KITSCH de F1

F1徒然日記。

イギリスGP〜ハミルトン涙の勝利

20240718

やはり、この人は千両役者だわ。
現在のレギュレーションになってから2年以上にわたり苦戦を強いられてきたハミルトンが、母国イギリスグランプリで「さすがッス!」と唸らせる勝利をもぎ取りました。

それにしても今年のイギリスGPは熱かった。予選ではポールのラッセルを筆頭に、ハミルトン、ノリスのイギリス人3人が占拠したわけですから。否が応にもこのまま決勝も表彰台独占!と盛り上がりますよね。そして結果的にはハミルトンが、「お主ら、まだまだ青いのぉ」と言わんばかりに、表彰台の真ん中に立つところがニクいじゃなりませんか!

時間が経ち(というか、加齢による記憶力低下が主な理由ですが)詳しい展開はさっぱり覚えておりませんが、決勝は雨が降ったり止んだりのトリッキーな状況のなかで、ハミルトンもチームもほぼ完璧なレース運び。実際、ラップタイム的には優勝争いをしたノリスやフェルスタッペンよりも遅かった。それを戦略とドライバーの勝ちどころを押さえた走りで勝ちにつなげる。まさに、「いちばん速いドライバーではなく、最初にチェッカーを受けたドライバーが勝者」というレースの鉄則を身を以て示しました。

このあたりは、チャンピオン候補とされるノリス、ラッセルなどはもっと吸収すべき点ではないでしょうか。ルクレールは二人に比べて場数を踏んでいることもあり、レースマネジメントの面では一枚上手かなと思うのですが、圧倒的に運がないんですよねぇ…。それと彼の場合、ここ数年みられるシーズン中盤の中弛みが気になるところ。モチベーションが下がっているせいなのか、苦手なサーキットがあるのかわかりませんが、チャンピオンになるためにはこういうムラは致命的。「ペーパードライバーのお前に言われたないわ!」とおっしゃる気持ちは承知しておりますが、今のうちに修正した方が良いと思います。

話がそれました。今シーズンのハミルトンは、予選の勝敗ではラッセルに圧倒されており、純粋なスピードに関してはピークを過ぎたのかもしれません(ラッセルはもともと予選強いですから)。でも、レースとなれば話は別。天性の才能と磨き上げたテクニックを駆使することで、まだまだトップで戦えることを証明してみせました。序盤、雨が降り出してちょい濡れのコンディションになったとき、ラッセルのペースが落ちたとみるや間髪入れずに抜きにかかるキレ(レース直前まではチームプレイで後ろをおさえるという発言を瞬時に撤回する変わり身の早さも含め)、終盤にフェルスタッペンに怒涛の追い上げを食らっても動じない走りには改めて感服いたしました。
そして、フィニッシュ後のあの涙。100勝以上しているにもかかわらず、感極まる姿を見ると、こちらの想像をはるかに超えるエネルギーを注いでレースに臨んでいるのが伝わってきて感動しました。

それにしてもメルセデスはカナダ以降、完全に復調してきましたね。レースペースではまだフェルスタッペン(もう一人のドライバーを除く)やマクラーレンには及ばないものの、予選では充分戦えるし、それによってレースでも今回や前回のオーストリアのように勝ちを拾えるチャンスが生まれるわけですから。いやぁ、次のハンガリーも激戦になるんじゃないでしょうか。

モナコGP〜三度目の正直で掴んだ栄冠

20240528


日本には「二度あることは三度ある」、あるいは「三度目の正直」というまったく相反することわざがあり、どちらのパワーが強いのかという問題は永遠に決着が着くことはないでしょう。
しかし、フェラーリの(悲運の)エース、シャルル・ルクレールは、自分の力でこの問題に決着をつけました。
彼はこれまで二度、母国グランプリであるモナコでポールをとったものの、いずれも不運な展開で勝利から見放されていたのはご存知の通り。怒りと絶望、自分に対する不甲斐なさなど、あらゆる負の感情が爆発しそうになるのを必死に堪えてパドックへ向かう姿を見た時は、こちらまで辛い気持ちになったものです。(この感じは“今までの”彼のキャリア全般に漂っている気がします)
そして、「今度こそは」という意気込みで臨んだ今年のモナコGP。
まずは見事に三度目のポールを奪取。当然ながらまわりからも、そして自分の内からも勝利への期待感は高まっていきます。僕ならこの時点で足腰ガクガクプルプルです。
しかしルクレールは、そんなチキンなおっさんとは違います。重くのしかかるプレッシャーを跳ね除けて、ついに悲願の勝利を掴み取りました!

いやぁ、感動しました! ノリスの初勝利から間を置かず、またこんな感動的な瞬間に立ち会えるとは思いませんでした。
もちろんチェッカーを受けてチームスタッフと抱き合う光景も印象的でしたが、F1ドライバーになるために支えてくれた亡き父、そして共にフェラーリドライバーとして勝利するという夢を語り合ったビアンキへの言葉には胸が熱くなりました。
これまで悔し涙を堪えていきたのだから、今日は喜びを爆発させて思いっきり涙を流せばいいよ! おめでとう、ルクレール!!

ネットのコメント欄を見ると、「ルクレールはメンタルが弱い」と書かれているのをよく目にしますが、個人的にはまったく反対の印象を持っています。あれだけ不運や“俺たちのフェラーリ”に遭いながら、心折れずに自分にできる最大限の結果を出し続けているメンタルはかなりのもんでしょう。この調子で勢いに乗って、フェルスタッペンとタイトル争いを繰り広げほしいものです。

さて、今シーズン、これまで数年にわたって圧倒的な強さを誇ってきたレッドブル(強いて言えばフェルスタッペンだけですが)と、ライバル勢との差が縮まってきたというのが一般的な見解です。それは予選・決勝のラップタイムを見れば明らかですし、印象としてもそう感じます。が、個人的には「とはいっても、結果としてはまだまだレッドブル〜フェルスタッペンの圧勝でしょ」と思っていたのですが、どうやら状況は大きく変わってきているようですね。これは嬉しい驚きです。ゆっくりと、着実に潮目は変わっています。

余談ですが、30年以上前、僕も大学受験に二度失敗して、三度目に合格した、ルクレールと同じ「三度目の正直」組です(キリッ)。

ノリス初優勝、からの才能解放のはじまり

20240521

いつ見ても、ドライバーの初優勝はいいものです。
F1のワールドチャンピオンを夢見て子どもの頃からいろんなことを犠牲にして下位カテゴリーから勝ち抜いてきて、やっとこさF1ドライバーになった後もライバルたちに競り勝って勝てるチームのシートを手に入れ、さらに手強いトップドライバーに勝ってはじめて得られる勝利。絵に描いたようなぐうたらな学生生活を送っていた私には想像できない世界ですが、とんでもなく大変なことは想像に難くありません。そら、トップチェッカーを受けたら感情が爆発するでしょう。
そういう若者の一生に一度の歓びの瞬間を共有できることは、F1ファンにとって大きな醍醐味のひとつです。

そしてマイアミGPで、ランド・ノリスが「初優勝」という栄光を勝ち取りました。彼はまだ若いもののF1デビューが早かったため、ここまで随分時間がかかりました。何度か勝利に手が届きそうだったこともありましたが、レース展開のせいで流しそうめんの最後の一本のようにスルスル〜と滑り落ちていきました。
そうやって結局一度も勝てずに終わるドライバーが多くいる中、ノリスも不安に駆られたこともあるでしょう。しかし、自分とチームを信じて走りつづけた結果、去年の中盤辺りで潮目が変わり、今シーズンになって勢いが増していたのは周知の通り。このブログでも前回に「遠くないうちに勝つんとちゃうのかなぁ・・・・知らんけど」と無責任に書いたら、いきなり勝ってしまい驚きました。

マイアミのレースでセーフティカーが出なかったら、いつもの通りフェルスタッペンが勝手いたかもしれません(その確率は高かったでしょう)。しかし、そんなことを言えばきりがないし、そういったことも全部ひっくるめてレースです。そして、ノリスは何かが起こったときに勝てるポジションにいた。確かに運は良かったかもしれませんが、決してまぐれではありません。本人を含めみんなそれがわかっているから、あれだけ喜べたのだと思います。
また、ノリスの人懐っこい人柄もあって、普段は角を突き合わせて戦っているライバルのドライバーやスタッフたちが祝福している姿にもグッとくるものがありました。これがあるからF1観戦はやめられない!

よく1勝するとドライバーはひとつ上のステージに上がるといわれます。間違いなく「勝てる力を証明しなければならない」というプレッシャーから解放され、余計な力が抜けた状態で走れるようになる面はあるでしょう。実際につづくエミリア・ロマーニャGPでもノリスの勢いは増すばかりで、レース終盤ハードタイヤが機能せずペースが上がらないフェルスタッペンを1秒以下まで迫る激走を展開。いよいよ才能が解放されはじめたといってよいでしょう。こんなことを書くとファンの方々に怒られそうですが(一応ことわっておくと、僕もノリスは好きなドライバーです)、個人的にちょっと前まで彼は大関クラスのドライバーだと思っていたのですが、認識を改めなければならない気がしてきました。
マクラーレンのクルマのベーシックな力もレッドブルに近づきつつあるのは間違いなく、シーズン中盤から後半にかけてフェルスタッペンとノリスに加えて、ピアストリとルクレールが絡んでくれるようになれば最高におもしろいんですけど!

オーストラリアGP〜サインツ、病み上がりからの完勝!!

20240327

「気がつけばサインツ・・・・。」
F1界でこの新法則が定められることとなったオーストラリアGP。
去年のシンガポールGPにつづき、フェルスタッペンのトラブル発生によって勝利をもぎ取ったのは伏兵サインツでした。基本的にはエースであるルクレールに押され気味なのに、調子が良くてルクレールの前に出た時に限って絶対王者のフェルスタッペンが崩れてくれるという、ある意味“もっている”人です。やっぱり、“いるべき時に、いるべきところにいる”ことは大切ですね。

今回もフリー走行から乗れていて、常にチームメートを上回る展開が良かった。そして、レースでもフェルスタッペンがリタイヤした後は安定した走りでそのままフィニッシュ。ポイントととして挙げるなら、第一スティントでしょうか。先にタイヤ交換をしたルクレールにアンダーカットされるかもと思ったのですが、ここでペースを落とさずラップを重ねられたことで、ほぼほぼ「勝負あった!」でした。アッパレです!!
病み上がりで、来シーズンは現在のチームにはいないという状況での勝利ということで、なんとなく1997年ドイツGPでのベルガー優勝を思い出しました。あのレースはお父さんが亡くなった直後の優勝で、感動的だったことが印象に残っています。
フェラーリ離脱という厳しい状況での快心の一撃は、結構インパクトがあったのではないでしょうか。日頃は何かと地味な存在になりがちなので、このままグイグイいってほしいものです。

一方、ルクレールはなかなか勝てませんねぇ。今回も決してグダグダというわけではなく、「イマイチ本調子でないなぁ」くらいだったのですが、そういう時に限ってサインツが絶好調で、フェルスタッペンがリタイヤするという・・・・。なんか、ますますアレジ化が進行していて怖い。今度、日本に来た際、お祓いしてもらうことをおすすめします。

今回のレースで感じたのは、フェルスタッペンというドライバーが別格であるということ。今更いうことでもありませんが。確かにグランドエフェクトカーになってからは間違いなく強力なNo.1マシンに乗っているわけですが、じゃあ、ペレスでタイトルを獲れるのかというと、結構でかい「?」が浮かび上がってしまいます。実際に今回も表彰台を逃しちゃってるし。
すみません、決してペレスをけなすつもりはありません。ペレスも良いドライバーです。が、やはりチャンピオンになるドライバーは他とは違うスペシャルなものをもっていて、結果を出すだけでなく、オーラを放射してるんですよね。そんな中でもフェルスタッペンは秀でていることを、彼の不在(リタイヤ)を通じて感じた次第です。
よく「F1は車で決まる」というフレーズを見聞きします。それは、ある部分においてはその通りではあるものの、決してすべてではありません。そんな当たり前のことを改めて教えてくれるという意味でも素晴らしいレースでした。
さぁ、次戦は日本GPですッ!

イギリスGP〜予想外のチームが躍進!

20230713

古豪復活!! だったらいいのになぁ。
現実はそんなに甘くはないと思いますが、とりあえずはイギリスの名門チーム、マクラーレンとウイリアムズがホームグランプリで光る走りをみせてくれて、50オーバーのオールドファン(?)としては嬉しい限り。

特にマクラーレンは前戦のオーストリアGPで投入したアップデート第一弾が効果を発揮し、今回のアップデート第二弾でさらに進化して、予選はあっと驚くノリス2位、ピアストリ3位! さすがに眠気が醒めました。
ただ正直なところ、レースではタイヤ的に厳しくズルズル後退して、5位〜6位くらいでフィニッシュできたら御の字だと思っていました。
がしかし、期待以上の大健闘。ノリスは抜群のスタート(ピアストリのスタートも最高でした)でフェルスタッペンを交わし、元気ハツラツな走りを披露。5周目でフェルスタッペンに余裕でトップを奪い返されてからは完全にコントロールされていましたが、こればかりはどうしようもありません。
別カテゴリーの人は横に置いといて、フォーミュラ1にのみクローズアップすると、レース中盤にマグヌッセンがPUトラブルでリタイヤし、セーフティーカー導入。そしてセーフティーカーが退いた後は、ノリスがハードタイヤを履いていたのに対して、3位に上がってきたハミルトンはソフトタイヤだったにもかかわらず、見事に抑えきりって2位でフィニッシュ! 天晴です!


ノリスの走りは活きが良くてワクワクしますね。今シーズンはチームの低迷で、本人の士気もイマイチ上がらない様子だったので、快心の笑顔を見ることができて何よりです。
レース後、ハードタイヤを履かせたチームの戦略に疑問を呈していましたが、セーフティーカーが入った時点の残り周回数や、アップデートしたマシンのデータが足りないことを考えれば、無難な戦略をとったのは仕方ないでしょう。ノリスも後から説明を聞けば、納得したんじゃないでしょうか。
惜しくも表彰台を逃したピアストリも、ラッセルにつけ入る隙を見せない、ルーキーらしからぬ走りで4位ゲット。さすが下のカテゴリーで参戦1年目にしてタイトルを獲ってきた逸材です。これからノリスとバチバチの競争をしてくれそう。

さて、ウイリアムズの復調は、マクラーレンよりビックリでした。これまでアルボンのがんばりでマシンのポテンシャル以上のポジションを獲得していましたが、今回はサージェントも良かったので、マシンが上り調子なのは間違いありません。さすがに予選〜決勝ではまだまだ力不足なのは否めませんが、それでもアルボンはフェラーリ勢より上位でフィニッシュしたのだからすごい。要るか要らないかは別にして、私から敢闘賞を差し上げます。

マクラーレンとウイリアムズの好調は、シルバーストンの特性とマッチしていたところもあるので、次戦以降もキープできるかは謎。実際、ノリスは低速コーナーではめちゃ乗りにくいままだと言っていますし。
にしても、シーズン中のアップデートでここまで効果が出ることって稀で、気持ちがいい。この調子で上位に食い込んで、フェルスタッペン以外の順位争いを盛り上げていただきたい。

唯一フェルスタッペンに対抗できる(かも?)と期待されたペレスは、どうしてしまったんでしょうか・・・・。モナコの予選でやらかしてからはまさに散々。10戦終了時の1位と2位の99点差は、F1史上最大というじゃありませんか・・・・。しかも、ドライバーズランキングを見ると、アロンソやハミルトンがすぐ後ろに迫っているワケで、もしペレスがレッドブルのエースだったら、タイトル争いの行方はどうなるのかわかりません。よく「F1はマシンで決まる」と言われるけれど、最後に決めるのはドライバーだというのがよくわかります。

日本GP〜フェルスタッペン連覇達成!

20221017

雨に見舞われた3年ぶりの日本GPは、雨降って地固まる、というか、もう随分前からカチカチに固まりまくってましたが、レッドブル〜フェルスタッペンがホンダのお膝元である鈴鹿で、2022年シーズンのドライバーズタイトル2連覇を決めました! おめでとうございます!!
個人的にはもうちょっとルクレールと接戦にもつれ込む展開を期待していたのですが、こればっかりはフェルスタッペンに何の責任もございません。素直に彼とチームを褒め称えるのがF1ファンというものでしょう。

今シーズンのフェルスタッペンがワンランク上にステップアップしたのは明らか。去年までのような強引なバトルは影を潜め、最大限の結果を確実にゲットするスタンスに変わりました。といっても無難にまとめるのではなく、限界を超えるほんの手前まで攻めている。このドライビングをどのレースでもできるドライバーだけがチャンピオン、強いては複数回チャンピオンになれるのでしょう。
フェルスタッペンも去年にタイトルを獲って心にゆとりができたことで、俯瞰的にレースやシーズン全体を捉えられるようになったのだと思います。もともと類稀な才能を備えたドライバーですが、いよいよ歴代チャンピオンの中でもトップクラスの領域に入ったんじゃないでしょうか。

チームも素晴らしい仕事でフェルスタッペンをサポートしました。シーズン序盤はマシンの信頼性に問題があったものの素早く対処。また、ストレートはレッドブル、コーナーはフェラーリが速い特性がありましたが、シーズン半ばくらいからはどこでも普通にレッドブルが速かった。現にペレスがルクレールを負かすことが多くなりましたから。実戦で明らかになった問題点をしっかり理解し、最善の改善策を見してマシンを進化させる。PDCAサイクルとかいう“できる人”が行う手法を実践しているところが、トップチームでありつづける大きな理由でしょう。

逆にフェラーリは、シーズン中の開発で方向性を見失った印象です。マシンの挙動はシーズン序盤と比べて明らかに鈍くなっているし、タイヤにも厳しくなっている。早いところ、どこで道を踏み外したのか見つけないと来シーズンに影響してしまうので、ビノットさん、どうぞよろしくお願いします。
今シーズンは完敗しましたが、今のところフェルスタッペンとタイトルを争う筆頭がルクレールであるのは間違いありません。今回のオープニングラップでも、あんなコンディションで素晴らしいバトルができるのだから、二人ともただ者じゃない。これからも熱い戦いをみせてほしいものです。

そして、忘れてはいけないのが、ベッテル。彼にとってはラストとなる鈴鹿。予選アタックが終わって、「アリガトウゴザイマス、スズカ」と、日本語のメッセージを聞いた時は涙腺のパッキンが壊れそうになりました。レース中にカッとなった時は「子どもか!」ということをしたこともありましたが、素は“いいヤツ”。最近はルックスも70年代チックになり、いい味出してる。そんな彼がレースでは持ち前の状況判断力を発揮して、今季ベストの結果を出したことも良かったですね。

世界中のメディアで取り上げられているようですが、ホントに鈴鹿に訪れるファンは素晴らしい! 贔屓のドライバーやチームだけでなく、すべてのドライバー、チームにリスペクトして、グランプリを楽しむ姿勢を見ると、またまた涙腺のパッキンが壊れそうになります。
今年の日本GPの観客数は結構多かったようですが、若い人たちも巻き込んでもっともっと盛り上がってほしい。
といいながら、本人はチケットの高さに腰が引けて、もっぱら自宅観戦ですが……。

イギリスGP〜サインツ初優勝!

20230708

サインツ、初優勝おめでとう!
初優勝の光景を見るのは誰であっても良いものですが、カオスなF1においてマイナス要素になることも少なくない、実直・まじめな性格のサインツだけに、うれしさもひとしおです。また、今シーズンは苦戦がつづいていたので、自信を取り戻すだけでなく、キャリアのターニングポイントとなり得る大きな1勝といえるでしょう。

サインツはここ数戦復調の兆しがあり、イギリスでもフリー走行からいい感じで走れていたので、「いいとこ行くかも」という期待はありました。そして、予選Q3でルクレールとフェルスタッペンがベストラップを走れなかったラッキーもあり、初ポール奪取。決勝も堅実に走りきって勝利を手にしました。
今回のレースで、たとえ最速でなくても自分のベストを尽くし、何かあった時に成果につなげられる位置にいることが大切だと、改めて実感した次第です。これはレースに限らず、すべてにいえること。諦めず、くさらず努力しつづければ、いつか報われる・・・・・かもしれません。少なくとも良い結果を生む可能性は高くなるはず。そんな当り前だけれどなかなか実行できないことを、自分の半分の年齢の若者に教えてもらいました。と言いながら、すでに明日の仕事をいかに楽しようかと考えている自分がいます。

さて、フェラーリのエースであるルクレールはというと・・・・・、またまたアンラッキーな流れで4位という不本意な結果に。
大きな要因となったのが、これまたチームの“おれたち”戦略。確かに今回は、サインツが優勝したのでミスとはいえないかもしれませんが、やっぱりトイレを出た後も尿道に小便が残っているような違和感を感じます。
まず、オコンがリタイヤしてセーフティカーが出る前にルクレールがサインツの後ろで詰まっていた時、なぜもっとはやく彼を前にいかせなかったのか。もちろん両ドライバーに勝つチャンスを与えるというチームの姿勢は良いと思いますが、あの時は明らかにペースの差があり、後ろからハミルトンが迫っていたので、チームメイト同士でやり合う状況ではありませんでした。結局サインツのペースが遅く、順位を入れ替えたわけですから。もし、はやく順位を入れ替えていれば、もっとギャップをつくれていたかもしれません。結果論でいえば、ダブルでタイヤ交換もできたはず。

もっと好き勝手にいわせてもらえば、セーフティーカーが出た時にルクレールもソフトに履き替えさせた方が良かったと思っています。トップを走っている時はポジションキープがセオリーとはいえ、ハードで走り続けても勝算は低かったんじゃないでしょうか。
チームとしては、「ルクレールとサインツのどっちが勝ってもいいや」というスタンスで、とにかくハミルトンに優勝させないことを最優先に考えての判断でしょうけど、傍から見ると日和ってるように映るんですよね。
レース後、納得がいかないルクレールをなだめるビノットさんの頼りなさげな表情がそれを表しているように思えてなりません。
今後のタイトル争いをするうえで、どっちのドライバーが勝ち目があるのかを考えても、ルクレールに比重を置いた戦略をとった方がよい気がします。

話は変わりまして、メルセデスの復調も今回のトピックスのひとつ。今シーズン悩み続けているポーパシングとバウンシングが大幅に改善されて、ペースも向上。特にハミルトンは持ち前のレースマネジメント能力を発揮して、レース中盤以降、トップ集団とやり合う場面も。ルクレールとのバトルは、はらわたがギュッと縮こまるくらいしびれました! 両者ともあれだけ激しくやり合ってもぶつからないところが、S級ドライバーといったところ。メルセデスにははやく、トップ2チームに追いついていただきたい。

一方、開幕から抜群の安定性を見せつけてきたラッセルは、ついにリタイヤ。おまけに多重クラッシュの要因をつくってしまいました。
予選で上位につけず、ハードタイヤでスタートという賭けに出たことが裏目に出ましたね。彼の思いきりの良さはすごく好きなのですが、ちょっとこのところリスクヘッジとのバランスが崩れているような・・・・。ウイリアムズなら一か八かのギャンブルは有効なんですけど、メルセデスドライバーとしては可能な限りポイントを持ちかえることが大切。といっても、しこしこポイントを取るだけのドライバーはつまらない。ラッセルは大きなポテンシャルをもっているだけに、むずかしいところです。
とはいえ、フェルスタッペン、ルクレール、ラッセル、ノリスという超優秀な同世代ドライバーがガチンコでタイトル争いをする、夢のようなシーンは確実に近づいています。

フェラーリ、実力の1-2フィニッシュ!

20220323

いやぁ、いきなり波乱の開幕戦でした。去年、いや今年のプレシーズンテスト、いやいや土曜の予選終了後でも、フェラーリの1-2フィニッシュを予想した人はほとんどいなかったんじゃないでしょうか。残念ながらが、「ワンチャンいけるかも」と予防線を張っていた程度の方は、予想ハズレとさせていただきます(僕もその一人です)。
実際メディアでも、レースになればレッドブル〜フェルスタッペンがぶっちぎるという下馬評でした。しかし蓋を開けてみると、フェラーリは一発の速さだけでなくレースペースも速かった。しかも優勝を飾ったルクレールの走りからすると、まだ余力を残しているようにも感じます。
それにしても1回目のタイヤ交換後のフェルスタッペンとの抜きつ抜かれつの攻防は見応えがあり、二人ともドライバーとして成長したことが伝わってきて熱くなりました。2〜3年前なら、どちらも強引な走りをして接触というパターンだったでしょう。ルクレールはチームメイトのサインツと比較しても週末通じて上回り、存在感を発揮。まさに面目躍如といったところ。

今回の開幕戦はフェラーリの予想以上の速さをはじめ、メルセデスの“実は三味線弾いてないんじゃね?説”、“ハース&アルファロメオかなり速い説”、“マクラーレン地味にヤバい説”など、「もしかして」が現実化する展開に。メルセデスは三味線こそ弾いていませんでしたが、バルセロナテストからゼロポッドを試した方が良かったですね。結果論ですけど、コンスト8連覇の過信があったかもしれません。
それでもハミルトン3位、ラッセル4位をゲットするあたりはさすが。個人的にラッセルがハミルトンを速さで上回ることを期待していたのですが、そう甘くはありませんでした。やっぱり7タイムズチャンピオンはすごいわ。
ラッセル本人はそのヘんのところは冷静で、表立ってライバル意識は出さず、「大先輩をお手本にして成長していく所存です」という態度を崩さない。もちろん内心では「絶対に勝ったるで!」と思ってるんでしょうけど、今は吸収できることは吸収して、良きタイミングが来たら真っ向勝負するつもりなんでしよう。ハミルトンとラッセルの関係は、これからの楽しみのひとつです。

それと、本家AMGだけでなくマクラーレン、アストンマーティン、ウイリアムズと、メルセデスのカスタマーチームが振るわなかったところをみると、PUに何か課題があるのかもしれません。しかし、そこはメルセデス。ヨーロッパラウンドあたりには改善してくるでしょう。フェラーリ、レッドブルはそれまでにポイントを稼いでおきたいところです。

PUといえばホンダが全面サポートする、RBPTのPUを積むレッドブル勢は、4台中3台リタイヤと厳しい結果に。今のところ原因は明らかにされていませんが、燃料ポンプの不具合と考えられている様子。テストで限界までプッシュしなかったため、実戦状態でのチェックができなかったことが痛かった。むぅ、これもメルセデスと同じく、能ある鷹が爪を隠したことがトラブルにつながったような・・・・。そろそろトップチームのなかで「爪を隠し合いって、デメリットの方が大きくね?」という議論が出てきていいと思います。

さて、今回ファンや関係者を驚かせたのが、フェラーリ製のPUを搭載するハースとアルファロメオ。特にハースは急遽マゼピン坊ちゃまに代わってレギュラードライバーに指名されたマグヌッセンがはりきって、5位に食い込む大活躍。以前から「やればできる子」と応援していたドライバーなのでうれしいです。

アルファロメオもトラブルは多いものの、戦えるマシンをつくってきました。予選でハミルトンの横に並んだボッタスにすれば、してやったり!でしょ。スタートでは去年までと同じようにやらかしてしまいましたが、そこから挽回して6位でフィニッシュしたのは本当に速い証拠。
今回のレースをみる限り、去年とくらべて劇的にオーバーテイクが増えた印象は受けませんでしたが、ボッタスの追い上げからするとレギュレーション変更は効果があるように思います。

一方、バルセロナで評価が高かったマクラーレンは急下降。正直、マクラーレンの不発がいちばんの番狂わせでした。
「フィーリングは悪くないけどタイムを見ると遅い」、「なんかよくわからんけどグリップがない」というのがドライバーの声。これって、いちばん面倒なヤツやん。マクラーレンの躍進を期待していただけに残念だし心配。

しかしまだ、シーズンははじまったばかり。各チーム様子見という部分もあるはず。次のサウジアラビアで、今シーズンの勢力図がより鮮明に見えてくるでしょう。

F1を愛し、F1から愛されたライコネン

20220314

キミ・ライコネンが2021シーズンをもって、19年に及ぶF1キャリアに幕を下ろしました。彼のクールなスタンスからすると、まさかここまで長く走ると思いませんでした。正直、1回目のフェラーリとの決別で「F1はもういいわ」という気持ちになっているだろうと思っていたので、ロータスからカムバックした時は意外でしたし、フェラーリへの復帰はさらに驚きました。

僕にとってライコネンは贔屓の一人でしたが、彼ほど掴みどころのないドライバーはいませんでした。『北斗の拳』に例えるなら、風のジューザ。超マイペースな性格だけでなく、天賦の才に恵まれなが、どこかそれを最大限に発揮しきれない印象を受けるところも共通するように思うのです。
ライコネンに関しては、とにかくマクラーレン時代のカミソリのようなキレた走りのインパクトが強烈でした。2005年の鈴鹿での16台抜きは、完全に伝説になっていますね。
しかし、その後のキャリアについては「凄いんだけれど、もっと速いドライバーじゃなかったっけ?」という、歯がゆさを感じつづけていたのが正直なところ。特に2度目のフェラーリ在籍時はキャリア後半だったことや、チームメイトが全盛期だったこともあり、後塵を拝することが多くなってしまいました。事実上セカンドドライバーだったのは仕方ないにしても、チームから“それにしても”な扱いを受ける姿を見るのは辛いものがありました。

ライコネン自身はファンれよりも遥かに悔しい思いをしているにもかかわらず走りつづけたのは、F1というトップカテゴリーでレースをすることを愛していたから。世界中のいちばん凄いヤツらを打ち負かす。そのことだけが、ライコネンのモチベーションだった。彼とは一言も言葉をかわしたことはないし、死ぬまで話すことはないでしょうけど、それだけは分かります。
ライバルを打ち負かすことしか興味がないから、チームメイトやチームに対してややこしい動きをしない。彼の中ではそういうことをして勝っても気持ちよくないのでしょう。
彼のそうしたスタンスが走りや、ぶっきらぼうだけれどどこかユーモアのある言葉からヒシヒシ伝わってくるから、多くの人が彼を応援したのだと思います。僕もその一人。

通算21勝、ポールポジション18回、表彰台103回、ファステストラップ46回、タイトル獲得1回という数字が、彼のドライバーとしての能力を正確に表わしているのかは分かりません。
でも、彼の魅力や存在感は、この数字よりはるかに大きいことは間違いありません。

アブダビGP〜劇的過ぎる展開でフェルスタッペン初タイトル

20211224

まずはフェルスタッペンにとって初となるドライバーズタイトル、おめでとうございます!
彼がトロロッソからレッドブルに昇格していきなりライコネンをおさえて優勝してしまい、度肝を抜かれてから短くない年月が過ぎましたが、ついに絶対王者ハミルトンを下してテッペンに立ちました! タッペンがテッペン・・・・・、オヤジになるとダジャレを止めるパッキンが緩んでしまい申し訳ございません。

フェルスタッペンがデビューして随分経ったといってもまだ24歳。しかもメルセデス〜ハミルトンに勝負できる体制が整ったのは今シーズンがはじめてなので、初優勝の時と同じくワンチャンスを確実にモノにしたといえるでしょう。

それにしても今シーズンの最終戦は“筋書きのないドラマ”といいますか、見えない力によって“筋書かれたドラマ”といいますか、とにかくとんでもなく劇的な展開でした。
僕はメルセデス〜ハミルトンのファンでも、レッドブル・ホンダ〜フェルスタッペンのファンでもありませんが、心情的には「もういい加減、誰かにメルセデス〜ハミルトンを負かしてほしい」と思っていたクチです。ですが、同時に最近飛び交っている“メルセデス忖度説”は完全にスルーしているクチでもあります。
シーズン通してどちらにも有利・不利になるジャッジが下されており、依怙贔屓なんかではなく、単にレースディレクターであるマイケル・マシさんのオロオロが問題だっただけのように思います。逆に一貫性のないジャッジを一貫して下してくれたおかげで、シーズン通して丁度良いバランスになったんじゃないでしょうか。
両チームの戦略、両ドライバーのドライビングに関しても、多少行き過ぎて問題になったことはあるにせよ、「タイトルかけて戦っているんだから、それくらいのことはするでしょ」レベル。
F1が好きなら、ここは相手をヤジるのではなく、歴史に残る激しく熱い戦いを繰り広げてくれた両陣営を讃えたいところです。

最終戦に至る流れは、シーズン終盤のブラジルGPからビックリするくらいハミルトンが速くなり、フェルスタッペンとのポイント差を縮め、最終戦を前にして同ポイントに。勢いは完全にメルセデス。ただ、優勝回数でフェルスタッペンが有利なため、いつもに増して強引なタッペン走法をするのではないかという不安も。そして、経験豊富なハミルトンがそれをどう交わして前に出るかが注目されていました。
そんな中フェルスタッペンがポールを奪取。改めて彼の強心臓に驚きました。普通なら脚ガクガクでまともにアクセルワークできないでしょ。
そうはいってもQ2でミディアムタイヤにフラットスポットをつくったり、決勝のスタートで出遅れたりするところに、彼の緊張が伝わってきました。

決勝はソフトを履いたフェルスタッペンが、ミディアムを履いたハミルトンに先行されたことで、俄然ハミルトンが有利になりました。改修されたヤス・マリーナ・サーキットは抜きどころがあまりなく、しかもフェルスタッペンのタイヤは早々にタレはじめ、ジリジリと引き離される苦しい展開。
第2スティントもペレスが必死のパッチの抵抗でハミルトンをおさえたおかげで、一時はフェルスタッペンとのギャップが縮まったものの再び引き離され、レッドブルとしては手の打ちようがない状況。

しかし、長くF1を観戦している人ならおわかりになると思いますが、こういう時に限って“何か”が起こるんです。しかも今回のレースは、そのニオイがプンプン漂っていた。諦めが早いいつもの僕なら、「ま〜けた」と居眠りしてしまうところですが、今回ばかりは左斜め上から電波が届いたこともあり、よそ見をすることなく観戦をつづけていました。

そして、ラスト5周でのラティフィのクラッシュ! からのセーフティカー。そしてそして、ラスト1周で見せた執念の大逆転! もちろんフェルスタッペンも凄かったのですが、摩耗したハードタイヤでほぼ新品ソフトタイヤのフェルスタッペンを抜き返そうとするハミルトンにも鬼神を感じました。

正直、マシの対応には疑問符が残りますが(忖度ではなく、単に不手際という意味で)、前述の理由によりスルーで良いでしょう。
また、今回のフェルスタッペンの勝利はラスト1周の展開だけでなく、ペレスのがんばりがあったからこそ、セーフティカーが入った時にハミルトンがタイヤ交換できなかった。そしてもうひとつ、ボッタスが中団に埋もれて、ペレスを攻め立てられなかったことも大きな要因となっています。そうしたことを合わせると、やっぱり結果通りで納得です。

プレッシャーから解き放たれ、喜びを全身であらわすフェルスタッペン、マシンを降りず虚空を見つめるハミルトン、ヘッドセットをもぎ取るトト、みんなカッコ良かった。そして、自ら勝者に歩み寄り、ライバルを祝福したハミルトンは7度のチャンピオンに相応しい。

世界から度が過ぎた才能の持ち主が集まり、度が過ぎた情熱でタイトルを争うF1。今シーズンは、その魅力を存分に楽しむことができました。ありがとう!

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