いつ見ても、ドライバーの初優勝はいいものです。
F1のワールドチャンピオンを夢見て子どもの頃からいろんなことを犠牲にして下位カテゴリーから勝ち抜いてきて、やっとこさF1ドライバーになった後もライバルたちに競り勝って勝てるチームのシートを手に入れ、さらに手強いトップドライバーに勝ってはじめて得られる勝利。絵に描いたようなぐうたらな学生生活を送っていた私には想像できない世界ですが、とんでもなく大変なことは想像に難くありません。そら、トップチェッカーを受けたら感情が爆発するでしょう。
そういう若者の一生に一度の歓びの瞬間を共有できることは、F1ファンにとって大きな醍醐味のひとつです。
そしてマイアミGPで、ランド・ノリスが「初優勝」という栄光を勝ち取りました。彼はまだ若いもののF1デビューが早かったため、ここまで随分時間がかかりました。何度か勝利に手が届きそうだったこともありましたが、レース展開のせいで流しそうめんの最後の一本のようにスルスル〜と滑り落ちていきました。
そうやって結局一度も勝てずに終わるドライバーが多くいる中、ノリスも不安に駆られたこともあるでしょう。しかし、自分とチームを信じて走りつづけた結果、去年の中盤辺りで潮目が変わり、今シーズンになって勢いが増していたのは周知の通り。このブログでも前回に「遠くないうちに勝つんとちゃうのかなぁ・・・・知らんけど」と無責任に書いたら、いきなり勝ってしまい驚きました。
マイアミのレースでセーフティカーが出なかったら、いつもの通りフェルスタッペンが勝手いたかもしれません(その確率は高かったでしょう)。しかし、そんなことを言えばきりがないし、そういったことも全部ひっくるめてレースです。そして、ノリスは何かが起こったときに勝てるポジションにいた。確かに運は良かったかもしれませんが、決してまぐれではありません。本人を含めみんなそれがわかっているから、あれだけ喜べたのだと思います。
また、ノリスの人懐っこい人柄もあって、普段は角を突き合わせて戦っているライバルのドライバーやスタッフたちが祝福している姿にもグッとくるものがありました。これがあるからF1観戦はやめられない!
よく1勝するとドライバーはひとつ上のステージに上がるといわれます。間違いなく「勝てる力を証明しなければならない」というプレッシャーから解放され、余計な力が抜けた状態で走れるようになる面はあるでしょう。実際につづくエミリア・ロマーニャGPでもノリスの勢いは増すばかりで、レース終盤ハードタイヤが機能せずペースが上がらないフェルスタッペンを1秒以下まで迫る激走を展開。いよいよ才能が解放されはじめたといってよいでしょう。こんなことを書くとファンの方々に怒られそうですが(一応ことわっておくと、僕もノリスは好きなドライバーです)、個人的にちょっと前まで彼は大関クラスのドライバーだと思っていたのですが、認識を改めなければならない気がしてきました。
マクラーレンのクルマのベーシックな力もレッドブルに近づきつつあるのは間違いなく、シーズン中盤から後半にかけてフェルスタッペンとノリスに加えて、ピアストリとルクレールが絡んでくれるようになれば最高におもしろいんですけど!