先日、あるスポーツメーカーが主催するイベントに参加してきました。
実はAPECの影響で来年1月に開催が延期になってしまった「湘南国際マラソン」のプレイベントとしてトレーニングセッションが行われました。
11月とは思えないほど好天に恵まれた中、湘南の海浜公園は大勢の人で溢れていました。
「時間になりましたので準備体操やりまぁ~す!」
準備体操って、ラジオ体操ってこんなんだったっけ?
トランスの効いたラジオ体操…DJ調だし…速いし…ほとんどついていけてないし…
失笑の中「無事に」準備体操が終わると、ナビゲーターからアナウンスが
「実は今日いらっしゃる予定でした金さんですが…」
…これなくなったとか?
「先ほど朝6時頃、成田空港に到着されて今車でこちらに向かっています。到着が10分後くらいになりそうです。」
金哲彦さん。
早稲田大学競走部時代には箱根駅伝のエースであり登り5区のスペシャリストとして活躍された方。4年連続で5区を担当され、区間賞2回という離れ業をやってのけた人でご記憶の方も多いのではないでしょうか?
よく国内でもマラソンの解説をされていますが、現在の肩書きは
NPO法人ニッポンランナーズ理事長。
日本陸上競技連盟女子長距離マラソン強化本部長。
最近では長谷川理恵さんのコーチもされています。
実はちょっと気になっていたのです。前日まで広州で行われていたアジア大会(男女中長距離の解説のお仕事をされていました)最終日の男子マラソンの解説をされていて「これで明日湘南のイベント来れるのかな?」と少し不安になっていました。
いらっしゃるんですね…
実際に到着された時にはオレンジのベストに黄色のTシャツ、短パンとすぐに走れる状態。
軽くストレッチをされるとナビゲータのインタビューに答えサッと走り始め、およそ1時間10分程度でハーフマラソン(21.0975㎞)を走りきりました。
後から聞いたのですが、実はこのイベントのために男子マラソンが終了した後、広州のスポーツジムでトレッドミル2時間走っていたそうです。
「このイベントのためですか?」
「そうです。このイベントのためです。」
この方の受け答えは実にシンプルで言いよどんだりしない。短くも適切な言葉でスパッと答える。
市民ランナーの相談にも適切にアドバイスするこの方はあちこちの練習会やHP上で質問攻めにあう。
この日もそうでした。
「ちょっと走ってみてもらえますか?」
「ん~…サッカーやってました?」
「わかるんですか?」
「わかります。サッカーをやっていた人の特徴は肩に力が入っていて腕が固まっている事が多い。つまりハンドにならないように腕をガードしてしまっているんです。でも脚力はあるからそれなりの距離は走れる。
しかし体幹を使った走りにはなっていないんです。」
実に的確でわかりやすい。
実際にアドバイス後に走るとフォームが格段に良くなっている。
聞く方は(当然のように)期待以上の答えを期待する。
それ以上の答えで応する。
当然のように。
アジア大会の解説も市民ランナーとのセッションもどちらも同等にプロとして対する。
一つ一つの仕事に全力で向き合う。
当然のように。
それがプロというものだ。
ここで期待を裏切らない、否、良い意味で裏切る位の力量があってこそプロなのだと思った。
この人を見ていてそう思いました。
「金さん、昨夜は何時頃出たのですか?」
「午後3時頃マラソンが終わって、トレッドミルで走って、みんなで打ち上げやって夜10時頃の飛行機に乗りました。
で、今朝6時に成田に着いて自分で車運転してここ(湘南)まで来ました。」
「そして今ハーフを走って?」
「そうです。頭の中はまだ広州です。」
渋谷校 村田