20240704


フェルスタッペンも人の子だった。というか、ヨスの子であるのは世界中の人が知っていと思います。ですので、ガチンコ勝負となると親父と同じ荒くれ者の血が騒ぐのか、最近は鳴りを潜めていたアグレッシヴな走りが復活。よりによって仲良しのノリスと激しくぶつかり、お互いに勝利のチャンスを投げ捨ててしまいました。

こうしたインシデントがいつか起こることはみんなわかっていましたが、まさか今回とは思わなかったのではないでしょうか。少なくともレース終盤までは。なにしろ、ここ数戦でレッドブル〜フェルスタッペンの絶対優位が失われたように見えたものの、今回のレッドブルのお膝元オーストリアGPでは、スプリントレース、予選ともに圧倒的な差を見せつけていましたので。
案の定、決勝でも2回目のピットストップまでは盤石のレース運びで、見てるこちらは退屈の極み。ところが、タイヤ交換にもたついたせいでノリスが接近。フェルスタッペンが中古のミディアムなのに対してノリスは新品ミディアム。そうなれば当然“ノリノリノリス”モードに。
そして、二人は激しいバトルを繰り広げはじめたわけですが、この時点になると多くの人の脳裏に「こいつらぶつかって両者リングアウトになるんちゃうか?」という不安(人によっては期待)が浮かんだことでしょう。

そして結末はご承知の通り。どっちが悪い、悪くないという議論・口論はしばらく続くと思いますが、結局のところよくある意地の張り合いによる接触かと。確かにお互いもっと賢いレースができたと言うことはできます。しかし、二人にしてみればレーシングドライバーとして、あそこで絶対に引くわけにはいかなかったのだと思います。
二人はこれまで、下位カテゴリーを含め優勝をかけて争う機会がほとんどありませんでした。それがここにきて拮抗するようになった。ヤンキーカーストと同じかどうかはわかりませんが、勝負は最初が肝心。最初に「こいつは弱腰」と思われてしまえば、その後ずっと尾を引いてしまうので、インパクトを刷り込む必要がある。今回の接触は、近い将来タイトル争いをするであろう双方の宣戦布告の狼煙と受け止めています。ですので、こうしたバトルは今後も度々起こるでしょう。ただ、ぶつかってしまえば誰も得しないので、そのあたりは気をつけていただきたい。

さて、二人の脱落によって漁夫の利を得たのは、これからメルセデスの看板を背負うラッセルでした。棚ぼただったのは確かですが、勝ちは勝ち。レースでトップが消えた時に勝利を拾えるポジションにいる大切さは、これまでのF1の歴史が証明しています。レッドブル目線でいえば、ここにペレスがいないことが苦しいところ。今後、コンストラクターやドライバーのタイトル争いが接戦になった時に、ライバルに大量点を献上しないためにも、少なくとも常に3位、4位くらいの位置にはいてほしいのでしょうけど、現状むずかしい様子です。
ラッセルの話に戻すと、今回は親分トト・ヴォルフの妨害行為をクリアし、最後は追い上げてきたピアストリを引き離して通算2勝目。
個人的に、ラッセルにとってこの勝ちは大きいと思っています。メルセデスに加入してから、いくつか大きいミスをしながらもハミルトン相手にいい勝負をしてきたにもかかわらず、「ハミルトンは本気モードでない」、「衰えたハミルトンといい勝負している程度では」など、外部の評価がイマイチな雰囲気がある(?)せいで、走りが前のめりになるところがありました。しかし、複数回勝ったことで落ち着きが出て、本来の速さを安定して発揮できるようになるのではないかと期待しています。