横浜光ジム会長 A-SIGN.BOXING.COM 石井一太郎のブログ

バンコクなう。
昨日はロマゴンを2度倒したシーサケットも一緒に夕飯。
いろいろな話ができた。
彼も相当苦労してきているんだね。

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12月20日
IBFパンパシフィックSバンタム級タイトルマッチ
高橋竜平 vs マイク・タワッチャイ
の、予定だったんだが。

11月24日
タイ側から連絡が入る。
「タワッチャイがIBF世界挑戦者決定戦に出場することになった為、
高橋竜平とのIBFアジアパンパシフィックタイトルマッチをキャンセルします」

この試合が一旦決まったのが、
9月の終わりだ。
高橋は自費でフィリピン・ALAジムでのトレーニングを敢行、
11月には1試合調整試合を挟み、
この決戦に備えていた。

俺としては、
なんとか試合を実現させたい。
タイのプロモーターに代替案を投げる。
かなり勝手な言い分かもしれないが、
向こうのキャンセルも同じだからいいだろう。
ここからおよそ2週間に及ぶ熾烈極まる交渉に入る。
その一部をここで公開することにしよう。


2017年12月6日
試合が決定したとの報告と共に、
タイ側から書類、ポスターが送られてきた。

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ボクシングとムエタイの混合イベントなのね。
高橋の写真もある。
「ん?」
よく見てみると、
IBF AUSTRALASIAN JUNIOR FEATHERWEIGHT CHAMPIONSHIPとの記載。
「オーストララシアン?オーストラリアとは違うの?」
早速、ググってみる。

「オーストララシア」とは?
オーストラリア大陸
ニュージーランド北島
ニュージーランド南島
ニューギニア島およびその近海の諸島を指す地域区分である。

「日本人とインドネシア人がバンコクでオーストララシアタイトルマッチっておかしくね?」
「IBFから認可がおりたんです」

さらに細かく調べてみると、
「オーストララシア」とは、
オーストラリアとニュージーランドの2国のみを指すことが多いものの、
近海の諸島として、
インドネシアも含まれる。

「ほう」

ちなみに、
ニュージーランドでは「オーストララシア」という言葉は使われない。
その理由は「オーストラリア」に似ているから。
ということで、少し意味合いは異なってくるものの、
ニュージーランドでは「オセアニア」と呼ばれる。
そして、
この「オセアニア」には小笠原群島が含まれている。
小笠原群島は東京都小笠原村に属する。
東京都!
そう!
なんと!
地政学的には
IBFオーストララシアタイトルマッチを日本人とインドネシア人で争っても、
なんらおかしいことはなかったのである!
Q.E.D!
さすが国際ボクシング連盟IBF!
万歳!

ってなると思ってんのか?
おい、微笑みの国タイ人よ。
ナメてんのか?

「こんなものには出ない。Good bye」

そこから3日たち、
再び対戦相手候補が送られてくる。
「もういいよ。俺はIBFパンパシフィックタイトルマッチ以外は出る気はない」
「いま、IBFの認可待ちです」
数日経ち、認可がおりたとの報告。

という難航極めた交渉経緯の末、
IBFパンパシフィックSバンタム級タイトルマッチが決定した。
高橋竜平
12勝4KO3敗1分
vs
タイーチャイ・ジュンタラサック
15勝11KO4敗

情報はなにもない。
YouTubeで調べたら、
同姓同名の男のカラオケ映像が見つかった。

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「自分の人生をかけて」
20代で言葉にするとちょっとチープ。

ただ、そういうことなのかもな、って振り返れる試合が俺にもひとつだけあった。
2008年3月15日。
日本タイトルマッチ2度目の挑戦だった。
対戦相手は中森宏。
前評判では、圧倒的に中森だった。
この試合が決まってから、
俺に3月15日以降はなかった。
日本チャンピオンになりたいとかじゃないんだ。

奴に勝たなければ、
俺の今までは一体なんだったんだ?

毎日一緒に汗を流してくれるトレーナーはいるし、
家族や友人、オネーちゃんもいる。
でも、ボクサーというものは孤独だ。
刻一刻と'その日'が近づいてくる。
心身ともに疲弊していく。
いい日もあれば、うまくいかない日もある。
試合なんかなきゃいいのに、
って思う日も正直ある。
恐怖心や不安感を拭うためにやれることは、
ただただ一心不乱になることだけだ。

自分の力を信じることなのか、
自分にハッタリを言い聞かせることなのか、
自分は決して一人じゃないという安心感から開きなおるのか。
終着点は人それぞれ違うだろうけど、
どこかで自分の中でケジメをつけ、
腹をくくる瞬間がくる。

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ベルトが腰に巻かれた時に、
ふと現実に戻る。
俺はこれが欲しくて、やってきたんだと。
そして、勝手に涙が溢れてくる。

大橋君のベルト奪還の瞬間を会場で見届けて、
ふと、そんなことを思い出した。
チャンピオンと挑戦者では、
リングに上がるまでの腹の括り方が違う。
チャンピオンがこの心を持ち続けることは難しい。
だから、防衛戦は難しい。

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日本タイトルを幾度も防衛してきた人間が世界に挑む権利を持つ、
というロマンがある。
世界は獲れなかったものの、
金子大樹がボクシングファンから認められた理由は、
彼の日本王者時代の圧倒的な存在感だろう。
立派なボクサーだった。

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最後は、
16歳で上京するきっかけにもなった、
死にたいほど憧れた畑山隆則氏からの花束贈呈。

引退式翌日、
昨日の引退式はよかったね、
なんて心地よい二日酔いの朝。
マッチメーカーからの電話で目が覚める。
「急遽なんですが、
12月9日
ニューヨーク
マジソンスクエアガーデン。
ロマチェンコvsリゴンドーのセミファイナルで金子大樹どうですか?」


9月末、
テキサスにてドネア勝利の報。
この試合に向け、
横浜光ジムのトレーナーである北原がチームドネアに参加しセコンドにもついた。

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俺も行きたかったけどね。
でも大事な試合が決まっていた。 

それが一昨日のダイナミックグローブ。
バンタム級8回戦
千葉開【横浜光】6戦6勝5KO
vs
松原凌【帝拳】8戦7勝7KO1敗

日テレのアナウンス部に今回の対戦表が送られてきた時、
この試合決定にアナウンサーの方達がざわついたと言う。

この試合のオファーが帝拳から来たのが8月中旬。
俺はバンコクに連絡を入れる。
「そっち行くから、バンタム級付近の世界ランカークラスを集めてくれ」
それから、この試合を受けた。

計量日になり、
試合順が変更しセミセミに昇格。
いいね。


お互いの戦績を見れば、
誰だってそそられる。
いくら選手がSNSで張り切ってアピールしようが、
一番の説得力は戦歴だ。

後楽園ホール
お互いの応援合戦でホールが揺れるのもひとつの醍醐味。
それとは別に、
ホールが静まり返る試合がある。 
俺はそういう試合が好きだ。

まだキャリアの浅い2人に、
大合唱する応援団なんてありゃしない。
今日のお客さんの大部分も、
この試合を目当てにホールにきたわけでもないだろう。
千葉のことも松原のこともよく知らない。
だけど、
パンフレットでお互いの戦績を見れば、
この試合の危険さがわかる。
目当ての試合がその前で終わっていようと、
ちょっとこれも見てみようかと思わせるモノが2人にはある。

ホールが静まり返る中、
選手の息遣い、パンチの衝撃音が響く。
交錯する危険なパンチにホールがざわめき、感嘆の声が漏れる。
ラウンドが進むにつれ、
次第に歓声、拍手が大きくなる。
いつのまにか、
ホール全体がリング上の人間に引き込まれている。
最後のシーンは、
会場中の悲鳴と大歓声が入り混じる。 

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間違いなく千葉は、
強烈なインパクトを残した。

ホールにいる身内以外の人間にインパクトを残せなければ、
プロボクサーとは言えない。

バンコク。
俺は韓国にいたため、
千葉開のタイキャンプに数日遅れて合流した。

ルンピニースタジアム近くの、
めっちゃローカルな場所にアパートを借りる。
アパートとはいえ、
毎日ルームクリーニングしてくれるし、
フロントに洗濯物を持っていけば翌朝までには仕上げてくれる。
一階には喫茶店にフィットネスジムも入っている。

辺りはローカルな市場や飲食店、マッサージ屋さんが密集している。
日が暮れ始めると、
路上にまでテーブルや椅子が並び始め、
数々の屋台が開き、
多くの人が集まり毎晩遅くまで賑わっている。
そんな場所だから、
そこかしこで超大型ネズミ、ゴキブリが駆けずりまわり、
建物の壁には無数のヤモリ。
沖縄で育った千葉には日常らしい。

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夕方からのジムワークでは、
世界ランカークラスをジムに呼び、
連日スパーリング。
体がぶっ壊れても構わないほど追い込んでいる。
壊れる一歩手前までいったら、
タイマッサージで修復してもらい、
翌日また破壊する作業。

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ちょうど10年前、
俺が長嶋健吾の持つ日本タイトルに挑む前、
故宮川オーナーにバンコクに連れて来てもらった。
一週間ほど、いろんなジムを見てまわり、
各ジムで名も知らないムエタイあがりとスパーリングを繰り返した。
俺からすれば道場破りみたいなもので、
かなり精神的に鍛えられたと思う。
最終的に、
ウィラポンのいるジムに決め、
2ヶ月間彼の住む合宿所に入った。
先日、ロマゴンを倒したシーサケットもこのジムの所属選手だ。
今はジムのあった建物は消え移転したらしいが。
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久しぶりにウィラポンと話をした。
「Mr.ウィラポン、あの時に連れていってくれた***にまた連れていってよ」
「今、隣に嫁がいるからやめろ」
それにしても・・・
なんつー頭だ。

朝は近くの屋台を日替わりでまわりながら朝食をとる。
以前は、苦手なものも多かったが、
齢とともにある程度食べれるようになってきた。
とはいっても、
毎日腹の調子は悪く、トイレに駆け込んでいるが。
その後、喫茶店で本を読んだり、
仕事やマッチメイクなどをしながら過ごす。
9月、11月も予定しているが、
12月のA-sign.Beeはなかなか興味深い。
まずは日本フェザー級タイトルマッチ
坂晃典vs大橋健典が決定した。
他にもいくつかのプラン、
内定しているカードもあり、
それらが実現すれば、
A-sign.Bee開幕戦に勝るとも劣らないイベントになるだろう。

羽田空港でドネアを見送ったあと、
俺はラウンジで明け方まで過ごす。
スマホでソウル市内のホテルを探す。
1日目は試合会場のある安山市に行くのをやめ、
ソウルの中心地明洞のホテルをとることにした。
飛行機のシートに座った瞬間に記憶がぶっ飛び、気づいたら金浦空港。
地下鉄でソウル駅へと出る。
先ほど予約したホテルの場所をグーグルマップで探し、タクシーに乗り込む。
チェックインして、
シャワーを浴び、一服してから街に出る。
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引退した淵上誠かと思って声をかけそうになった。

すごい人の数。
2時間ほど歩き回り、食堂で腹を満たす。
ほんの数年前までは、雑誌片手に街中を歩いていた。
旅行者丸出し。
それをカモにしている商売人に、
ひっきりなしに声をかけられていた。
今は全てスマホに集約される。
グーグルマップを片手に、
街中を歩き回る。
電車乗る時も、タクシー乗る時も。
グーグルマップを開いておけば、
運転手がボッタくるために遠回りしてるのも一目瞭然だ。
時々、
スマホ眺めてるのか、
街中眺めてるのか、
わからなくなる時がある。

一度ホテルに戻り仮眠をとってから、
夜は人と会いに再び街に出る。
夜もまた、賑やかだ。
この辺りは、
日本で言うところの原宿らしい。
嫁がこの周辺を歩いている時は
「カンコクノリ、アルヨ」
としつこく声をかけられたと言っていた。
俺が歩けば、
「オニイサンドコイクノ?マッサージアルヨ!オンナアルヨ!ブランドコピーアルヨ!」
としか声がかからない。

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2日目、
早朝から地下鉄を使い安山市へ移動。
1時間ほどかかるのだが、
寝過ごしたら、どこ行くかわからないため意地でも起きる。
選手とトレーナーは、
前日の時点ですでに安山入りしている。
観光客が訪れるような街ではないのだろう。
街の標識や看板はほぼハングル文字で、
食堂に入っても英語表記のメニューはなく、店員もほぼ英語が通じない。
人の食ってるものを指差し、
同じものをくれと言う。
小さい時から、
やってはダメって教わった行為だけど、
海外ではこればっかりだ。

トレーナーは今回が初めての海外。
この街で試合までの時間、
おとなしく過ごしていてもしょうがない。
計量後、
選手の夕食を済ませ、
再び電車でソウル市内へ出た。

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デビュー戦が敵地韓国、
しかもメインイベントというムチャブリを選手は無事にクリア。
興行が終わり、
この日も、
韓国のプロモーターは、
安山のホテルと空港までの送りを手配してくれていたが、
「ありがとう。でも、僕らは自分達で勝手に帰ります」
と、タクシーでソウルに出て祝勝会。
早朝便までカジノで勝負。

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