「神は細部に宿る」などという言葉がありますが。

元巨人監督原辰徳氏にこのような言葉がありました。
「ことばには言霊があるだろう。プレーヤーの背番号には数霊というものがあるんだよ」
辞書には数霊という言葉は当然なく、きっと原氏の造語ではないかと思われますが。

ですが、確かに背番号には不思議な力が宿っているのです。
というわけで今日、紹介するこちらの本。

神は背番号に宿る
神は背番号に宿る
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佐々木 健一
新潮社
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数々の背番号にまつわるストーリーが紹介されています。

例えば「阪神の3」。
かつて「空白の1日」で世間を騒がした江川事件。
江川卓が一旦阪神に入団し、巨人へとトレードされるまでの数時間につけられた背番号が「3」。
(これは当時巨人監督長嶋監督へのあてつけとも言われているが真偽は不明)
そして、その数年前「ミスター・タイガース」掛布雅之が初めて3割を打ったオフにフロントから打診
された背番号が「3」。

後にライバル関係となる江川と掛布にとってほんの一瞬通り過ぎた背番号が同じというのも面白い。
またフロントからの打診も断り現役時代ずっと掛布が背負った「阪神の31」は、その後その背番号
の選手は活躍せず、「掛布の呪い」と言われ、数年空き番となったが、現在は二軍監督となった掛布
自らがつけている。

という話などがありますが、メインはやっぱり、巨人の「3」と「1」、特に「1」への猛烈なライバル心を
燃やし、幾多の名勝負を繰り広げた「阪神の28」江夏豊ですね。

江夏の背番号28「完全数」というのは小川洋子さんの小説「博士の愛した数式」でも取り上げられ
話題になりましたね。
【過去記事】博士の愛した数式

この「28」という背番号。
阪神入団にあたって「1」「13」「28」の中から好きな番号を選んでいいよ、と。
本当は「1」を選びたかったが、1歳上で高校時代に対戦し、こんな凄いピッチャーがいたんだと
驚き、自身と同じ左腕、鈴木啓示が近鉄で既に「1」をつけていたため止めて、「13」は縁起悪そう
ということで、最後に残った「28」を何となく選んだそうな(笑)。

勿論28が完全数だなんで江夏も知らない。
しかし、その完全数を背負った江夏の阪神時代はまさに「完全な投手」といえるくらいの八面六臂な
活躍ぶりでした。

その後阪神から南海へ移りストッパーに転向、広島で2年連続日本一に輝き、「江夏の21球」も生まれた。
優勝請負人として日本ハムに渡り、ここでもリーグ優勝、しかし西武に移籍した年、自由契約に。
南海以降の4球団では「28」をつけることはなかった。

その江夏の引退試合が、球団の主催でもなく「江夏の21球」を手掛けたNumberの文藝春秋の社員
が中心となって、東京都多摩市の「一本杉球場」という小さな球場で行われた、というのは自分も
本書を読むまで知らなかったし、実際あまり知られてないことだと思う。

この試合で、突如臨時監督として「ピッチャー美空」と当時の話題となった時事ネタでボケをかまし、
「ピッチャー交代、江夏豊!」とコールしたのが当時人気絶頂だったビートたけしさんだったとは!。
たけしさんファンの自分も知らなかったよ、ビックリした。
引退試合では数々の球友に見送られて、メジャー挑戦へと旅立ったのですが、この引退試合で
江夏が着たのが「阪神の28」でした。

あれから30年後、一本杉球場でのインタビューで、この球場で引退試合が出来て良かった、そして
「僕は28と巡り合えて良かったと思っています」と語っているのが印象的でした。


他にも様々な背番号に対するエピソード満載で野球好きにはたまりませんでした。
TVディレクターである著者の他の作品も読んでみたいと思いました。