタイトル争いをする中でさまざまな経験をし、“負けない走り”を身につけたのです(キリッ)。
飛ばせるだけ飛すのではなく、レース全体を考えて走るドライバーに進化したことを実感できるレース運びでした。
またハミルトンにもただ者じゃない粘り強さを見せつけられ、ゾワゾワしました。まだまだタイトル争いはどうなるか分かりません。
とはいえ、今回の勝利でレッドブルの士気が上がるのは間違いありません。そういう意味で、ポイント以上に大きなものをゲットできたレースだったといえるでしょう。