2008年03月
2008年03月26日
正常な株主総会
先日、某社の株主総会に出席してきた。
二時間近く活発な議論が行われた。
もっとも、その中には経営陣にかまってほしいだけと見られる株主や最近仕入れた知識をひけらかしたいだけと見られる株主もいたが、代表取締役は意味が不明瞭な質問に対しても素早く丁寧に明確に答えていた。
株主総会の後は低コストの懇親会。
代表取締役とも一対一で10分ほど話すことができた。
僕にとっては「勉強させて頂いた」という思いの強い株主総会だった。
事業内容や経営内容に直結する説明も勉強になる素晴らしいものだったし、良いニュースよりも悪いニュースを積極的に伝える態度も素晴らしかった。
でも、それ以上に株主としての僕が感心したのは、経営陣から出た以下の趣旨の発言だった。
株主総会のあるべき姿だった思う。 実際に参加した中ではこういうのは初体験だ。
多くの株主に出席してほしいから休日に駅前で総会を開いている。 総会での質問を途中で打ち切るなんてことはしたくない。 いわゆる社会貢献も大切だが、株主に報いることや税金を納めることや顧客と従業員を幸せにすることの方がうちの会社がやる社会貢献としては遥かに重要だ。 買収防衛策の導入を打診されたが拒否した(買収を拒否したのではなく防衛策を拒否した)。 懇親会は食べ物で株主を接待するためにやっているのではなく、経営陣が株主と雑談する機会を設けるためにやっている。株主総会の一番の役目は重要で根本的な意思決定を行うこと。 議決を行うことの次に大切なのは、経営陣がどういう人たちなのかを観察すること。 経営陣が自分をさらけ出すこと。 こればかりは書類では代用できない。 実際に話をしたり、観察をしたり、時には意地悪ともいえる質問を浴びせてみたり。 そうすることによって見えてくるものがある。 極めて重要でありながら定量化が難しいものが少し見えてくる。
株主総会のあるべき姿だった思う。 実際に参加した中ではこういうのは初体験だ。
2008年03月08日
十分に安いといえる株価とは
株式の時価が十分に安いとはどういうことだろうか。
価値と比べて価格が大幅に低いというのはトートロジーに過ぎない。
もうすこし具体的な感覚を持っていたい。
この感覚が安全な投資に役立つだろう。
少しぐらい乱暴な基準になってもよいから、僕が今持っている感覚を書き留めておこう。
まず、必要条件や大雑把な基準。
まず、必要条件や大雑把な基準。
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爆弾破裂を原因として簡単には解消できない債務超過に陥る可能性が皆無である。
バランスシートに棚卸資産が積みあがっていたり、営業赤字だったり、営業CFがマイナスだったり、 巨額の設備投資をしながら営業キャッシュフローが増えていなかったりしたら要注意。 このような信号を元に細かく調べれば爆弾を発見できることが多い。
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黒字経営が容易であり、ここ何年も営業黒字と経常黒字を続けている。
黒字経営が容易であるならば、低いPBRや高い配当利回りが安全性を示す数字になる。 黒字経営ができないならば、PBRが低くても配当利回りが高くても株価が割安とはいえない。 PBRは赤字によって上昇し、配当は赤字によって少なくなる。
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競争劣位性をかかえていない。
資本主義市場で生き残っていけない会社はどんな値段であろうと安くはない。 リクルートに食われたアルバイトタイムス、価格競争と労働争議に明け暮れている航空業界、トヨタの強みを真似できていないアメリカの自動車会社、体質改善を怠りニトリやユニクロやヤマダ電器やハイビックに出遅れた小売や流通、先行者の強みもスケールメリットも持っていない弱小IT企業、顧客基盤も先進的なサービスも脆弱な弱小証券会社、差別化の武器となる強力な製品も価格競争力も抱えていない生活必需品メーカー、代替品に駆逐されながら本格的な対策を取っていないフィルムメーカーや放送業界、 経営陣が株主の利益を考えない旧態依然の企業。 そんな会社は低迷し、安く買収されたり倒産したりする。
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配当利回りが主要通貨の長期金利より高く、増配余力があり、本業からのキャッシュフローが安定している。
これは非常に分かりやすい売られすぎの企業。 本業のキャッシュフローの安定性はきちんと分析しなきゃダメだけど、成長ではなく安定ならば比較的容易に分析できる。 成長の場合とは異なり、地域独占や先行独占も安定性の根拠になる。
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素晴らしい企業が一時的な原因で売られすぎている。
相場全体の低迷、経済全体の低迷、業界全体の低迷、一時的にバランスシートを傷つけるだけのトラブル。 そんなときに絶好の買い場が訪れる。 必ず確認しなければならないのは、トラブルが一時的であること、バランスシートは傷ついてもP/Lはほとんど傷つかないこと、不況のときに競合他社と比べて営業利益率が高いことを活かして黒字のままシェアを拡大できること、競合他社に先駆けて体質改善が行われていること、 不況が終わったときに売上げと営業利益率が一気に伸びることが確信できること。 絶好の買い場であっても、定性的な分析を蔑ろにしたら不況に潰される会社を手に入れてしまうことになる。 定量的な基準としては簿価割れ、大幅な営業減益、マスコミを通したバッシングなどが挙げられる。
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企業の実態が全く変化していないのに簿価割れ、PERが10以下などの割安な指標を観察でき、株価が2,3年前の水準に戻っている。
これは相場低迷を表していると考えられ、他の投資家達が既に損失を被っていることを意味する。 この状況ならば、2,3年の利益の蓄積や生産設備の蓄積が株価に反映されていない。 即ち、今買えば2,3年分の利益を反映させた急激な株価上昇が望める。 ここで確認しなければならないのは、株価の下落が企業の利益や成長性に関する見通しが下方修正されたことによらないということ。 下方修正されているならば、2,3年前の株価だからといって割安だとは言えない。 もう一つ見逃してはならないのは、二桁程度のROEか3%程度の配当利回りを達成していること。 これがないと、買った後で何年も株価が低迷し続けた上に配当をエンジョイできないなんてことになりかねない。 どっちにしても、このような基準で買うならば、本業がしっかりしており安定してキャッシュを生み出す会社でなければならない。
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大幅に簿価を下回っており、配当利回りと優待利回りの合計が10%を越え、益回りも10%を越えている銘柄。
株主優待を積極的に行っている会社を最小単元買う場合に限られるが、このような場合はありうる。 決して尊敬できる企業ではないものの、利回りの高さは魅力的である。 本業が大幅減益になる可能性が低ければ、このような銘柄は十分にペイする。 配当だけでこのような基準になる銘柄は少なくても優待を入れるとこの基準にひっかかる銘柄はある。
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自社株買いが行われており、事業の安定性が信頼でき、PERやROEの基準で言っても決して悪くない銘柄。
経営陣がマトモであるという仮定が必要だけど、自社株買いを行うということは、他の会社に投資するよりも事業に投資するよりも自社株に投資したほうが得だという判断が成り立つ。 会社の現状に最も詳しい人たちがそのように判断している。 経営陣がまともな場合には、自社株買い単価より株価が低いということは、割安であるということを意味する。
2008年03月02日
資産の行き先
会社の利益は上下する。需給調整。業界再編。一時の流行など。資産も同じ。土地が不足すれば会社の資産は暴騰する。金の行き先が無くなればインフレと資産バブル。作りすぎ売りすぎで大暴落。寝かしておいた現金はインフレで紙くずに。
僕にはそんな視点からの分析能力が欠けている。戦略的に自己資本比率を上げている企業と単純に資金効率の悪い企業の区別ができていない。事業が弱い会社と戦略的にレバレッジを効かせている会社の区別が短時間ではできない。
利益だけではなく将来の資産価値がどうなるか。 資産の簿価と時価の違いがどのくらいあるか。 棚卸資産の価格は時を経て上昇するか、それとも時と共に腐るか。 そんな視点で分析してみよう。 とりあえず練習として。
僕にはそんな視点からの分析能力が欠けている。戦略的に自己資本比率を上げている企業と単純に資金効率の悪い企業の区別ができていない。事業が弱い会社と戦略的にレバレッジを効かせている会社の区別が短時間ではできない。
利益だけではなく将来の資産価値がどうなるか。 資産の簿価と時価の違いがどのくらいあるか。 棚卸資産の価格は時を経て上昇するか、それとも時と共に腐るか。 そんな視点で分析してみよう。 とりあえず練習として。