KITSCH de F1

F1徒然日記。

ベルギーGP〜悲劇のラッセル

20240811

よく“もってる人”、“もってない人”なんて言い方をしますが(僕は完璧に“もってない人”です。キリッ!)、それはF1ドライバーにも当てはまります。
たとえば、“もってる人”は、派手に接触してもダメージが少なく走り続けられたり、スタートでリタイヤしても赤旗で復活できたりすることが多い。それはシューマッハやハミルトン、フェルスタッペンなど、大体は複数回チャンピオンに輝いたドライバーだったりします。
逆に“もってない人”は、「なんでここで?!」という展開になるんですよね。
まわりくどい言い方をしてすみません・・・・。要するにラッセルのことです。なぜ、あれほどエキサイティングなレースをして快心の勝利をもぎ取り、喜びを爆発させた直後に、奈落の底に突き落とされるのか。不憫でなりません。

今回のレースの主役は、ほぼ僚友のハミルトンでした。スタートでペレスをかわし、早々にルクレールをオーバーテイクした後は安定してマージンをキープ。怒涛の追い上げが期待されたフェルスタッペンも浮上できなず、「このままハミルトンが勝つのか」とまったりしておりました。当然ながら第二スティントをのばして暫定トップを走っていたラッセルに関しても、2回目のタイヤ交換をして、フェルスタッペンの前後に落ち着くものだと思っていました。が、一向にピットインする気配はなし。「はやく入らんとますます順位を落としてしまうがな」とボヤいていたところ、1ストップで走りきろうとしていることが判明。といっても、その時点では残り周回は結構ある。ワクワクはしたものの、ラッセルはよくこういうギャンブルを仕掛け、大体はうまくいってないので、今回もいずれタイヤで有利なハミルトンにオーバーテイクされるだろうと、高をくくっていました。
ところが、ハミルトンとの差は思いのほか縮まってこない。しかも、ラッセルは限界まで攻めず、最後の最後で踏ん張りが効くようにタイヤマネジメントをしている。これはイケるかも・・・・。期待感が、吉牛の特盛を食べた後の胃袋のように膨れ上がります。
そして終盤、ついにチームメイト同士のデッドヒートが開始。ハミルトンは激しく追い立て、ラッセルは懸命に堪える。ここでお互いに無理をして一線を越えてしまえば、1-2体制が台無しになるチーム的には心臓バクバク状態。
ラッセルは、ペースは劣るもののタイヤマネジメントしていたおかげで、インをつく隙を与えず周回を重ねることができ、逆にハミルトンが最後にスライドさせてしまい、勝負あり! ラッセル、後半の快進撃の狼煙となる劇的な今季2勝目、通算3勝目!
ここ数年、こんなに興奮するレースにお目にかかることはなく、ラッセルの喜ぶ姿を見て、こちらもテンションが上がりまくりました。
しかし・・・・・・・・、それから数時間後にネットを見ると、「失格」の文字が。なんやろ、この感じ。4位や5位でフィニッシュしたレースではなく、よりよよってトップチェッカーを受けたレースでこんなことになるなんて。
思えば、彼がハミルトンの代打としてメルセデスデビューを飾った際、勝利を目前にしながらトラブルが発生して下位に沈んでしまった記憶が蘇る。気のせいか、その後もマシントラブルはハミルトンより多いように思います。いやぁ、つくづくツイていない人だなと。
ただ、ラッセルは頭がいい人なので、きっとこの悔しさをプラスに変換して後半戦に臨んでくれるでしょう。個人的に台風の目になると思っています。

後日、あるネット記事を見ると、トップチェッカーを受けたにもかかわらず勝利を逃したF1ドライバーは、ラッセル以外に過去5人いるとのこと。そのメンツはジェームス・ハントにネルソン・ピケ、アラン・プロスト、アイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハ。なんと、ワールドチャンピオンばかりじゃないの!! ラッセル、“もってる人”だした!!

バーレーンGP〜イヤになるほどのレッドブル完勝

20230314

2023年シーズン、終了のお知らせです!
開幕戦で早くもそう言いたくなるレッドブルの完勝でした。テストからその雰囲気は漂っていたので特にびっくりすることはありませんでしたが、現実のものになってしまうとみるみるテンションが下がってしまいます。(レッドブル、フェルスタッペンおよびホンダファンのみなさま、申し訳ございません……)

正直なところ、レッドブルとその他のトップチームとの間にどれくらいのギャップがあるのかわからないくらいの無双ぶりでした。私の見立てだと、ラオウと炎のシュレンくらいの実力差があるような気がしないでもありません。
予選3位につけたフェラーリ〜ルクレールが新品タイヤでスタートする賭けをしてペレスをかわしたものの、その後はデグラデーションによってどんどんペースが落ちていく展開。それに対してフェルスタッペンは、中古タイヤでペースを温存。にもかかわらずルクレールより速いペースをキープ。
さらにレットブル勢は第2スティントで、ウイリアムズ以外のチームがハードタイヤをチョイスするなかソフトタイヤを選び、ペレスがルクレールを抜き返して1-2体制完了。タイヤの保ちもレベチであることが判明。まさにパーフェクトウィンで、ライバルにとってはどの角度からも勝ち目のない状態でした。

そんな退屈な展開のなかで盛り上げてくれたのが、御年41歳のアロンソ。予選でワークスのメルセデスを上回り、決勝のオープニングラップではめずらしく順位を下げたものの、今年のアストンマーティンのマシン特長であるレースペースを活かして、メルセデス勢とフェラーリ〜サインツを料理。特にハミルトンとのバトルは白眉でした。
何度もいってますが、アロンソのオーバーテイクはホントにおもろい!
ひとつのコーナーやブレーキングで勝負するのではなく、サーキット全体をつかって攻略するんですよね。だから技の引き出しが多い。
しかも普通は年齢とともに動体視力や反射神経が落ちてきて切れ味が鈍ってくるはずなんですけど、彼の場合その徴候はなし。ちょっとお医者さんに診てもらった方がいいんじゃないかと思うくらいです。
ストロールもいいポジションでフィニッシュしたので、アストンマーティンのマシンがポテンシャルのあるのは間違いありません。この調子でこれからも暴れてほしい。

もう一人のベテラン、ヒュルケンベルグも予選でいい走りをみせてくれましたね。ただ、それを決勝の結果につながらないのは相変わらずですが……。ハースのヒュルケンベルグ&マグヌッセンのいい味滲み出てるスルメコンビは贔屓にしているので、がんばってもらいたい。

第2戦のサウジアラビアでは、フェラーリやメルセデスにちょっとでもレッドブルとの差を縮めてくれることを期待しますが、むずかしいやろなぁ……。

リカルド、マクラーレンから離脱決定

20220908

火のないところに煙は立たぬ。
シーズン序盤からウワサにのぼっていたリカルドの去就について、マクラーレンは当初の契約期間から1年早く繰り上げて、今シーズン限りで契約解消することを発表しました。
夏休み前に「僕には契約がある」と言っていたリカルドですが、結果的にはウワサ通りになってしまいました。彼がマクラーレンに加入してからの成績や走り、最近の空気感からして、この展開に驚きを感じた人は少ないでしょう。ただ彼は間違いなく実力のあるドライバーであり、マクラーレンに移籍した時の期待の大きさからすると、今回の契約解消は意外であると同時に残念です。

それにしても、どうしてこれほどまでのスランプに陥ってしまったのか。マシンの特性がドライビングスタイルに合わないのか、単にノリスが速すぎるのか、それとも年齢による衰えなのか…。
クセが強いといわれるマクラーレンのマシンに慣れるのに、ある程度の時間は必要でしょう。しかし、もう1年半が経ちました。リカルドはレッドブルからルノーに移籍した際、1年目のシーズン前半はしっくりこない様子が伺えたものの後半はしっかりアジャストしてきました。ということは、マクラーレンのマシンは、ノーマルな人からすると引くくらいド変態な癖をもっているのか? 前任のサインツは乗りこなしていたので、そこまでとは思わないんですけどね。

ノリスとの比較も同じです。確かにノリスはイキが良く、速い。でも、ノリスvsサインツがほぼ互角だったことを考えると(こういう比較はあまりあてにはならないとはいえ)、ここまで大きな差がついてしまっているのは不思議。
予選はタイム的には近づく時もありますが、ほぼ全敗。しかも予選の平均リザルト(オランダGP終了時)は、ノリスの7.86に対してリカルドは11.93。4グリットの差があり、ノリスはほぼほぼトップ3チームのすぐ後ろにつけているのに対して、リカルドはQ2脱落ということになります。そして肝心の獲得ポイントも、ノリスが82ポイント(ランキング7位)、リカルド19ポイント(13位)と大差。リカルドのポイント、やらかしまくっているマグヌッセンより少ないんですよね…。

この状況は、コンストラクターズランキングでアルピーヌと争っているチームとしても頭が痛いところで、来シーズンのことを考えると放置しておけません。そうした苦境のなかで将来有望なピアストリに目をつけてじっくりと下ごしらえをして、アルピーヌが隙を見せるとすぐさま獲得した手際はお見事!

結果論になりますが、マクラーレンとリカルドの関係も、特に大きな問題はないものの、どこか水が合わないような気がしないでもありません。
こんな状況がつづくと、いくらメンタルが強いF1ドライバーでもモチベーションが下がったり、自信が揺らいだりすることもあるでしょう。リカルド的には、何かひとつ問題があるわけではなく、さまざまな領域でちょっとずつうまくいかないことがあり、それが積み重なって調子を崩してしまったんじゃないでしょうか。
そんな状態で来シーズンもマクラーレンに留まるのは、お互いハッピーではありません。そういう意味で今回の離脱は、双方にとって良かったように思います。
リカルドには新天地で活躍し、ニコニコの笑顔を取り戻してくれることを期待しています。シューイは特に取り戻さんでいいけど。

アゼルバイジャン&カナダGP〜レッドブル独走状態に

20220629

加齢のせいでどんどん記憶力が頼りなくなり、ちょっと前に行われたアゼルバイジャンとカナダのレースのことも、はっきりと覚えていない状態ではありますが、レッドブルが独走状態になっていることだけはハッキリと認識しております。

勝てる時にしっかり勝ちきるレッドブルとフェルスタッペンの強さは、抜きん出ていると言わなければなりません。中長期的な計画に基づいてチーム体制の構築とマシン開発を行い、レース毎に綿密な戦略を練って実行し、結果に結びつける。あまりにも自分と真逆過ぎて笑えてくるほどです。
とびっきり優秀な人材が集まるF1においても、こうしたプロセスを高次元で実行できるのは、今のところレッドブルとメルセデスだけじゃないでしょうか。残念ながら、そこにフェラーリは含まれておりません。確かに昨シーズン1年を棒に振りながらも、今シーズン戦えるマシンをつくってきたことには、トップチームの底力を感じました。
が、同時に現代F1において急激な成長は至極むずかしことも実感することに。マシンに関しては、パワーアップのためにPUにかなりの負荷がかけてしまっているのは間違いないでしょう。
さらに、チームもシーズン序盤はマシンの優位性で目立たなかった“俺たちのフェラーリ”が、レッドブルに追い上げられたせいで顔を出すようになってきています。マシンの質向上と同じくらいに、いや、それ以上にチームの質向上はむずかしいんですね。

このあたりに関して、チーム代表を務めるマッティア・ビノットさんは得意でない雰囲気が漂っているので心配です。お家芸の内紛がはじまってもオロオロするばかりで、最後は人のせいにするような・・・・・。パニック映画で登場する、さんざん人のせいにした挙げ句、悲惨な最期をむかえるキャラにかぶってしまいます。(ビノットさんファンの方、申し訳ございません!)

チームとドライバーは運命共同体とはいうものの、今シーズンこれまでチームがやらかしたこと(これからやらかすこと)を考えると、ルクレールがかわいそうになってきます。彼が今シーズンに犯したミスは、エミリア・ロマーニャGPでのスピンくらい。後は本当にマシンの力をフルに発揮している。なのにドライバーズランキングでペレスに負けていて、ラッセルやサインツに迫られているって、相当チームが足を引っ張ってますよね。
一見、線が細く見えるルクレールですが、メンタル面は結構図太く、気持ちの切り替えもできるタイプのように感じるので、巻き返してシーズンを盛り上げてくれることを期待しています。

さて、このところ話題になっているのが、ポーパシングに関するレギュレーションの再検証。これは、ポーパシングとバウンシングに苦しんでいるメルセデスのアピールがきっかけになっていると思われますが、少なくともトト・ウォルフさんの今回の言い分は都合が良すぎるように感じます。
レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーさんが言うように、ポーパシング問題にうまく対処しているチームもあるわけで、メルセデスもポーパシングを解消したいなら、車高を上げれば済む話。完全に安全性をだしにして、自分のところのパフォーマンス改善につなげようとするやり方は、カッコいいものではありません。ただ、結果が求められるチームとしては、やれることはすべてするでしょうし、レッドブルやフェラーリだって同じ立場になれば同じようにアピールするでしょう。

FIAは、ポーパシングに関しては基本的にチーム側で対処すべき問題とし、根本的に改善すべき点があるかは今後検証していくという、真っ当な姿勢を示している様子。
これに驚いたのが、言い出しっぺのメルセデス。もし、ポーパシングによる振動の度合いに対して規制されることになれば、さらに自分のところのパフォーマンスにデメリットが生じる可能性がある。それで、慌てて「うちはグラウンドエフェクトによるポーバシングの問題は解決した。問題はサスペンションによるバウンシングである」みたいなコメントを出しました。
こうしたやりとりも、ちょっと引いてみると滑稽で、かわいらしさすら感じてしまいます。どうやったってロビー活動はなくならないのですから、こうした水面下での攻防戦もF1の一部として楽しんだ方が得な気がします。

ロシアGP〜ノリス躍動

20210930

ハミルトンとフェルスタッペンのタイトル争いが白熱する今シーズン、別枠でもう一人主役に挙げたいのがランド・ノリス。スピードと安定性に磨きをかけ、中団グループから一歩抜け出す目覚ましい活躍をみせています。
ノリスの走りは思いっきりが良くてトップドライバー独特のキレがあり、見ていてワクワク感がある。明るくポジティブなキャラと相まって応援したくなります。

前戦のイタリアGPではチームメイトのリカルドの優勝をサポートするかたちとなり、その鬱憤を晴らすように雨で濡れた路面から乾していくむずかしいコンディションの予選で果敢に攻め、初ポールを獲得。
2位にサインツ、3位にラッセル(また上位にきたッ!)という、これまでにない顔ぶれ。この前のベルギーGPといい、新しい時代は確実にはじまっています。
残念ながら調子の良かったガスリーは、チームのマズい作戦におかげでQ2敗退。アルファタウリはちょいちょい作戦でやらかしますね。

タイトル争いをする2人はというと、ハミルトンは“らしくらい”ミスもあり4位どまり、フェルスタッペンは前戦のペナルティに合わせて4基目のPU投入ということでアタックせず、最後尾からのスタート。
驚いたことにメルセデス陣営はボッタスにPU交換をさせ、フェルスタッペンを後方にとどめておく露骨な作戦を発動。ボッタスにすればテンション、ダダ下がり。案の定レースではビックリするくらい何の抵抗もせず、フェルスタッペンを先に行かせてしまいました。チームとしてはわざわざ後ろに下げた意味がまったくないガッカリな仕事ぶり。
そもそも、こういう後ろ向きの作戦は実直なボッタスには向いていません。昔のアーバインみたいに図太い神経と、ヒール役を楽しむくらいの割り切りのあるドライバーでないと無理でしょう。

スタートは、サインツがノリスを交わしてトップに。ノリスは慌てず騒がずサインツの後ろについてチャンスをうかがい、ラッセルは性能の劣るマシンでハミルトンをおさえるという展開。ハミルトンは来年、予選でラッセルに前へ行かれたら、そう簡単には抜けないと警戒感を強めたでしょう。

さて、13周目にサインツがタイヤ交換したことでノリスがトップに浮上。フェルスタッペンもラッセルを先頭にしたトレイン状態が続く間にポジションを上げ、気がつけばハミルトンのちょい後ろ。
そしてハミルトンがタイヤ交換のためピットに入ると、レッドブルは同じタイミングでフェルスタッペンを入れる。自慢の高速ピット作業でハミルトンとのに間にいた2台を交わし、あわよくばハミルトンの前に出たれ!というつもりだったのでしょうけど、うまくいかず。ハードを履いてラップタイムも良かったので、もう少し第一スティントをのばしてオーバーカットを狙いにいった方が良かったかもしれません。

前を塞ぐマシンがいなくなったハミルトンがノリスを猛追する展開になったものの、追いつくことはできても抜くのはむずかしい状態で、ノリス初優勝&マクラーレン2連勝は、ほぼほぼ決まりだと思っていました。
ところが残り5周となったところで、激しく雨が降りだしたじゃありませんか! 後方を走るドライバーがチャンスとばかりにインターミディエイトに履き替えるなか、ノリスとハミルトンはスリックのまま走行。
相手と自分の動きをみながら、どうする?!どうする?!と揺れ動くスリリングな駆け引きがつづく。これぞレースの醍醐味。
結局ハミルトンはインターミディエイトに替え、ノリスはスリックのまま走ることを選択。しかし、そのタイミングで雨はさらに激しくなり、ノリスは初優勝を逃す結果となりました。
結果論でいえばマクラーレン〜ノリスは間違ったジャッジをしたことになるのかもしれませんが、僕はそうは思いません。
そもそもハミルトンは、ある意味ノリスとは戦っていなかったのですから。彼の目的はタイトル。そのために今回彼が果たさなければならないミッションは、フェルスタッペンの前でフィニッシュすることでした。もしあそこで無理をしてクラッシュでもしようものなら、木を見て森を見ず。「今まで何を学んできたんや?!」と、トトさんからどやされるのがオチです。3位のサインツとのギャップが充分あったので、悪くて2位の選択をするのはそうむずかしいことではありません。
一方ノリスが目指すのは優勝ただひとつ。先に動けばハミルトンにステイされ、後に動けば確実に抜かれてしまう状況で、先にタイヤ交換するのはなかなかできることじゃありません。
初優勝を逃したことはノリス本人がいちばん悔しいでしょうけど、近いうちに必ずまた優勝のチャンスが巡ってきて、今回の経験が活きるはず。
こっちも彼の初優勝が待ちきれません。

イギリスGP〜遂に起こってしまった衝突

20210722

いつか必ず起こると、みんなが分かっていたハミルトンとフェルスタッペンの衝突がイギリスGPで起こってしまいました。
その予兆は、今回はじめて導入されたスプリント予選のオープニングラップで繰り広げられた激しい攻防からありました。この時は2番手からスタートしたフェルスタッペンがハミルトンをかわしてポールを獲得。スプリント予選の後、建前的に笑顔を見せていたハミルトンですが、このところフェルスタッペンにやられっぱなしなので内心は煮えくり返り、決勝は絶対にやり返してやるという気持ちがふつふつと沸き上がっていたに違いありません。

決勝レースのスタートは、フェルスタッペンの蹴り出しが若干鈍く、ハミルトンに迫られる状況に。それでもフェルスタッペンは懸命のディフェンスでポジションキープ。しかしコプスでハミルトンが少し遅れ気味ながらインをとり、そのままアウト側に膨れてフェルスタッペンを押し出し、クラッシュさせてしまう結果に。しかも高速コーナーのためマシンは大破。フェルスタッペンもかなりの衝撃を受けてヒヤリとしましたが、幸い体は無事だったようで何よりです。

どちらに非があったのか? それはハミルトンにペナルティが出たことで決着がついています。一部の人が言うように、ハミルトンが故意にフェルスタッペンを飛ばしたということは、自分が負うリスクを考えてもまずないでしょう。個人的には、ハミルトンはもっとやりようがあったと思いますが、フェルスタッペンも結構ハードだったし、よくあるレースインシデントという印象です。
ただそれとは別に、ルール的に10秒加算ペナルティは軽いんじゃないのというモヤモヤ感は拭えませんが・・・・。

また、もうひとつ話題になっているレース後のハミルトンのはしゃぎっぷりについては、確かに見ていて「んッ?」と感じたのが率直なところです。
母国グランプリでの逆転勝利で、ついついうれしさが爆発してしまったのかなと思っていたら、どうもハミルトンとチームはそもそも自分たちに非はなく、ペナルティに不満を感じていた様子。にしてもフェルスタッペンが病院に送られるほどのレースインシデントが起こったのですから、メルセデスはチームとしてもう少し配慮があってもよかったと思います。

さて、F1初となったスプリント予選は予想外に盛り上がりました。当初はリスクを避けるためにトレイン状態になるとも予想されていましたが、蓋を開けてみると、失うものがない中団・下位チームのドライバーが勝負をかけてくると、その前を走るドライバーも順位を落としたくないのでプッシュしなければならず、さらにその前を走るドライバーも・・・・という連鎖反応が起こり、なかなか白熱の展開になりました。従来のフリー走行もこれまで以上に限られた時間内でセットアップしなければならず、緊迫感アップ。
これは今後もテスト的に実施して、手応えがあれば来シーズン以降も年間数戦導入していいんじゃないでしょうか。
何事も事前に熟考することは必要ですが、実際にチャレンジすることが大切だと改めて感じました。

これからハミルトンとフェルスタッペンの戦いはヒートアップするのは間違いありませんが、後味の悪い結果にならないことを願っております。

アゼルバイジャンGP〜終盤にダブルインパクト!

20210609

いろんなことが起こり過ぎて、結局のところ誰が得をして、誰が損したのかわからない感じになったアゼルバイジャンGP。
タイトル争いに絞れば、ポイント的にはレッドブル〜フェルスタッペンが損したのかもしれませんが、心理的ダメージはメルセデス〜ハミルトンの方が遥かに大きいといえるでしょう。

なぜなら、フリー走行から決勝まで終始レッドブルが速さをみせていたから。ポールはルクレールが2戦連続で獲っちゃいましたが、赤旗が出なければフェルスタッペンが獲得していた可能性は高かった。
一方メルセデスはフリー走行から不調。いくら市街地コースで、タイヤに熱が入りにくい性質が顕著に出たといっても、今回のペースは深刻です。

予選はハミルトンが意地で2番手に入ったものの、決勝ではフェルスタッペンだけでなくペレスにも交わされ、ジリジリと離される展開に。ボッタスに至ってはずっと入賞圏外でモタモタ。来季のシートは黄色信号が灯ってしまいましたね。最近のトト・ヴォルフのボッタスに対する発言といい、ボッタス本人がいちばんそれを感じとっているでしょう。

そして、完璧なレースをしたレッドブル・ホンダがいよいよ1-2フィニッシュだと思った矢先、フェルスタッペンのタイヤがバースト!! 衝撃で思わず声をあげてしまい、奥さんに「びっくりする」と怒られてしまいました。

赤旗中断中に気持ちを落ち着かせ、レース再開。するといきなり第1コーナーでハミルトンがペレスを交わしそうになったところで「ググッ」と声が漏れ、そのままオーバーランしたところでまたまた絶叫。奥さんは「ホンマ、心臓ちぢむから」と言い残し、リビングから去っていきました。

レッドブル〜フェルスタッペンはメルセデス〜ハミルトンとの差を広げる絶好のチャンスを失ってしまいましたが、ペレスが優勝したことで最悪な状況のなかで最善の結果を得ることができました。
そういう意味でも今回のペレスの活躍は大きい。実際のところ、彼がレース再開時にトップにいなければ、ハミルトンは問題なくトップチェッカーを受けていたでしょうから。
レッドブル首脳の「ずっとこういうレースがしたかった」という声と、メルセデス首脳の「ボッタス何やってんの・・・・」という声が聞こえてきます。

今回のような荒れたレースになった要因として挙げられるのが、レース・ディレクターのマイケル・マシ。
レース・ディレクターになってから度々問題になる彼のジャッジのマズさ。彼のせいで「ガレージにいるメカニックさんがやった方がマシかも・・・・」と、殺人的につまらないダジャレが頭を過るほどです。
どうも彼は瞬時に状況を理解して、適切な判断を下すのが苦手なようですね。・・・・・って、それがレース・ディレクターの仕事ちゃうのッ!
ストロールのマシンが大破して、「さぁ、どんするの?」という時に映った、マシの目が泳いだ不安げな表情がある意味いちばんインパクトありました。

明るい話題としては、優勝をしたペレスを筆頭に、ベッテル、アロンソ、そして角田くんと、移籍・復帰・新人組がマシンに慣れてきた兆しが見えたことが挙げられます。アロンソはペース的にはまだまだ物足りず、角田くんもガスリーと比べるともう一歩といえなくもないですが、前進したことは間違いありません。この調子でヨーロッパラウンド、かき回してくれることを期待します。

ハースがマグロ放出

20201023

ハースがグロージャンとマグヌッセンとの契約を更新せず、来シーズンはドライバーラインナップを一新することを発表しました。
ちょっと前までチーム代表のギュター・シュタイナー親分は、少なくとも一人は残すと言っていたので、チームの経営状況が切迫しているのでしょう。
シートを失ったグロージャンとマグヌッセンは、キャリアを通じて期待されていたほどの結果を残すことはできませんでした(すっかりF1でのキャリアが終わってしまったような書き方ですみません)。グロージャンは一皮むけてステップアップできるかなという時期がありましたが、モノにすることができませんでした。マグヌッセンに至ってはデビュー戦2位という派手な登場だったにもかかわらず、結局それが最高順位となってしまいました。F1で活躍するって本当にむずかしい。

二人ともドライビングに粗い(荒い)ところがあり、クラッシュすることもしばしば。ネットの書き込みでは攻撃の対象にされることも多いですが、僕的には結構好きで応援してたんですけどね。ドライバーとしての能力もトップドライバーとまではいかないまでも、関脇的な存在として盛り上げてくれるくらいの力は持っていると思っています。
もうシュタイナー親分とのトリオコントが見られないと思うとさびしいです。
“マグロ”の二人には他のカテゴリーで活躍してもらいましょう。

さて、ここにきてシート争奪戦がざわついています。
いちばんの注目はレッドブル。マルコ博士のコメントによると、アルボン、ヒュルケンベルグ、ペレスが候補であることは間違いなさそうですが、タイトルを狙うのであれば確かな腕があるベテランを起用するのが無難。個人的には、ぜひともヒュルケンベルグを起用していただきたい。

アルファタウリは、ガスリーと角田が濃厚。ハース、アルファロメオはチームに持ち込む金額やフェラーリとの関係で決まってしまうので放っておきましょう。
気になるのはウィリアムズ。何やらレーシングポイントを追われたペレスが加入し、ラッセルがシートを失ってしまうのではというウワサが広がっているというではありませんか!
ラッセルに質問したところ「僕には契約がある」と、“シートを失うドライバーあるある”なセリフを言ったとか・・・・。
これは問題です。ただでさえ大きな才能を持っていながらウィリアムズでくすぶっている状態なのに、シートを失うことになったら彼自身やメルセデスだけでなく、F1全体のダメージになるかもしれません。
メルセデスは将来のために少なくとも今のシート維持、何ならボッタスと交代させるくらいのチャレンジをほしいなぁ。

ウィリアムズがチームを売却

20200823

新しいコンコルド協定にウィリアムズが合意して取りあえず安心していたら、すぐにアメリカの投資会社ドリルトン・キャピタルに買収されたことが発表されました。
彼らが無敵を誇っていた時代を目の当たりにした者としては寂しさを感じながらも、今のF1でチームを存続させるためには仕方ないのかなとも思います。マクラーレンがロン・デニス時代とは別の組織になったように、今回のチーム売却もプライベーターがサバイブしていくためのスタイルなのかもしれません。

昔ながらのファンにとって、マクラーレンとウィリアムズの存在は特別。洗練されていてスマートなエリート集団のマクラーレンに対して、ウィリアムズは叩き上げのレース屋。野球でいえば、巨人とヤクルト、ヤンキースとメッツのような関係。この対比がいい。
例えば、最新設備をいち早く取り入れたロン・デニスがウィリアムズのガレージに立ち寄って、「やぁ、フランク。君のところはまだ手作業をしているのかい」とドヤ顔をしているのを見て、フランク卿が「俺はなんて信じないね。ほら、あんたの自慢の設備、ショートしたみたいだよ」と、ワチャワチャやり合っているイメージがあります。
もう二人の姿を現場で見ることはないですが、今はトト・ヴォルフとクリスチャン・ホーナーが似たような感じでやり合っているような。でも、ロンとフランクのような、愛嬌というか牧歌的な雰囲気がないんですよね。

ウィリアムズの歴史を振り返ると、「あの時、こうしていたら違っていたかも」と思う、ターニングポイントがいくつかあります。
タイトルを獲ったヒルを放出して、激怒したエイドリアン・ニューウェイがチームを去ったことや、BMWとケンカ別れをしたことに加えて、CEOとして迎え入れたアダム・パーとの関係が早々に終わってしまったことも大きな要因だったように思います。彼がもっと長くチームに関わっていれば、フランク&パトリック時代からスムーズに脱却できたんじゃないかと。
フランク卿の頑固さや一徹さが、2000年以降は通じなくなり、柔軟性に欠け、時代の流れに対応できない、悪い方向に進んでしまったように感じます。
ところで、アダム・パーがF1を去ったのは、バーニー・エクレストンをマジで怒らせてしまったからといわれていますが、具体的にどんな衝突があったのか、野次馬根性で知りたい。

チームを買収したドリルトン・キャピタルは、チームの歴史を尊重して存続させることを重視するとコメント。ぜひとも、そうしていただきたい。
といっても投資会社なので、チームの価値を上げるために運営にも口を出してくるでしょうし、外部の人間をトップに据える可能性も高い。メリットがないとわかれば、情容赦なく手放すでしょう。
そういう意味では、舵取りは今以上に厳しくなるのは間違いありません。
クレア副代表には荷が重いようだし、ちゃんとした人が来るのであれば、トップが替わる方がチームにとっていいんじゃないでしょうか。
これをきっかけに盛り返して、次のコンコルド協定も交わしてほしいものです。

イギリスGP〜ヒュルケンベルグ カムバック

20200804

今回の主役はヒュルケンベルグ。
アロンソをはじめ多くのF1関係者から実力を認められながらも、ブッチギリの表彰台未登壇出走記録を打ち立て、2019年シーズンをもってF1キャリアはひとまず終了した彼。
ラストイヤーもリカルド相手にそこそこやっていただけに(本当は上回るんじゃないかと期待していましたが)、心残りな結末でした。

ところがドッコイ、終わっていなかった。ペレスが新型コロナウイルスに感染したため、急遽ピンチヒッターとして白羽の矢が立ったのです。 しかもチームは、今シーズン大躍進した「ピンクメルセデス」もといレーシング・ポイント。
「戦闘力のあるマシンに乗ればいい線行くはず」という都市伝説が、いよいよ明らかになる時がやってきたのです!
ドイツにいたヒュルケンベルグは木曜日の夕方にオファーを受けるとすぐさまイギリスに飛び、シート合わせをしたり、ストロールからレーシングスーツを借りたり、検査を受けたり、スーパーライセンス発行の手続きをしたり、その合間にシミュレーターに乗ったり大忙し。すべてをクリアしてGOサインが出たのは、フリー走行1開始10分前。
ぶっつけ本番ということで、予選ではストロールを上回ることはできませんでしたが、タイム差はそんなに大きくない。上々の結果といえるでしょう。
でも、脳内では期待が膨らみすぎて、いきなりストロールをちぎる光景が頭に浮かんでいただけに、ちょっと拍子抜け。
いやいや、はじめて乗るマシンの挙動を理解し、ステアリングにあるやたら多いボタンを覚え、日常生活では体験することのないGフォースに耐えることは、想像しているよりもずっとずっと大変なんでしょう。実際、ノリスやサインツも、ヒュルケンベルグの対応力に驚いているほど。
振り返ってみても、いきなりの代役で活躍したドライバーって、そんなにいないですよね。フィジケラでさえシーズン途中でフェラーリに移った時は苦労していました。これだけでも、マシンの力を限界まで引き出すことがどれだけむずかしかがわかります。
そもそも「ストロールに勝って当たり前」というのが失礼。今シーズンのストロールは、ペレスを凌ぐこともあるくらい。しかもこの人、表彰台経験ありますから。

そして、決勝。今回のレースは着実に完走して、マシンの理解を深め、次のレースで初表彰台という筋書きがヒュルケンベルグの頭にはあったでしょう。
しかし、どうしたことかマシンが動かない・・・・。みんなグリッドについているのに、彼だけガレージにポツリ。結局そのまま出走できずに終了。原因はPUのトラブルとのこと。
この光景をみて世界中の人が、「この人、やっぱり持ってないわ!」と声をあげたはず。彼には悪いですが、お約束といってもいいくらいの展開でした。
本人のコメントは、「僕にはこういう結果がお似合いさ」。
この人、スーティルが持っていた表彰台未登壇出走記録を更新した時も、「スーティル時代が終わり、これからはヒュルケンベルグ時代だ」と、イカすコメントを残していました。この感じ、好きです。
ぜひ次のレースで、記録打ち止めにしてください!

レースは終盤にメルセデス勢のタイヤバーストというハプニングがあったものの、彼らの速さが別世界であることは変わらず。フェルスタッペンとの予選のタイム差が1秒以上って、エグ過ぎます。
ルクレールは、レース展開のあやとはいえ、あのマシンで2回も表彰台に登るのはアッパレ。反面ベッテルはいいところなし。チームとの関係も冷え切っている様子。ベッテルはインタビューで「自信が持てない」と漏らすほどの重症。こんな空気感つくっちゃダメでしょ、ビノットさん。

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