20161225

いやぁ〜久々にヒリヒリした! 同じ最終戦〜アブダビでタイトルが決まった2年前とは比べものにならないくらい見応えのあるレースでした。前回は速さも勢いにおいても勝るハミルトンがポイント面でもリードしていて、そのままブッちぎりましたが、今回はロズベルグがポイント面でリードしていたことが、ドラマを生んだといってよいでしょう。
ロズベルグ目線でいえば、ライバルの順位に関わらず3位に入れば悲願のタイトル獲得という状況。普段のレースであれば決してむずかしいことではないのですが、最終戦でのタイトル決定ということでいろいろなファクターが絡み合うことに。攻めるべきか、守るべきか。これまでの歴史を振り返ると、勝利の女神は気持ちの面で守りに入ったドライバーはお好きではない様子。つまりロズベルグは“リスクを避けて攻める”というアンビバレンスなドライビングが求められるワケです。とんでもないプレッシャーがのしかかる極限の状況で、そんなことができるのか? これは今シーズンの総決算というだけでなく、ロズベルグのドライバー人生がかかった一世一代の大勝負。
一方ハミルトンの状況はいたってシンプル。ただ優勝するのみ。しかも彼の場合、ドライバーとして証明すべきことは既に済ませているので、ロズベルグほどの重圧はありません。ただ、ひとつの問題は、“どのように勝つか”ということだけ。いくら自分が優勝しても、ロズベルグが3位以内でゴールすれば、タイトルを獲ることはできない。自分がタイトルを獲るためには、ロズベルグの前に2人ゴールする、いや、させる必要がある……。

そのための答えは、敵チームの大将、レッドブルのクリスチャン・ホーナーから発表されました。「ペースを落として混戦にすれば」と。彼としてはハミルトンを焚きつけるだけ焚きつけて、自分ところのドライバーが優勝する可能性を高めようという魂胆もあったでしょう。
これに対してハミルトンは、「そんなこと考えもしなかった。自分はブッちぎって勝つだけ」と返答。このコメントを聞いて、ハミルトンも武士道をかじったのかと驚いたと同時に、「彼がそんなことするか?」という疑念が湧いたのが正直なところでした。
で、結果はご存知の通り。いや、予想していたよりエグい走りを展開しました。「考えたこともない」と言ってキッパリ否定した作戦をシレ〜ッとやりだしたのです。チームから何度もペースを上げろというオーダーが発せられても完全に無視。あっと言う間にスーパーソフトを履いて猛追するベッテルとフェルスタッペンがロズベルグの真後ろに迫る。これ、ロズベルグにしてみたらたまらんですよね。リスクを抑えるために速いベッテルを前に行かそうにも、そのすぐ後ろには何をしでかすか分からないフェルスタッペンがいる。しかもフェルスタッペンに抜かれるとタイトルが獲れない。といって前のハミルトンを抜こうにも、本来は遥かに速いペースで走れるので抜けない。まさにタイトロープな状況。
しかしロズベルグは見事に切り抜けました。冷静にベッテルの動きをチェックしながら2位でフィニッシュ。以前の彼なら、焦ってハミルトンに突っ込むか、オーバーランしてベッテルやフェルスタッペンに交わされていたかもしれない。そもそも1回目のタイヤ交換の後、1ストップ作戦で前を行くフェルスタッペンのインを刺せたことが勝利につながったと思います。今回の最後の難関を乗り越えたで、タイトルにも泊がついたのではないでしょうか。

タイトルに対する執念をみせたハミルトンの走りは、あくまでレースの駆け引き。全然“アリ”でしょう。むしろ、レースを盛り上げてくれて「ありがとう」と言いたいくらい。ただ、チームへの無線のコメントや、レース後の「オレはトラブルに見舞われ、ロズベルグには起きなかったからタイトルを逃した」的なコメントはいただけない。思うでしょうけど、言っちゃダメ。でもまぁ、アドレナリンがおさまってからはロズベルグを讃えていたので、良いチャンピオンシップだったといえるんじゃないでしょうか。
来年はレギュレーションも変わるので、チーム同士の接戦を期待します。