日本には「二度あることは三度ある」、あるいは「三度目の正直」というまったく相反することわざがあり、どちらのパワーが強いのかという問題は永遠に決着が着くことはないでしょう。
しかし、フェラーリの(悲運の)エース、シャルル・ルクレールは、自分の力でこの問題に決着をつけました。
彼はこれまで二度、母国グランプリであるモナコでポールをとったものの、いずれも不運な展開で勝利から見放されていたのはご存知の通り。怒りと絶望、自分に対する不甲斐なさなど、あらゆる負の感情が爆発しそうになるのを必死に堪えてパドックへ向かう姿を見た時は、こちらまで辛い気持ちになったものです。(この感じは“今までの”彼のキャリア全般に漂っている気がします)
そして、「今度こそは」という意気込みで臨んだ今年のモナコGP。
まずは見事に三度目のポールを奪取。当然ながらまわりからも、そして自分の内からも勝利への期待感は高まっていきます。僕ならこの時点で足腰ガクガクプルプルです。
しかしルクレールは、そんなチキンなおっさんとは違います。重くのしかかるプレッシャーを跳ね除けて、ついに悲願の勝利を掴み取りました!
いやぁ、感動しました! ノリスの初勝利から間を置かず、またこんな感動的な瞬間に立ち会えるとは思いませんでした。
もちろんチェッカーを受けてチームスタッフと抱き合う光景も印象的でしたが、F1ドライバーになるために支えてくれた亡き父、そして共にフェラーリドライバーとして勝利するという夢を語り合ったビアンキへの言葉には胸が熱くなりました。
これまで悔し涙を堪えていきたのだから、今日は喜びを爆発させて思いっきり涙を流せばいいよ! おめでとう、ルクレール!!
ネットのコメント欄を見ると、「ルクレールはメンタルが弱い」と書かれているのをよく目にしますが、個人的にはまったく反対の印象を持っています。あれだけ不運や“俺たちのフェラーリ”に遭いながら、心折れずに自分にできる最大限の結果を出し続けているメンタルはかなりのもんでしょう。この調子で勢いに乗って、フェルスタッペンとタイトル争いを繰り広げほしいものです。
さて、今シーズン、これまで数年にわたって圧倒的な強さを誇ってきたレッドブル(強いて言えばフェルスタッペンだけですが)と、ライバル勢との差が縮まってきたというのが一般的な見解です。それは予選・決勝のラップタイムを見れば明らかですし、印象としてもそう感じます。が、個人的には「とはいっても、結果としてはまだまだレッドブル〜フェルスタッペンの圧勝でしょ」と思っていたのですが、どうやら状況は大きく変わってきているようですね。これは嬉しい驚きです。ゆっくりと、着実に潮目は変わっています。
余談ですが、30年以上前、僕も大学受験に二度失敗して、三度目に合格した、ルクレールと同じ「三度目の正直」組です(キリッ)。